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出てくるもの (1):コロイド粒子で Landauer の下限を測る

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第7章 実験で見る情報熱力学
目次
  1. Bérut らの実験
  2. 帰還トラップの実験と対照の操作
  3. 仕事の分布と Jarzynski の等式
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第4部 第7章 §4.7.3 ★★★ 二重井戸のコロイド粒子で、散逸の熱の平均を消去時間の関数として測り、A+B/τA+B/\tau の AA が ln⁡2\ln2 に近いことを示した。帰還トラップの実験は 0.71±0.030.71\pm0.03 を得、消去しない対照の操作では0に近づくことも示した

Bérut らの実験

最初の定量的な検証は A. Bérut, A. Arakelyan, A. Petrosyan, S. Ciliberto, R. Dillenschneider and E. Lutz (2012), Nature 483, 187 で、装置と解析の詳細は A. Bérut, A. Petrosyan and S. Ciliberto (2015), J. Stat. Mech. P06015 にある。この節の数値は後者による。半径 1.00 μm1.00\,\mu\mathrm m のシリカの粒子を水に分散させ、波長 1024 nm1024\,\mathrm{nm} のレーザーを 10 kHz10\,\mathrm{kHz} で2か所(間隔 1 μm1\,\mu\mathrm m ほど)に切り替えて二重井戸を作る。レーザーの強さを 48 mW48\,\mathrm{mW} にすると障壁は 8 kBT8\, k_{\mathrm B} T を超え、跳び移りの時間は 3000 s3000\,\mathrm s ほどで、記憶は保たれる。15 mW15\,\mathrm{mW} に下げると障壁は 2.2 kBT2.2\, k_{\mathrm B} T、跳び移りは 10 s10\,\mathrm s ほどになる。

消去の手順は前の節の4段と同じ形である。(i) 1 s1\,\mathrm s かけて障壁を下げる。(ii) 試料の台を動かして水の流れを作り、粘性の抵抗 f=γvf=\gamma v(γ=6πηR\gamma=6\pi\eta R)で井戸を傾けて粒子を左(状態 0)へ寄せる。この段の時間が消去時間 τ\tau である。(iii) 力を止め、1 s1\,\mathrm s かけて障壁を上げる。2状態の模型の EE には水の流れの力が、ν\nu には障壁の高さが対応する。

熱は熱量計で測るのではない。粒子の位置を 502 Hz502\,\mathrm{Hz} で記録し、ポテンシャルの形を知ったうえで、Sekimoto の定義 Q=∫∂xU∘dxQ=\int\partial_xU\circ\mathrm{d} x(第4部第1章)を1本の軌道ごとに数値で計算する。10−21 J10^{-21}\,\mathrm J の熱を直接に測る方法は無いが、軌道とポテンシャルから計算することはできる。

結果は次のとおりである。消去時間 τ\tau を 55 から 40 s40\,\mathrm s まで変え、各 τ\tau で力の大きさを手で調整して成功率(障壁を上げる前に 0 にいる割合)を 9595〜99%99\% にそろえた。0 に着いた軌道の散逸の熱の平均 ⟨−Q⟩→0\langle -Q \rangle _{\to0} は τ\tau とともに減り、ln⁡2+B/τ\ln2+B/\tau に当てはめると B=8.15 kBT sB=8.15\, k_{\mathrm B} T\,\mathrm s、AA も自由にした A+B/τA+B/\tau の当てはめでは A=0.72 kBTA=0.72\, k_{\mathrm B} T だった。命題 4.7.2 の形どおりに 1/τ1/\tau で減り、τ→∞\tau\to\infty の値は ln⁡2=0.693\ln2=0.693 と4%で一致する。熱の分布を見ると、一部の軌道は kBTln⁡2k_{\mathrm B} T\ln2 より少ない熱しか出さず、負の熱(液体から熱をもらう)の軌道もあった。平均では下限を守るが、1本ごとには破れる。この2つが両立することが、ゆらぎの定理の主張である(第4部第2章)。

