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出てくるもの(2):Kruskal 座標と Penrose 図

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第17章 ブラックホールの幾何
目次
  1. Kruskal 座標
  2. 時刻の並進は Lorentz ブースト
  3. Penrose 図
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部 第17章 §2.17.4 ★★ 内向きと外向きの両方の光を目盛りにすると、Schwarzschild 時空全体が4つの領域からなる1枚の図になり、時刻 tt の並進はその図の Lorentz ブーストになる

Kruskal 座標

Eddington–Finkelstein 座標は内向きの光だけを目盛りに使ったので、外向きの光について同じ問題が残る(t~→−∞\tilde t\to-\infty の側に座標で覆えない領域がある)。両方の光を目盛りに使い、さらに対数の発散を指数関数で打ち消したのが Kruskal(1960)と Szekeres(1960)の座標である1M. D. Kruskal, Phys. Rev. 119, 1743 (1960); G. Szekeres, Publ. Math. Debrecen 7, 285 (1960).下の脚注へ。r>rsr>r_{\mathrm s} の領域で、無次元の座標 (T,X)(T,X) を

X=rrs−1  er/(2rs)cosh⁡ct2rs,T=rrs−1  er/(2rs)sinh⁡ct2rs(2.17.18)X=\sqrt{\frac{r}{r_{\mathrm s}}-1}\;\mathrm{e}^{r/(2r_{\mathrm s})}\cosh\frac{ct}{2r_{\mathrm s}},\qquad T=\sqrt{\frac{r}{r_{\mathrm s}}-1}\;\mathrm{e}^{r/(2r_{\mathrm s})}\sinh\frac{ct}{2r_{\mathrm s}}\tag{2.17.18}

で定める。これから

X2−T2=(rrs−1)er/rs,TX=tanh⁡ct2rs(2.17.19)X^2-T^2=\Bigl(\frac{r}{r_{\mathrm s}}-1\Bigr)\mathrm{e}^{r/r_{\mathrm s}},\qquad \frac TX=\tanh\frac{ct}{2r_{\mathrm s}}\tag{2.17.19}

であり、計量は

ds2=4rs3re−r/rs(dT2−dX2)−r2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)(2.17.20)\mathrm{d} s^2=\frac{4r_{\mathrm s}^3}{r}\mathrm{e}^{-r/r_{\mathrm s}}\bigl(\mathrm{d} T^2-\mathrm{d} X^2\bigr)-r^2(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2)\tag{2.17.20}

になる(rr は (2.17.19) で T,XT,X の関数として決まる)。前の係数は r>0r>0 でどこも正で有限なので、計量は r=rsr=r_{\mathrm s} を含めて正則である。しかも tt-rr 部分は平坦な時空の dT2−dX2\mathrm{d} T^2-\mathrm{d} X^2 に正の関数を掛けた形なので、動径方向の光はいつも T=±X+定数T=\pm X+\text{定数}、すなわち 45∘45^\circ の線である。因果の構造を Minkowski 時空と同じ目で読める。

(2.17.19) の第1式の右辺は rr の単調増加関数で、r=rsr=r_{\mathrm s} で 00、r=0r=0 で −1-1 である。したがってr=rsr=r_{\mathrm s} は T=±XT=\pm X の2本の直線、r=0r=0 は双曲線 T2−X2=1T^2-X^2=1、rr 一定の面は双曲線になる。この式は X<0X<0 や ∣T∣>∣X∣\lvert T\rvert >\lvert X\rvert の側にも解を持つので、(T,X)(T,X) 平面は4つの領域に分かれる(図 2.17.2)。領域 I(X>∣T∣X>\lvert T\rvert)が元の r>rsr>r_{\mathrm s}、領域 II(T>∣X∣T>\lvert X\rvert)がブラックホールの内側である。領域 III(X<−∣T∣X<-\lvert T\rvert)はもう1つの漸近的に平坦な外部、領域 IV(T<−∣X∣T<-\lvert X\rvert)は時間を反転した内部(ホワイトホール)である。I と III は T=0T=0 の面で r=rsr=r_{\mathrm s} の喉を通ってつながっている(Einstein–Rosen 橋)が、I から III へ行く時間的な世界線は無い。ただし領域 III・IV は真空の Schwarzschild 解を最大限に延ばしたときに数学的に現れるもので、星が潰れてできるブラックホールでは、星の物質が過去側を覆うので現れない。

