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選ぶもの:Kerr 解と、それを決める3つの数

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第19章 ブラックホール力学の4法則
目次
  1. Kerr 計量
  2. 地平面・エルゴ面・角速度
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第19章 §2.19.1 ★★★ 定常なブラックホールは質量・角運動量・電荷の3つの数で決まり、地平面の面積・角速度・表面重力はその関数になる

第2部第17章では、ブラックホールを時空の幾何として調べた。事象の地平面は光円錐が内側へ倒れきる面で、いったん内側に入ったものは外へ戻れない。この章では同じブラックホールを、別の角度から眺める。ブラックホールに物を落とすと質量と角運動量が変わり、地平面の面積も変わる。その変わり方には決まった規則があり、規則を並べると熱力学の4法則と同じ形になる。これが Bardeen・Carter・Hawking(1973)がまとめたブラックホール力学の4法則である。

この章で選ぶものは、真空の Einstein 方程式の定常で軸対称な解である Kerr 解と、その上を動く試験粒子の作用L=−mcgμνx˙μx˙νL=-mc\sqrt{g_{\mu\nu}\dot x^\mu\dot x^\nu}(第2部第12章)である。当てる道具は、計量の対称性に Noether の定理を当てて得られる保存量(Killing ベクトルの保存量)と、第2部第11章の Rindler 座標、そして第1部第7章の Legendre 変換の言葉である。出てくるものは4つの法則で、①表面重力 κ\kappa が地平面の上で一定であること(第零法則)、②質量の変化が面積の変化と角運動量の変化に分かれること c2δM=κc28πGδA+ΩHδJc^2\delta M=\frac{\kappa c^2}{8\pi G}\delta A+\Omega_{\mathrm H}\delta J(第一法則)、③古典的な過程で地平面の面積が減らないこと(第二法則=面積定理)、④κ=0\kappa=0 にする操作の難しさ(第三法則)である。第二法則の帰結として、回転するブラックホールからエネルギーを取り出す Penrose 過程の上限も出る。最後に、熱力学の授業で習う dU=TdS+ΩdJ\mathrm{d} U=T\mathrm{d} S+\Omega\mathrm{d} J や Euler の関係と、この章の式を並べる。

単位は SI、計量は ημν=diag(+1,−1,−1,−1)\eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1) の流儀で x0=ctx^0=ct とし、上下に1回ずつ現れるギリシャ添字は和を取る(記法の正本どおり)。この章の式に ℏ\hbar は第5節の対応表の所まで出てこない。4法則はすべて古典の一般相対論の中の定理である。

Kerr 計量

第2部第16章の Schwarzschild 解は、回転していない球対称の真空解だった。回転している星が重力崩壊してできるブラックホールは角運動量を持つので、軸対称で定常な真空解が要る。Kerr(1963、Physical Review Letters 11、237)が見つけたその解を Boyer と Lindquist(1967、Journal of Mathematical Physics 8、265)の座標で書いた計量は、第2部第17章の式 (2.17.15) で Schwarzschild 半径 rsr_{\mathrm s} を使って示した。この章では rg=rs/2r_{\mathrm g}=r_{\mathrm s}/2 と x0=ctx^0=ct で書き直した

ds2=(1−2rgrΣ)(dx0)2+4rgarsin⁡2θΣ dx0dφ−ΣΔ(r)dr2−Σ dθ2−(r2+a2+2rga2rsin⁡2θΣ)sin⁡2θ dφ2(2.19.1)\begin{aligned} \mathrm{d} s^2={}&\Bigl(1-\frac{2r_{\mathrm g}r}{\Sigma}\Bigr)(\mathrm{d} x^0)^2+\frac{4r_{\mathrm g}ar\sin^2\theta}{\Sigma}\,\mathrm{d} x^0\mathrm{d}\varphi -\frac{\Sigma}{\Delta(r)}\mathrm{d} r^2-\Sigma\,\mathrm{d}\theta^2\\ &-\Bigl(r^2+a^2+\frac{2r_{\mathrm g}a^2r\sin^2\theta}{\Sigma}\Bigr)\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2 \end{aligned}\tag{2.19.1}

を使う。ここで

rg=GMc2,a=JMc,Σ=r2+a2cos⁡2θ,Δ(r)=r2−2rgr+a2(2.19.2)r_{\mathrm g}=\frac{GM}{c^2},\qquad a=\frac{J}{Mc},\qquad \Sigma=r^2+a^2\cos^2\theta,\qquad \Delta(r)=r^2-2r_{\mathrm g}r+a^2\tag{2.19.2}

