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半古典運動と Peierls 置換は空間断熱摂動論

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第12章 固体編:一電子(周期作用素とバンド)
目次
  1. 何を主張したいか
  2. 空間断熱:遅いのは時間でなく場所
  3. Bloch 振動:厳密に解ける場合
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第12章 §12.5 ★★★ εn(k)\varepsilon _n(\bm{k}) を Hamiltonian とする半古典運動は、第7章の断熱定理を空間の向きへ移した定理で、ギャップで孤立したバンドについて証明されている

何を主張したいか

固体の輸送の理論は、電場 E\bm{E}・磁場 B\bm{B} の中の電子を、バンドの分散を古典的な Hamiltonian とする運動

ℏk˙=−e(E+r˙×B),r˙=1ℏ∇kεn(k)−k˙×Ωn(k)(12.15)\hbar\dot{\bm{k}}=-e\bigl(\bm{E}+\dot{\bm{r}}\times\bm{B}\bigr),\qquad \dot{\bm{r}}=\frac1\hbar\nabla_{\bm{k}}\varepsilon _n(\bm{k})-\dot{\bm{k}}\times\bm{\Omega}_n(\bm{k})\tag{12.15}

で記述する。量子の側でこれに対応するのが Peierls 置換で、ベクトルポテンシャル A\bm{A} とスカラーポテンシャル ϕ\phi のある問題の Hamiltonian を

Heff=εn(p+eA(r)ℏ)−eϕ(r)(12.16)H_{\mathrm{eff}}=\varepsilon _n\Bigl(\frac{\bm{p}+e\bm{A}(\bm{r})}{\hbar}\Bigr)-e\phi(\bm{r})\tag{12.16}

(εn(k)\varepsilon _n(\bm{k}) の k\bm{k} に運動学的な波数を代入したもの)で置き換える(R. Peierls (1933), Z. Phys. 80, 763)。(12.15) の Berry 曲率 Ωn\bm{\Omega}_n の項はこの最低次には入っていない1次の補正である。この節の問いは、(12.1) に外場を足した元の問題から、これらがどういう極限で、どの前提で出てくるかである。

空間断熱:遅いのは時間でなく場所

第7章の断熱定理では、Hamiltonian が遅い時間 s=ηts=\eta t の関数で、ギャップ g>0g>0 があれば状態は瞬間的な固有空間に O(η)\mathcal{O}(\eta) の誤差で追随した(近似の数理 第7章)。ここでは外場が場所についてゆっくり変わる:A(ηr)\bm{A}(\eta\bm{r})、ϕ(ηr)\phi(\eta\bm{r})、η=a/ℓ≪1\eta=a/\ell\ll1。格子の尺度で見ると電子は各点で「一様な結晶の中にいて、波数 k\bm{k} の状態にある」とみなせ、遅い変数 (r,k)(\bm{r},\bm{k}) に依存する Hamiltonian H(k)H(\bm{k}) のファイバーの固有空間(バンド nn)が、断熱定理の「瞬間的な固有空間」の役をする。速い自由度は単位胞の中の運動で、遅い自由度は包絡線の位置と波数である。

この見方を作用素の定理に仕上げたのが空間断熱摂動論である(G. Panati, H. Spohn and S. Teufel (2003), Commun. Math. Phys. 242, 547)。主張の形は次のとおりである。

定理 12.6(空間断熱摂動論(主張のみ)★★★)

注目するバンド(またはバンドの族)の固有値の集合が、すべての k\bm{k} で残りのスペクトルからギャップで隔たっているとする。このとき、外場がゆっくり変わる問題について、

