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当てる D の性質:データ処理不等式と測定

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第8章 量子状態の識別と量子計測
目次
  1. 測定した相対エントロピー
  2. トレース距離と忠実度
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第3部 第8章 §3.8.2 ★★★ 測定はチャネルなので、結果の分布の DD は D(ρ^ ∥ σ^)D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma) を超えない。トレース距離と忠実度も同じ理由で測定によって悪くなる方向にしか動かない

測定した相対エントロピー

量子データ処理不等式 D(N(ρ^) ∥ N(σ^))≤D(ρ^ ∥ σ^)D(\mathcal N(\hat\rho)\,\|\,\mathcal N(\hat\sigma))\le D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)(第3部第3章)を測定のチャネル (3.8.3) に当てると、次の命題が直ちに出る。

命題 3.8.2(測定した相対エントロピーの上限 ★★★)

どんな POVM {Π^m}\{\hat\Pi_m\} についても、結果の分布 pm=Tr⁡(ρ^Π^m)p_m=\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat\Pi_m)、qm=Tr⁡(σ^Π^m)q_m=\operatorname{Tr}(\hat\sigma\hat\Pi_m) は

D(p ∥ q)≤D(ρ^ ∥ σ^)(3.8.5)D(p\,\|\,q)\le D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)\tag{3.8.5}

を満たす。測定の上で上限をとったもの DM(ρ^ ∥ σ^)≔sup⁡{Π^m}D(p ∥ q)D_{\mathrm M}(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)\coloneqq\sup_{\{\hat\Pi_m\}}D(p\,\|\,q) を測定した相対エントロピーと呼ぶ。DM≤DD_{\mathrm M}\le D で、ρ^\hat\rho と σ^\hat\sigma が交換するときは共通の固有基底で測れば等号が成り立つ。

等号の条件の後半は、交換する2状態の DD が固有値の分布の古典の DD に等しいこと(第3部第2章)から従う。交換しない2状態では、一般に DM<DD_{\mathrm M}<D である。これは、1個の系を1回測ると、2つの状態の違いの一部が必ず捨てられることを表す。後の 3.8.4節で、同じ状態を nn 個まとめて測る(nn 個の系にまたがるエンタングルした測定をする)と、1個あたりの DMD_{\mathrm M} の差がn→∞n\to\infty で埋まり、DD そのものに達することを見る。

トレース距離と忠実度

DD の他に、2つの状態の近さを測る量として、次の2つがよく使われる。

定義 3.8.3(トレース距離・忠実度)

2つの密度行列の差のトレースノルムの半分 12∥ρ^−σ^∥1=12Tr⁡∣ρ^−σ^∣\frac12\lVert \hat\rho-\hat\sigma\rVert _1=\frac12\operatorname{Tr}\lvert \hat\rho-\hat\sigma\rvert(∣A^∣=A^†A^\lvert \hat A\rvert =\sqrt{\hat A^\dagger\hat A})をトレース距離と呼ぶ。ρ^−σ^\hat\rho-\hat\sigma の固有値を λk\lambda_k とすると 12∑k∣λk∣\frac12\sum_k\lvert \lambda_k\rvert である。また

F(ρ^,σ^)≔Tr⁡ρ^ σ^ρ^=∥ρ^1/2σ^1/2∥1(3.8.6)F(\hat\rho,\hat\sigma)\coloneqq\operatorname{Tr}\sqrt{\sqrt{\hat\rho}\,\hat\sigma\sqrt{\hat\rho}}=\lVert \hat\rho^{1/2}\hat\sigma^{1/2}\rVert _1\tag{3.8.6}

を忠実度と呼ぶ1A. Uhlmann (1976), Rep. Math. Phys. 9, 273;R. Jozsa (1994), J. Mod. Opt. 41, 2315。これを2乗したものを忠実度と呼ぶ流儀もある。自由エネルギー F(ρ^)F(\hat\rho) と同じ字なので、忠実度は必ず2引数で書く(第3部第3章と同じ書き方)。下の脚注へ。純粋状態どうしでは F(ρ^,σ^)=∣⟨ψ∣ϕ⟩∣F(\hat\rho,\hat\sigma)=\lvert \langle \psi | \phi \rangle \rvert、量子ビットでは F(ρ^,σ^)2=Tr⁡(ρ^σ^)+2det⁡ρ^ det⁡σ^F(\hat\rho,\hat\sigma)^2=\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat\sigma)+2\sqrt{\det\hat\rho\,\det\hat\sigma} になる。

