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当てる DD の性質:測定で DD は増えない

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第7章 Holevo 限界と量子通信路容量
目次
  1. Holevo 限界
  2. 2つの純粋状態の測定
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第7章 §3.7.2 ★★★ 測定は量子チャネルなので、量子データ処理不等式から I(X;Y)≤χI(X;Y)\le\chi。等号は状態が交換するときに限る

Holevo 限界

Holevo 限界そのものは第3部第3章(第3部第3章)で、量子データ処理不等式の帰結として証明した。ここではこの章の言葉で骨格だけを確かめる。POVM {E^y}\{\hat E_y\} による測定は、結果を正規直交基底 {∣y⟩}\{| y \rangle \} の古典の記録に書き込む量子チャネル

M(ρ^)≔∑yTr⁡(E^yρ^) ∣y⟩⟨y∣(3.7.5)\mathcal M(\hat\rho)\coloneqq\sum_y\operatorname{Tr}(\hat E_y\hat\rho)\,| y \rangle \langle y |\tag{3.7.5}

とみなせる。cq 状態とその積状態の BB の部分にだけ M\mathcal M を当てると、どちらも対角になり、前者は結合分布 pxW(y ∣ x)p_xW(y\,|\,x)、後者は周辺の積 pxqyp_xq_y(qy=Tr⁡(E^yρˉ)q_y=\operatorname{Tr}(\hat E_y\bar\rho))を表す。その DD は古典の D(pXY ∥ pXqY)=I(X;Y)D(p_{XY}\,\|\,p_Xq_Y)=I(X;Y) で、チャネルを通すと DD は増えないので、命題 3.7.2 の χ\chi を超えない。

定理 3.7.3(Holevo 限界 ★★★)

アンサンブル {px,ρ^x}\{p_x,\hat\rho_x\} をどの POVM で測っても

I(X;Y) ≤ χ({px,ρ^x})=S(ρˉ)−∑xpxS(ρ^x).(3.7.6)I(X;Y)\ \le\ \chi(\{p_x,\hat\rho_x\})=S(\bar\rho)-\sum_xp_xS(\hat\rho_x).\tag{3.7.6}

したがって Iacc≤χI_{\mathrm{acc}}\le\chi。ρ^x\hat\rho_x がすべて互いに交換するなら、共通の固有基底での射影測定で等号が成り立つ。

等号の部分の証明

不等式は第3部第3章の定理である。ρ^x\hat\rho_x が交換するときは、共通の固有基底 {∣k⟩}\{| k \rangle \} で ρ^x=∑kλx(k)∣k⟩⟨k∣\hat\rho_x=\sum_k\lambda_x(k)| k \rangle \langle k | と書ける。この基底で測ると W(k ∣ x)=λx(k)W(k\,|\,x)=\lambda_x(k) なのでI(X;Y)=H(∑xpxλx)−∑xpxH(λx)=S(ρˉ)−∑xpxS(ρ^x)=χI(X;Y)=H\bigl(\sum_xp_x\lambda_x\bigr)-\sum_xp_xH(\lambda_x)=S(\bar\rho)-\sum_xp_xS(\hat\rho_x)=\chi。

逆に、等号 Iacc=χI_{\mathrm{acc}}=\chi が成り立つのは(px>0p_x>0 の)ρ^x\hat\rho_x がすべて交換するときに限ることも、Holevo の原論文で示されている1A. S. Holevo (1973), Problemy Peredachi Informatsii 9(3), 3–11。下の脚注へ。互いに交換しない状態を混ぜると、どの測定を選んでも、状態の間の「区別できなさ」の一部が測定の結果に移らずに失われる。

この定理の読み方を1つ書いておく。χ=∑xpxD(ρ^x ∥ ρˉ)\chi=\sum_xp_xD(\hat\rho_x\,\|\,\bar\rho) は「文字ごとの状態が平均の状態からどれだけ離れているか」の平均で、I(X;Y)=∑xpxD(Wx ∥ q)I(X;Y)=\sum_xp_xD(W_x\,\|\,q)は同じことを測定の結果の分布で測ったものである。測定は2つの状態の DD を減らすので、測定の前に状態の段階で測った距離が上限になる。古典の第1部第4章のデータ処理不等式 I(X;Z)≤I(X;Y)I(X;Z)\le I(X;Y) で、YY を量子系 BB に、ZZ を測定の結果に置き換えた形である。

