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当てる D の性質:凸性と Pythagoras の分解

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第2章 Gibbs の変分原理
目次
  1. 凸性
  2. Pythagoras の分解
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第2部 第2章 §2.2.2 ★★★ Gibbs 分布の族に対して相対エントロピーは直角三角形のように分かれ、自由エネルギーの余りが「同じエネルギーでの最大エントロピーからの不足」と「温度の違い」の和になる

凸性

序章では非負性とデータ処理不等式を使った。この章ではもう1つ、凸性を使う。

命題 2.2.2(F[p]F[p] の凸性 ★★)

0<λ<10<\lambda<1 と2つの分布 p1≠p2p_1\ne p_2 について

F[λp1+(1−λ)p2]<λF[p1]+(1−λ)F[p2].F[\lambda p_1+(1-\lambda)p_2]<\lambda F[p_1]+(1-\lambda)F[p_2].

証明

平均エネルギー ⟨E⟩p\langle E \rangle _p は pp について1次なので、左右で等しい。残りは −H(p)-H(p) が狭義に凸であることで、関数 xln⁡xx\ln x が x>0x>0 で2階導関数 1/x>01/x>0 を持つことから、各成分ごとに狭義の凸不等式が成り立つ。p1≠p2p_1\ne p_2 なら少なくとも1つの成分で狭義の不等号になる。

凸関数の極小は最小で、狭義の凸関数の最小を与える点はただ1つである。したがって F[p]F[p] を下げる方向に分布を少しずつ動かす計算は、途中で別の極小に止まることがない。2.2.4節で試す分布の族を狭めると、この性質は失われる。族が凸集合でないと、FF を族の上に制限した関数に極小が複数現れうるからである。命題を言い換えると、2つの分布を混ぜると自由エネルギーは平均より下がる。下がる分は kBTk_{\mathrm B} T と混合のエントロピー H(λp1+(1−λ)p2)−λH(p1)−(1−λ)H(p2)H(\lambda p_1+(1-\lambda)p_2)-\lambda H(p_1)-(1-\lambda)H(p_2) の積で、混合のエントロピーは λ=1/2\lambda=1/2 のとき ln⁡2\ln2 を超えない。

Pythagoras の分解

温度 TT の Gibbs 分布を pβp_\beta と書き、β\beta を動かした族 {pβ}\{p_\beta\} を考える。任意の分布 pp の平均エネルギーを Up=⟨E⟩pU_p=\langle E \rangle _p とし、同じ平均エネルギーを持つ Gibbs 分布を pβ∗p_{\beta^*} とする。pβp_\beta の平均エネルギー U(β)=−∂βln⁡ZU(\beta)=-\partial_\beta\ln Z は β\beta について狭義に減少する(2.2.5節で示すように ∂βU=−Varβ(E)<0\partial_\beta U=-\mathrm{Var}_\beta(E)<0)ので、UpU_p が最小と最大のエネルギーの間にあれば β∗\beta^* はただ1つ決まる。β∗\beta^* は負でもよい。上の準位ほど多く占める分布は、負の温度の Gibbs 分布と同じ平均エネルギーを持つ。

定理 2.2.3(Pythagoras の分解 ★★★)

⟨E⟩p=⟨E⟩pβ∗\langle E \rangle _p=\langle E \rangle _{p_{\beta^*}} なら、すべての β\beta について

D(p ∥ pβ)=D(p ∥ pβ∗)+D(pβ∗ ∥ pβ),(2.2.7)D(p\,\|\,p_\beta)=D(p\,\|\,p_{\beta^*})+D(p_{\beta^*}\,\|\,p_\beta),\tag{2.2.7}

さらに

D(p ∥ pβ∗)=H(pβ∗)−H(p)(2.2.8)D(p\,\|\,p_{\beta^*})=H(p_{\beta^*})-H(p)\tag{2.2.8}

