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出てくるもの (1):相空間と相図

2026年10月15日14分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第8章 Hamilton 形式と相空間
目次
  1. 相空間の流れ
  2. 運動が初期条件で1つに決まる条件と、その外側
  3. 自由度1の相図
  4. 等高線から周期を出す
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第8章 §1.8.3 ★★★ 相空間の各点からは軌道がただ1本出る。自由度1で HH が時刻を含まなければ、軌道は HH の等高線そのものになる

相空間の流れ

Hamilton 方程式 (1.8.6) は、相空間の各点 (q,p)(q,p) に速度のベクトル

(q˙,p˙)=(∂H∂p, −∂H∂q)(1.8.9)\bigl(\dot q,\dot p\bigr)=\Bigl(\frac{\partial H}{\partial p},\,-\frac{\partial H}{\partial q}\Bigr)\tag{1.8.9}

を割り当てる(成分は 2f2f 個)。この速度場に沿って点を動かすことが時間発展で、これを相空間の流れと呼ぶ。右辺が滑らかなら、常微分方程式の解の存在と一意性の定理(Picard–Lindelöf。近似の数理 第2章)により、各点を通る解はただ1つに決まる。したがって HH が時刻を含まないとき、相空間の2本の軌道は交わらない。

配置空間(qq だけの空間)ではこうはならない。振り子が最下点を右向きに通る軌道と左向きに通る軌道は、配置空間では同じ点 θ=0\theta=0 を通るが、相空間では p>0p>0 と p<0p<0 の別の点を通る。配置空間で運動が決まるには位置と速度の2つを指定する必要があり、相空間ではその2つが点の座標になっている。相空間の1点が系の状態を完全に指定し、時間発展はその点の移動になる。第3部で統計力学の確率分布をこの空間の上に置く(第3部第1章)のはこのためである。

運動が初期条件で1つに決まる条件と、その外側

古典力学の決定論は、「VV と初期条件を決めれば運動が1つに決まる」という主張である。これは上の存在と一意性の定理そのもので、定理が使う仮定は、Hamilton 方程式の右辺が状態について Lipschitz 連続であることである。ある定数 KK があって、すべての点の組で

∣F(x)−F(y)∣≤K∣x−y∣\lvert F(x)-F(y)\rvert \le K\lvert x-y\rvert

が成り立つとき、関数 FF は Lipschitz 連続であるという。力の導関数が有界ならこの不等式が成り立つので、滑らかな VV では仮定は満たされている。

この仮定が崩れる例が Norton のドームである1J. D. Norton (2008), Philosophy of Science 75, 786–798.下の脚注へ。頂上から面に沿って測った距離を r≥0r\ge0 とし、頂上の近くでポテンシャルが

V(r)=−23ma r3/2(a>0)V(r)=-\frac23ma\,r^{3/2}\qquad(a>0)

となる形の面の上に、質量 mm の質点を置く。力は −V′(r)=ma r1/2-V'(r)=ma\,r^{1/2} で、その導関数は r−1/2r^{-1/2} に比例して頂上で発散する。したがって頂上 r=0r=0 では Lipschitz 連続でない。

運動方程式 r¨=a r1/2\ddot r=a\,r^{1/2} には、頂上で静止したままの解 r(t)=0r(t)=0 がある。それとは別に、任意の時刻 TT まで静止していてから滑り出す解

r(t)={0(t≤T)a2144(t−T)4(t>T)(1.8.10)r(t)=\begin{cases}0&(t\le T)\\[2pt] \dfrac{a^2}{144}(t-T)^4&(t>T)\end{cases}\tag{1.8.10}

もある。代入すると r¨=a212(t−T)2=a r1/2\ddot r=\frac{a^2}{12}(t-T)^2=a\,r^{1/2} を満たす。時刻 TT では位置・速度・加速度のどれも 00 で、2つの区間は連続につながる。頂上で静止という同じ初期条件から、滑り出す時刻 TT の違う解が無数に出るので、運動は1つに決まらない。

一意に決まることと、先の状態を予測できることは別である。初期値の小さなずれが、正の定数 λ\lambda を使って δ eλt\delta\,\mathrm{e}^{\lambda t} のように指数関数で広がる系を、カオス的であるという。

この系では、解が1つに決まっていても、初期値を有限の精度でしか知らなければ先の状態は予測できない。予測できる時間は、系の大きさを ℓ\ell として λ−1ln⁡(ℓ/δ)\lambda^{-1}\ln(\ell/\delta) ほどである。

