相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第7章 §3.7.6 ★★ 情報理論の授業の C=maxI(X;Y)、量子情報の講義の底2の Holevo 限界、量子力学の「直交しない状態は区別できない」を、この章の式と並べる
情報理論の授業の通信路容量
情報理論の授業では、通信路容量を
C=p(x)maxI(X;Y),I(X;Y)=H(Y)−H(Y∣X)
と書き、2元対称通信路で C=1−h(ε) ビット(h は底2の2値エントロピー)を導く。この章の Holevo 量は同じ形をしている。
| 古典の通信路 | 量子チャネル |
| 文字ごとの出力 | 分布 Wx | 状態 N(ρ^x) |
| 出力の平均 | q=pW | τˉ=∑xpxN(ρ^x) |
| 情報量 | I=H(q)−∑xpxH(Wx) | χ=S(τˉ)−∑xpxS(N(ρ^x)) |
| D で書くと | ∑xpxD(Wx∥q) | ∑xpxD(N(ρ^x)∥τˉ) |
| 容量 | maxpI | maxχ(積の入力) |
授業の H(Y)−H(Y∣X) は「出力の驚き」から「入力を知っても残る雑音の驚き」を引いたもので、Holevo 量は出力の状態のエントロピーから、文字を知っても残る状態のエントロピーを引いたものである。古典の通信路は、状態がすべて同じ基底で対角な(交換する)特別な場合で、そのとき χ=I になる。
量子情報の講義の Holevo 限界
量子情報の講義では、Holevo 限界を底2の対数で
H(X:Y) ≤ S(ρ)−x∑pxS(ρx)(ビット),ρ=x∑pxρx
と書き、証明に強劣加法性を使うことが多い。左辺の H(X:Y) はこの巻の I(X;Y)、右辺は χ を ln2 で割ったものである。強劣加法性と量子データ処理不等式は互いに導ける(第3部第3章)ので、この章の証明と講義の証明は同じ道具を別の順で使っている。この章では「測定はチャネルで、チャネルは D を減らす」という形にしたので、古典の第1部第4章のデータ処理不等式とそのまま並ぶ。
量子力学の授業の「区別できない状態」
量子力学の授業では、直交しない2つの状態は1回の測定で確実には区別できない、と習う。Holevo 限界はこれを情報の量で言い直したものである。「区別できない」は「誤り確率が 0 にならない」という質的な主張だったが、式 (3.7.6) は「区別できなさの分だけ、取り出せる情報が H(p) より減る」という量的な主張になっている。どれだけ減るかの上限が H(p)−χ で、第3部第2章の凹性の定理の右の不等式 S(ρˉ)≤H(p)+∑xpxS(ρ^x) がその非負性を保証していた。
例題 3.7.7 授業の2元対称通信路を量子の言葉で ★★
オリジナル
- 反転確率 ε=0.1 の2元対称通信路を、対角の密度行列 τ^0=diag(0.9,0.1)、τ^1=diag(0.1,0.9) を出力するチャネルとみる。確率 1/2 ずつのとき Holevo 量を求め、授業の C=1−h(0.1) ビットと一致することを確かめよ。
- ∣0⟩ と ∣+⟩ を確率 1/2 ずつで送るとき、Holevo 限界と、対称な射影測定で得られる相互情報量を、講義の流儀(ビット)で書け。
解答
(1) τˉ=1/2 なので χ=ln2−hb(0.1)=0.6931−0.3251=0.3681 nat。ln2 で割って 0.531 ビットで、1−h(0.1)=1−0.469=0.531 ビットに一致する。2つの出力は交換するので、Z 基底で測れば I(X;Y)=χ で、量子の側に損は無い。
(2) 例題 3.7.1 から χ=0.4165 nat、ビットで 0.601 ビット。重なり c=1/2 なので式 (3.7.8) から Perr=(1−1/2)/2=0.1464、I(X;Y)=ln2−hb(0.1464)=0.2767 nat =0.399 ビット。講義の形では H(X:Y)=0.399≤0.601 ビットで、1つずつ測ると上限の約 2/3 しか取り出せない(同じ2状態を別の角度の基底で測った場合は第3部第3章の例題で扱った)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com