が成り立つ。

証明

ln⁡pβ∗(i)pβ(i)=−(β∗−β)Ei−ln⁡Z(β∗)+ln⁡Z(β)\ln\frac{p_{\beta^*}(i)}{p_\beta(i)}=-(\beta^*-\beta)E_i-\ln Z(\beta^*)+\ln Z(\beta) は EiE_i の1次式なので、pp で平均しても pβ∗p_{\beta^*} で平均しても同じ値になる。よって

D(p ∥ pβ)−D(p ∥ pβ∗)=∑ip(i)ln⁡pβ∗(i)pβ(i)=∑ipβ∗(i)ln⁡pβ∗(i)pβ(i)=D(pβ∗ ∥ pβ).D(p\,\|\,p_\beta)-D(p\,\|\,p_{\beta^*})=\sum_ip(i)\ln\frac{p_{\beta^*}(i)}{p_\beta(i)}=\sum_ip_{\beta^*}(i)\ln\frac{p_{\beta^*}(i)}{p_\beta(i)}=D(p_{\beta^*}\,\|\,p_\beta).

式 (2.2.8) も同じ理由で、ln⁡pβ∗(i)=−β∗Ei−ln⁡Z(β∗)\ln p_{\beta^*}(i)=-\beta^*E_i-\ln Z(\beta^*) が EiE_i の1次式なので −∑ip(i)ln⁡pβ∗(i)=−∑ipβ∗(i)ln⁡pβ∗(i)=H(pβ∗)-\sum_ip(i)\ln p_{\beta^*}(i)=-\sum_ip_{\beta^*}(i)\ln p_{\beta^*}(i)=H(p_{\beta^*}) となり、D(p ∥ pβ∗)=−H(p)+H(pβ∗)D(p\,\|\,p_{\beta^*})=-H(p)+H(p_{\beta^*}) を得る。

式 (2.2.8) と非負性から H(p)≤H(pβ∗)H(p)\le H(p_{\beta^*}) がすべての pp について成り立つ。これは平均エネルギーを決めたときエントロピーが Gibbs 分布で最大になる、という前の章の最大エントロピー原理そのものである。式 (2.2.7) に kBTk_{\mathrm B} T を掛け、式 (2.2.3) と組み合わせると

F[p]−Feq=T[kBH(pβ∗)−kBH(p)]⏟同じ平均エネルギーでのエントロピーの不足+kBT D(pβ∗ ∥ pβ)⏟温度の違い(2.2.9)F[p]-F_{\mathrm{eq}}=\underbrace{T\bigl[ k_{\mathrm B} H(p_{\beta^*})- k_{\mathrm B} H(p)\bigr]}_{\text{同じ平均エネルギーでのエントロピーの不足}}+\underbrace{ k_{\mathrm B} T\,D(p_{\beta^*}\,\|\,p_\beta)}_{\text{温度の違い}}\tag{2.2.9}

となる。第1項は、平均エネルギーを変えずにエントロピーを最大にすれば消える部分で、前の章の最大エントロピー原理が扱った部分である。第2項は、温度 T∗=1/(kBβ∗)T^*=1/( k_{\mathrm B}\beta^*) の平衡状態が温度 TT の熱浴と接したときの余りで、熱のやりとりで消える部分である。最大エントロピー原理と自由エネルギー最小の原理は、1つの恒等式 (2.2.7) の2つの項として並ぶ。

図

図 2.2.1 Pythagoras の分解 (2.2.7) の模式図。平均エネルギーが UpU_p に等しい分布の集合(縦の線)と Gibbs 分布の族(曲線)は pβ∗p_{\beta^*} で交わり、相対エントロピーについて「直交」している。距離ではなく相対エントロピーの和として成り立つ関係で、図の長さは目安である。

