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出てくるもの2:面積定理と Penrose 過程

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第19章 ブラックホール力学の4法則
目次
  1. 面積定理
  2. Penrose 過程
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第19章 §2.19.4 ★★★ 古典的な過程で地平面の面積は減らない(第二法則)。この制約のもとで回転のエネルギーは Mc2−Mirrc2Mc^2-M_{\mathrm{irr}}c^2 まで取り出せる

面積定理

2.19.3節では、試験粒子を1つ落とす場合に δA≥0\delta A\ge0 を見た。Hawking(1971、Physical Review Letters 26、1344)は、これをはるかに一般の状況で示した。ブラックホールどうしの合体や、重力波の放出を伴う激しい過程でも、

δA≥0(2.19.21)\delta A\ge0\tag{2.19.21}

が成り立つ。これが面積定理で、熱力学の第二法則「孤立系のエントロピーは減らない」と同じ形をしている。

証明は書かず、筋だけ述べる。地平面は光線(光的測地線)の束でできている。束の断面積の変化率(膨張率)を θexp\theta_{\mathrm{exp}} とすると、Raychaudhuri の方程式と Einstein 方程式から、物質が光的エネルギー条件 Tμνkμkν≥0T_{\mu\nu}k^\mu k^\nu\ge0(kμk^\mu は任意の光的ベクトル)を満たす限り、θexp\theta_{\mathrm{exp}} は光線に沿って減る一方で、いったん負になると有限の距離で −∞-\infty に達し、光線どうしが交わる。地平面の生成子がそうなると、交わった先の光線は地平面から外れてしまい、地平面が「戻れない境界」であることと矛盾する。したがって地平面の上で θexp≥0\theta_{\mathrm{exp}}\ge0 で、面積は減らない。この議論では、特異点が地平面に隠されていること(宇宙検閲)も仮定に入る。2つの仮定のうち光的エネルギー条件は、量子効果で破れうる。第5部第12章の Hawking 放射でブラックホールが蒸発するとき、面積は実際に減る。その場合の第二法則の拡張(一般化第二法則)は相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部第1章で扱う。

Penrose 過程

面積が減らないという制約のもとで、ブラックホールからエネルギーを取り出せるだろうか。Penrose(1969、Rivista del Nuovo Cimento 1(特別号)、252)は、エルゴ領域を使えば取り出せることを示した。鍵はエルゴ領域で ξ(t)\xi_{(t)} が空間的になることである。遠方では未来向きの4元運動量について E=cp0>0E=cp_0>0 だが、ξ(t)\xi_{(t)} が空間的な場所では、未来向きの pμp^\mu でも E=c ξ(t)μpμ<0E=c\,\xi_{(t)}^\mu p_\mu<0 となりうる。

手順は次のとおりである(図 2.19.2)。遠方からエネルギー E0E_0 の物体を投げ入れ、エルゴ領域の中で2つの破片に分ける。エネルギーの保存(式 (2.19.7) の EE は保存量なので分裂の前後で和が保たれる)から E0=E1+E2E_0=E_1+E_2 である。破片1を E1<0E_1<0 の軌道に乗せて地平面へ落とし、破片2を遠方へ脱出させると、戻ってくるエネルギーは E2=E0−E1>E0E_2=E_0-E_1>E_0 になる。差 −E1-E_1 はブラックホールの質量の減少 c2δM=E1<0c^2\delta M=E_1<0 でまかなわれる。

図

図 2.19.2 Penrose 過程の模式図(赤道面を上から見た図)。エルゴ領域で物体を2つに分け、負のエネルギーの破片(破線)を地平面に落とすと、脱出する破片は投げ入れたより大きなエネルギーを持ち帰る。

負のエネルギーの破片にも制約がある。式 (2.19.20) から、地平面を越える破片は E1≥ΩHLz,1E_1\ge\Omega_{\mathrm H}L_{z,1} を満たさなければならない。E1<0E_1<0 なら Lz,1<0L_{z,1}<0、つまり破片1はブラックホールの回転と逆向きの角運動量を持ち込む。ブラックホールは質量とともに角運動量を失い、回転が遅くなる。取り出しているのは回転のエネルギーである。

