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出てくるもの(1):Eddington–Finkelstein 座標と事象の地平面

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第17章 ブラックホールの幾何
目次
  1. 計量を書き直す
  2. 光円錐の傾き
  3. 内側で は時間
  4. 回転するブラックホール:止まっていられない領域
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第17章 §2.17.3 ★★★ 内向きの光に沿う座標で計量は r=rsr=r_{\mathrm s} を越えて正則になり、地平面の内側では光円錐が内側へ倒れて、未来へ進む世界線はすべて rr が減る

計量を書き直す

内向きの光で一定になる時刻

cv≔ct+r∗(2.17.12)cv\coloneqq ct+r^*\tag{2.17.12}

を新しい時間座標に採る(Eddington(1924)、Finkelstein(1958)1A. S. Eddington, Nature 113, 192 (1924); D. Finkelstein, Phys. Rev. 110, 965 (1958).下の脚注へ)。c dt=c dv−dr/(1−rs/r)c\,\mathrm{d} t=c\,\mathrm{d} v-\mathrm{d} r/(1-r_{\mathrm s}/r) を Schwarzschild 計量に入れると、dr2\mathrm{d} r^2 の項がちょうど打ち消し合って

ds2=(1−rsr)c2dv2−2c dv dr−r2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)(2.17.13)\mathrm{d} s^2=\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)c^2\mathrm{d} v^2-2c\,\mathrm{d} v\,\mathrm{d} r-r^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2)\tag{2.17.13}

を得る。この計量の成分はどれも r=rsr=r_{\mathrm s} で有限で、tt-rr 部分の行列式 −1-1 も 00 にならない。r>0r>0 ならどこでも正則である。r=rsr=r_{\mathrm s} の発散は座標 tt の選び方に由来するもので、時空は r=rsr=r_{\mathrm s} を越えて r<rsr<r_{\mathrm s} へ滑らかにつながっている。ここで (v,r)(v,r) 座標は r<rsr<r_{\mathrm s} の領域にも目盛りを振っている。tt で書いた元の計量の r<rsr<r_{\mathrm s} の部分は、(2.17.13) の同じ領域を別の座標で書いたものになる。

光円錐の傾き

(2.17.13) で動径方向の光(ds2=0\mathrm{d} s^2=0、θ,φ\theta,\varphi 一定)を求めると、

dv=0(内向き),drdv=c2(1−rsr)(もう一方)(2.17.14)\mathrm{d} v=0\quad(\text{内向き}),\qquad \frac{\mathrm{d} r}{\mathrm{d} v}=\frac c2\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}}{r}\Bigr)\quad(\text{もう一方})\tag{2.17.14}

の2本である。r>rsr>r_{\mathrm s} では2本目は rr が増える外向きの光である。r=rsr=r_{\mathrm s} では drdv=0\frac{\mathrm{d} r}{\mathrm{d} v}=0 で、外向きに出した光はその場に留まる。r<rsr<r_{\mathrm s} では drdv<0\frac{\mathrm{d} r}{\mathrm{d} v}<0 となり、「外向き」に出したはずの光も rr が減る。

質量のある粒子の世界線は、各点の光円錐の内側にある。r<rsr<r_{\mathrm s} では光円錐の2本の縁がどちらも rr の減る向きを向くので、粒子がどう噴射しても rr は減り続け、有限の固有時のうちに r=0r=0 に着く。外の観測者へ信号を送る世界線は1本も無い。この境界 r=rsr=r_{\mathrm s} を事象の地平面と呼ぶ。地平面は「外の無限遠へ届く世界線を持つ点の集まり」の境界として定義される面で、局所的な曲率の大きさでは決まらない(例題 2.17.2)。

図 2.17.1 は、内向きの光が 45∘45^\circ になるように時間座標を ct~≔cv−rc\tilde t\coloneqq cv-r と取り直して描いた光円錐である。この座標で外向きの光の向きは (dr,c dt~)∝(1−rs/r, 1+rs/r)(\mathrm{d} r,c\,\mathrm{d}\tilde t)\propto(1-r_{\mathrm s}/r,\,1+r_{\mathrm s}/r) で、r=rsr=r_{\mathrm s} で真上を、内側では左上を向く。

