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出てくるもの2:グラフェンの Berry 位相 π\pi と半整数の量子 Hall 効果

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第5章 つなぎ:Berry 曲率と異常 Hall 効果
目次
  1. Dirac 点のまわりの Berry 位相
  2. Landau 準位
  3. 半整数の Hall 伝導度
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部 第5章 §5.5.4 ★★★ 質量 00 の Dirac コーンを1周すると Berry 位相は π\pi で、Onsager の量子化の位相のずれが消え、ε=0\varepsilon =0 に Landau 準位が1つ残る。この準位を電子と正孔で半分ずつ分けるので、Hall 伝導度は 4(N+12)e2/h4(N+\frac12)e^2/h の半整数の並びになる

Dirac 点のまわりの Berry 位相

Haldane 模型で Δ=0\Delta=0、t2=0t_2=0 とすると、質量 00 のグラフェンに戻る。このとき Berry 曲率は Dirac 点に集中した δ\delta 関数になる。例題 5.5.1 の質量 mm を 00 に近づけると、Ω−\Omega_- は幅 ∣m∣/(ℏv)\lvert m\rvert /(\hbar v) の領域に集まり、流束は ±π\pm\pi のまま変わらない。したがって K のまわりの閉じた等エネルギー線を1周する Berry 位相は ±π\pm\pi である。π\pi と −π-\pi は位相としては同じなので、質量を正に取っても負に取っても、円を1周すると固有ベクトルの符号が反転する。これは擬スピンが q\bm{q} の向きに沿って xyxy 平面の中で1回転し、スピン 12\frac12 を 2π2\pi 回すと −1-1 倍になるのと同じ事情である。

Landau 準位

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第11章で、Berry 位相 Γn\Gamma_n を持つ軌道の Onsager の量子化がAν=2πeBℏ(ν+12−Γn2π)\mathcal A_\nu=\frac{2\pi eB}{\hbar}\bigl(\nu+\frac12-\frac{\Gamma_n}{2\pi}\bigr) になることを見た。Aν\mathcal A_\nu は k\bm{k} 空間の軌道が囲む面積で、ν=0,1,2,…\nu=0,1,2,\dots である。質量 00 の Dirac コーンでは Γn=±π\Gamma_n=\pm\pi なので、位相のずれ 12−Γn2π\frac12-\frac{\Gamma_n}{2\pi} は 00(または 11。ν\nu の付け替えで同じ)になる。半径 qq の円の面積 πq2\pi q^2 と ε=ℏvq\varepsilon =\hbar vq を入れると

εν=sgn⁡(ν)2eℏv2B∣ν∣,ν=0,±1,±2,…(5.5.12)\varepsilon _\nu=\operatorname{sgn}(\nu)\sqrt{2e\hbar v^2B\lvert \nu\rvert },\qquad\nu=0,\pm1,\pm2,\dots\tag{5.5.12}

を得る(ν<0\nu<0 は下のコーンの準位)。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第11章は上のコーンだけを書いたが、下のコーンでも同じ量子化が成り立つ。式 (5.5.12) は Dirac 方程式の Landau 準位を厳密に解いた結果と一致する(verify_ch5-05.py で調和振動子の基底の行列を対角化して確かめた)。普通の放物線のバンドの Landau 準位 ℏωc(ν+12)\hbar\omega_{\mathrm c}(\nu+\frac12) との違いは2つある。1つは間隔が等しくなく ∣ν∣B\sqrt{\lvert \nu\rvert B} に比例すること、もう1つは ε=0\varepsilon =0 にちょうど1つの準位(ν=0\nu=0)があることである。

1つの準位に入る状態の数は、面積あたり eB/heB/h にスピンの2と谷の2を掛けた 4eB/h4eB/h である。ν=0\nu=0 の準位は上のコーンと下のコーンの境目にあり、電子と正孔が入れ替わる対称性(ε→−ε\varepsilon \to-\varepsilon)から、電荷を中性にしたとき半分だけ満たされている。

半整数の Hall 伝導度

電荷が中性の点から測った電子の面密度を nen_{\mathrm e} とする。Fermi 準位が ν=N\nu=N と N+1N+1 の準位の間(N≥0N\ge0)にあるとき、ν=0\nu=0 の準位の半分と、ν=1,…,N\nu=1,\dots,N の準位が中性の点から足された分なので

ne=4eBh(N+12)n_{\mathrm e}=\frac{4eB}{h}\Bigl(N+\frac12\Bigr)

である。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第11章の Středa の式 σxy=−e(∂ne/∂B)μ\sigma_{xy}=-e(\partial n_{\mathrm e}/\partial B)_\mu を当てると

σxy=−4e2h(N+12)=−e2h×2, 6, 10, …(5.5.13)\sigma_{xy}=-\frac{4e^2}{h}\Bigl(N+\frac12\Bigr)=-\frac{e^2}{h}\times2,\ 6,\ 10,\ \dots\tag{5.5.13}

となる。正孔の側(ne<0n_{\mathrm e}<0)では符号が逆の +2,+6,…+2,+6,\dots になる。2次元の電子気体の量子 Hall 効果が νe2/h\nu e^2/h(ν\nu は整数)であるのに対し、グラフェンでは e2/he^2/h の単位で 44 ずつ、半分ずれた並びになる(図 5.5.3)。

