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出てくるもの3:トンネルは虚数の運動量と虚数の時間

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第7章 WKB と Hamilton–Jacobi
目次
  1. 古典的に入れない領域の WKB
  2. 虚数の時間の古典運動
  3. 滑らかな障壁で比べる
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第7章 §4.7.5 ★★★ E<VE<V の領域では pp が虚数になり、WKB の波は e−∫∣p∣ dx/ℏ\mathrm{e}^{-\int\lvert p\rvert \,\mathrm{d} x/\hbar} で減衰する。指数は、ポテンシャルを逆さにした「虚数の時間の運動」の作用に等しい

古典的に入れない領域の WKB

E<V(x)E<V(x) の領域では式 (4.7.3) の pp は虚数になる。∣p(x)∣=2m(V(x)−E)\lvert p(x)\rvert =\sqrt{2m(V(x)-E)} と書くと、最低次の式 (4.7.6) の解はσ0=±i∫x∣p∣ dx′\sigma_0=\pm\mathrm{i}\int^x\lvert p\rvert \,\mathrm{d} x' で、WKB の波は

ψ(x)≈D+∣p(x)∣exp⁡(1ℏ∫x∣p∣ dx′)+D−∣p(x)∣exp⁡(−1ℏ∫x∣p∣ dx′)(4.7.20)\psi(x)\approx\frac{D_+}{\sqrt{\lvert p(x)\rvert }}\exp\Bigl(\frac1\hbar\int^x\lvert p\rvert \,\mathrm{d} x'\Bigr)+\frac{D_-}{\sqrt{\lvert p(x)\rvert }}\exp\Bigl(-\frac1\hbar\int^x\lvert p\rvert \,\mathrm{d} x'\Bigr)\tag{4.7.20}

になる。ℏσ2\hbar\sigma_2 の評価も、pp を i∣p∣\mathrm{i}\lvert p\rvert に置き換えて同じに行うことができる。障壁の中で振幅が増えるか減るかは、障壁の外の波とのつなぎ方(接続)で決まる。

高さが EE より高い障壁が x1<x<x2x_1<x<x_2 にあり(V(x1)=V(x2)=EV(x_1)=V(x_2)=E)、左から粒子が入射するとき、障壁の中の波は主に減衰する側の項で、右の転回点 x2x_2 での振幅は左の転回点 x1x_1 での振幅の e−Θ\mathrm{e}^{-\Theta} 倍になる。ここで

Θ=1ℏ∫x1x2∣p(x)∣ dx=1ℏ∫x1x22m(V(x)−E) dx(4.7.21)\Theta=\frac1\hbar\int_{x_1}^{x_2}\lvert p(x)\rvert \,\mathrm{d} x=\frac1\hbar\int_{x_1}^{x_2}\sqrt{2m\bigl(V(x)-E\bigr)}\,\mathrm{d} x\tag{4.7.21}

である。2つの転回点での接続の係数(第V巻の接続の公式。近似の数理 第7章)は Θ\Theta によらない 1 の程度の数なので、透過する確率(透過率)T\mathcal T は、Θ≫1\Theta\gg1 で

T≈e−2Θ(4.7.22)\mathcal T\approx\mathrm{e}^{-2\Theta}\tag{4.7.22}

になる。この章では、透過率を周期 TT と区別して T\mathcal T と書く。式 (4.7.22) で正しいのは指数の部分だけで、指数の前に付く係数は ℏ\hbar の次の次数の情報であり、この次数では決まらない。

虚数の時間の古典運動

指数 Θ\Theta には解析力学の意味がある。時間を虚数 t=−iτt=-\mathrm{i}\tau に取り直すと、ddt=iddτ\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}=\mathrm{i}\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} \tau} なので、Newton の運動方程式 mx¨=−V′(x)m\ddot x=-V'(x) は

