tecktom.com

この章で選ぶ H^\hat H:2つの電極と薄い障壁

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第7章 トンネルと STM
目次
  1. 選ぶ
  2. 1次元の矩形障壁
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第7章 §4.7.1 ★★★ 選ぶのは「左の電極+障壁+右の電極」の1電子の H^\hat H。障壁の中で Fermi 準位の電子の波動関数は e−κz\mathrm{e}^{-\kappa z} で減衰し、κ=2mϕ/ℏ\kappa=\sqrt{2m\phi}/\hbar は仕事関数 4〜5 eV で約 11 nm−111\,\mathrm{nm^{-1}}。電流は 0.1 nm ごとに約1桁変わる

これまでの第4部の章では、電子は結晶の中を散乱されながら進み、電流は Boltzmann 方程式の分布のずれから計算した(第4部第2章)。この章では、電子が古典的には通れない薄い障壁を量子力学のトンネル効果で通り抜ける過程を扱う。トンネルで流れる電流は、障壁の両側の電極がそのエネルギーにどれだけ状態を持っているかに比例する。したがってトンネル電流を電圧の関数として測ると、電極の状態密度をエネルギーごとに読み取ることができる。走査トンネル顕微鏡(STM)は、この障壁を探針と試料の間の真空にして、探針を表面に沿って動かすことで、状態密度を場所ごとにも読み取る装置である(G. Binnig, H. Rohrer, Ch. Gerber, E. Weibel(1982)、Physical Review Letters 49、57)。

この章で選ぶのは、2つの電極と、その間の薄い障壁を持つ1電子の H^\hat H である(4.7.1節)。障壁の中で波動関数は指数関数で減衰し、電流が距離に強く依存することは、その減衰の速さ κ\kappa で決まる。当てる道具は、2つの電極を別々に解いた状態の間の行列要素を障壁の中の面積分で書く Bardeen の方法と、Fermi の黄金律である(4.7.2節)。出てくるものの第一は、探針を s 軌道とみなすと、STM の電流が探針の先端の位置での試料の局所状態密度に比例するという Tersoff–Hamann の結果と、そこから読む像の分解能と分光である(4.7.3節)。第二は、障壁を通る確率 T\mathcal T がそのまま伝導度になる Landauer 公式 G=(2e2/h)TG=(2e^2/h)\mathcal T と、分子1個を電極で挟んだ接合の透過率である(4.7.4節)。そのあと、削ったものを並べて近似の裏付けの札を貼り、どの実験の量で確かめるかを書く(4.7.5節)。最後に授業の矩形障壁の公式・トンネル Hamiltonian・超伝導体のトンネル接合と並べ(4.7.6節)、まとめと総合問題で終える。

この章では、時間とホッピングが同じ章に出るので、ホッピングを tht_{\mathrm h} と書く(第2部の tt と同じもの)。分子と電極をつなぐホッピングは tct_{\mathrm c} と書く。位置エネルギーは U(r)U(\bm{r})、探針に対する試料の電圧(バイアス)は VbV_{\mathrm b}、仕事関数は ϕ\phi と書く(この章にスカラーポテンシャルは出ない)。透過率は温度 TT と区別して T\mathcal T、伝導度(コンダクタンス)は GG、その量子 2e2/h2e^2/h を G0G_0 と書く。電子の電荷は −e-e(e>0e>0)である。

選ぶ H^\hat H

この章で選ぶのは、電子1個の Hamiltonian

H^=p^22m+UL(r^)+UR(r^)(4.7.1)\hat H=\frac{\hat{\bm{p}}^2}{2m}+U_{\mathrm L}(\hat{\bm{r}})+U_{\mathrm R}(\hat{\bm{r}})\tag{4.7.1}

である。ULU_{\mathrm L} は左の電極の中でだけ値を持ち(電極の外では 0)、URU_{\mathrm R} は右の電極の中でだけ値を持つ。2つの電極の間には、どちらのポテンシャルも 0 になる隙間がある。STM では左を探針、右を試料にとり、隙間は真空である。平面のトンネル接合では隙間は薄い酸化膜で、そのときは隙間のポテンシャルが 0 でなく一定の高さになるだけで、以下の話は変わらない。

