出てくるもの2:面積定理と Penrose 過程
AI 生成・木下が未勉強
解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第19章 §2.19.4 ★★★ 古典的な過程で地平面の面積は減らない(第二法則)。この制約のもとで回転のエネルギーは まで取り出せる
面積定理
2.19.3節では、試験粒子を1つ落とす場合に を見た。Hawking(1971、Physical Review Letters 26、1344)は、これをはるかに一般の状況で示した。ブラックホールどうしの合体や、重力波の放出を伴う激しい過程でも、
が成り立つ。これが面積定理で、熱力学の第二法則「孤立系のエントロピーは減らない」と同じ形をしている。
証明は書かず、筋だけ述べる。地平面は光線(光的測地線)の束でできている。束の断面積の変化率(膨張率)を とすると、Raychaudhuri の方程式と Einstein 方程式から、物質が光的エネルギー条件 ( は任意の光的ベクトル)を満たす限り、 は光線に沿って減る一方で、いったん負になると有限の距離で に達し、光線どうしが交わる。地平面の生成子がそうなると、交わった先の光線は地平面から外れてしまい、地平面が「戻れない境界」であることと矛盾する。したがって地平面の上で で、面積は減らない。この議論では、特異点が地平面に隠されていること(宇宙検閲)も仮定に入る。2つの仮定のうち光的エネルギー条件は、量子効果で破れうる。第5部第12章の Hawking 放射でブラックホールが蒸発するとき、面積は実際に減る。その場合の第二法則の拡張(一般化第二法則)は相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部第1章で扱う。
Penrose 過程
面積が減らないという制約のもとで、ブラックホールからエネルギーを取り出せるだろうか。Penrose(1969、Rivista del Nuovo Cimento 1(特別号)、252)は、エルゴ領域を使えば取り出せることを示した。鍵はエルゴ領域で が空間的になることである。遠方では未来向きの4元運動量について だが、 が空間的な場所では、未来向きの でも となりうる。
手順は次のとおりである(図 2.19.2)。遠方からエネルギー の物体を投げ入れ、エルゴ領域の中で2つの破片に分ける。エネルギーの保存(式 (2.19.7) の は保存量なので分裂の前後で和が保たれる)から である。破片1を の軌道に乗せて地平面へ落とし、破片2を遠方へ脱出させると、戻ってくるエネルギーは になる。差 はブラックホールの質量の減少 でまかなわれる。
図 2.19.2 Penrose 過程の模式図(赤道面を上から見た図)。エルゴ領域で物体を2つに分け、負のエネルギーの破片(破線)を地平面に落とすと、脱出する破片は投げ入れたより大きなエネルギーを持ち帰る。
負のエネルギーの破片にも制約がある。式 (2.19.20) から、地平面を越える破片は を満たさなければならない。 なら 、つまり破片1はブラックホールの回転と逆向きの角運動量を持ち込む。ブラックホールは質量とともに角運動量を失い、回転が遅くなる。取り出しているのは回転のエネルギーである。
どこまで取り出せるかは、面積定理と Christodoulou の式 (2.19.16) で決まる。面積は減らないので も減らない。式 (2.19.16) の右辺第2項は非負なので で、可逆な過程()で を まで減らしたときに は最小値 に達する。したがって取り出せるエネルギーの上限は
である。既約質量という名前は、どんな古典的な操作でもこれ以下には減らせないことによる。極限 Kerr()では で、質量エネルギーの が回転のエネルギーとして取り出しうる。図 2.19.3 にこの割合をスピンの関数として示す。
試験粒子の扱いでは、破片の重力がブラックホールの計量を変えることを無視している。 と を保存量として使えるのは、計量が Kerr のままで Killing ベクトルを持ち続けるからで、破片の質量 がブラックホールの質量 に比べて小さい極限の話である。面積定理そのものはこの近似に頼らずに成り立つので、取り出せる量の上限 (2.19.22) は近似に依存しない。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの (粒子がブラックホールより十分軽い) | 証明 要確認 | 行き先 近似の数理 第7章
例題 2.19.4 合体で放射できるエネルギーの上限 ★★
オリジナル回転していない2つのブラックホール(質量 、)が合体し、重力波を放射して1つのブラックホールになる。最終状態の質量を とする。
- (1) 面積定理から を示せ(最終状態は回転していてよい)。
- (2) 重力波として放射できるエネルギーの、初めの質量エネルギー に対する割合の上限を、 と で求めよ。
解答
(1) 初めの面積の和は 。最終状態の面積は既約質量で と書けるので、面積定理 から 。Christodoulou の式 (2.19.16) から なので、。
(2) 放射できるのは なので、割合の上限は 。 では 、 では 。Hawking(1971)がこの評価を出した。上限は質量の比が1に近いほど大きい。上限は面積定理だけから出る不等式で、実際の合体で放射される割合は数値相対論で求める必要があり、上限よりかなり小さい。
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