さらに多粒子の系では、初期条件そのものを測っていない。統計力学が1本の軌道でなく、相空間に広げた点の集まり(アンサンブル)を追うのはこのためである(第3部第1章)。量子力学の時間発展が同じ意味で決定論的であることと、確率がどこで入るかは第4部第2章で述べる。

例題 1.8.3 ドームの頂上と、滑らかな山の頂上 ★★

オリジナル直線 r≥0r\ge0 の上の質点が、次の2つのポテンシャルのどちらかを受ける。

(A) VA(r)=−23ma r3/2,(B) VB(r)=−12mκ r2(a,κ>0).\text{(A)}\ V_{\mathrm A}(r)=-\frac23ma\,r^{3/2},\qquad\text{(B)}\ V_{\mathrm B}(r)=-\frac12m\kappa\,r^2\qquad(a,\kappa>0).

  1. (1) (A) の運動方程式に冪の形 r(t)=c tnr(t)=c\,t^n を入れ、時刻 00 に頂上で静止していた質点の、恒等的に 0 でない解になる指数と係数を求めよ。
  2. (2) a=1 m1/2 s−2a=1\,\mathrm{m^{1/2}\,s^{-2}} のとき、(1) の解が r=1 mr=1\,\mathrm m に達する時刻を求めよ。
  3. (3) (B) で、頂上から少し離れた点 r0>0r_0>0 に静止させた質点の解を求めよ。数値は κ=1 s−2\kappa=1\,\mathrm{s^{-2}} と r0=10−6 mr_0=10^{-6}\,\mathrm m とし、距離が 1 m に達する時刻を求めよ。
  4. (4) (B) で r0→0r_0\to0 とすると (3) の時刻はどうなるか。(A) と (B) で頂上からの滑り出し方が違う理由を、力の Lipschitz 連続性で説明せよ。
解答

(1) 運動方程式は r¨=a r1/2\ddot r=a\,r^{1/2} である。r=ctnr=ct^n を入れると

n(n−1)c tn−2=a c1/2tn/2.n(n-1)c\,t^{n-2}=a\,c^{1/2}t^{n/2}.

両辺の冪と係数をそろえると

n−2=n2 ⇒ n=4,12c=a c1/2 ⇒ c=a2144n-2=\frac n2\ \Rightarrow\ n=4,\qquad 12c=a\,c^{1/2}\ \Rightarrow\ c=\frac{a^2}{144}

である。r(0)=r˙(0)=0r(0)=\dot r(0)=0 も満たすので、式 (1.8.10) の T=0T=0 の解になる。

(2) (1) の解を時刻について解き、数値を入れる。

t=(144 ra2)1/4=(144×1 m1 m s−4)1/4=1441/4 s=3.46 s.t=\Bigl(\frac{144\,r}{a^2}\Bigr)^{1/4}=\Bigl(\frac{144\times1\,\mathrm m}{1\,\mathrm{m\,s^{-4}}}\Bigr)^{1/4}=144^{1/4}\,\mathrm s=3.46\,\mathrm s .

(3) 運動方程式は r¨=κr\ddot r=\kappa r で、初期条件から r(t)=r0cosh⁡(κ t)r(t)=r_0\cosh(\sqrt\kappa\,t) である。r=1 mr=1\,\mathrm m に達する時刻は

t=1κarccosh⁡1 mr0=arccosh⁡(106) s=14.5 s.t=\frac{1}{\sqrt\kappa}\operatorname{arccosh}\frac{1\,\mathrm m}{r_0}=\operatorname{arccosh}(10^6)\,\mathrm s=14.5\,\mathrm s .

(4) (3) の時刻は、出発点を頂上へ近づけると ln⁡(2/r0)/κ\ln(2/r_0)/\sqrt\kappa のように対数で発散する。出発点が頂上ちょうど(r0=0r_0=0)なら、質点は頂上を離れない。

(B) の力 mκrm\kappa r は Lipschitz 連続(定数 K=κK=\kappa)なので、頂上で静止した解は静止し続ける解だけに限られる。(A) の力 ma r1/2ma\,r^{1/2} は r=0r=0 で傾きが無限大になり、一意性の定理の仮定が成り立たない。そのため頂上の静止から有限の時間で滑り出す解が残る。

自由度1の相図

自由度が1で HH が時刻を含まないとき、次の節で示すように HH の値は運動の間変わらない。したがって軌道は H(q,p)=EH(q,p)=E の等高線の上を動く。等高線を何本か描いた図を相図と呼ぶ。運動方程式を解かなくても、等高線を描けば軌道の形がわかる。