エネルギーの原点を真空の準位にとる。電極の中では電子は原子核に引かれて U<0U<0 の所にいて、Fermi 準位は真空の準位より仕事関数 ϕ\phi だけ下にある。Fermi 準位の電子が隙間に入ると、そこでは運動エネルギーが −ϕ<0-\phi<0 になるので、Schrödinger 方程式 −(ℏ2/2m)∇2ψ=−ϕ ψ-(\hbar^2/2m)\nabla^2\psi=-\phi\,\psi の解は振動せず減衰する。表面に垂直な向きを zz にとると、表面に沿った波数が 0 の成分は

ψ∝e−κz,κ=2mϕℏ(4.7.2)\psi\propto\mathrm{e}^{-\kappa z},\qquad \kappa=\frac{\sqrt{2m\phi}}{\hbar}\tag{4.7.2}

で減る。表面に沿った波数 qq を持つ成分は eiqxe−κ2+q2 z\mathrm{e}^{\mathrm{i} qx}\mathrm{e}^{-\sqrt{\kappa^2+q^2}\,z} で、q=0q=0 の成分よりも速く減る。障壁を隔てた2つの電極の間で電子が移る確率は、波動関数の振幅の2乗の比 e−2κd\mathrm{e}^{-2\kappa d}(dd は隙間の幅)の程度になる。

この H^\hat H では、電子どうしの相互作用(電極の表面にできる鏡像電荷による引力も含む)・原子の振動・電極の中の不純物による散乱を落としている。電極の中の状態は、第2部・第4部で扱ったバンドの状態のまま、隙間の手前で表面に沿って並び直したものと考える。削ったものの影響は4.7.5節で見る。

1次元の矩形障壁

この H^\hat H のいちばん簡単な例は、1次元で、電極の中のポテンシャルを 0、隙間(0<x<d0<x<d)を高さ UbU_{\mathrm b} の段にしたものである。電子の運動エネルギーを E<UbE<U_{\mathrm b} とし、k=2mE/ℏk=\sqrt{2mE}/\hbar、κ=2m(Ub−E)/ℏ\kappa=\sqrt{2m(U_{\mathrm b}-E)}/\hbar とおく。左から来る波 eikx+re−ikx\mathrm{e}^{\mathrm{i} kx}+r\mathrm{e}^{-\mathrm{i} kx}、障壁の中の Aeκx+Be−κxA\mathrm{e}^{\kappa x}+B\mathrm{e}^{-\kappa x}、右へ抜ける τeikx\tau\mathrm{e}^{\mathrm{i} kx} をx=0x=0 と x=dx=d で値と傾きが連続になるようにつなぐと、透過率 T=∣τ∣2\mathcal T=\lvert \tau\rvert ^2 は

T=[1+Ub2sinh⁡2(κd)4E(Ub−E)]−1=[1+(k2+κ2)24k2κ2sinh⁡2(κd)]−1(4.7.3)\mathcal T=\Biggl[1+\frac{U_{\mathrm b}^2\sinh^2(\kappa d)}{4E(U_{\mathrm b}-E)}\Biggr]^{-1} =\Biggl[1+\frac{(k^2+\kappa^2)^2}{4k^2\kappa^2}\sinh^2(\kappa d)\Biggr]^{-1}\tag{4.7.3}

になる。障壁が厚く κd≫1\kappa d\gg1 なら sinh⁡(κd)≈eκd/2\sinh(\kappa d)\approx\mathrm{e}^{\kappa d}/2 で、

T≈16k2κ2(k2+κ2)2 e−2κd(4.7.4)\mathcal T\approx\frac{16k^2\kappa^2}{(k^2+\kappa^2)^2}\,\mathrm{e}^{-2\kappa d}\tag{4.7.4}

