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出てくるもの(1):Bose–Hubbard 模型と Mott 絶縁体

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第27章 光格子と光ピンセット
目次
  1. 模型の導出
  2. 超流動と Mott 絶縁体
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第27章 §27.3 ★★★ 最低バンドの Wannier 関数に原子を置くと、トンネル tht_{\mathrm h} と同じ井戸の衝突 UU だけの Bose–Hubbard 模型になる。比 U/thU/t_{\mathrm h} を格子の深さで上げると、超流動から各井戸に1個ずつの Mott 絶縁体へ移る

模型の導出

Bose 粒子の原子を多数入れる。原子どうしは、極低温では s 波の散乱長 asa_s だけで決まる接触相互作用 g δ(3)(r−r′)g\,\delta^{(3)}(\bm{r}-\bm{r}')、g=4πℏ2as/mg=4\pi\hbar^2a_s/m で相互作用する。3次元の格子の最低バンドの Wannier 関数 w(r−rj)w(\bm{r}-\bm{r}_j) を基底に、井戸 jj の原子の消滅演算子 b^j\hat b_j を使って場の演算子を ψ^(r)=∑jw(r−rj)b^j\hat\psi(\bm{r})=\sum_jw(\bm{r}-\bm{r}_j)\hat b_j と展開する。これを多体の Hamiltonian に入れ、隣どうしより遠いトンネルと、異なる井戸にまたがる相互作用の積分を落とすと、

H^=−th∑⟨i,j⟩(b^i†b^j+b^j†b^i)+U2∑jn^j(n^j−1)−μ∑jn^j,U=g∫∣w(r)∣4d3r(27.9)\hat H=-t_{\mathrm h}\sum_{\langle i,j\rangle}\bigl(\hat b_i^\dagger\hat b_j+\hat b_j^\dagger\hat b_i\bigr)+\frac U2\sum_j\hat n_j(\hat n_j-1)-\mu\sum_j\hat n_j,\qquad U=g\int\lvert w(\bm{r})\rvert ^4\mathrm{d}^3r\tag{27.9}

になる(D. Jaksch, C. Bruder, J. I. Cirac, C. W. Gardiner, P. Zoller (1998)、Phys. Rev. Lett. 81, 3108)。⟨i,j⟩\langle i,j\rangle は隣どうしの井戸の組、n^j=b^j†b^j\hat n_j=\hat b_j^\dagger\hat b_j、μ\mu は化学ポテンシャルである。これがBose–Hubbard 模型で、n^j(n^j−1)/2\hat n_j(\hat n_j-1)/2 は井戸 jj にいる原子の組の数なので、UU は同じ井戸に2個入ったときのエネルギーの上がり分である。

Wannier 関数を調和振動子の基底状態で近似すると、各方向で ∫∣w∣4dx=(2πx02)−1/2\int\lvert w\rvert ^4\mathrm{d} x=(2\pi x_0^2)^{-1/2} なので、x02=ℏ/(mω)x_0^2=\hbar/(m\omega) と式 (27.6) を使って

UER=8π kas s3/4(27.10)\frac{U}{E_{\mathrm R}}=\sqrt{\frac8\pi}\,ka_s\,s^{3/4}\tag{27.10}

になる。87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} の asa_s を約 100a0100a_0(a0a_0 は Bohr 半径)とし、λL=1064 nm\lambda_{\mathrm L}=1064\,\mathrm{nm} では kas=0.0312ka_s=0.0312 である。UU は s3/4s^{3/4} でゆっくり増え、tht_{\mathrm h} は e−2s\mathrm{e}^{-2\sqrt s} で減るので、比 U/thU/t_{\mathrm h} は格子を深くすると急に大きくなる。図 27.3 のとおり、s=5s=5 で 2.52.5、s=20s=20 で 189189 である。

図

図 27.3 87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} を 1064 nm1064\,\mathrm{nm} の3次元格子に入れたときのトンネル tht_{\mathrm h} と同じ井戸の相互作用 UU。青の点線は中心方程式の対角化による tht_{\mathrm h}、青の実線は漸近式 (27.8)、赤の実線は調和近似の式 (27.10)(as=100a0a_s=100a_0)。灰色の破線は Mott 転移の深さ sc=12.4s_{\mathrm c}=12.4。