図

図 2.17.2 Kruskal 座標の (T,X)(T,X) 平面。破線が r=rsr=r_{\mathrm s}(地平面)、ギザギザの双曲線が r=0r=0 の特異点。青の双曲線は r=1.2rsr=1.2r_{\mathrm s} と 1.5rs1.5r_{\mathrm s}、赤は内側の r=0.5rsr=0.5r_{\mathrm s}(数字は r/rsr/r_{\mathrm s})。灰色の直線は時刻 tt 一定の面で、どれも原点を通る。光は 45∘45^\circ の線に乗るので、領域 II からは I へも III へも出られない

時刻の並進は Lorentz ブースト

(2.17.18) で t→t+Δtt\to t+\Delta t とすると、η≔cΔt/(2rs)\eta\coloneqq c\Delta t/(2r_{\mathrm s}) として

X→Xcosh⁡η+Tsinh⁡η,T→Tcosh⁡η+Xsinh⁡ηX\to X\cosh\eta+T\sinh\eta,\qquad T\to T\cosh\eta+X\sinh\eta

となる。これは (T,X)(T,X) 平面の Lorentz ブースト(ラピディティ η\eta)そのものである。Schwarzschild 計量の時間の並進の対称性(Killing ベクトル ∂t\partial_t。第2部第12章)は、Kruskal 図の上では原点のまわりの双曲線回転になる。tt 一定の面が原点を通る直線になり、t→±∞t\to\pm\infty が地平面 T=±XT=\pm X に対応するのはこのためである。ブーストの軸 T=±XT=\pm X の上ではブーストは「動かない」ので、地平面の上では ∂t\partial_t は光的になる。この構造は平坦な時空の Rindler 座標(第2部第11章)と同じで、2.17.6節で地平面の近くが実際に Rindler 時空に一致することを確かめる。ラピディティ η=cΔt/(2rs)\eta=c\Delta t/(2r_{\mathrm s}) の係数 c/(2rs)c/(2r_{\mathrm s}) に cc を掛けた κ≔c2/(2rs)=c4/(4GM)\kappa\coloneqq c^2/(2r_{\mathrm s})=c^4/(4GM) を表面重力と呼び、第2部第19章と第5部第12章で中心の役を果たす。

例題 2.17.5 地平面の近くからの光が遠方に届く時刻 ★★

オリジナルM=10M⊙M=10M_\odot のブラックホールに、外から落ちていく光源がある。光源は Kruskal 座標で見ると地平面 T=XT=X を有限の TT で横切る。

  1. (1) 遠方の座標時間 Δt=1 ms\Delta t=1\,\mathrm{ms} の並進は、ラピディティいくらのブーストか。
  2. (2) 地平面のすぐ外で光源が一定の間隔で外向きの光の信号を出すとき、遠方で受け取る間隔は、光源の位置の外向きの光の座標 U≔T−XU\coloneqq T-X の間隔に比例して、UU が 00 に近づくにつれ指数関数的に引き延ばされることを示せ。遠方の時刻 1 ms1\,\mathrm{ms} ごとに、UU は何分の1になるか。
解答

(1) rs=2.953×104 mr_{\mathrm s}=2.953\times10^4\,\mathrm m なので η=cΔt2rs=2.998×108×10−32×2.953×104=5.08\eta=\frac{c\Delta t}{2r_{\mathrm s}}=\frac{2.998\times10^8\times10^{-3}}{2\times2.953\times10^4}=5.08。

