この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
近似の数理 第12章 §12.7 ★★★ 一電子のバンドの近似5つを、型・小さいもの・証明の状況で並べる
この章では、周期ポテンシャルの中の1電子の作用素 (12.1) を出発点に、固体の教科書が使う5つの近似を第V巻の言葉で読み直した。バンドそのものは近似でなく、Floquet–Bloch 分解(定理 12.2)で作用素を各 の単位胞の問題に分けた結果であり、スペクトルはバンドの和集合で絶対連続である。周期境界条件で状態を数える手続きも、バルクの量に関しては極限で厳密である。
近似の側は、2つの反対の極限と、その間をつなぐ2つのゆっくりした極限、そして基底の選び方の問題に整理される。tight-binding(12.2 節)は井戸が深い極限で、局在軌道への射影という A 型の手続きの誤差が Agmon 距離 を使って の大きさで制御される。ほぼ自由な電子(12.3 節)はポテンシャルが弱い極限で、各 では正則摂動、ゾーン境界では2×2 の縮退摂動になり、ギャップは で開く。有効質量近似(12.4 節)は第9章の均質化そのもので、基底状態変換によりポテンシャルを係数 の発散形の作用素に移すと、1次元の最低バンドの有効質量は という調和平均の公式で厳密に書ける。半古典運動と Peierls 置換(12.5 節)は第7章の断熱定理を空間の向きに移した空間断熱摂動論で、ギャップで孤立したバンドについて証明されている。Wannier 表示(12.6 節)は孤立したバンドの固有空間への厳密な射影で、それを指数的に局在した基底で書けるかどうかは Chern 数で決まる。
表 12.1 に5つを並べる。第11章の表(原子・分子・流体の近似)と比べると、固体の一電子の近似は B 型が多く、しかもほとんどの定理が「ギャップがあること」を前提にしている。tight-binding の深い井戸の極限、半古典運動、有効質量、Wannier の局在のどれも、ギャップが閉じる所(金属の Fermi 面・Dirac 点・トポロジカルな相転移)で前提を失う。第13章で扱う多体の近似(平均場・Fermi 液体・BCS)でも、ギャップの有無が正当化の分かれ目になる。
| 近似 | 型 | 小さいもの・部分空間 | 証明の状況 |
| バンド(Floquet–Bloch) | 厳密 | — | 証明済み(スペクトルはバンドの和集合・絶対連続) |
| tight-binding | A+B | 局在軌道/ | 幅の対数は証明済み(Simon 1984) |
| ほぼ自由な電子 | B | 証明済み(解析的摂動+縮退摂動) | |
| 有効質量 | B | 条件付き(単純・非退化な極値) | |
| 半古典運動・Peierls 置換 | B | 条件付き(孤立したバンド。PST 2003) | |
| Wannier 基底 | A | バンドの固有空間 | 証明済み(局在 Chern 数 ) |
授業で習った形との対応
学部の固体物理の授業では、この章の内容は次の形で出てくる。並べると、授業の式はこの章の定理の「結論の部分」だけを書いたものになっている。
Bloch の定理は と書かれ、並進と の同時固有関数として導かれる。この章ではそれを Floquet–Bloch 変換(12.2) のユニタリ性と、ファイバー のコンパクトなレゾルベント(定理 12.2)として書いた。授業の書き方では、 が に入らないことと、それでもスペクトルを作ること(定理 12.3)が表に出てこない。
Kronig–Penney 模型は の形で習う( はポテンシャルの強さ)。これは判別式 (12.4) の特別な場合で、この章の (12.5) では に当たる。
ほぼ自由な電子のギャップは と習う。この章の (12.11) はそれに の誤差を付け、2次の補正がギャップに残らない場合(例題 12.3)まで含めた。tight-binding は と習い、 は重なり積分として与えられる。この章の定理 12.4 は、 の大きさが であることを言い、重なり積分の値を原子軌道で計算すると指数を誤ること(例題 12.2)を示した。