md2xdτ2=+V′(x)(4.7.23)m\frac{\mathrm{d}^2x}{\mathrm{d}\tau^2}=+V'(x)\tag{4.7.23}

に変わる。これはポテンシャル −V(x)-V(x) の中の実数の運動である。逆さにしたポテンシャルでは障壁が谷になるので、古典的に入れなかった区間 x1<x<x2x_1<x<x_2 を、粒子は実数の時間 τ\tau で普通に通り抜ける。この運動のエネルギーの保存はm2(dxdτ)2−V(x)=−E\frac m2\bigl(\frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} \tau}\bigr)^2-V(x)=-E で、このときの運動量 m dx/dτm\,\mathrm{d} x/\mathrm{d}\tau はちょうど 2m(V−E)=∣p∣\sqrt{2m(V-E)}=\lvert p\rvert になる(検算 scripts/verify_ch4-07.py)。したがって ℏΘ=∫∣p∣ dx\hbar\Theta=\int\lvert p\rvert \,\mathrm{d} x は、虚数の時間の運動で第1部第13章の特性関数 W=∫p dxW=\int p\,\mathrm{d} x を計算したもの、すなわち逆さのポテンシャルの中の運動の作用(簡約した作用)である。

トンネルの確率の指数は、実数の時間では許されない運動を、虚数の時間で許された運動に置き換えて、その作用を測ったものになっている。この見方は、経路積分で eiS/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} の時間を虚数に回したときに中心的な量になる(第4部第8章)。また、虚数の時間の発展 e−H^τ/ℏ\mathrm{e}^{-\hat H\tau/\hbar} は、温度の逆数を β=τ/ℏ\beta=\tau/\hbar と読めば統計力学の e−βH^\mathrm{e}^{-\beta\hat H} である(第5部第1章)。

滑らかな障壁で比べる

V(x)=V0/cosh⁡2(x/ℓ)V(x)=V_0/\cosh^2(x/\ell)(Eckart の障壁、ℓ\ell は幅)は、透過率が厳密に求まる滑らかな障壁である。ℏ=m=ℓ=1\hbar=m=\ell=1 の単位で、8V0>18V_0>1 のとき

Texact=sinh⁡2(πk)sinh⁡2(πk)+cosh⁡2(π2V0−1/4),k=2E(4.7.24)\mathcal T_{\mathrm{exact}}=\frac{\sinh^2(\pi k)}{\sinh^2(\pi k)+\cosh^2\bigl(\pi\sqrt{2V_0-1/4}\bigr)},\qquad k=\sqrt{2E}\tag{4.7.24}

である(検算 scripts/verify_ch4-07.py で Schrödinger 方程式を数値積分して確かめた)。図 4.7.3 は、V0=8V_0=8 でこれと e−2Θ\mathrm{e}^{-2\Theta} を比べたものである。

図

図 4.7.3 Eckart の障壁 V0/cosh⁡2(x/ℓ)V_0/\cosh^2(x/\ell)(ℏ=m=ℓ=1\hbar=m=\ell=1、V0=8V_0=8)の透過率。縦軸は常用対数。透過率が9桁にわたって変わるあいだ、e−2Θ\mathrm{e}^{-2\Theta} と厳密値の差は縦軸で 0.090.09 程度(比にして 0.820.82 倍)にとどまる。EE が障壁の頂上に近づくと2つの転回点が近づき、e−2Θ\mathrm{e}^{-2\Theta} は厳密値を上回って E=V0E=V_0 で 11 になる(数値は scripts/verify_ch4-07.py –fig)

例題 4.7.5 Eckart の障壁のトンネルの指数 ★★★

オリジナルV(x)=V0/cosh⁡2(x/ℓ)V(x)=V_0/\cosh^2(x/\ell) に、E<V0E<V_0 の粒子が入射する。

  1. (1) ℏΘ=∫x1x22m(V−E) dx=πℓ(2mV0−2mE)\hbar\Theta=\int_{x_1}^{x_2}\sqrt{2m(V-E)}\,\mathrm{d} x=\pi\ell\bigl(\sqrt{2mV_0}-\sqrt{2mE}\bigr) を示せ。
  2. (2) ℏ=m=ℓ=1\hbar=m=\ell=1、V0=8V_0=8、E=2E=2 で e−2Θ\mathrm{e}^{-2\Theta} を求め、厳密値 (4.7.24) と比べよ。
  3. (3) 比 e−2Θ/Texact\mathrm{e}^{-2\Theta}/\mathcal T_{\mathrm{exact}} が Θ≫1\Theta\gg1 で何に近づくかを式 (4.7.24) から求め、ℏ→0\hbar\to0 でその比がどうなるかを述べよ。
解答

(1) u=sinh⁡(x/ℓ)u=\sinh(x/\ell) と置くと cosh⁡2=1+u2\cosh^2=1+u^2、dx=ℓ du/1+u2\mathrm{d} x=\ell\,\mathrm{d} u/\sqrt{1+u^2} で、転回点は u02=V0/E−1u_0^2=V_0/E-1 のとき u=±u0u=\pm u_0。