で、MM は質量、JJ は角運動量である。rgr_{\mathrm g} は質量を長さに直した量(重力半径)で、Schwarzschild 半径の半分 rs/2r_{\mathrm s}/2 にあたる。aa も長さの次元を持ち、無次元の比 a∗=a/rg=Jc/(GM2)a_\ast=a/r_{\mathrm g}=Jc/(GM^2) をスピンと呼ぶ。Δ(r)\Delta(r) は Kerr の論文以来の記号で、有限の差の Δ\Delta ではないことを示すため、この章では必ず引数を付けて書く。a=0a=0 と置くと Σ=r2\Sigma=r^2、Δ(r)=r2(1−rs/r)\Delta(r)=r^2(1-r_{\mathrm s}/r) となり、式 (2.19.1) は Schwarzschild 計量に戻る。a≠0a\neq0 で新しく現れたのは dx0dφ\mathrm{d} x^0\mathrm{d}\varphi の交差項で、これが回転を表す。式 (2.19.1) が Rμν=0R_{\mu\nu}=0 を満たすことの確かめは第2部第17章に任せ、この章では使う量だけを取り出す。

計量の成分は x0x^0 と φ\varphi を含まない。したがって ξ(t)=∂/∂x0\xi_{(t)}=\partial/\partial x^0 と ξ(φ)=∂/∂φ\xi_{(\varphi)}=\partial/\partial\varphi の2つが Killing ベクトルである。前者が「時間をずらしても同じ」という定常性、後者が「軸のまわりに回しても同じ」という軸対称性を表す。

地平面・エルゴ面・角速度

grr=−Σ/Δ(r)g_{rr}=-\Sigma/\Delta(r) は Δ(r)=0\Delta(r)=0 で発散する。その根は、第17章の式 (2.17.16) を rgr_{\mathrm g} で書き直した

r±=rg±rg2−a2(2.19.3)r_\pm=r_{\mathrm g}\pm\sqrt{r_{\mathrm g}^2-a^2}\tag{2.19.3}

のうち外側の r+r_+ が事象の地平面で、内側の r−r_- は内部地平面と呼ばれる(この章では使わない)。実数の根があるのは a≤rga\le r_{\mathrm g}、つまり a∗≤1a_\ast\le1 のときに限る。a∗>1a_\ast>1 では地平面がなく、特異点が外から見えてしまう。a∗=1a_\ast=1 を極限 Kerrと呼ぶ。式 (2.19.3) から r+2+a2=2rgr+r_+^2+a^2=2r_{\mathrm g}r_+ が成り立つので、地平面(r=r+r=r_+ で x0x^0 一定の面)の面積は、計量の θ,φ\theta,\varphi 部分から

A=∫02π ⁣ ⁣∫0πΣ⋅(r+2+a2+2rga2r+sin⁡2θΣ) sin⁡θ dθ dφ=4π(r+2+a2)=8πrgr+(2.19.4)A=\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^\pi\sqrt{\Sigma\cdot\Bigl(r_+^2+a^2+\frac{2r_{\mathrm g}a^2r_+\sin^2\theta}{\Sigma}\Bigr)}\,\sin\theta\,\mathrm{d}\theta\,\mathrm{d}\varphi =4\pi(r_+^2+a^2)=8\pi r_{\mathrm g}r_+\tag{2.19.4}

と求まる。根号の中は r=r+r=r_+ で (r+2+a2)2(r_+^2+a^2)^2 に等しくなる(Σ(r+2+a2)+2rga2r+sin⁡2θ=(r+2+a2)(Σ+a2sin⁡2θ)\Sigma(r_+^2+a^2)+2r_{\mathrm g}a^2r_+\sin^2\theta=(r_+^2+a^2)(\Sigma+a^2\sin^2\theta) を使う)ので、被積分関数は θ\theta によらない。

もう1つの特別な面は g00=0g_{00}=0 となる面で、第17章の式 (2.17.17) を書き直すと

rE(θ)=rg+rg2−a2cos⁡2θ(2.19.5)r_{\mathrm E}(\theta)=r_{\mathrm g}+\sqrt{r_{\mathrm g}^2-a^2\cos^2\theta}\tag{2.19.5}

で、エルゴ面と呼ぶ。極(θ=0\theta=0)では r+r_+ に接し、赤道では 2rg2r_{\mathrm g} まで張り出す。r+<r<rE(θ)r_+<r<r_{\mathrm E}(\theta) の領域(エルゴ領域)では g00<0g_{00}<0 となり、ξ(t)\xi_{(t)} が空間的になる。そこでは遠方から見て静止したまま留まれず、どんな観測者も回転の向きに引きずられる(理由は第17章で光円錐の向きから見た)。

地平面そのものの上では、ξ(t)\xi_{(t)} に ξ(φ)\xi_{(\varphi)} を一定の割合で足した

χ=ξ(t)+ΩHc ξ(φ),ΩH=c(−g0φgφφ)∣r=r+=car+2+a2(2.19.6)\chi=\xi_{(t)}+\frac{\Omega_{\mathrm H}}{c}\,\xi_{(\varphi)},\qquad \Omega_{\mathrm H}=c\Bigl(-\frac{g_{0\varphi}}{g_{\varphi\varphi}}\Bigr)\Bigr|_{r=r_+}=\frac{ca}{r_+^2+a^2}\tag{2.19.6}