この「直交」は Euclid 空間の直交とは意味が違う。相対エントロピーは距離ではなく、2乗した距離に近い量(D(pθ ∥ pθ+δ)≈12J(θ)δ2D(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta})\approx\frac12J(\theta)\delta^2)なので、2乗の距離が足し算になる関係が直角三角形にあたる。式 (2.2.7) が近似でなく等式で成り立つのは、Gibbs 分布の対数がエネルギーの1次式であることによる。この性質を持つ分布の族を指数型分布族と呼び、統計学の最尤推定でも同じ分解が成り立つ(第1部第4章)。

例題 2.2.2 3準位系で分解を確かめる ★★

オリジナルエネルギー 0,ε,2ε0,\varepsilon ,2\varepsilon の3準位系が、βε=ln⁡2\beta\varepsilon =\ln2 の熱浴と接している。系の分布が p=(1/2,0,1/2)p=(1/2,0,1/2) のとき、次を求めよ。

  1. (1) 熱浴の Gibbs 分布 pβp_\beta と、pp と同じ平均エネルギーを持つ Gibbs 分布 pβ∗p_{\beta^*}。
  2. (2) 式 (2.2.7) の3つの相対エントロピーを求め、等式を確かめよ。F[p]−FeqF[p]-F_{\mathrm{eq}} のうち温度の違いの分は何割か。
解答

(1) e−βε=1/2\mathrm{e}^{-\beta\varepsilon }=1/2 なので pβ∝(1,12,14)p_\beta\propto(1,\frac12,\frac14)、すなわち pβ=(4,2,1)/7p_\beta=(4,2,1)/7。pp の平均エネルギーは 12⋅0+12⋅2ε=ε\frac12\cdot0+\frac12\cdot2\varepsilon =\varepsilon である。x=e−β∗εx=\mathrm{e}^{-\beta^*\varepsilon } とおくと Gibbs 分布の平均エネルギーは ε(x+2x2)/(1+x+x2)\varepsilon (x+2x^2)/(1+x+x^2) で、これを ε\varepsilon とおくと x+2x2=1+x+x2x+2x^2=1+x+x^2、すなわち x2=1x^2=1。x>0x>0 から x=1x=1、β∗=0\beta^*=0 で、pβ∗=(1/3,1/3,1/3)p_{\beta^*}=(1/3,1/3,1/3) は一様分布である。無限に高い温度の Gibbs 分布が、pp と同じ平均エネルギーを持つ。

(2) D(p ∥ pβ∗)=ln⁡3−H(p)=ln⁡3−ln⁡2=ln⁡32≈0.405D(p\,\|\,p_{\beta^*})=\ln3-H(p)=\ln3-\ln2=\ln\frac32\approx0.405。D(pβ∗ ∥ pβ)=13(ln⁡1/34/7+ln⁡1/32/7+ln⁡1/31/7)=ln⁡73−13ln⁡8=ln⁡76≈0.154D(p_{\beta^*}\,\|\,p_\beta)=\frac13\bigl(\ln\frac{1/3}{4/7}+\ln\frac{1/3}{2/7}+\ln\frac{1/3}{1/7}\bigr)=\ln\frac73-\frac13\ln8=\ln\frac76\approx0.154。D(p ∥ pβ)=12ln⁡1/24/7+12ln⁡1/21/7=12ln⁡4916=ln⁡74≈0.560D(p\,\|\,p_\beta)=\frac12\ln\frac{1/2}{4/7}+\frac12\ln\frac{1/2}{1/7}=\frac12\ln\frac{49}{16}=\ln\frac74\approx0.560。ln⁡32+ln⁡76=ln⁡2112=ln⁡74\ln\frac32+\ln\frac76=\ln\frac{21}{12}=\ln\frac74 で等式が成り立つ。温度の違いの分は 0.154/0.560≈0.280.154/0.560\approx0.28、すなわち約3割で、残りの約7割は同じ平均エネルギーでのエントロピーの不足である。pp は真ん中の準位を空にしているので、平均エネルギーを保ったまま真ん中の準位へ確率を移すだけで、余りの約7割は消える。

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