解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第6章 §2.6.2 ★★★ 4つの場 Aν のそれぞれに場の Euler–Lagrange 方程式を当てる。必要な微分は ∂(FαβFαβ)/∂(∂μAν)=4Fμν の1つだけ
前の章から借りる式
第2部第5章では、式 (2.6.1) の作用を場 φa について停留させる条件として、
∂μ∂(∂μφa)∂L−∂φa∂L=0(a ごとに1本)(2.6.8)
を導いた。粒子の Euler–Lagrange 方程式 dtd∂q˙i∂L−∂qi∂L=0(第1部第4章)の dtd が、時間と空間の4つの微分 ∂μ の和に置き換わった形である。L を ∂μφa で偏微分するときは、φa と16個の ∂μφa をすべて独立な変数とみなす。
電磁場では φa を Aν(ν=0,1,2,3)に取るので、式 (2.6.8) は
∂μ∂(∂μAν)∂L−∂Aν∂L=0(ν=0,1,2,3)(2.6.9)
の4本になる。
必要な2つの偏微分
∂L/∂Aν は相互作用の項からだけ出る。JμAμ を Aν で微分すると
∂Aν∂L=−Jν(2.6.10)
である。
∂L/∂(∂μAν) は場だけの項からだけ出る。∂μAν を16個の独立な変数 gμν とみなすと、Fαβ=gαβ−gβα なので
∂gμν∂Fαβ=δμαδνβ−δμβδνα
である。FαβFαβ=FαβFγδηαγηβδ は F の2次式で、2つの因子のどちらを微分しても同じ寄与なので、
∂(∂μAν)∂(FαβFαβ)=2Fαβ(δμαδνβ−δμβδνα)=2(Fμν−Fνμ)=4Fμν(2.6.11)
となる。したがって
∂(∂μAν)∂L=−μ01Fμν(2.6.12)
である。
A0 の時間微分は L に入らない
式 (2.6.12) で μ=ν=0 と置くと、F00=0 なので ∂L/∂(∂0A0)=0 になる。第2部第5章の言葉では、場 A0=ϕ/c に共役な正準運動量 π0 が恒等的に 0 である。ϕ は Lagrangian 密度の中で時間微分を持たず、粒子の力学で言えば質量が 0 の座標に当たる。そのため ϕ についての Euler–Lagrange 方程式(次の節の Gauss の法則)は時間の2階微分を含まず、各時刻の場に課される条件(拘束)になる。この拘束がゲージの自由度とどう結びつくかは第2部第8章で扱う。
例題 2.6.2 3次元の形のまま4つの場を変分する ★★
オリジナル式 (2.6.7) の第2の形を、場 ϕ,Ax,Ay,Az とその微分の関数とみなす。
- (1) ϕ について式 (2.6.8) を書き下し、∇⋅E=ρ/ε0 になることを示せ。
- (2) Ax について同じことを行い、μ01(∇×B)x−ε0∂tEx=Jx になることを示せ。
解答
3次元の形では、式 (2.6.8) の和 ∂μ∂L/∂(∂μφ) を∂t∂L/∂(∂tφ)+∑i∂i∂L/∂(∂iφ) と書く(d4x=cdtd3x の c と ∂0=c1∂t の c1 が打ち消すので、この形でよい)。
(1) ϕ の微分は第1項の ∇ϕ にだけ入り、ϕ そのものは −ρϕ にだけ入る。
∂(∂tϕ)∂L=0,∂(∂iϕ)∂L=ε0(∂iϕ+∂t∂Ai)=−ε0Ei,∂ϕ∂L=−ρ.
よって ∑i∂i(−ε0Ei)−(−ρ)=0、すなわち ∇⋅E=ρ/ε0。
(2) ∂tAx は第1項にだけ入り、∂L/∂(∂tAx)=ε0(∂xϕ+∂tAx)=−ε0Ex。空間微分は B2 に入る。Ax の空間微分を含む成分は Bz=∂xAy−∂yAx と By=∂zAx−∂xAz なので
∂(∂yAx)∂L=−μ0Bz⋅(−1)=μ0Bz,∂(∂zAx)∂L=−μ0By,∂(∂xAx)∂L=0,∂Ax∂L=Jx.
Euler–Lagrange 方程式は
∂t(−ε0Ex)+∂yμ0Bz−∂zμ0By−Jx=0,
(∇×B)x=∂yBz−∂zBy なので、示す式になる。Ay,Az でも同じ計算で y,z 成分が出る。(1) で ϕ の時間微分が現れず、(2) では ∂t2Ax が −ε0∂tEx の中に入っていることが、上の注意の内容である。
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