2つの純粋状態の測定

2つの純粋状態 ∣ψ0⟩| \psi_0 \rangle、∣ψ1⟩| \psi_1 \rangle を確率 1/21/2 ずつで送る場合を、重なり c=∣⟨ψ0∣ψ1⟩∣c=\lvert \langle \psi_0 | \psi_1 \rangle \rvert の関数として調べる。位相を選び、2つの状態の張る2次元の空間で ∣ψ0,1⟩=cos⁡φ∣0⟩±sin⁡φ∣1⟩| \psi_{0,1} \rangle =\cos\varphi| 0 \rangle \pm\sin\varphi| 1 \rangle(c=cos⁡2φc=\cos2\varphi、0≤φ≤π/40\le\varphi\le\pi/4)と置ける。ρˉ=cos⁡2 ⁣φ∣0⟩⟨0∣+sin⁡2 ⁣φ∣1⟩⟨1∣\bar\rho=\cos^2\!\varphi| 0 \rangle \langle 0 |+\sin^2\!\varphi| 1 \rangle \langle 1 | なので

χ=hb(1+c2)(3.7.7)\chi=h_{\mathrm b}\Bigl(\frac{1+c}{2}\Bigr)\tag{3.7.7}

である。測定として、2つの状態の真ん中の軸に対して対称な基底 ∣±⟩=(∣0⟩±∣1⟩)/2| \pm \rangle =(| 0 \rangle \pm| 1 \rangle )/\sqrt2 の射影測定を選ぶ。∣ψ0⟩| \psi_0 \rangle を送って ++ が出る確率は∣⟨+∣ψ0⟩∣2=(cos⁡φ+sin⁡φ)2/2=(1+sin⁡2φ)/2\lvert \langle + | \psi_0 \rangle \rvert ^2=(\cos\varphi+\sin\varphi)^2/2=(1+\sin2\varphi)/2 で、誤る確率は

Perr=1−1−c22(3.7.8)P_{\mathrm{err}}=\frac{1-\sqrt{1-c^2}}{2}\tag{3.7.8}

である。この値は2つの状態を1回の測定で見分ける誤り確率の最小値(Helstrom の限界)で、その証明は第3部第8章(第3部第8章)で扱う。この測定は文字 xx を誤り確率 PerrP_{\mathrm{err}} の2元対称通信路に変えるので、第1部第6章の BSC の式から

I(X;Y)=ln⁡2−hb(Perr)(3.7.9)I(X;Y)=\ln2-h_{\mathrm b}(P_{\mathrm{err}})\tag{3.7.9}

を得る。図 3.7.1 に χ\chi と式 (3.7.9) を比べる。c=0c=0(直交)では両方 ln⁡2\ln2、c→1c\to1 では両方 00 で、その間ではいつも χ\chi の方が大きい。1つずつ測るかぎり、2状態の対称な測定の値 (3.7.9) を超える測定は、数値で POVM を最適化しても見つからない(verify_ch3-07.py で結果が4つまでの POVM を調べた)。χ\chi まで達するには、次の3.7.4節で見るように、多数の信号をまとめて測る必要がある。

図

図 3.7.1 2つの純粋状態を確率 1/21/2 ずつで送るとき、Holevo 量(上の点線)と、対称な射影測定で1つずつ測ったときの相互情報量(下の点線)。どちらも厳密な式なので点線で描いた

例題 3.7.2 3つの対称な状態(トライン)★★★

オリジナルBloch 球の xzxz 平面の上で 120∘120^\circ ずつ離れた3つの純粋状態 ∣ψk⟩=cos⁡(θk/2)∣0⟩+sin⁡(θk/2)∣1⟩| \psi_k \rangle =\cos(\theta_k/2)| 0 \rangle +\sin(\theta_k/2)| 1 \rangle(θk=2πk/3\theta_k=2\pi k/3、k=0,1,2k=0,1,2)を確率 1/31/3 ずつで送る。