長さ ll の糸につるした質量 mm の振り子では、鉛直下向きからの角度を θ\theta として L=12ml2θ˙2+mglcos⁡θL=\frac12ml^2\dot\theta^2+mgl\cos\theta、p=ml2θ˙p=ml^2\dot\theta、

H(θ,p)=p22ml2−mglcos⁡θ(1.8.11)H(\theta,p)=\frac{p^2}{2ml^2}-mgl\cos\theta\tag{1.8.11}

である。Hamilton 方程式は θ˙=p/(ml2)\dot\theta=p/(ml^2), p˙=−mglsin⁡θ\dot p=-mgl\sin\theta となる。図 1.8.1 は m=l=g=1m=l=g=1 の単位でこの HH の等高線を描いたものである。

図

図 1.8.1 振り子の相図(m=l=g=1m=l=g=1)。点線は HH の等高線(厳密)で、内側から H=−0.75, −0.25, 0.5H=-0.75,\,-0.25,\,0.5(往復運動)、太い点線が H=1H=1 のセパラトリクス、上下の点線が H=1.6H=1.6(回転)。実線の楕円は同じ HH の値で cos⁡θ≈1−θ2/2\cos\theta\approx1-\theta^2/2 と近似した小振動の等高線。黒丸は安定な平衡点 θ=0\theta=0、白丸は不安定な平衡点 θ=±π\theta=\pm\pi(同じ点)

図から運動の種類が3つ読み取れる。−mgl<H<mgl-mgl<H<mgl では等高線は原点を囲む閉曲線で、振り子は往復運動をする。H>mglH>mgl では pp が符号を変えず、振り子は一方向に回り続ける。その境目の H=mglH=mgl の等高線は、最上点 θ=±π\theta=\pm\pi(p=0p=0)を通る曲線で、セパラトリクス(分離線)と呼ぶ。セパラトリクスの上では p22ml2=mgl(1+cos⁡θ)=2mglcos⁡2θ2\frac{p^2}{2ml^2}=mgl(1+\cos\theta)=2mgl\cos^2\frac\theta2 なので

p=±2ml2glcos⁡θ2(1.8.12)p=\pm2ml^2\sqrt{\frac gl}\cos\frac\theta2\tag{1.8.12}

となり、最上点に近づくにつれて p→0p\to0 になる。

平衡点は θ˙=p˙=0\dot\theta=\dot p=0、すなわち ∂H/∂p=∂H/∂θ=0\partial H/\partial p=\partial H/\partial\theta=0 の点で、θ=0\theta=0 と θ=π\theta=\pi である。平衡点のまわりで Hamilton 方程式を1次まで展開すると性質が分かれる。θ=0\theta=0 のまわりでは p˙≈−mgl θ\dot p\approx-mgl\,\theta で、解は角振動数 ω0=g/l\omega_0=\sqrt{g/l} の振動になる(等高線は楕円)。θ=π+φ\theta=\pi+\varphi のまわりでは p˙≈+mgl φ\dot p\approx+mgl\,\varphi で、解は e±ω0t\mathrm{e}^{\pm\omega_0t} のように指数関数的に増えるか減る(等高線は双曲線で、点は鞍点になる)。Hamilton 方程式の1次の部分の行列はどちらの場合も対角成分の和が 00 なので、2つの固有値は和が 00 の組 ±iω0\pm\mathrm{i}\omega_0 か ±ω0\pm\omega_0 になる。固有値の実部がすべて負になる平衡点(摩擦のある系の漸近安定な点)は、Hamilton 方程式の流れには現れない。

等高線から周期を出す

往復運動の周期は、等高線の上で時間を足し合わせれば求まる。振幅を θ0\theta_0 とすると H=−mglcos⁡θ0H=-mgl\cos\theta_0 で、等高線の上では θ˙=p/(ml2)=2(g/l)(cos⁡θ−cos⁡θ0)\dot\theta=p/(ml^2)=\sqrt{2(g/l)(\cos\theta-\cos\theta_0)} なので、

Tp(θ0)=4∫0θ0dθθ˙=4lg∫0θ0dθ2(cos⁡θ−cos⁡θ0)(1.8.13)T_{\mathrm p}(\theta_0)=4\int_0^{\theta_0}\frac{\mathrm{d}\theta}{\dot\theta}=4\sqrt{\frac lg}\int_0^{\theta_0}\frac{\mathrm{d}\theta}{\sqrt{2(\cos\theta-\cos\theta_0)}}\tag{1.8.13}

