解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第8章 §1.8.2 ★★★ Hamilton 方程式は第7章で Euler–Lagrange 方程式の書き換えとして出した。この章では相空間の作用の停留から、別の道筋で導く
第7章の結果:Euler–Lagrange 方程式の書き換え
第7章の全微分の計算(式 (1.7.15))を各 i について行うと、∂L/∂q˙i=pi により dq˙i を含む項が打ち消し合い、
dH=i∑(q˙idpi−∂qi∂Ldqi)−∂t∂Ldt(1.8.4)
が残る。dpi, dqi, dt の係数を読むと
∂pi∂H=q˙i,∂qi∂H=−∂qi∂L,∂t∂H=−∂t∂L(1.8.5)
が得られる。これは第7章の規則 (1.7.10) を f 自由度で書いたもので、dq˙ の項が消えたことが、H を q˙ によらない (q,p,t) の関数として扱ってよい理由になっている。
ここまでは運動方程式を使っていない。式 (1.8.5) は相空間の任意の点で成り立つ恒等式である。ここで運動方程式を入れる。Euler–Lagrange 方程式 dtd∂q˙i∂L−∂qi∂L=0 は p˙i=∂L/∂qi と書け、式 (1.8.5) の第2式で右辺を −∂H/∂qi に置き換えることができる。
命題 1.8.2(Hamilton 方程式 ★★★)
正則な Lagrangian L の Euler–Lagrange 方程式は、Hamiltonian H を使った 2f 本の1階の方程式
q˙i=∂pi∂H,p˙i=−∂qi∂H(i=1,…,f)(1.8.6)
と同値である。
証明
Euler–Lagrange 方程式から式 (1.8.6) が出ることは、第7章の式 (1.7.11) の導出を各 i について行えばよい。逆に (q(t),p(t)) が式 (1.8.6) を満たすなら、第1式と式 (1.8.5) の第1式から q˙i(t) は pi(t) に対応する速度に等しく、したがって pi(t)=∂L/∂q˙i が q(t) の速度で成り立つ。これを第2式に入れると dtd∂q˙i∂L=−∂qi∂H=∂qi∂L となり、Euler–Lagrange 方程式が出る。
2階の方程式 f 本が1階の方程式 2f 本になった。未知関数の数が倍になったかわりに、各方程式は1階で、右辺は1つの関数 H の偏微分だけで書かれている。第1式は「速度と運動量の関係」(Legendre 変換の逆)、第2式は「力の法則」にあたる。L=21mq˙2−V(q) では第1式が q˙=p/m、第2式が p˙=−V′(q) となり、合わせると mq¨=−V′(q) に戻る。
相空間の作用の停留として導く
Hamilton 方程式は、作用の停留からも直接導くことができる。式 (1.8.2) を L について解くと L=∑ipiq˙i−H なので、q(t) と p(t) の2つの関数を入れて数を返す汎関数
S[q,p]:=∫t1t2(i∑piq˙i−H(q,p,t))dt(1.8.7)
を考える。ここで p(t) は q(t) の速度から作るのでなく、q(t) とは別に選ぶ関数とする。S[q,p] を相空間の作用と呼ぶ。
第1部第3章の手順どおり、許される向きを ηi(t), ζi(t) として qi→qi+ϵηi, pi→pi+ϵζi とずらす。q の端は固定する(ηi(t1)=ηi(t2)=0)が、ζi の端には条件を付けない。δqi=ϵηi, δpi=ϵζi と書くと、第1変分は
δS=∫t1t2i∑(δpiq˙i+piδq˙i−∂qi∂Hδqi−∂pi∂Hδpi)dt.
第2項を部分積分すると、端の項 [∑ipiδqi]t1t2 は q の端の固定で 0 になり、
δS=∫t1t2i∑[(q˙i−∂pi∂H)δpi−(p˙i+∂qi∂H)δqi]dt(1.8.8)
を得る。ηi と ζi は互いに独立に選べるので、変分法の基本補題(第1部第3章)を δpi と δqi の係数それぞれに使うと、停留の条件は式 (1.8.6) と同じになる。
この導き方では、p の変分から第1式 q˙i=∂H/∂pi が出る。第1式は Legendre 変換の関係 pi=∂L/∂q˙i の言い換えなので、p を独立に動かして停留させる操作が、Legendre 変換を作用の中で行っていることになる。第1部第7章の言葉では、L(q˙)=maxp(pq˙−H(p))(H が p について凸のとき)で、最大を与える p を探す条件が q˙=∂H/∂p である。また、被積分関数が p˙ を含まないので、p の端の値を固定する必要がない。端で値を決める変数は q だけで、2f 本の1階の方程式に対して端の条件が 2f 個(両端で f 個ずつ)となり、数が合う。
例題 1.8.2 調和振動子の相空間の作用 ★★
オリジナルH=2mp2+21mω2q2 の相空間の作用 S[q,p]=∫t1t2(pq˙−H)dt について次に答えよ。
- (1) p だけをずらしたときの第1変分を計算し、停留の条件から p を q の速度で表せ。
- (2) q だけをずらしたとき(端は固定)の停留の条件を求めよ。
- (3) (1) の p を S[q,p] に代入すると、第1部第4章までの作用 S[q]=∫(21mq˙2−21mω2q2)dt に戻ることを示せ。
- (4) t1=0, t2=π/(2ω), q(0)=0, q(π/(2ω))=A の停留点で、S の値を求めよ。
解答
(1) p→p+ϵζ で δS=ϵ∫(q˙−p/m)ζdt。基本補題から p=mq˙。
(2) q→q+ϵη で δS=ϵ∫(pη˙−mω2qη)dt=−ϵ∫(p˙+mω2q)ηdt(端の項は η の端の条件で消える)。よって p˙=−mω2q。(1) と合わせると mq¨=−mω2q になる。
(3) p=mq˙ を入れると pq˙−H=mq˙2−21mq˙2−21mω2q2=21mq˙2−21mω2q2。
(4) 端の条件を満たす解は q=Asinωt, p=mωAcosωt。被積分関数は 21mω2A2(cos2ωt−sin2ωt)=21mω2A2cos2ωt で、
S=21mω2A2∫0π/(2ω)cos2ωtdt=21mω2A2⋅2ωsinπ=0.
この区間では運動エネルギーとポテンシャルの時間平均が等しく、作用の値は 0 になる。
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