  1. ∣⟨ψj∣ψk⟩∣2\lvert \langle \psi_j | \psi_k \rangle \rvert ^2(j≠kj\ne k)と ρˉ\bar\rho を求め、Holevo 量 χ\chi を求めよ。
  2. 各状態に Bloch 球で反対向きの状態 ∣ψk⊥⟩| \psi_k^\perp \rangle を取り、E^k=23∣ψk⊥⟩⟨ψk⊥∣\hat E_k=\frac23| \psi_k^\perp \rangle \langle \psi_k^\perp | とする。これが POVM であることを示し、I(X;Y)I(X;Y) を求めよ。
  3. E^k′=23∣ψk⟩⟨ψk∣\hat E_k'=\frac23| \psi_k \rangle \langle \psi_k | による測定(送った状態をそのまま当てにいく測定)の I(X;Y)I(X;Y) と、正しく当たる確率を求め、(2) と比べよ。
解答

(1) Bloch ベクトルのなす角が 120∘120^\circ なので ∣⟨ψj∣ψk⟩∣2=(1+cos⁡120∘)/2=1/4\lvert \langle \psi_j | \psi_k \rangle \rvert ^2=(1+\cos120^\circ)/2=1/4。3つの Bloch ベクトルの和は 00 なので ρˉ=1/2\bar\rho=\mathbf 1/2。純粋状態なので χ=S(1/2)=ln⁡2=0.6931\chi=S(\mathbf 1/2)=\ln2=0.6931 nat(11 ビット)。

(2) ∣ψk⊥⟩⟨ψk⊥∣=12(1−nk⋅σ)| \psi_k^\perp \rangle \langle \psi_k^\perp |=\frac12(\mathbf 1-\bm{n}_k\cdot\bm{\sigma})(nk\bm{n}_k は ∣ψk⟩| \psi_k \rangle の Bloch ベクトル、σ=(X,Y,Z)\bm{\sigma}=(X,Y,Z))で、∑knk=0\sum_k\bm{n}_k=0 から∑kE^k=23⋅321=1\sum_k\hat E_k=\frac23\cdot\frac32\mathbf 1=\mathbf 1。各 E^k≥0\hat E_k\ge0 なので POVM である。∣ψx⟩| \psi_x \rangle を送ったとき結果 kk の確率は23∣⟨ψk⊥∣ψx⟩∣2=23⋅1−nk⋅nx2\frac23\lvert \langle \psi_k^\perp | \psi_x \rangle \rvert ^2=\frac23\cdot\frac{1-\bm{n}_k\cdot\bm{n}_x}{2} で、k=xk=x なら 00、k≠xk\ne x なら 23⋅34=12\frac23\cdot\frac34=\frac12。結果は「送られていない状態を1つ言い当てる」もので、出力の分布は一様だから H(Y)=ln⁡3H(Y)=\ln3、H(Y ∣ X)=ln⁡2H(Y\,|\,X)=\ln2。I(X;Y)=ln⁡3−ln⁡2=ln⁡(3/2)=0.4055I(X;Y)=\ln3-\ln2=\ln(3/2)=0.4055 nat(0.5850.585 ビット)。

(3) 23∣⟨ψk∣ψx⟩∣2\frac23\lvert \langle \psi_k | \psi_x \rangle \rvert ^2 は k=xk=x で 2/32/3、k≠xk\ne x で 23⋅14=16\frac23\cdot\frac14=\frac16。正しく当たる確率は 2/32/3 で、(2) の測定(当たる確率 00)より見分ける力は上である。しかし I(X;Y)=ln⁡3−H(2/3,1/6,1/6)=1.0986−0.8676=0.2310I(X;Y)=\ln3-H(2/3,1/6,1/6)=1.0986-0.8676=0.2310 nat で、(2) より小さい。相互情報量を最大にする測定と、当たる確率を最大にする測定は一般に違う。数値で POVM を最適化すると (2) の値 ln⁡(3/2)\ln(3/2) を超えるものは見つからず、Iacc=0.4055<χ=0.6931I_{\mathrm{acc}}=0.4055<\chi=0.6931 nat である(3つの状態は交換しないので、定理 3.7.3 の後の注意どおり等号は成り立たない)。

図

図 3.7.2 トラインの3状態(青の矢印)と、Bloch 球で反対を向く状態(赤の破線)。赤の3つに 2/32/3 を掛けた射影子が、相互情報量を最大にする POVM(例題 3.7.2 (2))になる

1 A. S. Holevo (1973), Problemy Peredachi Informatsii 9(3), 3–11。

木下の勉強ステータス

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