である。指数の 2κd2\kappa d は、解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第7章の WKB のトンネルの指数 2Θ=2∫∣p∣ dx/ℏ2\Theta=2\int\lvert p\rvert \,\mathrm{d} x/\hbar を一定の高さの障壁で計算したものと同じである。WKB で出るのは指数だけで、前の因子 16k2κ2/(k2+κ2)216k^2\kappa^2/(k^2+\kappa^2)^2 は障壁の端で波をつなぐ所から出る。この因子は k=κk=\kappa のとき最大値 4 をとり、電子の運動エネルギーと障壁の深さが同じ程度なら 1〜4 の数である。

透過率が e−2κd\mathrm{e}^{-2\kappa d} で決まることが、STM の高さの感度の源である。ϕ=4.5 eV\phi=4.5\,\mathrm{eV} なら κ=10.9 nm−1\kappa=10.9\,\mathrm{nm^{-1}} で、隙間が 0.1 nm0.1\,\mathrm{nm} 広がると透過率は e−2κ×0.1 nm=0.114\mathrm{e}^{-2\kappa\times0.1\,\mathrm{nm}}=0.114 倍、約 1/91/9 になる。原子1個の大きさの 0.1 nm0.1\,\mathrm{nm} で電流が約1桁変わるので、探針の先端のいちばん突き出た原子1個が電流のほとんどを運び、表面の高さを 0.01 nm0.01\,\mathrm{nm} より細かく読むことができる。

例題 4.7.1 仕事関数から減衰の長さと透過率を見積もる ★★

オリジナル金属の電極の Fermi エネルギー(伝導帯の底から測った運動エネルギー)を E=5.0 eVE=5.0\,\mathrm{eV}、仕事関数を ϕ=4.5 eV\phi=4.5\,\mathrm{eV} とし、2つの同じ電極の間の真空の隙間を高さ Ub=E+ϕ=9.5 eVU_{\mathrm b}=E+\phi=9.5\,\mathrm{eV} の1次元の矩形障壁とみなす。ℏ2/(2m)=0.0381 eV nm2\hbar^2/(2m)=0.0381\,\mathrm{eV\,nm^2} を使ってよい。

  1. (1) κ\kappa と kk を求め、隙間が 0.1 nm0.1\,\mathrm{nm} 広がるごとに透過率が何分の1になるかを求めよ。
  2. (2) d=0.2 nmd=0.2\,\mathrm{nm} と d=0.5 nmd=0.5\,\mathrm{nm} で、厳密な透過率 (4.7.3) と厚い障壁の式 (4.7.4) を比べよ。
解答

(1) κ=4.5/0.0381 nm−1=10.87 nm−1\kappa=\sqrt{4.5/0.0381}\,\mathrm{nm^{-1}}=10.87\,\mathrm{nm^{-1}}、k=5.0/0.0381 nm−1=11.46 nm−1k=\sqrt{5.0/0.0381}\,\mathrm{nm^{-1}}=11.46\,\mathrm{nm^{-1}}。0.1 nm0.1\,\mathrm{nm} ごとの比は e−2×10.87×0.1=0.114\mathrm{e}^{-2\times10.87\times0.1}=0.114 で、約 1/8.81/8.8 になる。

(2) 前の因子は 16k2κ2/(k2+κ2)2=3.9916k^2\kappa^2/(k^2+\kappa^2)^2=3.99 で、k≈κk\approx\kappa なので最大値 4 に近い。d=0.2 nmd=0.2\,\mathrm{nm} では、厳密な値が T=0.0503\mathcal T=0.0503、厚い障壁の式が 3.99 e−4.35=0.05163.99\,\mathrm{e}^{-4.35}=0.0516 で、差は 2.6%2.6\% である。d=0.5 nmd=0.5\,\mathrm{nm} では、どちらも T=7.60×10−5\mathcal T=7.60\times10^{-5} で4桁まで一致する。κd=5.4\kappa d=5.4 なので sinh⁡(κd)\sinh(\kappa d) と eκd/2\mathrm{e}^{\kappa d}/2 の差は e−2κd\mathrm{e}^{-2\kappa d} の程度しかない。STM の探針と試料の距離は 0.50.5〜1 nm1\,\mathrm{nm} 程度なので、透過率は厚い障壁の式で十分に表され、T≪1\mathcal T\ll1 である。この「透過率が小さい」ことが、次節の Bardeen の方法の前提になる。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