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出てくるもの3:第三法則と4法則の対応表

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第19章 ブラックホール力学の4法則
目次
  1. 第三法則
  2. 4法則を並べる
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第19章 §2.19.5 ★★ 極限 Kerr で κ=0\kappa=0 になる。4法則を熱力学と並べると κ↔T\kappa\leftrightarrow T、A↔SA\leftrightarrow S の対応が見え、係数は ℏ\hbar を入れて初めて決まる

第三法則

式 (2.19.11) は a∗→1a_\ast\to1 で r+=r−r_+=r_- となって κ→0\kappa\to0 になる。極限 Kerr は表面重力が 00 のブラックホールである。図 2.19.3 に、κ\kappa と ΩH\Omega_{\mathrm H} がスピンとともにどう変わるかを示す。κ\kappa は a∗a_\ast が1に近づくと急に落ちる。

図

図 2.19.3 同じ質量で比べた Kerr ブラックホールの表面重力 κ\kappa(実線)、地平面の角速度 ΩH\Omega_{\mathrm H}(破線)、取り出しうる回転のエネルギーの割合 1−Mirr/M1-M_{\mathrm{irr}}/M(一点鎖線)。すべて厳密な式 (2.19.11)・(2.19.6)・(2.19.22) の値。a∗→1a_\ast\to1 で κ→0\kappa\to0、ΩH→c/(2rg)\Omega_{\mathrm H}\to c/(2r_{\mathrm g})、割合 →0.293\to0.293。

Bardeen・Carter・Hawking は、熱力学の第三法則(有限回の操作で絶対零度に達することはできない)にならって、「有限回の操作で κ=0\kappa=0 にすることはできない」を第三法則として挙げた。Israel(1986、Physical Review Letters 57、397)は、物質が弱いエネルギー条件を満たし、変化が連続であるなどの前提のもとで、極限でないブラックホールが有限の時間で極限になれないことを示した。ただしこの法則は他の3つほど強くない。Kehle と Unger(2022、arXiv:2211.15742)は、荷電したスカラー場を落とし込む過程で、有限の時間に極限ブラックホールができる例を構成した。第三法則は、前提を明示して初めて成り立つ主張である。

熱力学の第三法則には、もう1つの言い方「T→0T\to0 でエントロピーが 00(または定数)に近づく」(Nernst–Planck の形)がある。ブラックホールではこちらが成り立たない。極限 Kerr の面積は A=8πrg2A=8\pi r_{\mathrm g}^2 で、同じ質量の Schwarzschild の半分あり、00 にならない。

4法則を並べる

ここまでの結果を熱力学と並べると、表 2.19.1 になる。

表 2.19.1 ブラックホール力学の4法則と熱力学の4法則
ブラックホール熱力学
第零法則定常なら κ\kappa が地平面上で一定平衡なら TT が一様
第一法則c2δM=κc28πGδA+ΩHδJc^2\delta M=\frac{\kappa c^2}{8\pi G}\delta A+\Omega_{\mathrm H}\delta JdU=TdS+ΩdJ\mathrm{d} U=T\mathrm{d} S+\Omega\mathrm{d} J
第二法則δA≥0\delta A\ge0dS≥0\mathrm{d} S\ge0(孤立系)
第三法則有限回の操作で κ=0\kappa=0 にできない有限回の操作で T=0T=0 にできない

対応は Mc2↔UMc^2\leftrightarrow U、κ↔T\kappa\leftrightarrow T、A↔SA\leftrightarrow S である。ただし古典論の範囲では、これは形が同じというだけにとどまる。理由は3つある。第一に、古典的なブラックホールは何も放出しないので、温度 00 の物体のように振る舞い、κ\kappa に比例する温度を持つとは考えにくい。第二に、κ\kappa と AA の比例係数が決まらない。第一法則の組み合わせ κc28πGδA\frac{\kappa c^2}{8\pi G}\delta A は、T=ακT=\alpha\kappa、S=c28πGαAS=\frac{c^2}{8\pi G\alpha}A のどの α\alpha でも書き直せる。第三に、次元を合わせるには kBk_{\mathrm B} のほかに作用の次元を持つ定数が要るが、古典の一般相対論には GG と cc しかない。