トレース距離は古典の全変動距離 12∑m∣pm−qm∣\frac12\sum_m\lvert p_m-q_m\rvert の量子版で、交換する2状態では固有値の分布の全変動距離に一致する。忠実度は古典の Bhattacharyya 係数 ∑mpmqm\sum_m\sqrt{p_mq_m} の量子版である。どちらも量子チャネル N\mathcal N で悪くなる方向にしか動かない(∥N(ρ^)−N(σ^)∥1≤∥ρ^−σ^∥1\lVert \mathcal N(\hat\rho)-\mathcal N(\hat\sigma)\rVert _1\le\lVert \hat\rho-\hat\sigma\rVert _1、F(N(ρ^),N(σ^))≥F(ρ^,σ^)F(\mathcal N(\hat\rho),\mathcal N(\hat\sigma))\ge F(\hat\rho,\hat\sigma))。したがって測定した値はそれぞれ量子の値で押さえられ、最良の測定を選ぶと、トレース距離と忠実度はどちらも量子の値に達する。トレース距離に達する測定は 3.8.3節で作る。忠実度に達する測定の存在は Fuchs と Caves が示した。

3つの量の間の不等式

証明はここでは書かないが、次の不等式が成り立つ2C. A. Fuchs and J. van de Graaf (1999), IEEE Trans. Inf. Theory 45, 1216。下の脚注へ。

1−F(ρ^,σ^)≤12∥ρ^−σ^∥1≤1−F(ρ^,σ^)2,D(ρ^ ∥ σ^)≥12∥ρ^−σ^∥12,D(ρ^ ∥ σ^)≥−2ln⁡F(ρ^,σ^).(3.8.7)1-F(\hat\rho,\hat\sigma)\le\tfrac12\lVert \hat\rho-\hat\sigma\rVert _1\le\sqrt{1-F(\hat\rho,\hat\sigma)^2},\qquad D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)\ge\tfrac12\lVert \hat\rho-\hat\sigma\rVert _1^2,\qquad D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)\ge-2\ln F(\hat\rho,\hat\sigma).\tag{3.8.7}

2番目は量子 Pinsker の不等式(第3部第2章)である。3番目は、DD が「忠実度で測った近さ」より強い見分けやすさの尺度であることを表す。純粋状態どうしでは右の不等式 12∥ρ^−σ^∥1≤1−F(ρ^,σ^)2\frac12\lVert \hat\rho-\hat\sigma\rVert _1\le\sqrt{1-F(\hat\rho,\hat\sigma)^2} が等号になる。

図

図 3.8.1 ρ^=12(1+0.6Z)\hat\rho=\frac12(\mathbf 1+0.6Z) と σ^=12(1+0.6X)\hat\sigma=\frac12(\mathbf 1+0.6X) を、Bloch 球の xzxz 面の向き n=(sin⁡φ,0,cos⁡φ)\bm{n}=(\sin\varphi,0,\cos\varphi) の射影測定で測ったときの、結果の分布の相対エントロピー(実線)。点線は量子相対エントロピー。どの向きでも実線は点線を超えない(命題 3.8.2)。φ=45∘\varphi=45^\circ では2つの状態が同じ分布を出し、D=0D=0 になる。

例題 3.8.2 同じ純度の2つの量子ビット ★★

オリジナルρ^=12(1+0.6Z)\hat\rho=\frac12(\mathbf 1+0.6Z)、σ^=12(1+0.6X)\hat\sigma=\frac12(\mathbf 1+0.6X) とする。D(ρ^ ∥ σ^)=0.6ln⁡2=0.4159D(\hat\rho\,\|\,\hat\sigma)=0.6\ln2=0.4159 nat である(第3部第2章の例題)。

  1. 向き n=(−1/2,0,1/2)\bm{n}=(-1/\sqrt2,0,1/\sqrt2)(図 3.8.1 の φ=−45∘\varphi=-45^\circ)の射影測定で、結果の分布の相対エントロピーを求めよ。
  2. トレース距離 12∥ρ^−σ^∥1\frac12\lVert \hat\rho-\hat\sigma\rVert _1 と忠実度 F(ρ^,σ^)F(\hat\rho,\hat\sigma) を求めよ。
  3. 式 (3.8.7) の不等式をすべて確かめよ。右の Fuchs–van de Graaf の不等式が等号になる理由を述べよ。
解答