図

図 2.17.1 Eddington–Finkelstein 座標(ct~=cv−rc\tilde t=cv-r)で描いた光円錐。各点から出る2本の線が内向きと外向きの光で、色を付けた扇形の内側が質量のある粒子の進める向き。内向きの光はどこでも左上 45∘45^\circ。外向きの光は遠くで右上 45∘45^\circ に近づき、地平面(破線)で真上、内側(灰色)では左上を向く。左端のギザギザの線が r=0r=0 の特異点

内側で rr は時間

tt で書いた元の計量の r<rsr<r_{\mathrm s} の部分を見ると、1−rs/r<01-r_{\mathrm s}/r<0 なので dt2\mathrm{d} t^2 の係数が負、dr2\mathrm{d} r^2 の係数が正になる。(+,−,−,−)(+,-,-,-) の流儀で係数が正の座標は時間の向きなので、地平面の内側では rr が時間座標、tt が空間座標の役を入れ替わる。rr が減っていくことは「時間が進む」ことと同じで、r=0r=0 は内側の観測者にとって「どこかの場所」でなく「未来のある時刻」である。避けられないのはそのためである。

例題 2.17.3 地平面の内側で過ごせる最長の固有時 ★★★

オリジナル地平面の内側でまっすぐ動径方向に動く粒子を考える(ℓ=0\ell=0)。

  1. (1) (2.17.4) を使い、r=rsr=r_{\mathrm s} から r=0r=0 までの固有時が E~\tilde E によらず τ≤πrs/(2c)=πGM/c3\tau\le\pi r_{\mathrm s}/(2c)=\pi GM/c^3 を満たすことを示せ。
  2. (2) M=10M⊙M=10M_\odot と M=6.5×109M⊙M=6.5\times10^9M_\odot について、この上限を数値で求めよ。
解答

(1) ℓ=0\ell=0 で (2.17.4) は r˙2=c2(E~2/c4−1+rs/r)\dot r^2=c^2\bigl(\tilde E^2/c^4-1+r_{\mathrm s}/r\bigr)。内側では rr が減る向きしか無いので r˙=−cE~2/c4−1+rs/r\dot r=-c\sqrt{\tilde E^2/c^4-1+r_{\mathrm s}/r} で、

τ=1c∫0rsdrE~2/c4−1+rs/r≤1c∫0rsdrrs/r−1.\tau=\frac1c\int_0^{r_{\mathrm s}}\frac{\mathrm{d} r}{\sqrt{\tilde E^2/c^4-1+r_{\mathrm s}/r}}\le\frac1c\int_0^{r_{\mathrm s}}\frac{\mathrm{d} r}{\sqrt{r_{\mathrm s}/r-1}}.

不等号は E~2≥0\tilde E^2\ge0 で被積分関数が小さくなることによる(等号は E~=0\tilde E=0、すなわち地平面の上で「外から見て静止」から出発する極限)。r=rssin⁡2αr=r_{\mathrm s}\sin^2\alpha とおくと rs/r−1=cos⁡α/sin⁡α\sqrt{r_{\mathrm s}/r-1}=\cos\alpha/\sin\alpha、dr=2rssin⁡αcos⁡α dα\mathrm{d} r=2r_{\mathrm s}\sin\alpha\cos\alpha\,\mathrm{d}\alpha なので

∫0rsdrrs/r−1=∫0π/22rssin⁡2α dα=πrs2.\int_0^{r_{\mathrm s}}\frac{\mathrm{d} r}{\sqrt{r_{\mathrm s}/r-1}}=\int_0^{\pi/2}2r_{\mathrm s}\sin^2\alpha\,\mathrm{d}\alpha=\frac{\pi r_{\mathrm s}}{2}.