成功率を1にそろえられなかった理由も、この模型で読める。(iii) で障壁を上げるあいだ、力は止まっていて障壁はまだ低いので、粒子は 0 から 1 へ逃げられる。Bérut らの数値計算では、障壁が 8 kBT8\, k_{\mathrm B} T なら成功率は 94% ほど、15 kBT15\, k_{\mathrm B} T なら 99% ほどにとどまる。障壁を上げる前の成功率で比べると 5% ほど高く、強い力では100%に届いた。

図

図 4.7.3 Bérut ほか (2015) の当てはめの式 ⟨−Q⟩→0=kBTln⁡2+B/τ\langle -Q \rangle _{\to0}= k_{\mathrm B} T\ln2+B/\tau、B=8.15 kBT sB=8.15\, k_{\mathrm B} T\,\mathrm s(実線、近似の式)。測定の点は原論文の図8にあり、誤差は ±0.15 kBT\pm0.15\, k_{\mathrm B} T と見積もられている。ここでは式だけを描いた。τ=40 s\tau=40\,\mathrm s でも ln⁡2\ln2 より 0.2 kBT0.2\, k_{\mathrm B} T ほど上にある。

帰還トラップの実験と対照の操作

Y. Jun, M. Gavrilov and J. Bechhoefer (2014), Phys. Rev. Lett. 113, 190601 は、ポテンシャルを光でなく帰還(フィードバック)で作った。直径 200 nm200\,\mathrm{nm} の蛍光粒子の位置をカメラで 10 ms10\,\mathrm{ms} ごとに読み、その位置での力 −∂xU-\partial_xU を電場で加えると、粒子は形を自由に決めた仮想のポテンシャルの中を動く。井戸の間隔を 2xm=5 μm2x_{\mathrm m}=5\,\mu\mathrm m、障壁を 13 kBT13\, k_{\mathrm B} T に取り、障壁が高いので操作の外での跳び移りはほとんど起きず、完全な消去(Ps=1P_{\mathrm s}=1)に近い。仕事は Sekimoto の式 W=∫∂tU dtW=\int\partial_tU\,\mathrm{d} t で計算する。τ→∞\tau\to\infty へ 1/τ1/\tau で延ばした仕事の平均は 0.71±0.03 kBT0.71\pm0.03\, k_{\mathrm B} T で、ln⁡2\ln2 と誤差の範囲で一致した。

この実験は対照も測った。同じように障壁を下げて傾けるが、最後に 0 と 1 の両方が等しく残るように(状態の数を減らさないように)した操作である。この操作の仕事は τ→∞\tau\to\infty で 0.05±0.03 kBT0.05\pm0.03\, k_{\mathrm B} T と、0 に近づいた。式 (4.7.3) で Ps=1/2P_{\mathrm s}=1/2 のとき下限が0になることにあたる。2つの操作を比べると、障壁を上げ下げすること自体には仕事が要らず、記憶の分布を (1/2,1/2)(1/2,1/2) から (1,0)(1,0) へ狭めることにだけ仕事が要ることが分かる。

仕事の分布と Jarzynski の等式

Jun らは仕事の分布も調べ、操作が長いと分布が正規分布に近づくことを使って結果を確かめた。仕事 WW が平均 ⟨W⟩\langle W \rangle、分散 σW2\sigma_W^2 の正規分布なら⟨e−βW⟩=e−β⟨W⟩+β2σW2/2\langle \mathrm{e}^{-\beta W} \rangle =\mathrm{e}^{-\beta\langle W \rangle +\beta^2\sigma_W^2/2} なので、Jarzynski の等式 ⟨e−βW⟩=e−βΔF\langle \mathrm{e}^{-\beta W} \rangle =\mathrm{e}^{-\beta\Delta F}(第4部第2章)は

⟨W⟩−ΔF=βσW22(4.7.10)\langle W \rangle -\Delta F=\frac{\beta\sigma_W^2}{2}\tag{4.7.10}