有効質量は と定義され、 摂動で と計算される。この章の (12.13) は、最低バンドの底でこの和を1つの平均 に畳んだ形で、例題 12.4 で両者が一致することを確かめた。半古典運動 、 は授業では仮定として置かれる。この章では、それが孤立したバンドについての空間断熱摂動論の主要項で、Berry 曲率の項が1次の補正として加わること(定理 12.6)を見た。
総合問題 関数の列で、弱い極限から強い極限まで ★★★
オリジナル1次元の (、長さを格子定数で、エネルギーを で測る)について、この章の道具をすべて同じ模型に当てる。 とする。
- (1) 区間 の解を と書き、 で が連続で が だけ跳ぶことと Bloch の条件 から、判別式 を導け。(使う道具:12.1 節の monodromy 行列)
- (2) が小さいとき、 の第1ギャップの幅を の2次まで求め、1次の項が (12.11) の と一致することを確かめよ。(使う道具:12.3 節・近似の数理 第7章の正則摂動)
- (3) 第1バンドの底の有効質量を、判別式の での微分を使う方法と、定理 12.5 の調和平均の公式(周期解 、例題 12.1)の2通りで の式に表し、 で数値を比べよ。(使う道具:12.4 節・近似の数理 第9章の調和平均)
- (4) が大きいとき、第1バンドの幅が に近づくことを示し、バンドの形が に近づくことを判別式から説明せよ。 が の冪で小さく、12.2 節のような指数関数にならない理由を述べよ。(使う道具:12.2 節・近似の数理 第4章の Galerkin 法)
- (5) の第1バンド(数値の幅 )に、1格子あたり の位置エネルギーの傾きを与える一様な電場をかける。Bloch 振動の振れ幅と周期を求め、第1ギャップ()と比べて1本のバンドに留まる前提を確かめよ。(使う道具:12.5 節)
解答
(1) 区間の端で 、 である。 を越えると だけが 跳ぶので、 を1周期送る行列は
Bloch の条件は 、すなわち が の固有値であることで、固有値の和 から を得る。
(2) では 、 なので、 はいつでもギャップの端(第1バンドの上端)である。もう一方の端を と置くと、、、 で、 の条件は。 で割って 、よって である。ギャップは
()なので で、1次の項 は と一致する。数値では でギャップ 、 で、差は の程度である(検算スクリプト)。
(3) 判別式の方法: とおくと、底 で 。その近くで 、 なので 、すなわち である()。調和平均の方法: について
(最後は例題 12.1 の )なので 。 では ()で、2つの方法はともに を与える(検算で まで一致)。有効質量は自由電子の約 倍で、定理 12.5 の のとおりである。2つの方法が一致するのは、どちらも同じ最低固有値 の の係数を、一方は monodromy 行列の固有値の条件から、他方は均質化のセル問題から読んでいるからである。
(4) 第1バンドの上端は 、下端は例題 12.1 のとおり の解である。 で なので と置くと、。よって で、幅は である。数値では で ()、 で ()と、比は で に近づく。バンドの形:幅が狭いと、バンドの中で は の1次関数で近似でき、 を解くと、すなわち の形(、)になる。これは、各箱( 関数の間)の基底状態 を軌道とし、隣どうしだけを結ぶ Galerkin 近似(第4章)の形である。 が冪で小さいのは、 関数の障壁の幅が だからである。トンネル振幅は障壁の透過振幅 に比例し、禁止領域の Agmon 距離が なので 12.2 節の は現れない。小さいパラメータは でなく である。
(5) なので 。振れ幅は (12.17) から 格子定数、周期は で、エネルギーを で測った単位では (時間の単位は )である。1格子あたりの仕事 は第1ギャップ より3桁小さく、目安 と比べても十分小さいので、Zener 遷移は無視でき、1本のバンドに留まる前提が成り立つ。振れ幅がバンド幅に比例するのは、(4) で見たようにバンドが狭いほど電子の速さ の最大値が小さいからで、深い井戸の極限ほど電子は電場の中で動きにくい。
木下の勉強ステータス
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AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com
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