よって τ≤πrs/(2c)=πGM/c3\tau\le\pi r_{\mathrm s}/(2c)=\pi GM/c^3。ロケットで外へ噴射すると r˙\dot r の大きさは減るように思えるが、噴射は世界線を測地線から外し、測地線は固有時を最大にする世界線なので(第2部第12章)、かえって τ\tau は短くなる。

(2) GM⊙/c3=4.93×10−6 sGM_\odot/c^3=4.93\times10^{-6}\,\mathrm s である。M=10M⊙M=10M_\odot では τmax⁡=π×10×4.93×10−6 s=1.55×10−4 s\tau_{\max}=\pi\times10\times4.93\times10^{-6}\,\mathrm s=1.55\times10^{-4}\,\mathrm s。M=6.5×109M⊙M=6.5\times10^9M_\odot では τmax⁡=1.01×105 s\tau_{\max}=1.01\times10^{5}\,\mathrm s、約 2828 時間である。

回転するブラックホール:止まっていられない領域

回転するブラックホールの真空解は Kerr(1963)2R. P. Kerr, Phys. Rev. Lett. 11, 237 (1963).下の脚注へが見つけた。角運動量を JJ、長さの次元を持つ量 a≔J/(Mc)a\coloneqq J/(Mc) として、Boyer–Lindquist 座標で(この本の流儀 (+,−,−,−)(+,-,-,-) で)

ds2=(1−rsrΣ)c2dt2+2rsarsin⁡2θΣ c dt dφ−ΣΔ(r)dr2−Σ dθ2−(r2+a2+rsra2sin⁡2θΣ)sin⁡2θ dφ2,Σ=r2+a2cos⁡2θ,Δ(r)=r2−rsr+a2(2.17.15)\begin{aligned} \mathrm{d} s^2={}&\Bigl(1-\frac{r_{\mathrm s}r}{\Sigma}\Bigr)c^2\mathrm{d} t^2+\frac{2r_{\mathrm s}ar\sin^2\theta}{\Sigma}\,c\,\mathrm{d} t\,\mathrm{d}\varphi-\frac{\Sigma}{\Delta(r)}\mathrm{d} r^2-\Sigma\,\mathrm{d}\theta^2\\ &-\Bigl(r^2+a^2+\frac{r_{\mathrm s}ra^2\sin^2\theta}{\Sigma}\Bigr)\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2,\qquad \Sigma=r^2+a^2\cos^2\theta,\quad \Delta(r)=r^2-r_{\mathrm s}r+a^2 \end{aligned}\tag{2.17.15}

である(Δ(r)\Delta(r) は有限の差の Δ\Delta と区別するため必ず引数を付けて書く)。a=0a=0 で Schwarzschild 計量に戻る。verify_ch2-17.py は時空の1点で Rμν=0R_{\mu\nu}=0 を数値で確かめている。

grrg_{rr} が発散する Δ(r)=0\Delta(r)=0 の外側の根

r+=rs+rs2−4a22(2.17.16)r_+=\frac{r_{\mathrm s}+\sqrt{r_{\mathrm s}^2-4a^2}}{2}\tag{2.17.16}

が事象の地平面である(a≤rs/2a\le r_{\mathrm s}/2 のときだけ存在し、a=rs/2a=r_{\mathrm s}/2 を極限 Kerr と呼ぶ)。これとは別に、g00g_{00} が 00 になる面

rE(θ)=rs+rs2−4a2cos⁡2θ2(2.17.17)r_{\mathrm E}(\theta)=\frac{r_{\mathrm s}+\sqrt{r_{\mathrm s}^2-4a^2\cos^2\theta}}{2}\tag{2.17.17}

がある。rE≥r+r_{\mathrm E}\ge r_+ で、等号は極(θ=0,π\theta=0,\pi)だけで成り立つ。r+<r<rEr_+<r<r_{\mathrm E} の領域をエルゴ領域と呼ぶ。

