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当てる道具:計量の変分

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第15章 Einstein–Hilbert 作用と Einstein 方程式
目次
  1. 変える変数は逆計量
  2. 体積要素の変分
  3. Ricci テンソルの変分(Palatini の恒等式)
  4. 共変発散は境界の項になる
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第15章 §2.15.2 ★★★ −g\sqrt{-g}・逆計量・RμνR_{\mu\nu} の変分の3つの公式をそろえ、δRμν\delta R_{\mu\nu} の寄与が全発散になることを示す

変える変数は逆計量

場の Euler–Lagrange 方程式(第2部第5章)は、場の本数だけの方程式を出す。計量は対称なので独立な成分が10本ある。変数には gμνg_{\mu\nu} を取っても逆計量 gμνg^{\mu\nu} を取ってもよく、計算が短くなる gμνg^{\mu\nu} を取る。gμαgαν=δμνg^{\mu\alpha}g_{\alpha\nu}=\delta^\mu{}_\nu を変分すると δgμα gαν+gμαδgαν=0\delta g^{\mu\alpha}\,g_{\alpha\nu}+g^{\mu\alpha}\delta g_{\alpha\nu}=0 なので、

δgμν=−gμαgνβ δgαβ(2.15.5)\delta g_{\mu\nu}=-g_{\mu\alpha}g_{\nu\beta}\,\delta g^{\alpha\beta}\tag{2.15.5}

である。2つの変数の取り方は、この式で互いに移り合う。

体積要素の変分

行列 MM の行列式の変分は δdet⁡M=det⁡M Tr⁡(M−1δM)\delta\det M=\det M\,\operatorname{Tr}(M^{-1}\delta M) である(Jacobi の公式。ln⁡det⁡M=Tr⁡ln⁡M\ln\det M=\operatorname{Tr}\ln M を変分すると出る)。M=gμνM=g_{\mu\nu} に当てると δg=g gμνδgμν=−g gμνδgμν\delta g=g\,g^{\mu\nu}\delta g_{\mu\nu}=-g\,g_{\mu\nu}\delta g^{\mu\nu}(2つめの等号は式 (2.15.5))なので、

δ−g=−δg2−g=−12−g gμν δgμν(2.15.6)\delta\sqrt{-g}=-\frac{\delta g}{2\sqrt{-g}}=-\frac12\sqrt{-g}\,g_{\mu\nu}\,\delta g^{\mu\nu}\tag{2.15.6}

を得る。

Ricci テンソルの変分(Palatini の恒等式)

R=gμνRμνR=g^{\mu\nu}R_{\mu\nu} の変分は δR=Rμνδgμν+gμνδRμν\delta R=R_{\mu\nu}\delta g^{\mu\nu}+g^{\mu\nu}\delta R_{\mu\nu} である。第2項を調べる。Christoffel 記号はテンソルでないが、2つの接続の差 δΓρμν\delta\Gamma^\rho{}_{\mu\nu} はテンソルになる。座標変換で Christoffel 記号に足される非斉次の項は計量によらず、差を取ると消えるからである。ある点のまわりで Γρμν=0\Gamma^\rho{}_{\mu\nu}=0 になる座標(第2部第13章)を選ぶと、その点で Riemann テンソルの定義の ΓΓ\Gamma\Gamma の項の変分は消え、δRρσμν=∂μδΓρνσ−∂νδΓρμσ\delta R^\rho{}_{\sigma\mu\nu}=\partial_\mu\delta\Gamma^\rho{}_{\nu\sigma}-\partial_\nu\delta\Gamma^\rho{}_{\mu\sigma} が残る。この点では ∂\partial を ∇\nabla に置き換えてよく、両辺ともテンソルなので、どの座標でも

δRμν=∇ρ δΓρνμ−∇ν δΓρρμ(2.15.7)\delta R_{\mu\nu}=\nabla_\rho\,\delta\Gamma^\rho{}_{\nu\mu}-\nabla_\nu\,\delta\Gamma^\rho{}_{\rho\mu}\tag{2.15.7}

が成り立つ(Palatini の恒等式)。∇g=0\nabla g=0 を使って gμνg^{\mu\nu} を微分の中へ入れると

gμνδRμν=∇σWσ,Wσ≔gμνδΓσμν−gμσδΓλλμ(2.15.8)g^{\mu\nu}\delta R_{\mu\nu}=\nabla_\sigma W^\sigma,\qquad W^\sigma\coloneqq g^{\mu\nu}\delta\Gamma^\sigma{}_{\mu\nu}-g^{\mu\sigma}\delta\Gamma^\lambda{}_{\lambda\mu}\tag{2.15.8}

となり、gμνδRμνg^{\mu\nu}\delta R_{\mu\nu} はベクトル WσW^\sigma の共変発散になる。

共変発散は境界の項になる

ベクトル VσV^\sigma の共変発散は、Γλλσ=∂σln⁡−g\Gamma^\lambda{}_{\lambda\sigma}=\partial_\sigma\ln\sqrt{-g}(これも Jacobi の公式から出る)を使うと