  1. 元の Hilbert 空間の中に、η\eta のすべての次数まで時間発展で不変な部分空間(ほぼ不変な部分空間)が存在し、バンドの Bloch 関数の張る空間からの違いは O(η)\mathcal{O}(\eta) である。
  2. その部分空間の上の時間発展は、有効 Hamiltonian h=h0+ηh1+η2h2+⋯h=h_0+\eta h_1+\eta^2h_2+\cdots で生成される。h0h_0 は Peierls 置換 (12.16) の記号で、h1h_1 には Berry 接続と磁気モーメントの項が入る。
  3. h0+ηh1h_0+\eta h_1 から作った古典の運動方程式は、Berry 曲率の項を含む (12.15) であり、巨視的な時間(格子の時間尺度の η−1\eta^{-1} 倍)にわたって量子の時間発展を近似する。

誤差の次数の正確な形と、磁場が強い場合(B\bm{B} を η\eta 倍しない場合)の扱いは原論文によるので、ここでは主張の骨格だけを書いた。物理の直観との対応ははっきりしている。「バンドの中を走る」とは、断熱定理で「固有状態に留まる」ことであり、Berry 曲率の項は第7章の Berry 位相(幾何学的な位相)の空間版である(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第11章)。半古典運動を作用角変数で量子化して de Haas–van Alphen 振動を出す話は解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第10章 にある。

前提のギャップ条件が破れる所で、近似は破れる。バンドが交差・接触する点(グラフェンの Dirac 点・Weyl 点)では瞬間的な固有空間が滑らかに追えず、電場が強いとバンドの間を飛び移る Zener 遷移が起きる。Zener 遷移の確率は、ギャップの近くで2本のバンドの2×2 の問題に帰着させると第7章の Landau–Zener の公式の形になり、目安は「1格子間隔で電場がする仕事 eEaeEa が εg2/W\varepsilon _{\mathrm g}^2/W(WW はバンド幅)より十分小さい」ことである。

Bloch 振動:厳密に解ける場合

一様な電場の中の1本の tight-binding バンドは、半古典運動と量子の運動を両方とも閉じた形で書け、比べられる。1次元の鎖H=−th∑n(∣n⟩⟨n+1∣+∣n+1⟩⟨n∣)+F∑nn∣n⟩⟨n∣H=-t_{\mathrm h}\sum_n(| n \rangle \langle n+1 |+| n+1 \rangle \langle n |)+F\sum_nn| n \rangle \langle n |(F=eEa>0F=eEa>0、電子の位置エネルギーが +x+x 向きに増える向きに電場をかける)を考える。半古典運動では ℏk˙=−F/a\hbar\dot k=-F/a なので k(t)=k0−Ft/(ℏa)k(t)=k_0-Ft/(\hbar a)、速度 x˙=1ℏ∂ε∂k=2thaℏsin⁡(ka)\dot x=\frac1\hbar\frac{\partial \varepsilon }{\partial k}=\frac{2t_{\mathrm h}a}{\hbar}\sin(ka) を積分して

x(t)=x0+2thaF[cos⁡(k(t)a)−cos⁡(k0a)](12.17)x(t)=x_0+\frac{2t_{\mathrm h}a}{F}\bigl[\cos(k(t)a)-\cos(k_0a)\bigr]\tag{12.17}

を得る。電子は電場の中で加速し続けず、周期 TB=2πℏ/FT_{\mathrm B}=2\pi\hbar/F、振れ幅(山と谷の差)4tha/F=Wa/F4t_{\mathrm h}a/F=Wa/F で往復する(Bloch 振動)。量子の側では、HH のスペクトルは間隔 FF の等間隔の準位(Wannier–Stark 準位)で、時間発展はちょうど周期 2πℏ/F2\pi\hbar/F で元に戻る。図 12.3 は、幅の広い波束の重心の量子力学の時間発展と (12.17) の比較で、2つは図の精度で重なる。この模型は1本のバンドしか持たないので Zener 遷移は起こらず、半古典運動は波束が広い極限で厳密に正しい。

図

図 12.3 一様な電場の中の tight-binding 鎖の Bloch 振動(F=0.2 thF=0.2\,t_{\mathrm h}、初期の波数 k0a=π/2k_0a=\pi/2、波束の幅 20a20a)。点線と点=量子力学の時間発展による波束の重心、実線=半古典運動 (12.17)。振れ幅は 4tha/F=20a4t_{\mathrm h}a/F=20a、周期は 2πℏ/F=31.4 ℏ/th2\pi\hbar/F=31.4\,\hbar/t_{\mathrm h}