どこまで取り出せるかは、面積定理と Christodoulou の式 (2.19.16) で決まる。面積は減らないので MirrM_{\mathrm{irr}} も減らない。式 (2.19.16) の右辺第2項は非負なので M≥MirrM\ge M_{\mathrm{irr}} で、可逆な過程(δA=0\delta A=0)で JJ を 00 まで減らしたときに MM は最小値 MirrM_{\mathrm{irr}} に達する。したがって取り出せるエネルギーの上限は

(M−Mirr)c2,MirrM=1+1−a∗22(2.19.22)\bigl(M-M_{\mathrm{irr}}\bigr)c^2,\qquad \frac{M_{\mathrm{irr}}}{M}=\sqrt{\frac{1+\sqrt{1-a_\ast^2}}{2}}\tag{2.19.22}

である。既約質量という名前は、どんな古典的な操作でもこれ以下には減らせないことによる。極限 Kerr(a∗=1a_\ast=1)では Mirr=M/2M_{\mathrm{irr}}=M/\sqrt2 で、質量エネルギーの 1−1/2=29.3%1-1/\sqrt2=29.3\% が回転のエネルギーとして取り出しうる。図 2.19.3 にこの割合をスピンの関数として示す。

試験粒子の扱いでは、破片の重力がブラックホールの計量を変えることを無視している。EE と LzL_z を保存量として使えるのは、計量が Kerr のままで Killing ベクトルを持ち続けるからで、破片の質量 mm がブラックホールの質量 MM に比べて小さい極限の話である。面積定理そのものはこの近似に頼らずに成り立つので、取り出せる量の上限 (2.19.22) は近似に依存しない。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの m/M→0m/M\to0(粒子がブラックホールより十分軽い) | 証明 要確認 | 行き先 近似の数理 第7章

例題 2.19.4 合体で放射できるエネルギーの上限 ★★

オリジナル回転していない2つのブラックホール(質量 M1M_1、M2M_2)が合体し、重力波を放射して1つのブラックホールになる。最終状態の質量を MfM_{\mathrm f} とする。

  1. (1) 面積定理から Mf≥M12+M22M_{\mathrm f}\ge\sqrt{M_1^2+M_2^2} を示せ(最終状態は回転していてよい)。
  2. (2) 重力波として放射できるエネルギーの、初めの質量エネルギー (M1+M2)c2(M_1+M_2)c^2 に対する割合の上限を、M1=M2M_1=M_2 と M1:M2=1:3M_1:M_2=1:3 で求めよ。
解答

(1) 初めの面積の和は A1+A2=16πG2(M12+M22)/c4A_1+A_2=16\pi G^2(M_1^2+M_2^2)/c^4。最終状態の面積は既約質量で Af=16πG2Mirr,f2/c4A_{\mathrm f}=16\pi G^2M_{\mathrm{irr,f}}^2/c^4 と書けるので、面積定理 Af≥A1+A2A_{\mathrm f}\ge A_1+A_2 から Mirr,f2≥M12+M22M_{\mathrm{irr,f}}^2\ge M_1^2+M_2^2。Christodoulou の式 (2.19.16) から Mf≥Mirr,fM_{\mathrm f}\ge M_{\mathrm{irr,f}} なので、Mf≥M12+M22M_{\mathrm f}\ge\sqrt{M_1^2+M_2^2}。

(2) 放射できるのは (M1+M2−Mf)c2(M_1+M_2-M_{\mathrm f})c^2 なので、割合の上限は 1−M12+M22/(M1+M2)1-\sqrt{M_1^2+M_2^2}/(M_1+M_2)。M1=M2M_1=M_2 では 1−2/2=0.2931-\sqrt2/2=0.293、1:31:3 では 1−10/4=0.2091-\sqrt{10}/4=0.209。Hawking(1971)がこの評価を出した。上限は質量の比が1に近いほど大きい。上限は面積定理だけから出る不等式で、実際の合体で放射される割合は数値相対論で求める必要があり、上限よりかなり小さい。

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