解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第8章 §1.8.6 ★★ Newton の方程式を「位置と速度」の1階の連立方程式に直す書き方と、エネルギー積分の導き方は、Hamilton 方程式と dH/dt=∂H/∂t の特別な場合
1階の連立方程式とエネルギー積分
力学の授業では、1次元の運動方程式 mx¨=F(x)=−V′(x) を、速度 v=x˙ を新しい未知関数として
x˙=v,mv˙=−V′(x)(1.8.20)
と1階の連立方程式に直すことが多い。微分方程式の授業では、(x,v) の平面を「相平面」と呼んで解曲線を描く。また、運動方程式の両辺に x˙ を掛けて
mx˙x¨+V′(x)x˙=dtd(21mx˙2+V(x))=0(1.8.21)
とし、力学的エネルギーの保存を出す(エネルギー積分)。
この章の形と並べると、次の対応になる。
| 授業での形 | この章の形 |
| 変数 | 位置 x と速度 v=x˙ | 一般化座標 q と正準運動量 p=∂L/∂q˙ |
| 1階の方程式 | x˙=v, mv˙=F | q˙=∂H/∂p, p˙=−∂H/∂q |
| エネルギー | 21mx˙2+V(x) | H(q,p,t)=∑pq˙−L |
| 保存の導き方 | 両辺に x˙ を掛ける | dtdH=∂t∂H(式 (1.8.14)) |
| 平面の図 | 相平面 (x,v) | 相空間 (q,p) |
直交座標の粒子では p=mv なので、2つの形は質量を掛ける違いしかない。エネルギー積分で x˙ を掛ける操作は、式 (1.8.14) の連鎖律の計算を具体的な H について行ったものにあたる。一般化座標の運動量が速度に比例しないときは、2つの形が別物になる。極座標の pθ=mr2θ˙ は角速度に r に依存する係数が掛かったもので、電磁場の中では p=mv+qA になる(第2部第2章)。「x˙ を掛ける」操作は、一般の座標では何を掛ければよいかが分からないが、式 (1.8.14) はどの座標でも同じ計算で済む。
相平面 (x,v) と相空間 (q,p) の違いは、面積を保つかどうかに現れる。次の例題で、質量が位置によって変わる系を使って確かめる。量子力学で p^=−iℏ∂/∂q に置き換える量も、速度でなく正準運動量である。Schrödinger 方程式は Hamiltonian H^(q^,p^) から作られる(第4部第2章)。
例題 1.8.7 相平面 (q,q˙) と相空間 (q,p) の面積 ★★
オリジナルM(q)>0 を滑らかな関数として、自由度1の Lagrangian L=21M(q)q˙2 を考える(たとえば曲がった針金に沿って動くビーズで、q を針金に沿った長さ以外の座標にとった場合)。
- (1) p と H を求め、Hamilton 方程式を書け。
- (2) (q,p) での速度場の発散が 0 であることを確かめよ。
- (3) v=q˙ を使って運動方程式を q˙=v, v˙=G(q,v) の形に直し、(q,v) での速度場の発散を求めよ。
- (4) M(q)=1+q2, (q,v)=(1,1) の点で、(3) の発散の値を求めよ。
解答
(1) p=M(q)q˙, H=2M(q)p2。Hamilton 方程式は q˙=Mp, p˙=−∂q∂H=2M2M′p2。
(2) ∂q∂q˙+∂p∂p˙=−M2M′p+M2M′p=0。
(3) Euler–Lagrange 方程式 dtd(Mq˙)=21M′q˙2 から Mv˙+M′v2=21M′v2、すなわち v˙=−2MM′v2。(q,v) での発散は ∂q∂v+∂v∂v˙=0−MM′v=−M(q)M′(q)v で、一般に 0 でない。
(4) M′=2q なので発散は −2qv/(1+q2)=−2/2=−1。この点の近くの小さな領域は (q,v) の平面では面積が単位時間あたり割合 1 で縮むが、(q,p) の平面では面積が変わらない。面積を保つ性質は正準運動量 p を使ったときに成り立つもので、速度 v を使った平面では一般に成り立たない。
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