−g ∇σVσ=−g (∂σVσ+ΓλλσVσ)=∂σ(−g Vσ)(2.15.9)\sqrt{-g}\,\nabla_\sigma V^\sigma=\sqrt{-g}\,(\partial_\sigma V^\sigma+\Gamma^\lambda{}_{\lambda\sigma}V^\sigma)=\partial_\sigma\bigl(\sqrt{-g}\,V^\sigma\bigr)\tag{2.15.9}

と普通の発散に書ける。したがって ∫−g ∇σWσ d4x\int\sqrt{-g}\,\nabla_\sigma W^\sigma\,\mathrm{d}^4x は、第2部第5章の発散定理で境界の面積分になる。第1部で端を固定した変分を考えたのと同じく、領域の境界で変分が 00 なら、この項は場の方程式に寄与しない。

ただし WσW^\sigma は δΓ\delta\Gamma、つまり δgμν\delta g^{\mu\nu} の微分を含む。境界で δgμν=0\delta g^{\mu\nu}=0 と決めても、その法線方向の微分までは 00 にならないので、境界の項は一般には残る。これを打ち消すために、境界の外的曲率のトレース KK を境界の体積要素で積分した項を作用に足す。係数の大きさは c3/(8πG)c^3/(8\pi G) で、符号は SgS_{\mathrm g} の符号と法線の向きの約束で決まる。この項を Gibbons–Hawking の境界項と呼ぶ(J. W. York (1972), Phys. Rev. Lett. 28, 1082;G. W. Gibbons, S. W. Hawking (1977), Phys. Rev. D 15, 2752)。この章では結果だけを使う。境界の項を正しく足すと、境界で計量だけを固定した変分問題が意味を持ち、場の方程式は下の 2.15.3節のものになる。この境界項は、ブラックホールのエントロピーを Euclid 作用から出す計算(第5部第12章)で値を持つ。

例題 2.15.2 一定の倍率で計量を伸ばす ★★

オリジナル計量を一定の数 1+ϵ1+\epsilon 倍する変分 gμν→(1+ϵ)gμνg_{\mu\nu}\to(1+\epsilon)g_{\mu\nu}(ϵ\epsilon は時空によらない微小な数)を考える。

  1. (1) δgμν\delta g^{\mu\nu} を ϵ\epsilon の1次で求め、式 (2.15.6) から δ−g\delta\sqrt{-g} を求めよ。直接 −g\sqrt{-g} を計算した結果と比べよ。
  2. (2) Christoffel 記号と RμνR_{\mu\nu} が変わらないことを示し、δR\delta R と δ(−g R)\delta(\sqrt{-g}\,R) を求めよ。
  3. (3) (2) の結果が、一般の公式 δ(−g R)=−g Gμνδgμν+−g ∇σWσ\delta(\sqrt{-g}\,R)=\sqrt{-g}\,G_{\mu\nu}\delta g^{\mu\nu}+\sqrt{-g}\,\nabla_\sigma W^\sigma と合うことを確かめよ。
解答

(1) 逆計量は (1+ϵ)−1gμν(1+\epsilon)^{-1}g^{\mu\nu} になるので δgμν=−ϵgμν\delta g^{\mu\nu}=-\epsilon g^{\mu\nu}。式 (2.15.6) からδ−g=−12−g gμν(−ϵgμν)=12ϵ−g δμμ=2ϵ−g\delta\sqrt{-g}=-\frac12\sqrt{-g}\,g_{\mu\nu}(-\epsilon g^{\mu\nu})=\frac12\epsilon\sqrt{-g}\,\delta^\mu{}_\mu=2\epsilon\sqrt{-g}。直接には、4行4列の行列式が (1+ϵ)4(1+\epsilon)^4 倍になるので −g→(1+ϵ)2−g≈(1+2ϵ)−g\sqrt{-g}\to(1+\epsilon)^2\sqrt{-g}\approx(1+2\epsilon)\sqrt{-g} で、一致する。

(2) Γρμν=12gρσ(∂g+∂g−∂g)\Gamma^\rho{}_{\mu\nu}=\frac12g^{\rho\sigma}(\partial g+\partial g-\partial g) は逆計量の (1+ϵ)−1(1+\epsilon)^{-1} と計量の微分の (1+ϵ)(1+\epsilon) が打ち消すので変わらない。RμνR_{\mu\nu} は Γ\Gamma とその微分だけで書けるので変わらない。したがって δR=δgμνRμν=−ϵR\delta R=\delta g^{\mu\nu}R_{\mu\nu}=-\epsilon R、δ(−g R)=2ϵ−g R−ϵ−g R=ϵ−g R\delta(\sqrt{-g}\,R)=2\epsilon\sqrt{-g}\,R-\epsilon\sqrt{-g}\,R=\epsilon\sqrt{-g}\,R。

(3) δΓ=0\delta\Gamma=0 なので Wσ=0W^\sigma=0。残る項は −g Gμν(−ϵgμν)=−ϵ−g (R−12⋅4R)=ϵ−g R\sqrt{-g}\,G_{\mu\nu}(-\epsilon g^{\mu\nu})=-\epsilon\sqrt{-g}\,(R-\frac12\cdot4R)=\epsilon\sqrt{-g}\,R で、(2) と一致する。GμνG_{\mu\nu} のトレースが −R-R であること(4次元で gμνgμν=4g^{\mu\nu}g_{\mu\nu}=4)がここで使われた。

木下の勉強ステータス

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