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Wannier 関数の局在と Chern 数

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第12章 固体編:一電子(周期作用素とバンド)
目次
  1. Wannier 関数
  2. 1次元:いつでも局在させられる
  3. 2次元・3次元:Chern 数が障害になる
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第12章 §12.6 ★★★ tight-binding の基底を厳密に作れるかどうかは Bloch 関数を k について滑らかに選べるかで決まり、その障害が Chern 数である

Wannier 関数

12.2 節の tight-binding は、原子軌道という「本当の基底ではないもの」で近似した。これに対して、1本のバンドの固有空間を厳密に張る局在した基底を作れるか、と問うことができる。孤立したバンド nn の Bloch 関数 ψnk\psi_{n\bm{k}} から

wR(r)=∫BZe−ik⋅R eiθ(k)ψnk(r) dk∣BZ∣(12.18)w_{\bm{R}}(\bm{r})=\int_{\mathrm{BZ}}\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{k}\cdot\bm{R}}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta(\bm{k})}\psi_{n\bm{k}}(\bm{r})\,\frac{\mathrm{d}\bm{k}}{\lvert \mathrm{BZ}\rvert }\tag{12.18}

を作ると、{wR}R\{w_{\bm{R}}\}_{\bm{R}} はバンド nn の固有空間の正規直交基底になる(G. H. Wannier (1937), Phys. Rev. 52, 191)。wR(r)=w0(r−R)w_{\bm{R}}(\bm{r})=w_{\bm{0}}(\bm{r}-\bm{R}) なので、1つの関数 w=w0w=w_{\bm{0}} の並進でできている。この基底で HH を書くと、行列要素は R−R′\bm{R}-\bm{R}' だけの関数で、εn(k)\varepsilon _n(\bm{k}) の Fourier 係数そのものになる。つまり Wannier 基底での HH は厳密な tight-binding 行列であり、ホッピングが遠くまでどれだけ速く減るかは εn(k)\varepsilon _n(\bm{k}) の滑らかさで決まる。ここまでは A 型の射影(バンドの固有空間へ)で誤差は無い。近似が入るのは、遠くのホッピングを捨てるときである。

(12.18) の位相 eiθ(k)\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta(\bm{k})} は自由に選べる。Bloch 関数は各 k\bm{k} で位相を除いてしか決まらないからである(ゲージの自由度)。ww の局在はこの選び方に強く依存する。

命題 12.7(滑らかさと局在 ★★)

k↦eiθ(k)unk\bm{k}\mapsto\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta(\bm{k})}u_{n\bm{k}} が周期的で、帯状の領域 ∣Im⁡k∣<β\lvert \operatorname{Im}\bm{k}\rvert <\beta まで解析的に延長できるなら、任意の β′<β\beta'<\beta について∣w(r)∣\lvert w(\bm{r})\rvert は(単位胞の上の L2L^2 の意味で)e−β′∣r∣\mathrm{e}^{-\beta'\lvert \bm{r}\rvert } より速く減る。逆に ww が指数的に減るなら、位相を選んだ Bloch 関数は帯状の領域で解析的である。

証明の骨格

(12.18) は k\bm{k} についての周期関数の Fourier 係数なので、1次元で書けば ∫−ππe−ikRf(k) dk\int_{-\pi}^{\pi}\mathrm{e}^{-\mathrm{i} kR}f(k)\,\mathrm{d} k の積分路をk→k−iβ′sgn⁡Rk\to k-\mathrm{i}\beta'\operatorname{sgn}R に平行移動する。周期性から両端の寄与は打ち消し合い、被積分関数に e−β′∣R∣\mathrm{e}^{-\beta'\lvert R\rvert } が出る(Paley–Wiener の定理)。

これは第4章の「解の滑らかさが基底展開の収束の速さを決める」と同じ関係を、k\bm{k} と R\bm{R} の Fourier の組で見たものである。

1次元:いつでも局在させられる

孤立したバンドでは、スペクトル射影 P(k)=12πi∮(z−H(k))−1dzP(\bm{k})=\frac{1}{2\pi\mathrm{i}}\oint(z-H(\bm{k}))^{-1}\mathrm{d} z(ギャップの中を回る周回積分)が k\bm{k} について解析的である(第3章の Riesz 射影を k\bm{k} の族にしたもの。ギャップがあるので積分路を k\bm{k} によらずに取れる)。射影が解析的でも、その値域から単位ベクトルを「周期的かつ解析的に」選べるかは別の問題である。1次元では平行移動で位相を決め、1周したときに付く位相(Zak 位相)を1周にわたって均等に戻せばよいので、いつでも選べる。W. Kohn (1959), Phys. Rev. 115, 809 は反転対称な1次元の周期ポテンシャルで、指数的に局在した Wannier 関数の存在を示した。