この「半分」は谷ごとの Chern 数で読むことができる。磁場の中の Landau 準位はそれぞれ Chern 数 11 のバンドで、普通の電子気体では満ちた準位の数がそのまま Chern 数の和になる。グラフェンの1つの Dirac コーンは、例題 5.5.1 で見たように、それ自体が ±12\pm\frac12 の Chern 数を持つ(質量を 00 に近づけた極限で)。1つの谷、1つのスピンあたりの Hall 伝導度は、ν=0\nu=0 の準位が空のとき +12 e2/h+\frac12\,e^2/h、満ちたとき −12 e2/h-\frac12\,e^2/h で、そこから上の準位を1つ満たすごとに −e2/h-e^2/h ずつ変わる。スピンと谷の4倍で式 (5.5.13) になる。Haldane 模型では、磁場の代わりに t2sin⁡ϕt_2\sin\phi によって2つの谷の質量の符号が逆になり、谷ごとの 12\frac12 が足し合って磁場なしで 11 になった。どちらも、Dirac コーン1つが持つ半整数が見えている。

図

図 5.5.3 グラフェンの Hall 伝導度の模式図(温度 00、乱れによって準位の中央付近の状態だけが電流を運ぶとした理想化)。横軸は電荷が中性の点から測った電子の面密度を1つの準位の状態の数 4eB/h4eB/h で割ったもの。点線の台地は ±2,±6,±10,…\pm2,\pm6,\pm10,\dots に並び、各台地の中央は ne/(4eB/h)=N+12n_{\mathrm e}/(4eB/h)=N+\frac12 にあって、ne=0n_{\mathrm e}=0 をまたいで −2-2 から +2+2 へ跳ぶ。実線は古典の Hall 効果 σxy=−nee/B\sigma_{xy}=-n_{\mathrm e}e/B で、台地の中央を通る。

半整数の並びは 2005 年に2つのグループが独立に測った(K. S. Novoselov et al. (2005), Nature 438, 197;Y. Zhang, Y.-W. Tan, H. L. Stormer and P. Kim (2005), Nature 438, 201)。ν=1\nu=1 の準位と ν=0\nu=0 の準位の間隔は普通の半導体の Landau 準位の間隔より大きく、グラフェンでは室温でも量子 Hall 効果が見えることが報告されている(K. S. Novoselov et al. (2007), Science 315, 1379)。

例題 5.5.4 グラフェンの Landau 準位の大きさ ★★

オリジナルv=1.0×106 m s−1v=1.0\times10^6\,\mathrm{m\,s^{-1}}、B=10 TB=10\,\mathrm T とする。

  1. (1) ε1\varepsilon _1 を eV と温度(ε1/kB\varepsilon _1/ k_{\mathrm B})で求め、ε2−ε1\varepsilon _2-\varepsilon _1 と比べよ。
  2. (2) GaAs の2次元電子(有効質量 m∗=0.067mem^*=0.067m_{\mathrm e})の Landau 準位の間隔 ℏωc=ℏeB/m∗\hbar\omega_{\mathrm c}=\hbar eB/m^* と比べよ。
  3. (3) 最初の台地 σxy=−2e2/h\sigma_{xy}=-2e^2/h の中央での電子の面密度と、そのときの ∣ρyx∣\lvert \rho_{yx}\rvert を求めよ。
解答

(1) ε1=v2eℏB=1.0×106×2×1.602×10−19×1.0546×10−34×10=1.84×10−20 J=0.115 eV\varepsilon _1=v\sqrt{2e\hbar B}=1.0\times10^6\times\sqrt{2\times1.602\times10^{-19}\times1.0546\times10^{-34}\times10}=1.84\times10^{-20}\,\mathrm J=0.115\,\mathrm{eV}、ε1/kB=1.33×103 K\varepsilon _1/ k_{\mathrm B}=1.33\times10^3\,\mathrm K である。ε2=2 ε1\varepsilon _2=\sqrt2\,\varepsilon _1 なので ε2−ε1=0.414 ε1=0.0475 eV\varepsilon _2-\varepsilon _1=0.414\,\varepsilon _1=0.0475\,\mathrm{eV} で、準位の間隔はエネルギーが上がるほど狭くなる。

(2) ℏωc=1.0546×10−34×1.602×10−19×10/(0.067×9.109×10−31)=2.77×10−21 J=17.3 meV\hbar\omega_{\mathrm c}=1.0546\times10^{-34}\times1.602\times10^{-19}\times10/(0.067\times9.109\times10^{-31})=2.77\times10^{-21}\,\mathrm J=17.3\,\mathrm{meV} で、ε1\varepsilon _1 はその 6.66.6 倍である。Dirac コーンでは ε=0\varepsilon =0 の近くの状態の密度が小さい(第2部第9章の D(ε)∝∣ε∣D(\varepsilon )\propto\lvert \varepsilon \rvert)ので、同じ数の状態を集めて1つの準位にするために広いエネルギーの幅が要る。そのため最初の間隔が大きい。

(3) 台地 N=0N=0 の中央は ν=0\nu=0 と ν=1\nu=1 の準位の間の中央で、面密度は ne=4eBh⋅12=2eBh=4.84×1015 m−2n_{\mathrm e}=\frac{4eB}{h}\cdot\frac12=\frac{2eB}{h}=4.84\times10^{15}\,\mathrm{m^{-2}} である。σxx=0\sigma_{xx}=0 なので ∣ρyx∣=1/∣σxy∣=h/(2e2)=12.9 kΩ\lvert \rho_{yx}\rvert =1/\lvert \sigma_{xy}\rvert =h/(2e^2)=12.9\,\mathrm{k}\Omega である。(検算 scripts/verify_ch5-05.py)

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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