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情報の側から見ると:しきい値は漏れる情報の相転移

2026年10月15日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第5章 誤り耐性としきい値定理
目次
  1. 論理量子ビットのデカップリング
  2. hashing の限界との比較
  3. 誤り訂正はエントロピーを捨てる
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第6部 第5章 §6.5.5 ★★★ しきい値の下では環境へ漏れる論理の情報 I(R;E)I(R;E) が距離とともに 00 へ、上では ln⁡2\ln2 へ向かう。誤り訂正は雑音の持ち込むエントロピーを捨て続ける操作である

論理量子ビットのデカップリング

第3部第9章では、論理量子ビットを参照系 RR と最大にもつれさせたとき、誤りを訂正できる条件が、雑音の環境 EE と参照系の相互情報量I(R;E)=D(ρ^RE ∥ ρ^R⊗ρ^E)I(R;E)=D(\hat\rho_{RE}\,\|\,\hat\rho_R\otimes\hat\rho_E) が 00 であることだと示した。表面符号を復号したあとの論理量子ビットは、確率 εL\varepsilon _{\mathrm L} で XLX_{\mathrm L} が残るビット反転チャネルを受ける。このとき環境の側には「XLX_{\mathrm L} が残ったかどうか」の記録が残り、Stinespring 表示で計算すると(第3部第9章の例題と同じ計算)

I(R;E)=hb(εL)(6.5.7)I(R;E)=h_{\mathrm b}(\varepsilon _{\mathrm L})\tag{6.5.7}

になる。RR と出力の量子ビットの相関の量は 2ln⁡2−hb(εL)2\ln2-h_{\mathrm b}(\varepsilon _{\mathrm L}) で、相関の総量 2S(R)=2ln⁡22S(R)=2\ln2 のうち hb(εL)h_{\mathrm b}(\varepsilon _{\mathrm L}) が環境へ持ち出されたことになる。

しきい値の下では d→∞d\to\infty で εL→0\varepsilon _{\mathrm L}\to0 なので I(R;E)→0I(R;E)\to0、すなわち論理量子ビットは環境から切り離される(デカップリング)。しきい値の上では εL→1/2\varepsilon _{\mathrm L}\to1/2 で I(R;E)→ln⁡2I(R;E)\to\ln2 となり、参照系とのもつれのうち古典的な1ビット分が丸ごと環境に渡る。しきい値は、環境へ漏れる情報が 00 に向かうか有限の値に向かうかの境目、すなわち情報の量で見た相転移である。前の節の統計力学の言葉では、秩序相が「漏れない」相、無秩序相が「漏れる」相にあたる。

hashing の限界との比較

第3部第7章の量子通信路容量は、チャネルを何回も使うときに1回あたり送れる量子ビットの数の上限で、コヒーレント情報 S(B)−S(E)S(B)-S(E) で下から押さえられる。1量子ビットに独立に確率 ε\varepsilon で XX、独立に確率 ε\varepsilon で ZZ が当たるチャネルに最大混合の入力を入れると、コヒーレント情報は

ln⁡2−H(Pauli 誤りの分布)=ln⁡2−2hb(ε)(6.5.8)\ln2-H(\text{Pauli 誤りの分布})=\ln2-2h_{\mathrm b}(\varepsilon )\tag{6.5.8}

で、ランダムなスタビライザー符号はこの率を実現する(hashing の限界1C. H. Bennett, D. P. DiVincenzo, J. A. Smolin and W. K. Wootters (1996), Phys. Rev. A 54, 3824。下の脚注へ)。率が 00 になる 2hb(ε)=ln⁡22h_{\mathrm b}(\varepsilon )=\ln2 の解は ε=0.1100\varepsilon =0.1100 である。表面符号は XX と ZZ を別々に復号し、それぞれのしきい値は最適な復号で 0.10940.1094 なので、率が 00 に向かう符号(k=1k=1 のまま n→∞n\to\infty)でありながら、正の率の符号が働く限界のすぐ手前まで誤りに耐える。誤りの分布のエントロピー 2hb(ε)2h_{\mathrm b}(\varepsilon ) が量子ビット1個の容量 ln⁡2\ln2 に等しくなると、どんな符号でも論理の情報より速く環境へ情報が流れる、というのが式 (6.5.8) の読み方である。