Bekenstein(1973、Physical Review D 7、2333)は、ブラックホールに物を落とすと外の世界のエントロピーが消えて見えることから、面積に比例するエントロピーをブラックホールに持たせるべきだと考えた。係数を決めたのは Hawking(1975、Communications in Mathematical Physics 43、199)の量子論の計算で、ブラックホールは温度

TH=ℏκ2πckB(2.19.23)T_{\mathrm H}=\frac{\hbar\kappa}{2\pi c k_{\mathrm B}}\tag{2.19.23}

の熱放射を出す。第5部第12章でこの式を導く。これを認めると、第一法則の κc28πGδA=THδSBH\frac{\kappa c^2}{8\pi G}\delta A=T_{\mathrm H}\delta S_{\mathrm{BH}} から

SBH=kBc3A4Gℏ(2.19.24)S_{\mathrm{BH}}=\frac{ k_{\mathrm B} c^3A}{4G\hbar}\tag{2.19.24}

が決まる(α=ℏ/(2πckB)\alpha=\hbar/(2\pi c k_{\mathrm B}))。この章の4法則は、ℏ\hbar を入れると本物の熱力学の法則として読める。「温度とエントロピーは比喩か本物か」という問いの答えは第5部第12章に、SBHS_{\mathrm{BH}} が何を数えているかという問いは相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第7部第1章に渡す。

例題 2.19.5 太陽質量のブラックホールの温度・エントロピー・熱容量 ★★

オリジナル式 (2.19.23)・(2.19.24) を認めて、回転していない質量 MM のブラックホールについて次を求めよ。

  1. (1) THT_{\mathrm H} と SBHS_{\mathrm{BH}} を MM で書き、M=M⊙M=M_\odot(1.988×1030 kg1.988\times10^{30}\,\mathrm{kg})での値を求めよ。
  2. (2) 熱容量 C=d(Mc2)dTHC=\frac{\mathrm{d} (Mc^2)}{\mathrm{d} T_{\mathrm H}} を求め、その符号の意味を述べよ。
  3. (3) 宇宙マイクロ波背景放射の温度 2.72548 K2.72548\,\mathrm K(Fixsen(2009)、Astrophysical Journal 707、916)と THT_{\mathrm H} が等しくなる質量を求めよ。
解答

(1) Schwarzschild では κ=c4/(4GM)\kappa=c^4/(4GM)、A=16πG2M2/c4A=16\pi G^2M^2/c^4 なので

TH=ℏc38πGMkB,SBHkB=4πGM2ℏc.T_{\mathrm H}=\frac{\hbar c^3}{8\pi GM k_{\mathrm B}},\qquad \frac{S_{\mathrm{BH}}}{ k_{\mathrm B}}=\frac{4\pi GM^2}{\hbar c}.

M=M⊙M=M_\odot で TH=6.17×10−8 KT_{\mathrm H}=6.17\times10^{-8}\,\mathrm K、SBH/kB=1.05×1077S_{\mathrm{BH}}/ k_{\mathrm B}=1.05\times10^{77}。

(2) TH∝1/MT_{\mathrm H}\propto1/M なので dTHdM=−TH/M\frac{\mathrm{d} T_{\mathrm H}}{\mathrm{d} M}=-T_{\mathrm H}/M で、

C=c2dTHdM=−Mc2TH=−8πGM2kBℏc=−2SBH.C=\frac{c^2}{\frac{\mathrm{d} T_{\mathrm H}}{\mathrm{d} M}}=-\frac{Mc^2}{T_{\mathrm H}}=-\frac{8\pi GM^2 k_{\mathrm B}}{\hbar c}=-2S_{\mathrm{BH}}.

M⊙M_\odot で C=−2.90×1054 J K−1C=-2.90\times10^{54}\,\mathrm{J\,K^{-1}}。熱容量が負なので、エネルギーを放出すると温度が上がり、放出がさらに速まる。周りより熱いブラックホールは放射で冷えるどころか熱くなり続け、熱浴と安定に釣り合うことができない。

(3) M=ℏc3/(8πGkBT)M=\hbar c^3/(8\pi G k_{\mathrm B} T) に T=2.72548 KT=2.72548\,\mathrm K を入れて M=4.50×1022 kgM=4.50\times10^{22}\,\mathrm{kg}(月の質量 7.35×1022 kg7.35\times10^{22}\,\mathrm{kg} の約 0.6 倍)。これより重いブラックホールは背景放射より冷たいので、現在の宇宙では放射するより多く吸収して太っていく。

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