1次元のトポロジーは局在を妨げず、Wannier 関数の中心の位置に現れる。中心 ⟨x⟩w\langle x \rangle _w は Zak 位相 γ\gamma を用いて ⟨x⟩w=γa/(2π)\langle x \rangle _w=\gamma a/(2\pi)(aa を法として)と書け(aa を法とし、符号は位相の向きの取り方による。J. Zak (1989), Phys. Rev. Lett. 62, 2747)、反転対称な鎖では γ\gamma は 00 か π\pi に限られる。π\pi のとき中心は原子の上でなく結合の中点に来る。この「中心がずれた」状態を有限の鎖で切ると、端に半端な電荷と端の状態が残る(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部第8章)。

2次元・3次元:Chern 数が障害になる

2次元では事情が変わる。Bloch 関数の位相を BZ(トーラス)全体で滑らかに選べるかは、Berry 曲率の積分

Cn=12π∫BZΩn(k) d2k(12.19)C_n=\frac{1}{2\pi}\int_{\mathrm{BZ}}\Omega_n(\bm{k})\,\mathrm{d}^2k\tag{12.19}

が 00 かどうかで決まる。Cn≠0C_n\ne0 なら、BZ の境界を1周する位相の巻き数が 00 でなく、どう選んでもどこかで位相が飛ぶ。これは Thouless が磁場の中のバンドについて指摘した(D. J. Thouless (1984), J. Phys. C 17, L325)。数学の定理としては次の形になっている。

定理 12.8(局在の二分法 ★★★)

d≤3d\le3 で、孤立したバンドの族について次が成り立つ。

  1. 指数的に局在した(合成)Wannier 関数が存在することと、すべての Chern 数が 00 であることは同値である(C. Brouder et al. (2007), Phys. Rev. Lett. 98, 046402;G. Panati (2007), Ann. Henri Poincaré 8, 995)。時間反転対称性があれば Chern 数は 00 で、局在した Wannier 関数が取れる。
  2. Chern 数が 00 でなければ、どう位相を選んでも ∫∣r∣2∣w(r)∣2dr=∞\int\lvert \bm{r}\rvert ^2\lvert w(\bm{r})\rvert ^2\mathrm{d}\bm{r}=\infty となる(D. Monaco, G. Panati, A. Pisante and S. Teufel (2018), Commun. Math. Phys. 359, 61)。

中間は無い。指数的に局在させられるか、位置の2乗の期待値すら有限にできないかのどちらかである。tight-binding の言葉に直すと、Chern 数が 00 でない1本のバンドは、そのバンドだけを残した短距離のホッピングの模型では書けない。これがトポロジーが tight-binding を阻むということの正確な意味である。注意したいのは、Chern 絶縁体の標準的な模型(2軌道の Qi–Wu–Zhang 模型h(k)=sin⁡kx σx+sin⁡ky σy+(m+cos⁡kx+cos⁡ky)σzh(\bm{k})=\sin k_x\,\sigma_x+\sin k_y\,\sigma_y+(m+\cos k_x+\cos k_y)\sigma_z)自体は短距離の tight-binding 模型だということである。2本のバンドを合わせた Chern 数の和は 00 なので、2本の族としては局在した基底(元の2つの軌道)がある。阻まれるのは、そのうち1本だけを切り出して局在基底で書くことである。この模型の下のバンドの Chern 数は、0<∣m∣<20<\lvert m\rvert <2 で ±1\pm1、∣m∣>2\lvert m\rvert >2 で 00 である(検算スクリプト。符号は向きの取り方に依存する)。バルクの Chern 数が端の状態の数と等しいこと(バルクと端の対応)は、相互作用の無いギャップのある系で証明されている(Y. Hatsugai (1993), Phys. Rev. Lett. 71, 3697)。

例題 12.6 2原子の鎖の Wannier 関数の減り方と中心 ★★★

オリジナル単位胞に2つの軌道 A, B を持つ鎖で、胞の中のホッピングを vv、隣の胞へのホッピングを ww(v,w>0v,w>0、v≠wv\ne w)とする。kk の行列はh(k)=(0z(k)‾z(k)0)h(k)=\begin{pmatrix}0&\overline{z(k)}\\ z(k)&0\end{pmatrix}、z(k)=v+weikz(k)=v+w\mathrm{e}^{\mathrm{i} k}(格子定数 11)で、下のバンドの固有ベクトルは u(k)=12(1, −z/∣z∣)u(k)=\frac{1}{\sqrt2}(1,\,-z/\lvert z\rvert ) と選べる。

