何を削ったか・何の実験の量で確かめるか
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第7章 §4.7.5 ★★ 削ったのは、電子どうしの相互作用(鏡像力・帯電)、トンネル中の振動の励起、探針と試料の互いの変形、探針の軌道の形、電子の位相の乱れ。確かめる量は、電流の距離依存(見かけの障壁の高さ)、量子化された伝導度、STM 分光の状態密度、非弾性トンネルの段
削ったもの
電子どうしの相互作用。電子が表面から真空へ出ると、金属の中に鏡像電荷が誘起され、電子は表面へ引き戻される。この鏡像力で障壁の形は矩形から丸くなり、とくに表面の近くで低くなるので、測った減衰から逆算した障壁の高さは仕事関数より低めに出ることがある。分子1個の接合では、分子に電子が1個入ると分子の電荷が変わり、次の電子が入るには帯電のエネルギーが余分に要る。帯電のエネルギーが準位の幅 や より大きいと、電子は1個ずつしか通れず(Coulomb 閉塞)、式 (4.7.19) の1電子の山は帯電のエネルギーの分だけ分かれる。相互作用のある接合の電流の一般の式は、Landauer 公式の代わりに Meir–Wingreen の式になる(Y. Meir, N. S. Wingreen(1992)、Physical Review Letters 68、2512)。
非弾性トンネル。この章では電子のエネルギーを保つ移り方だけを考えた。電子が障壁や分子を通る途中で分子の振動の量子 を1個励起することもでき、その通り道は で開く。そのため が で段を作り、 に山が出る。STM でこれを分子1個について測った例がある(B. C. Stipe, M. A. Rezaei, W. Ho(1998)、Science 280、1732)。
探針と試料の互いの変形と、行列要素の1次。Bardeen の方法は、左右の状態を別々に求め、移る確率を の2乗の1次で数えた。2つの電極の状態は互いに直交しておらず、近づくと互いのポテンシャルで状態そのものが変わる。透過率が 1 に近い原子の接触では、黄金律でなく式 (4.7.3) や式 (4.7.18) のように散乱の問題を全体で解く必要がある。
探針の軌道の形。Tersoff–Hamann の結果は探針の先端を s 軌道1つとみなした。探針がタングステンのような遷移金属なら先端の d 軌道の寄与があり、そのとき行列要素は試料の波動関数の探針の中心での微分になる(例題 4.7.3 の Chen の結果)。
電子の位相の乱れ。Landauer 公式は、電子が散乱体の中で位相を保ったまま通り抜ける(弾性散乱だけ)とした。散乱体の間で位相が乱れることは、式 (4.7.16) で確率を足すときにだけ使った。位相を保ったまま多数の散乱体を通る1次元の通り道では、干渉で透過率が長さとともに指数関数で減り、式 (4.7.16) の足し算は成り立たない(第4部第2章で削った局在)。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの (。2つの電極の状態の重なりが小さい) | 証明 条件付き(行列要素の1次の黄金律。1次元の矩形障壁では の極限で厳密な透過率と一致することを例題 4.7.2 で確かめた。3次元の一般の電極での誤差の評価は要確認) | 行き先 近似の数理 第7章
近似の裏付け
型 A(射影) | 小さいもの 探針の状態を、先端の中心に置いた s 軌道1つの張る空間に限る | 証明 要確認(探針の電子状態を別に測らない限り、p・d 軌道の寄与の大きさは決まらない。d 軌道の探針で凹凸が大きくなることは Chen(1990)が示した) | 行き先 近似の数理 第4章
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの 帯電のエネルギー/ と、接合の長さ/位相が乱れる長さ (相互作用の無い電子の弾性散乱) | 証明 条件付き(相互作用の無い電子では、Landauer 公式の伝導度は線形応答の Kubo 公式と一致する〔Fisher, Lee(1981)〕。相互作用のある接合では Meir–Wingreen の式に置き換わり、その近似の評価は要確認) | 行き先 近似の数理 第13章
何の実験の量で確かめるか
電流の距離依存。式 (4.7.4) から は隙間の幅に対して傾き の直線で、その傾きから を逆算したものを見かけの障壁の高さと呼ぶ。STM の最初の報告(Binnig ほか(1982))は、探針を動かしたときの電流の指数関数の変化でトンネルが起きていることを確かめた。見かけの障壁の高さは、表面の場所ごとの仕事関数の違いの目安になる。
量子化された伝導度。2次元の電子系をゲートの電圧で細く絞った通り道(量子ポイントコンタクト)では、通り道の本数が1本ずつ増えるたびに伝導度が の整数倍の段を作る(B. J. van Wees ほか(1988)、Physical Review Letters 60、848。D. A. Wharam ほか(1988)、Journal of Physics C 21、L209)。金の原子が1列に並んだ鎖の伝導度が になることも透過電子顕微鏡で原子を見ながら測られた(H. Ohnishi, Y. Kondo, K. Takayanagi(1998)、Nature 395、780)。白金の電極の間に水素分子1個を挟んだ接合でも伝導度がほぼ になり、1つの通り道をほぼ完全に通すことが示された(R. H. M. Smit ほか(2002)、Nature 419、906)。
トンネル分光の状態密度。STM より前に、金属・酸化膜・超伝導体の平面の接合の電流電圧特性から、超伝導のギャップがトンネルで測られた(I. Giaever(1960)、Physical Review Letters 5、147)。STM では局所状態密度の場所の依存まで見え、銅の表面に原子を輪に並べて閉じ込めた表面の電子の定在波が の像として観測された(M. F. Crommie, C. P. Lutz, D. M. Eigler(1993)、Science 262、218)。炭素ナノチューブの1次元の van Hove 特異点の観測は第2部第6章で挙げた。
例題 4.7.6 電流の距離依存から見かけの障壁の高さを読む ★★
オリジナル探針を 遠ざけると電流がちょうど10分の1になったとする。
- (1) と見かけの障壁の高さ を求めよ。
- (2) 仕事関数が なら、 あたり電流は何桁変わるはずか。測った見かけの障壁の高さが仕事関数より低く出たとき、何が原因として考えられるか。
解答
(1) から 。。
(2) では で、 あたり 倍、 桁である。見かけの高さが低く出る原因は、削ったもののうち鏡像力による障壁の丸まり(とくに隙間が狭いとき)と、探針と試料が近づいて互いに押し合うことで実際の隙間の幅の変化が探針を動かした量より小さくなること、が考えられる。前の因子 は距離によらないので、傾きには入らない。
木下の勉強ステータス
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