(1) n⋅σ\bm{n}\cdot\bm{\sigma} の固有値 ±1\pm1 の射影子は 12(1±n⋅σ)\frac12(\mathbf 1\pm\bm{n}\cdot\bm{\sigma}) で、ρ^\hat\rho から結果 ++ が出る確率は 12(1+0.6 nz)=12(1+0.6/2)=0.7121\frac12(1+0.6\,n_z)=\frac12(1+0.6/\sqrt2)=0.7121、σ^\hat\sigma からは 12(1+0.6 nx)=12(1−0.6/2)=0.2879\frac12(1+0.6\,n_x)=\frac12(1-0.6/\sqrt2)=0.2879 である。a=0.7121a=0.7121 と置くと p=(a,1−a)p=(a,1-a)、q=(1−a,a)q=(1-a,a) なので

D(p ∥ q)=aln⁡a1−a+(1−a)ln⁡1−aa=(2a−1)ln⁡a1−a=0.4243×0.9050=0.3843 nat.D(p\,\|\,q)=a\ln\frac{a}{1-a}+(1-a)\ln\frac{1-a}{a}=(2a-1)\ln\frac{a}{1-a}=0.4243\times0.9050=0.3843\ \text{nat}.

ZZ 基底の 0.19270.1927、XX 基底の 0.22310.2231(第3部第2章の例題)より大きいが、0.41590.4159 より小さい。数値で φ\varphi を動かすと、最大は φ≈−49.8∘\varphi\approx-49.8^\circ での 0.38660.3866 nat で、これが射影測定に限った DMD_{\mathrm M} である。

(2) ρ^−σ^=0.3(Z−X)\hat\rho-\hat\sigma=0.3(Z-X) で、(Z−X)/2(Z-X)/\sqrt2 は固有値 ±1\pm1 を持つので、ρ^−σ^\hat\rho-\hat\sigma の固有値は ±0.32\pm0.3\sqrt2。よって 12∥ρ^−σ^∥1=0.32=0.4243\frac12\lVert \hat\rho-\hat\sigma\rVert _1=0.3\sqrt2=0.4243。忠実度は量子ビットの式で Tr⁡(ρ^σ^)=12(1+r⋅s)=12\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat\sigma)=\frac12(1+\bm{r}\cdot\bm{s})=\frac12(r⋅s=0\bm{r}\cdot\bm{s}=0)、det⁡ρ^=det⁡σ^=14(1−0.36)=0.16\det\hat\rho=\det\hat\sigma=\frac14(1-0.36)=0.16 なので F(ρ^,σ^)2=0.5+2×0.16=0.82F(\hat\rho,\hat\sigma)^2=0.5+2\times0.16=0.82、F(ρ^,σ^)=0.9055F(\hat\rho,\hat\sigma)=0.9055。

(3) 1−0.9055=0.0945≤0.4243≤1−0.82=0.42431-0.9055=0.0945\le0.4243\le\sqrt{1-0.82}=0.4243、0.4159≥12(0.8485)2=0.360.4159\ge\frac12(0.8485)^2=0.36、0.4159≥−2ln⁡0.9055=0.19850.4159\ge-2\ln0.9055=0.1985。右の不等式が等号になるのは、長さの等しい2つの Bloch ベクトル r\bm{r}、s\bm{s}(∣r∣=∣s∣=r\lvert \bm{r}\rvert =\lvert \bm{s}\rvert =r、なす角 θ\theta)では14∥ρ^−σ^∥12=14∣r−s∣2=12r2(1−cos⁡θ)\frac14\lVert \hat\rho-\hat\sigma\rVert _1^2=\frac14\lvert \bm{r}-\bm{s}\rvert ^2=\frac12r^2(1-\cos\theta)、1−F(ρ^,σ^)2=1−12(1+r2cos⁡θ)−12(1−r2)=12r2(1−cos⁡θ)1-F(\hat\rho,\hat\sigma)^2=1-\frac12(1+r^2\cos\theta)-\frac12(1-r^2)=\frac12r^2(1-\cos\theta) と、2つがいつも一致するからである。純粋状態でなくても、純度の等しい量子ビットの組では等号が成り立つ。

1 A. Uhlmann (1976), Rep. Math. Phys. 9, 273;R. Jozsa (1994), J. Mod. Opt. 41, 2315。これを2乗したものを忠実度と呼ぶ流儀もある。自由エネルギー F(ρ^)F(\hat\rho) と同じ字なので、忠実度は必ず2引数で書く(第3部第3章と同じ書き方)。

2 C. A. Fuchs and J. van de Graaf (1999), IEEE Trans. Inf. Theory 45, 1216。

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