例題 12.5 Bloch 振動はどこで見えるか ★★

オリジナル(12.17) を使って、Bloch 振動の周期と振れ幅を見積もる。h=2πℏ=4.136×10−15 eV sh=2\pi\hbar=4.136\times10^{-15}\,\mathrm{eV\,s} とする。

  1. 半導体の超格子(周期 a=10 nma=10\,\mathrm{nm}、ミニバンドの幅 W=20 meVW=20\,\mathrm{meV})に E=1×105 V m−1E=1\times10^{5}\,\mathrm{V\,m^{-1}} をかけたときの周期 TBT_{\mathrm B} と振れ幅を求めよ。
  2. 普通の結晶(a=0.5 nma=0.5\,\mathrm{nm})で、電子が散乱される平均の時間を τ=1×10−14 s\tau=1\times10^{-14}\,\mathrm s と置く。TB<τT_{\mathrm B}<\tau となる電場の大きさを求め、普通の結晶で Bloch 振動が見えない理由を述べよ。
  3. (1) の条件で、半古典運動の前提(1本のバンドに留まる)を確かめよ。超格子の第1ミニギャップは 100 meV100\,\mathrm{meV} とする。
解答

(1) eEa=105 V/m×10−8 m×e=1 meVeEa=10^5\,\mathrm{V/m}\times10^{-8}\,\mathrm m\times e=1\,\mathrm{meV} なので TB=h/(eEa)=4.136×10−15/10−3 s=4.1 psT_{\mathrm B}=h/(eEa)=4.136\times10^{-15}/10^{-3}\,\mathrm s=4.1\,\mathrm{ps}。振れ幅は Wa/(eEa)=W/(eE)=0.02 V/(105 V/m)=2×10−7 m=200 nmWa/(eEa)=W/(eE)=0.02\,\mathrm V/(10^5\,\mathrm{V/m})=2\times10^{-7}\,\mathrm m=200\,\mathrm{nm}(20周期分)である。

(2) TB=h/(eEa)<τT_{\mathrm B}=h/(eEa)<\tau より E>h/(eaτ)=4.136×10−15/(5×10−10×10−14) V/m=8.3×108 V m−1E>h/(ea\tau)=4.136\times10^{-15}/(5\times10^{-10}\times10^{-14})\,\mathrm{V/m}=8.3\times10^{8}\,\mathrm{V\,m^{-1}}。これは多くの物質の絶縁破壊を超える大きさで、その前に電子は散乱されて位相を失う。周期 aa を大きくした超格子では必要な電場が aa に反比例して下がるので観測でき、超格子の光学的な測定で Bloch 振動が見つかった(J. Feldmann et al. (1992), Phys. Rev. B 46, 7252)。

(3) 1周期で電場がする仕事 eEa=1 meVeEa=1\,\mathrm{meV} は、目安 εg2/W=(100)2/20 meV=500 meV\varepsilon _{\mathrm g}^2/W=(100)^2/20\,\mathrm{meV}=500\,\mathrm{meV} より十分小さく、ギャップ 100 meV100\,\mathrm{meV} よりも小さい。Zener 遷移は無視でき、1本のミニバンドに留まる前提は満たされる(検算スクリプト)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの η=a/ℓ→0\eta=a/\ell\to0(外場の変わる長さに比べて格子定数が小さい。一様な電場なら eEa/εgeEa/\varepsilon _{\mathrm g} が小さい) | 証明 条件付き(注目するバンドの族がギャップで孤立していること。Peierls 置換を主要項、Berry 曲率を1次の補正とする有効 Hamiltonian は Panati–Spohn–Teufel 2003。ギャップが閉じる所では破れる) | 行き先 近似の数理 第7章

木下の勉強ステータス

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