超流動と Mott 絶縁体

井戸の数と原子の数が等しい(1井戸あたり平均1個)場合を考える。U=0U=0 では、原子は互いに独立に最低バンドの q=0q=0 の状態に凝縮し、各原子はすべての井戸に広がる。1つの井戸に注目すると、原子の数は0・1・2・… と揺らぎ、各井戸の位相がそろっている。格子を切って原子を自由に広げると、そろった位相の波が干渉して、運動量 2ℏk2\hbar k の整数倍の所に鋭い干渉の山が並ぶ。これが超流動である。

U≫thU\gg t_{\mathrm h} では、同じ井戸に2個入る状態はエネルギー UU だけ高いので、基底状態は各井戸にちょうど1個ずつの積 ∏jb^j†∣0⟩\prod_j\hat b_j^\dagger| 0 \rangle に近づく。原子の数は井戸ごとに確定し、その代わりに各井戸の位相は決まらないので、干渉の山は消える。原子を1個動かすには少なくとも UU の程度のエネルギーが要り、励起にギャップがある。これがMott 絶縁体である。2つの相の境は、3次元の単純立方格子で1井戸あたり1個のとき、量子 Monte Carlo 法で (U/th)c=29.34(U/t_{\mathrm h})_{\mathrm c}=29.34 と求められている(B. Capogrosso-Sansone, N. V. Prokof'ev, B. V. Svistunov (2007)、Phys. Rev. B 75, 134302)。各井戸を平均場の中に置く近似では (U/zth)c=3+22=5.83(U/zt_{\mathrm h})_{\mathrm c}=3+2\sqrt2=5.83(z=6z=6 は隣の井戸の数)、すなわち U/th=35.0U/t_{\mathrm h}=35.0 になる。Greiner たちは 87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} の凝縮体を3次元の光格子に入れて深さを上げ、干渉の山が消えて Mott 絶縁体に移ることを観測した(M. Greiner, O. Mandel, T. Esslinger, T. W. Hänsch, I. Bloch (2002)、Nature 415, 39)。

例題 27.3 2つの井戸に2個の原子 ★★

オリジナル井戸が2つ、原子が2個の Bose–Hubbard 模型を考える(μ\mu の項は原子数が一定なので落とす)。状態を井戸ごとの原子の数で ∣2,0⟩| 2,0 \rangle, ∣1,1⟩| 1,1 \rangle, ∣0,2⟩| 0,2 \rangle と書く。

  1. (1) この3つの状態で Hamiltonian の行列を書き、基底状態のエネルギーを求めよ。
  2. (2) 井戸1の原子の数の分散 Var⁡n1\operatorname{Var}n_1 を、基底状態での ∣1,1⟩| 1,1 \rangle の確率 P11P_{11} で表せ。
  3. (3) U=0U=0、U=10thU=10t_{\mathrm h}、U=29.3thU=29.3t_{\mathrm h} で、エネルギー・P11P_{11}・Var⁡n1\operatorname{Var}n_1 を求めよ。
解答

(1) b^1†b^2∣1,1⟩=2∣2,0⟩\hat b_1^\dagger\hat b_2| 1,1 \rangle =\sqrt2| 2,0 \rangle、b^1†b^2∣0,2⟩=2∣1,1⟩\hat b_1^\dagger\hat b_2| 0,2 \rangle =\sqrt2| 1,1 \rangle なので、トンネルの行列要素は −2th-\sqrt2t_{\mathrm h} である。相互作用は ∣2,0⟩| 2,0 \rangle と ∣0,2⟩| 0,2 \rangle だけが UU を持つ。行列は

H=(U−2th0−2th0−2th0−2thU)H=\begin{pmatrix}U&-\sqrt2t_{\mathrm h}&0\\-\sqrt2t_{\mathrm h}&0&-\sqrt2t_{\mathrm h}\\0&-\sqrt2t_{\mathrm h}&U\end{pmatrix}

である。対称な組み合わせ (∣2,0⟩+∣0,2⟩)/2(| 2,0 \rangle +| 0,2 \rangle )/\sqrt2 と ∣1,1⟩| 1,1 \rangle の間の行列要素は −2th-2t_{\mathrm h} で、反対称な組み合わせは ∣1,1⟩| 1,1 \rangle と結合しない。基底状態は 2×22\times2 の行列 (U−2th−2th0)\begin{pmatrix}U&-2t_{\mathrm h}\\-2t_{\mathrm h}&0\end{pmatrix} の小さいほうの固有値で、