∫2m(V01+u2−E) ℓ du1+u2=ℓ2mE∫−u0u0u02−u21+u2 du.\int\sqrt{2m\Bigl(\frac{V_0}{1+u^2}-E\Bigr)}\,\frac{\ell\,\mathrm{d} u}{\sqrt{1+u^2}}=\ell\sqrt{2mE}\int_{-u_0}^{u_0}\frac{\sqrt{u_0^2-u^2}}{1+u^2}\,\mathrm{d} u .

∫−u0u0u02−u21+u2du=π(1+u02−1)\int_{-u_0}^{u_0}\frac{\sqrt{u_0^2-u^2}}{1+u^2}\mathrm{d} u=\pi\bigl(\sqrt{1+u_0^2}-1\bigr) を使うと(u=u0sin⁡ϑu=u_0\sin\vartheta と置いて留数で計算できる)、ℓ2mE π(V0/E−1)=πℓ(2mV0−2mE)\ell\sqrt{2mE}\,\pi\bigl(\sqrt{V_0/E}-1\bigr)=\pi\ell\bigl(\sqrt{2mV_0}-\sqrt{2mE}\bigr)。2組の数値で数値積分と一致することを確かめた(検算 scripts/verify_ch4-07.py)。

(2) Θ=π(16−4)=2π\Theta=\pi(\sqrt{16}-\sqrt4)=2\pi で、e−2Θ=e−4π=3.49×10−6\mathrm{e}^{-2\Theta}=\mathrm{e}^{-4\pi}=3.49\times10^{-6}。厳密値は k=2k=2、2V0−1/4=15.75\sqrt{2V_0-1/4}=\sqrt{15.75} を入れてTexact=4.25×10−6\mathcal T_{\mathrm{exact}}=4.25\times10^{-6}。比は 0.8210.821 である。

(3) Θ≫1\Theta\gg1 では sinh⁡2(πk)≈e2πk/4\sinh^2(\pi k)\approx\mathrm{e}^{2\pi k}/4、cosh⁡2(π2V0−1/4)≈e2π2V0−1/4/4\cosh^2(\pi\sqrt{2V_0-1/4})\approx\mathrm{e}^{2\pi\sqrt{2V_0-1/4}}/4 で、分母の第1項は第2項に比べて無視できるのでTexact≈e−2π(2V0−1/4−k)\mathcal T_{\mathrm{exact}}\approx\mathrm{e}^{-2\pi(\sqrt{2V_0-1/4}-k)}。よって

e−2ΘTexact≈exp⁡(−2π(2V0−2V0−1/4))≈exp⁡(−π42V0)\frac{\mathrm{e}^{-2\Theta}}{\mathcal T_{\mathrm{exact}}}\approx\exp\Bigl(-2\pi\bigl(\sqrt{2V_0}-\sqrt{2V_0-1/4}\bigr)\Bigr)\approx\exp\Bigl(-\frac{\pi}{4\sqrt{2V_0}}\Bigr)

で、V0=8V_0=8 では 0.8210.821(近似式で 0.8220.822)。ℏ\hbar を戻すと 2V02V_0 は 2mV0ℓ2/ℏ22mV_0\ell^2/\hbar^2 なので、比は exp⁡(−πℏ/(4ℓ2mV0))\exp\bigl(-\pi\hbar/(4\ell\sqrt{2mV_0})\bigr) であり、ℏ→0\hbar\to0 で 1 に近づく。指数の中の 1/41/4 は ℏ\hbar の次の次数の補正で、e−2Θ\mathrm{e}^{-2\Theta} はその補正を落とした主要項である。透過率が9桁変わる範囲でも比が 0.820.82 前後で一定なのは(図 4.7.3)、補正が EE にほとんど依存しない形をしているためである。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/Θ→01/\Theta\to0(障壁の中の作用 ∫∣p∣ dx\int\lvert p\rvert \,\mathrm{d} x が ℏ\hbar に比べて大きい) | 証明 条件付き(障壁が滑らかで、2つの転回点が孤立していること。EE が障壁の頂上に近いと転回点が近づくので使うことができない。係数は次の次数の量で、この式は指数の部分だけを表す) | 行き先 近似の数理 第7章

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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