になる。余分な仕事が分布の幅で決まる。消去では、終わりの状態が平衡でないので、ΔF\Delta F を非平衡の自由エネルギーの差 kBTln⁡2k_{\mathrm B} T\ln2 と読む。Jun らはこの読み方で、長い操作では (4.7.10) がよく合うことを示した。Bérut ほか (2015) も、0 に着いた軌道と 1 から 0 に着いた軌道に分けた Jarzynski の等式を使って、仕事の測定とは別の道筋で ln⁡2\ln2 を取り出している。

近似の裏付け

型 C(閉じる) | 小さいもの 仕事の分布の3次以上のキュムラントを0と置く(小さいパラメータなし。長い操作で分布が正規に近づくことが目安) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第1章

例題 4.7.3 1/τ1/\tau の当てはめと分布の幅 ★★

オリジナル(a) Bérut らの B=8.15 kBT sB=8.15\, k_{\mathrm B} T\,\mathrm s を使い、τ=10 s\tau=10\,\mathrm s と 40 s40\,\mathrm s の余り B/τB/\tau を求めよ。余りを kBTln⁡2k_{\mathrm B} T\ln2 の1割以下にするには τ\tau を何秒以上にすればよいか。(b) 2状態の模型で、一定の速さの傾け方の νBlin=βEm/2\nu B_{\mathrm{lin}}=\beta E_{\mathrm m}/2 が実験の BB と同じ 8.15 s8.15\,\mathrm s になるとき、βEm=10\beta E_{\mathrm m}=10 なら ν\nu はいくらか。障壁 2.2 kBT2.2\, k_{\mathrm B} T での跳び移りの時間 10 s10\,\mathrm s と比べよ。(c) 消去の仕事の分布が正規分布で、平均が 1.0 kBT1.0\, k_{\mathrm B} T だったとする。式 (4.7.10) が ΔF=kBTln⁡2\Delta F= k_{\mathrm B} T\ln2 で成り立つには、分散 σW2\sigma_W^2 はいくらでなければならないか。

解答

(a) τ=10 s\tau=10\,\mathrm s で 0.815 kBT0.815\, k_{\mathrm B} T、40 s40\,\mathrm s で 0.204 kBT0.204\, k_{\mathrm B} T である。B/τ≤0.1ln⁡2=0.0693B/\tau\le0.1\ln2=0.0693 から τ≥8.15/0.0693=118 s\tau\ge8.15/0.0693=118\,\mathrm s である。実験の最長の 40 s40\,\mathrm s でも余りは ln⁡2\ln2 の3割ほど残るので、AA を読むには 1/τ1/\tau の形を仮定して延ばすしかない。命題 4.7.2 がその仮定の根拠である。

(b) νBlin≈5\nu B_{\mathrm{lin}}\approx5 なので ν=5/8.15=0.61 s−1\nu=5/8.15=0.61\,\mathrm s^{-1}、緩和の時間 1/ν≈1.6 s1/\nu\approx1.6\,\mathrm s である。2状態の ν\nu は2方向の跳び移りの速さの和で、傾けていないときの片方向の速さは ν/2\nu/2、待ち時間は 2/ν≈3 s2/\nu\approx3\,\mathrm s になる。報告された 10 s10\,\mathrm s と同じ桁にある。ただし実験の力の掛け方は EE を一定の速さで上げるものとは違い、障壁も操作の中で変わるので、これは桁の比較にとどまる。

(c) βσW2/2=β(⟨W⟩−ΔF)=1.0−0.693=0.307\beta\sigma_W^2/2=\beta(\langle W \rangle -\Delta F)=1.0-0.693=0.307 から β2σW2=0.614\beta^2\sigma_W^2=0.614、すなわち σW=0.78 kBT\sigma_W=0.78\, k_{\mathrm B} T である。平均が下限を 0.31 kBT0.31\, k_{\mathrm B} T 超えるとき、幅は 0.8 kBT0.8\, k_{\mathrm B} T ほどで、仕事が ln⁡2\ln2 を下回る軌道は全体の Φ(−0.307/0.784)=35%\Phi(-0.307/0.784)=35\% ほどになる(Φ\Phi は標準正規分布の分布関数)。

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