Eg=U−U2+16th22(27.11)E_{\mathrm g}=\frac{U-\sqrt{U^2+16t_{\mathrm h}^2}}{2}\tag{27.11}

である。

(2) n1n_1 は ∣2,0⟩| 2,0 \rangle で2、∣1,1⟩| 1,1 \rangle で1、∣0,2⟩| 0,2 \rangle で0をとり、対称性から平均は1である。分散は (2−1)2P20+(0−1)2P02=1−P11(2-1)^2P_{20}+(0-1)^2P_{02}=1-P_{11} である。

(3) U=0U=0 では Eg=−2thE_{\mathrm g}=-2t_{\mathrm h}、P11=1/2P_{11}=1/2、Var⁡n1=1/2\operatorname{Var}n_1=1/2 で、2個の原子が独立に両方の井戸に広がった状態(各原子の確率が半々なので、1個ずつになる確率は 1/21/2)である。U=10thU=10t_{\mathrm h} では Eg=−0.385thE_{\mathrm g}=-0.385t_{\mathrm h}、P11=0.964P_{11}=0.964、Var⁡n1=0.036\operatorname{Var}n_1=0.036 で、エネルギーは2次の摂動 −(2th)2/U=−0.4th-(2t_{\mathrm h})^2/U=-0.4t_{\mathrm h} に近い。U=29.3thU=29.3t_{\mathrm h} では P11=0.995P_{11}=0.995、Var⁡n1=0.0046\operatorname{Var}n_1=0.0046 である。2つの井戸だけでは、転移の値で原子の数の揺らぎはほとんど消えている。3次元の格子で転移が U/th≈29U/t_{\mathrm h}\approx29 まで起こらないのは、1つの井戸が6つの隣と結合していて、原子が動く道が多いからである。

例題 27.4 Mott 転移に要る格子の深さ ★★★

オリジナル27.1 の例題と同じ3次元格子(87Rb{}^{87}\mathrm{Rb}、1064 nm1064\,\mathrm{nm}、ビーム1本 50 mW50\,\mathrm{mW} で s=19.5s=19.5)に、1井戸あたり1個の原子を入れる。tht_{\mathrm h} は中心方程式の対角化の値、UU は式 (27.10)(as=100a0a_s=100a_0)を使う。

  1. (1) U/th=29.34U/t_{\mathrm h}=29.34 になる深さ scs_{\mathrm c} を求めよ。平均場の値 35.035.0 ではどうなるか。
  2. (2) scs_{\mathrm c} での U/hU/h と th/ht_{\mathrm h}/h を求めよ。
  3. (3) scs_{\mathrm c} にするにはビーム1本のパワーをいくらにすればよいか。
解答

(1) U/thU/t_{\mathrm h} は ss について単調に増えるので、数値で根を探すと sc=12.4s_{\mathrm c}=12.4 である。平均場の値では s=13.0s=13.0 で、Greiner たちが干渉の山の消えるのを見た深さと同じ程度である。2つの深さの差は 5%5\% にすぎず、U/thU/t_{\mathrm h} が深さに指数関数的に依るので、臨界値が2割違っても必要な深さはあまり変わらない。

(2) sc=12.4s_{\mathrm c}=12.4 で th=0.0112ERt_{\mathrm h}=0.0112E_{\mathrm R}、U=0.330ERU=0.330E_{\mathrm R} で、ER/h=2.03 kHzE_{\mathrm R}/h=2.03\,\mathrm{kHz} を掛けて th/h=22.8 Hzt_{\mathrm h}/h=22.8\,\mathrm{Hz}、U/h=668 HzU/h=668\,\mathrm{Hz} である。どちらも Hz の程度で、固体の電子の eV の程度(1014 Hz10^{14}\,\mathrm{Hz} の程度)より12桁ほど小さい。原子の動きはミリ秒の時間で起こるので、カメラで追うことができる。

(3) 格子の深さはパワーに比例するので、50 mW×12.4/19.5=31.8 mW50\,\mathrm{mW}\times12.4/19.5=31.8\,\mathrm{mW} である。

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