エルゴ領域の意味は、Schwarzschild の地平面の議論と同じく光円錐の向きで読める。r,θ,φr,\theta,\varphi をすべて一定にした世界線は ds2=g00c2dt2\mathrm{d} s^2=g_{00}c^2\mathrm{d} t^2 で、g00<0g_{00}<0 の所では空間的になる。つまりエルゴ領域では、遠方から見て静止したまま留まることができない。ただし φ\varphi を回転の向きに動かせば時間的な世界線が作れ、さらに地平面の外なので遠方へ出ていくこともできる。Schwarzschild では「静止できなくなる面」と「出られなくなる面」が同じ r=rsr=r_{\mathrm s} だったが、回転があると2つが分かれる。エルゴ領域の中では保存量 E~\tilde E が負の軌道が許され、それを使って回転のエネルギーを取り出すのが Penrose 過程である(第2部第19章)。

例題 2.17.4 エルゴ領域の中での回転の向き ★★

オリジナルa=0.4 rsa=0.4\,r_{\mathrm s} の Kerr ブラックホールを考える。

  1. (1) 地平面の半径 r+r_+ と、赤道面(θ=π/2\theta=\pi/2)でのエルゴ面の半径 rEr_{\mathrm E} を求めよ。
  2. (2) 赤道面の r=0.9 rsr=0.9\,r_{\mathrm s}(エルゴ領域の中)で、r,θr,\theta を一定にして φ\varphi だけ動く世界線が時間的であるためには、角速度 ω≔dφ/dt\omega\coloneqq\mathrm{d}\varphi/\mathrm{d} t がどの範囲になければならないか。数値で答え、その範囲に ω=0\omega=0 や負の値が含まれないことを確かめよ。
解答

(1) r+=rs+rs2−0.64rs22=1+0.62rs=0.8 rsr_+=\frac{r_{\mathrm s}+\sqrt{r_{\mathrm s}^2-0.64r_{\mathrm s}^2}}{2}=\frac{1+0.6}{2}r_{\mathrm s}=0.8\,r_{\mathrm s}。赤道で cos⁡θ=0\cos\theta=0 なので rE=rs+rs2=rsr_{\mathrm E}=\frac{r_{\mathrm s}+r_{\mathrm s}}{2}=r_{\mathrm s}。エルゴ領域は赤道で 0.8 rs<r<rs0.8\,r_{\mathrm s}<r<r_{\mathrm s} にある。

(2) 長さを rsr_{\mathrm s}、ω\omega を c/rsc/r_{\mathrm s} の単位で測る。r=0.9r=0.9、a=0.4a=0.4、θ=π/2\theta=\pi/2 では Σ=0.81\Sigma=0.81 で、g00=1−0.9/0.81=−0.1111g_{00}=1-0.9/0.81=-0.1111、g0φ=0.9×0.4/0.81=0.4444g_{0\varphi}=0.9\times0.4/0.81=0.4444、gφφ=−(0.81+0.16+0.9×0.16/0.81)=−1.1478g_{\varphi\varphi}=-(0.81+0.16+0.9\times0.16/0.81)=-1.1478。世界線が時間的である条件 ds2>0\mathrm{d} s^2>0 を c2dt2c^2\mathrm{d} t^2 で割ると

g00+2g0φω+gφφω2>0,すなわち1.1478 ω2−0.8889 ω+0.1111<0.g_{00}+2g_{0\varphi}\omega+g_{\varphi\varphi}\omega^2>0,\qquad\text{すなわち}\quad 1.1478\,\omega^2-0.8889\,\omega+0.1111<0 .

2次式の根は ω=0.8889±0.88892−4×1.1478×0.11112×1.1478\omega=\frac{0.8889\pm\sqrt{0.8889^2-4\times1.1478\times0.1111}}{2\times1.1478} で、0.1570.157 と 0.6180.618。したがって 0.157 c/rs<ω<0.618 c/rs0.157\,c/r_{\mathrm s}<\omega<0.618\,c/r_{\mathrm s} で、範囲はすべて正である。ω=0\omega=0(静止)も逆向きの回転も許されず、エルゴ領域の中の観測者はブラックホールと同じ向きに回らざるをえない。地平面に近づくと範囲は1点に縮み、その値が地平面の角速度になる。

1 A. S. Eddington, Nature 113, 192 (1924); D. Finkelstein, Phys. Rev. 110, 965 (1958).

2 R. P. Kerr, Phys. Rev. Lett. 11, 237 (1963).

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

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