誤り訂正はエントロピーを捨てる

雑音は1回の周期ごとに符号の量子ビットへエントロピーを持ち込み、誤り訂正はそれをシンドロームとして補助の量子ビットに移し、補助を初期化して捨てる。論理の状態を保ったまま定常に保つには、持ち込まれた分を毎回捨てなければならない。データの量子ビット nn 個がそれぞれ確率 ε\varepsilon で反転するとき、1回の周期で持ち込まれる誤りの並びのエントロピーは n hb(ε)n\,h_{\mathrm b}(\varepsilon ) を超えない。補助の初期化は記録の消去なので、第4部第5章の Landauer 原理により、温度 TT の熱浴へ少なくとも kBTk_{\mathrm B} T × (捨てるエントロピー)の熱を出す。シンドロームを読んで訂正を当てる操作は第4部第4章の測定とフィードバックそのもので、誤り訂正は、測定とフィードバックで量子ビットの集まりを低いエントロピーの状態に保ち、その代わりに熱を捨てる点で、冷凍機と同じ熱力学の構造を持つ。しきい値の上では、捨てる速さが持ち込まれる速さに追いつかず、論理の状態にエントロピーがたまっていく。

例題 6.5.5 漏れる情報と捨てるエントロピーの数値 ★★

オリジナル図 6.5.3 の数値を使う。

  1. (1) ε=0.03\varepsilon =0.03 で d=3d=3 と d=7d=7 の論理誤りは 0.01430.0143 と 0.00280.0028、ε=0.15\varepsilon =0.15 では 0.2170.217 と 0.2910.291 だった。それぞれの I(R;E)=hb(εL)I(R;E)=h_{\mathrm b}(\varepsilon _{\mathrm L}) を nat で求め、距離を上げたときの向きを述べよ。
  2. (2) 式 (6.5.8) の率が 00 になる ε\varepsilon を求めよ。
  3. (3) d=7d=7 の回転した表面符号のデータの量子ビット49個が、1周期ごとにそれぞれ確率 ε=10−3\varepsilon =10^{-3} で反転する。1周期で持ち込まれるエントロピーの上限と、それを温度 10 mK10\,\mathrm{mK} で捨てるのに要る熱の下限を求めよ。
解答

(1) hb(0.0143)=0.0749h_{\mathrm b}(0.0143)=0.0749、hb(0.0028)=0.0193h_{\mathrm b}(0.0028)=0.0193 で、しきい値の下では距離を上げると漏れる情報が減る。hb(0.217)=0.523h_{\mathrm b}(0.217)=0.523、hb(0.291)=0.603h_{\mathrm b}(0.291)=0.603 で、しきい値の上では距離を上げると増え、ln⁡2=0.693\ln2=0.693 に近づく。

(2) 2hb(ε)=ln⁡22h_{\mathrm b}(\varepsilon )=\ln2、すなわち hb(ε)=0.3466h_{\mathrm b}(\varepsilon )=0.3466 を数値で解くと ε=0.1100\varepsilon =0.1100。最適な復号の表面符号のしきい値 0.10940.1094 はこの値のわずか下にある。

(3) hb(10−3)=10−3ln⁡103+0.999ln⁡(1/0.999)=6.908×10−3+0.9995×10−3=7.907×10−3h_{\mathrm b}(10^{-3})=10^{-3}\ln10^3+0.999\ln(1/0.999)=6.908\times10^{-3}+0.9995\times10^{-3}=7.907\times10^{-3} なので、上限は 49×7.907×10−3=0.387549\times7.907\times10^{-3}=0.3875 nat。熱の下限は kBT×0.3875=1.381×10−23×10−2×0.3875=5.35×10−26 Jk_{\mathrm B} T\times0.3875=1.381\times10^{-23}\times10^{-2}\times0.3875=5.35\times10^{-26}\,\mathrm J である。この値は実際の装置が1周期に出す熱よりはるかに小さく、誤り訂正の熱の下限は原理の上では問題にならない。重要なのは値の大きさよりも、捨てる操作が無ければ論理の状態を保てないという点である。

1 C. H. Bennett, D. P. DiVincenzo, J. A. Smolin and W. K. Wootters (1996), Phys. Rev. A 54, 3824。

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