が光的になる(gμνχμχν=0g_{\mu\nu}\chi^\mu\chi^\nu=0 が r=r+r=r_+ ですべての θ\theta について成り立つ)。χ\chi は2つの Killing ベクトルの定数係数の和なので、それ自身も Killing ベクトルである。地平面を作る光線は χ\chi に沿って進み、遠方から見ると角速度 ΩH\Omega_{\mathrm H} で回っている。ΩH\Omega_{\mathrm H} を地平面の角速度と呼ぶ。Killing ベクトルが光的になる面をKilling 地平面と呼び、定常なブラックホールの事象の地平面は Killing 地平面になる。

図

図 2.19.1 a∗=0.8a_\ast=0.8 の Kerr ブラックホールの回転軸を含む断面。Boyer–Lindquist の (r,θ)(r,\theta) を平面の極座標とみなして描いた(目盛りは rgr_{\mathrm g})。黒い円が地平面 r=r+r=r_+、外側の閉曲線がエルゴ面 (2.19.5)。灰色のエルゴ領域では静止できない。

定常なブラックホールが何で決まるかについては、Carter(1971、Physical Review Letters 26、331)・Robinson(1975、Physical Review Letters 34、905)らの一意性定理がある。真空の Einstein 方程式の定常で漸近的に平坦なブラックホール解は Kerr 解に限り、電磁場があっても (M,J,Q)(M,J,Q) の3つの数で決まる(Kerr–Newman 解)。この章では電荷を持たない場合に話を絞り、(M,J)(M,J) の2つで決まる Kerr 解を使う。落ちてきた物質の形や組成の情報は、地平面の外から見える量としては MM と JJ の変化にしか残らない。熱力学で平衡状態が少数の状態量で決まるのとよく似た状況で、4法則の類似はここから始まる。

例題 2.19.1 太陽質量の10倍、スピン 0.8 の Kerr ブラックホール ★★

オリジナル質量 M=10M⊙M=10M_\odot、スピン a∗=0.8a_\ast=0.8 の Kerr ブラックホールについて、r±r_\pm、地平面の面積 AA、地平面の角速度 ΩH\Omega_{\mathrm H} とそれを回転数に直した値 ΩH/(2π)\Omega_{\mathrm H}/(2\pi) を求めよ。GM⊙=1.3271244×1020 m3 s−2GM_\odot=1.3271244\times10^{20}\,\mathrm{m^3\,s^{-2}}(IAU 2015 の名目値)とする。面積を同じ質量の Schwarzschild ブラックホールと比べよ。

解答

重力半径は rg=GM/c2=10×1.3271244×1020/(2.99792458×108)2=1.4766×104 mr_{\mathrm g}=GM/c^2=10\times1.3271244\times10^{20}/(2.99792458\times10^8)^2=1.4766\times10^4\,\mathrm m。1−a∗2=0.36=0.6\sqrt{1-a_\ast^2}=\sqrt{0.36}=0.6 なので、式 (2.19.3) から

r+=1.6 rg=2.363×104 m,r−=0.4 rg=5.907×103 m.r_+=1.6\,r_{\mathrm g}=2.363\times10^4\,\mathrm m,\qquad r_-=0.4\,r_{\mathrm g}=5.907\times10^3\,\mathrm m.

面積は式 (2.19.4) から A=8πrgr+=12.8πrg2=8.77×109 m2A=8\pi r_{\mathrm g}r_+=12.8\pi r_{\mathrm g}^2=8.77\times10^9\,\mathrm{m^2}。同じ質量の Schwarzschild では A=4πrs2=16πrg2A=4\pi r_{\mathrm s}^2=16\pi r_{\mathrm g}^2 なので、比は 12.8/16=0.812.8/16=0.8 で、回転している方が2割小さい。角速度は a=0.8 rga=0.8\,r_{\mathrm g}、r+2+a2=2rgr+=3.2 rg2r_+^2+a^2=2r_{\mathrm g}r_+=3.2\,r_{\mathrm g}^2 を式 (2.19.6) に入れて

ΩH=c⋅0.8 rg3.2 rg2=c4rg=5.08×103 s−1,ΩH2π=808 Hz.\Omega_{\mathrm H}=\frac{c\cdot0.8\,r_{\mathrm g}}{3.2\,r_{\mathrm g}^2}=\frac{c}{4r_{\mathrm g}}=5.08\times10^3\,\mathrm{s^{-1}},\qquad \frac{\Omega_{\mathrm H}}{2\pi}=808\,\mathrm{Hz}.

差し渡し 50 km ほどの地平面が、1秒に 800 回ほど回っている。同じ MM で比べると、回転が速いほど r+r_+ も AA も小さくなる。この「同じ質量なら回転している方が面積が小さい」ことが、2.19.4節で回転のエネルギーを取り出せる理由になる。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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