解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第8章 §2.8.3 ★★★ 結合の項 −JμAμ がゲージ不変であることと、源の電荷が保存することは同じ条件である
結合の項のゲージ変換
作用 (2.8.2) のうち源との結合の項 S結合=−c1∫JμAμd4x はゲージ変換 (2.8.4) で
S結合 ⟶ S結合+c1∫Jμ∂μΛd4x=S結合+c1∫∂μ(JμΛ)d4x−c1∫Λ∂μJμd4x(2.8.12)
と変わる。右辺の2項目は全微分なので、Λ が有界な領域の外で 0 なら消える。3項目は、Λ を勝手に選べるので、
∂μJμ=∂t∂ρ+∇⋅J=0(2.8.13)
が各点で成り立つときに限り、すべての Λ で消える。つまり、作用全体がゲージ不変であることと源の電荷が保存すること(連続の方程式)は同値である。
同じ結論は運動方程式の側からも出る。Maxwell 方程式 (2.8.3) の両辺の発散を取ると、左辺は恒等式 (2.8.11) で 0 になるので
μ0∂νJν=∂ν∂μFμν=0(2.8.14)
を得る。源を外から与えるとき、それが連続の方程式を満たしていなければ、Maxwell 方程式を満たす Aμ は1つも無い。定理 2.8.1 で言えば、作用全体の Euler–Lagrange 式は Eν=μ01∂μFμν−Jν で、その発散は −∂νJν である。定理の仮定(作用がゲージ不変)が成り立つためには、これが 0 でなければならない。
第2部第7章の電荷の保存との関係
第2部第7章では、荷電粒子の場(複素数の場 ψ)の Lagrangian 密度が大域的な位相の取り替え ψ→eiqΛ/ℏψ(Λ は定数)で変わらないことから、第1定理で電流 Jμ とその保存を出した。ゲージ変換を電磁場と物質の両方に当てる場合(Aμ→Aμ−∂μΛ と ψ→eiqΛ(x)/ℏψ を同時に行う。記法の正本 §3 の流儀)、Λ が定数のものは電磁場を動かさず ψ の位相だけを回すので、第2部第7章の大域的な変換はゲージ変換の特別な場合である。物質の作用がゲージ不変であれば、第2定理から ∂νJν は物質の Euler–Lagrange 式の組み合わせに恒等的に等しくなり、物質が運動方程式に従えば 0 になる。したがって2つの道は、保存則の出どころを別の角度から見ている。第1定理は「物質が運動方程式に従えば電荷が保存する」と言い、第2定理は「電荷が保存しなければ電磁場の方程式が解けない」と言う。局所的なゲージ不変性を出発点にして相互作用の形を決める見方(ゲージ原理)は、第5部第5章で量子場について扱う。
点電荷の場合
点電荷が経路 r(t) を動くとき、電荷密度と電流密度は ρ=qδ(3)(x−r(t))、J=qr˙δ(3)(x−r(t)) で、
∂t∂ρ=−qr˙⋅∇δ(3)(x−r(t))=−∇⋅J
なので連続の方程式は自動的に満たされる。これを結合の項に入れると −c1∫JμAμd4x=∫(−qϕ+qr˙⋅A)dt となり、粒子の作用 (2.8.1) の相互作用の部分に一致する。そのゲージ変換は式 (2.8.7) から q[Λ(r(t),t)]t1t2 で、世界線の両端の値しか残らない。世界線が途中で途切れる(電荷が消える)と、その端で Λ の値が残ってゲージ不変性が破れる。ゲージ不変性は「電荷の世界線は途切れない」という要求として読むこともできる。
例題 2.8.3 増えていく点電荷と、それを補う電流 ★★★
オリジナル原点にある点電荷の大きさが q(t)=q0+αt(α は定数)で増えていく。
- (1) 電流が J=0 のままなら、Maxwell 方程式が解を持たないことを示せ。
- (2) 電流密度 J=−4πr2αer(er は動径方向の単位ベクトル)を足すと、連続の方程式 (2.8.13) が満たされることを示せ。
- (3) (2) の源に対して、E=4πε0r2q(t)er、B=0 が Gauss の法則と Ampère–Maxwell の法則を満たすことを確かめよ。
解答
(1) J=0 なら ∂νJν=∂tρ=αδ(3)(x)=0 で、解が存在するための条件 (2.8.14) が破れる。具体的には、Gauss の法則から原点を囲む球面の E の流束は q(t)/ε0 で時間とともに増える。Ampère–Maxwell の法則の発散を取ると0=∇⋅(∇×B)=μ0ε0∂t(∇⋅E)=μ0αδ(3)(x) となり矛盾する。
(2) r>0 では ∇⋅J=r21∂r∂(r2Jr)=r21∂r∂(−4πα)=0。原点を囲む半径 r の球面から出ていく電流は 4πr2Jr=−α で、毎秒 α の電荷が外から原点へ流れ込む。したがって ∇⋅J=−αδ(3)(x) で、∂tρ+∇⋅J=αδ(3)−αδ(3)=0。
(3) Gauss の法則:半径 r の球面の流束は 4πr2⋅4πε0r2q(t)=ε0q(t) で、中の電荷 q(t) に合う。Ampère–Maxwell の法則:B=0 なので左辺は 0、右辺は
μ0J+μ0ε0∂t∂E=μ0(−4πr2α+ε0⋅4πε0r2α)er=0.
流れ込む電流と変位電流 ε0∂tE がちょうど打ち消し合う。電荷が保存するように源を直したので、方程式は解を持つ。
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