出てくるもの1:Chern 絶縁体の端には一方向に進む状態がある
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部 第5章 §5.5.3 ★★★ Chern 数 の絶縁体を帯状に切ると、それぞれの端に、ギャップを横切って一方向にだけ進む状態が 本現れる。後ろへ戻る状態が同じ端に無いので、乱れがあっても抵抗はちょうど になる
帯状の試料のバンド
無限に広い結晶は端を持たない。端の効果を見るため、蜂の巣格子を 方向に無限に長く、 方向に原子の列 本分の幅で切った帯(リボン)を考える。 方向には周期 があるので波数 が保存し、各 ごとに原子 個分の の行列を対角化すればよい。端は、端の原子が最近接を2個しか持たないジグザグの形に取る。図 5.5.2 は 、、()の結果である。
図 5.5.2 Haldane 模型(、、)を幅 列のジグザグの帯にしたときのバンド。灰色の点線はギャップに近い6本のバンド(結晶の内部の状態)。太い点線は端に局在した状態で、重みの9割以上が下の端(赤)または上の端(青)の4分の1の幅にあるものを描いた。 と は K と K を 軸に射影した点で、そこで内部のギャップが最も狭く になる。端の状態は内部の下のバンドから上のバンドへギャップを横切る。
灰色の点線は帯の内部に広がった状態で、無限に広い結晶のバンドを 方向に射影したものに近い。 の間がギャップで、これは例題 5.5.2 の式で とした に一致する。ギャップの中には、2本の状態が で交わる形で現れる。固有ベクトルを見ると、片方は下の端に、もう片方は上の端に局在している。下の端の状態のエネルギーは とともに減り、群速度 は負である。上の端の状態は逆に正の群速度を持つ。したがって Fermi 準位がギャップの中にあるとき、下の端には 向きにだけ、上の端には 向きにだけ進む状態が1本ずつある。このように一方向にだけ進む端の状態をカイラルな端の状態と呼ぶ。
端の状態の数は Chern 数で決まる
Hatsugai は、整数量子 Hall 効果の格子の模型について、片方の端に現れるカイラルな端の状態の本数(右向きの本数から左向きの本数を引いたもの)が、Fermi 準位より下のバンドの Chern 数の和に等しいことを示した(Y. Hatsugai (1993), Phys. Rev. Lett. 71, 3697)。この関係をバルクと端の対応と呼ぶ。図 5.5.2 の帯で端の状態が1本ずつなのは による。 を より大きくすると()、ギャップを横切る端の状態は無くなる(例題 5.5.3)。
対応が成り立つ理由は次のように見ることができる。Chern 数 の絶縁体に 向きの電場をかけると、式 (5.5.3) により 向きの電流が流れる。帯を 方向に輪にしてその中に磁束をゆっくり通すと、Faraday の法則で輪に沿った電場が生じ、Hall 電流は輪と垂直な 向き、つまり一方の端から他方の端へ流れる。磁束量子 を1本通すあいだに運ばれる電荷は と磁束の積で 個分の電子である。内部はギャップがあって状態を受け取れないので、電子は端の状態に入るしかない。片方の端で 個の電子が Fermi 準位の上へ押し上げられ、反対の端で 個が下へ引き下ろされるには、各端にギャップを横切る状態が 本要る。これは Laughlin が量子 Hall 効果について与えた議論を Chern 数の言葉で言い直したものである。
第2部第8章の SSH 模型の端は0次元の点で、端の状態はギャップの中央の1つの準位だった。2次元の Chern 絶縁体の端は1次元の線で、端の状態は を持つバンドになり、ギャップを横切る。どちらの場合も、端の状態の数は内部のバンドの巻き方(巻き数・Chern 数)で決まり、端の細かい形には依らない。
乱れがあっても抵抗が量子化される理由
1次元の普通の導線では、右向きに進む状態と左向きに進む状態が同じ場所にあるので、不純物は電子を後ろへ跳ね返すことができる。カイラルな端の状態では、同じ端に逆向きの状態が無い。逆向きの状態は帯の幅だけ離れた反対の端にあり、その間にはギャップがあるので、電子を反対の端へ移す散乱の振幅は帯の幅とともに指数関数的に小さくなる。したがって端に沿った電子の流れは後ろへ跳ね返されず、2つの電極の間の電気抵抗は端の状態1本あたり になる(1本の通り道の伝導度が であることは、第4部第7章の Landauer 公式で扱う)。Hall 抵抗率が試料の形や不純物によらず になるのはこのためで、量子 Hall 効果の測定が抵抗の標準に使えるのも同じ理由による。
例題 5.5.3 端の状態の速さと向き ★★
オリジナル図 5.5.2 の帯(幅 列で計算し直した)で、下の端に局在した状態のエネルギーは で 、 で 、 で だった。
- (1) での下の端の状態の群速度を の単位で求め、、 として m/s で表せ。
- (2) 上の端の状態の群速度はいくらか。 にすると向きはどうなるか。
- (3) にすると、帯の固有値はどうなるか。数値で確かめた結果(すべての で )と式 (5.5.11) から説明せよ。
解答
(1) 差分で である。 なので、速さは で、向きは である。Dirac コーンの速さ より遅い。
(2) 上の端の状態は で、 向きに進む。 は式 (5.5.8) の第3項を複素共役にする操作で、時間反転にあたる。時間反転は速度の向きを反転するので、 では下の端の状態が 向き、上の端の状態が 向きになる。式 (5.5.11) でも になり、Hall 伝導度の符号が変わる。
(3) では なので、バルクと端の対応からギャップを横切る端の状態は無い。数値でも、帯の固有値はどの でも で、内部のギャップの半分 より外にある。端に局在した状態があったとしても、それは下のバンドから出て下のバンドへ戻る(または上から上へ戻る)だけで、ギャップの中央を横切らない。Fermi 準位をギャップの中央に置くと、端を流れる電流は無く、帯は普通の絶縁体として振る舞う。(検算 scripts/verify_ch5-05.py)
木下の勉強ステータス
木下はまだこの記事を勉強していません。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com
← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