  1. u(k)u(k) が kk について周期的で、実軸の上で解析的であることを確かめよ。
  2. z/∣z∣=z1/2 z‾−1/2z/\lvert z\rvert =z^{1/2}\,\overline{z}^{-1/2} と書き、z‾\overline z を v+we−ikv+w\mathrm{e}^{-\mathrm{i} k} の解析接続とみなす。特異点(分岐点)が ∣Im⁡k∣=∣ln⁡(v/w)∣\lvert \operatorname{Im} k\rvert =\lvert \ln(v/w)\rvert にあることを示し、Wannier 関数の B 成分が (min⁡(v,w)/max⁡(v,w))∣n∣(\min(v,w)/\max(v,w))^{\lvert n\rvert } の速さで減る(多項式の因子を除く)ことを導け。
  3. v/w=1/2v/w=1/2 の数値計算では、B 成分の大きさの隣どうしの比は n=40n=40 で 0.4940.494 である。(2) と比べ、ギャップ 2∣v−w∣2\lvert v-w\rvert が閉じる v→wv\to w で局在の長さがどうなるか述べよ。
解答

(1) z(k+2π)=z(k)z(k+2\pi)=z(k) なので uu は周期的である。∣z∣2=v2+w2+2vwcos⁡k≥(v−w)2>0\lvert z\rvert ^2=v^2+w^2+2vw\cos k\ge(v-w)^2>0 なので実軸の上で ∣z∣\lvert z\rvert は 00 にならず、z/∣z∣z/\lvert z\rvert は解析的である。v≠wv\ne w がギャップ 2∣v−w∣2\lvert v-w\rvert の存在と同じ条件であることに注意する。

(2) z=v+weikz=v+w\mathrm{e}^{\mathrm{i} k} は eik=−v/w\mathrm{e}^{\mathrm{i} k}=-v/w、すなわち k=π−iln⁡(v/w)k=\pi-\mathrm{i}\ln(v/w) で 00 になり、v+we−ikv+w\mathrm{e}^{-\mathrm{i} k} は e−ik=−v/w\mathrm{e}^{-\mathrm{i} k}=-v/w、すなわち k=π+iln⁡(v/w)k=\pi+\mathrm{i}\ln(v/w) で 00 になる。平方根の分岐点なので、z/∣z∣z/\lvert z\rvert はこれらの点で解析的でない。どちらも実軸からの距離は ∣ln⁡(v/w)∣\lvert \ln(v/w)\rvert で、その内側の帯では解析的である。命題 12.7 からWannier 関数の B 成分(−z/∣z∣-z/\lvert z\rvert の Fourier 係数)は e−∣ln⁡(v/w)∣∣n∣=(min⁡/max⁡)∣n∣\mathrm{e}^{-\lvert \ln(v/w)\rvert \lvert n\rvert }=(\min/\max)^{\lvert n\rvert } の速さで減る。A 成分は定数 1/21/\sqrt2 の Fourier 係数なので n=0n=0 にだけある。

(3) v/w=1/2v/w=1/2 では (2) の比は 0.50.5 で、数値の 0.4940.494 との違いは平方根の分岐点が与える多項式の因子 n−1/2n^{-1/2}(比で (40/41)1/2=0.988(40/41)^{1/2}=0.988)で説明できる。局在の長さ 1/∣ln⁡(v/w)∣1/\lvert \ln(v/w)\rvert は v→wv\to w で 1/∣v/w−1∣1/\lvert v/w-1\rvert のように発散する。ギャップが閉じる所で Wannier 関数が広がり、tight-binding 表示に要るホッピングの距離が長くなる。v<wv<w と v>wv>w のどちらでも Wannier 関数は指数的に局在しているが、数値で求めた中心は v<wv<w でセルの境目(半整数)、v>wv>w でセルの中(整数)にあり、Zak 位相の π\pi と 00 に対応する(検算スクリプト)。

近似の裏付け

型 A(射影) | 小さいもの 孤立したバンドの族の固有空間(Wannier 関数の張る空間) | 証明 証明済み(d≤3d\le3 の孤立したバンドの族で、指数的に局在した Wannier 基底があることと Chern 数がすべて 00 であることが同値。Brouder ら 2007、Panati 2007。遠くのホッピングを捨てる誤差は Wannier 関数の減り方で決まる) | 行き先 近似の数理 第4章

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