相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第7章 §3.7.7 ★★★ cq 状態と積状態の D が Holevo 量で、測定で D が減ることが Holevo 限界。容量は Holevo 量の最大値で、D の球の半径として書ける
比べる2つの状態は、文字と量子状態が相関した cq 状態 ρ^XB=∑xpx∣x⟩⟨x∣⊗ρ^x と、両者を独立とみなした積状態 ρ^X⊗ρ^B で、その D が Holevo 量 χ=S(ρˉ)−∑xpxS(ρ^x)=∑xpxD(ρ^x∥ρˉ) である。当てた性質は量子データ処理不等式で、測定を量子チャネルとして書くと、測定の結果の相互情報量は χ を超えない(Holevo 限界)。等号は状態が交換するときに限る。トラインの例では、取り出せる情報 ln(3/2) は χ=ln2 に届かず、当たる確率を最大にする測定と情報を最大にする測定は別だった。
出てきたものは3つある。χ≤S(ρˉ)≤lnd から、d 次元の系で送れる古典の情報は lnd まで(1量子ビットで1ビット)で、超高密度符号の2ビットは受け手が測る系が2量子ビットであることから矛盾しなかった。雑音のある量子チャネルの積の入力での古典の容量は出力の Holevo 量の最大値で(HSW の定理)、そこまで届くには多数の信号をまとめて測る必要がある。容量は第1部第6章と同じく、出力の状態の集合を包む D の球の最小の半径として書け、減極チャネルと消失チャネルの容量がこの形から出た。光の1モードでは容量が熱状態のエントロピー g(nˉ) で、広帯域の極限では πP/(3ℏ) になり、第1部第6章で古典の近似が崩れると予告した所が量子の式に置き換わった。
次の章(第3部第8章)では、この章で結果だけ使った2つの状態を見分ける誤り確率の最小値(Helstrom の限界)と、状態がパラメータに連続に依存するときの推定(量子 Fisher 情報)を扱う。量子鍵配送(第3部第10章)では、盗聴者が取り出せる情報をこの章の Holevo 量で押さえる。
この章の道具
- 測定が作る通信路 W(y∣x)=Tr(E^yρ^x)、取り出せる情報 Iacc=supI(X;Y)。
- χ=I(X;B)=D(ρ^XB∥ρ^X⊗ρ^B)=∑xpxD(ρ^x∥ρˉ)=S(ρˉ)−∑xpxS(ρ^x)。
- Holevo 限界 I(X;Y)≤χ≤S(ρˉ)≤lnd。2純粋状態で χ=hb((1+c)/2)、1つずつ測ると ln2−hb((1−1−c2)/2)。
- HSW:C(1)(N)=maxχ({px,N(ρ^x)})=minσ^maxτ^D(τ^∥σ^)。減極 ln2−hb(p/2)、消失 (1−ε)ln2。
- 光の1モード g(nˉ)=(nˉ+1)ln(nˉ+1)−nˉlnnˉ、純損失 g(ηnˉ)、広帯域 C=πP/(3ℏ)。
総合問題 弱い光の2位相変調で1光子あたりに送れる情報 ★★★
オリジナル光の1モードのコヒーレント状態 ∣α⟩ と ∣−α⟩(α>0)を確率 1/2 ずつで送る(2位相変調)。平均光子数は nˉ=α2 で、2つの状態の重なりは∣⟨α∣−α⟩∣=e−2nˉ である。
- (1) (使う道具:3.7.1節・3.7.2節/第3部第2章 の Holevo 量)Holevo 量 χ(nˉ) を nˉ の式で書け。
- (2) (使う道具:3.7.2節/第1部第6章 の2元対称通信路)1パルスずつ対称な射影測定で測るときの誤り確率 Perr と、それを2元対称通信路とみた容量 C1(nˉ) を書け。
- (3) (使う道具:3.7.5節)χ(nˉ)≤g(nˉ) がなぜ成り立つかを述べ、nˉ=0.01 で χ、C1、g を数値で求めよ。
- (4) (使う道具:3.7.4節/第1部第2章 の2値エントロピー)nˉ→0 で χ≈nˉln(1/nˉ)+nˉ、C1≈2nˉ を示し、nˉ=0.01 で光子1個あたりに送れる情報(ビット)を χ と C1 について求めよ。
- (5) (使う道具:3.7.4節)χ の速さで送るには受け手はどう測る必要があるか。また (4) の比が nˉ→0 でどうなるかを述べよ。
解答
(1) 2つの純粋状態の重なりが c=e−2nˉ なので、式 (3.7.7) から χ(nˉ)=hb(21+e−2nˉ)。
(2) 式 (3.7.8) から Perr=21(1−1−e−4nˉ)。各パルスは誤り確率 Perr の2元対称通信路になり、第1部第6章からC1(nˉ)=ln2−hb(Perr)(入力が一様のとき最大)。
(3) ∣±α⟩ の平均 ρˉ の平均光子数は α2=nˉ で、平均光子数を決めたときのエントロピーの最大値は熱状態の g(nˉ) なので、χ≤S(ρˉ)≤g(nˉ)。nˉ=0.01 では c=e−0.02=0.98020、χ=hb(0.99010)=0.05554 nat、Perr=0.4010、C1=0.01974 nat、g(0.01)=0.05610 nat。2位相変調の Holevo 量は、この光子数で達成できる最大値 g の 99% に達する。
(4) (1−c)/2=(1−e−2nˉ)/2=nˉ+O(nˉ2) なので χ=hb(nˉ+O(nˉ2))≈nˉln(1/nˉ)+nˉ(hb(x)=xln(1/x)+x+O(x2))。1−c2=1−e−4nˉ≈4nˉ から Perr≈21−nˉ で、ln2−hb(21−δ)≈2δ2 から C1≈2nˉ。nˉ=0.01 では光子1個あたり χ/nˉ=5.554 nat =8.01 ビット、C1/nˉ=1.974 nat =2.85 ビットである。
(5) HSW の定理(定理 3.7.4)の達成の側から、多数のパルスをまとめて1つの POVM で測る(典型部分空間に基づく測定)必要がある。1パルスずつ測ると速さは C1 を超えない。比 χ/C1≈21ln(1/nˉ)+21 は nˉ→0 で限りなく大きくなる。光子が乏しいほど、まとめて測ることで1光子あたりの情報が大きく増える。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com