となる(44 は 0→θ00\to\theta_0 の4分の1周期が4回で1周期になることから)。θ0→0\theta_0\to0 では cos⁡θ−cos⁡θ0≈(θ02−θ2)/2\cos\theta-\cos\theta_0\approx(\theta_0^2-\theta^2)/2 で、積分は π/2\pi/2 になり、Tp→2πl/gT_{\mathrm p}\to2\pi\sqrt{l/g} に戻る。振幅が大きくなると周期は長くなる。セパラトリクスに近づくと、最上点の近くで θ˙\dot\theta が 00 に近づくので、周期は限りなく長くなる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 振幅 θ0→0\theta_0\to0(cos⁡θ≈1−θ2/2\cos\theta\approx1-\theta^2/2 と2次で打ち切る) | 証明 条件付き(ポテンシャルの極小が非退化 V′′>0V''>0。小振動の軌道が平衡点から離れないことは HH の保存を Lyapunov 関数に使って言える。周期のずれは θ02\theta_0^2 の大きさ) | 行き先 近似の数理 第2章

例題 1.8.4 振り子の相図を読む ★★

オリジナル長さ l=1.00 ml=1.00\,\mathrm m の振り子を g=9.81 m s−2g=9.81\,\mathrm{m\,s^{-2}} の下で考える(mm は任意)。

  1. (1) セパラトリクスの上で、最下点 θ=0\theta=0 での p/mp/m の値を求めよ。これより大きな pp で最下点を通る振り子はどう運動するか。
  2. (2) 振幅 θ0=π/3\theta_0=\pi/3 のとき、周期 (1.8.13) と小振動の周期 2πl/g2\pi\sqrt{l/g} の比を数値で求めよ。
  3. (3) 式 (1.8.13) の被積分関数を θ0\theta_0 について展開し、比が 1+θ02/16+O(θ04)1+\theta_0^2/16+\mathcal{O}(\theta_0^4) となることを示し、(2) と比べよ。
解答

(1) 式 (1.8.12) で θ=0\theta=0 とおくと p/m=2l2g/l=2gl3=29.81≈6.26 m2 s−1p/m=2l^2\sqrt{g/l}=2\sqrt{gl^3}=2\sqrt{9.81}\approx6.26\,\mathrm{m^2\,s^{-1}}。最下点での角速度にすると θ˙=p/(ml2)=6.26 s−1\dot\theta=p/(ml^2)=6.26\,\mathrm{s^{-1}} で、速さは 6.26 m s−16.26\,\mathrm{m\,s^{-1}} である(12v2=2gl\frac12v^2=2gl と同じ)。これより大きな pp では H>mglH>mgl となり、相図の等高線は回転の曲線になる。振り子は最上点で止まらずに回り続ける。

(2) 置き換え sin⁡(θ/2)=ksin⁡ϕ\sin(\theta/2)=k\sin\phi, k=sin⁡(θ0/2)k=\sin(\theta_0/2) を使うと、式 (1.8.13) はTp=4l/g K(k)T_{\mathrm p}=4\sqrt{l/g}\,K(k), K(k)=∫0π/2dϕ/1−k2sin⁡2ϕK(k)=\int_0^{\pi/2}\mathrm{d}\phi/\sqrt{1-k^2\sin^2\phi} と書ける。θ0=π/3\theta_0=\pi/3 では k=1/2k=1/2, K=1.6858K=1.6858 で、比は 2K/π=1.07322K/\pi=1.0732。60° の振幅で周期は約 7% 長くなる。

(3) K(k)=π2(1+k24+O(k4))K(k)=\frac\pi2\bigl(1+\frac{k^2}{4}+\mathcal{O}(k^4)\bigr)(被積分関数を k2sin⁡2ϕk^2\sin^2\phi について展開し、∫0π/2sin⁡2ϕ dϕ=π/4\int_0^{\pi/2}\sin^2\phi\,\mathrm{d}\phi=\pi/4 を使う)とk2=sin⁡2(θ0/2)=θ02/4+O(θ04)k^2=\sin^2(\theta_0/2)=\theta_0^2/4+\mathcal{O}(\theta_0^4) から、比 =2K/π=1+θ02/16+O(θ04)=2K/\pi=1+\theta_0^2/16+\mathcal{O}(\theta_0^4)。θ0=π/3\theta_0=\pi/3 では 1+0.0685=1.06851+0.0685=1.0685 で、(2) の 1.07321.0732 との差 0.00470.0047 は θ04\theta_0^4 の項にあたる(次の項は 11θ04/3072=0.004311\theta_0^4/3072=0.0043)。

1 J. D. Norton (2008), Philosophy of Science 75, 786–798.

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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