(2) 領域 I で U=T−X=−r/rs−1 er/(2rs)e−ct/(2rs)U=T-X=-\sqrt{r/r_{\mathrm s}-1}\,\mathrm{e}^{r/(2r_{\mathrm s})}\mathrm{e}^{-ct/(2r_{\mathrm s})} であり、(2.17.11) の r∗r^* を使うとr/rs−1 er/(2rs)=er∗/(2rs)\sqrt{r/r_{\mathrm s}-1}\,\mathrm{e}^{r/(2r_{\mathrm s})}=\mathrm{e}^{r^*/(2r_{\mathrm s})} なので U=−e−c(t−r∗/c)/(2rs)U=-\mathrm{e}^{-c(t-r^*/c)/(2r_{\mathrm s})} である。外向きの光は ct−r∗ct-r^* 一定、すなわち UU 一定の線に乗るので、遠方の観測者が光を受け取る時刻 tobst_{\mathrm{obs}}(遠方での t−r∗/ct-r^*/c に定数を足したもの)は U=−e−ctobs/(2rs)U=-\mathrm{e}^{-ct_{\mathrm{obs}}/(2r_{\mathrm s})} と結ばれる。光源は地平面 U=0U=0 を有限の Kruskal 座標で横切るので、地平面の近くで光源の固有時と UU はほぼ比例する。ところが tobs=−2rscln⁡(−U)t_{\mathrm{obs}}=-\frac{2r_{\mathrm s}}{c}\ln(-U) は U→0U\to0 で発散し、UU の等間隔は遠方では指数関数的に引き延ばされた間隔になる。遠方の時刻が 1 ms1\,\mathrm{ms} 進むごとに −U-U は e−η=e−5.08=1/160\mathrm{e}^{-\eta}=\mathrm{e}^{-5.08}=1/160 倍になる。したがって、遠方から見た光源は約 1 ms1\,\mathrm{ms} ごとに 160160 分の1の速さで暗く赤くなり、地平面を横切る瞬間は見えない。

Penrose 図

Kruskal 図も無限遠は図の外にある。無限に遠い点を有限の位置に描くために、光の座標 U=T−XU=T-X、V=T+XV=T+X をそれぞれ U~=arctan⁡U\tilde U=\arctan U、V~=arctan⁡V\tilde V=\arctan V に縮める。arctan⁡\arctan は単調なので光の線(UU 一定や VV 一定)はそのまま 45∘45^\circ の線に写り、因果の構造は保たれる。計量には正の因子が掛かるだけである。こうして描いた図を Penrose 図(共形図)と呼ぶ。

各領域の位置を確かめる。特異点 T2−X2=UV=1T^2-X^2=UV=1(U,V>0U,V>0)は tan⁡U~tan⁡V~=1\tan\tilde U\tan\tilde V=1、すなわち U~+V~=π/2\tilde U+\tilde V=\pi/2 で、縦軸 (U~+V~)/2(\tilde U+\tilde V)/2 が一定の水平な線になる。領域 I の空間的な無限遠 i0i^0 は U→−∞U\to-\infty、V→+∞V\to+\infty で (U~,V~)=(−π/2,π/2)(\tilde U,\tilde V)=(-\pi/2,\pi/2)、未来の時間的な無限遠 i+i^+ は V→∞V\to\infty、U→0−U\to0^- で (0,π/2)(0,\pi/2) である。i+i^+ と i0i^0 を結ぶ辺が光の行き着く先(未来の光的無限遠)で、I+\mathcal I^+ と書く。図 2.17.3 がその形である。

図

図 2.17.3 最大に延ばした Schwarzschild 時空の Penrose 図。45∘45^\circ の線が光。破線が地平面、上下のギザギザの水平線が r=0r=0 の特異点。領域 I の外側の辺 I±\mathcal I^\pm が光の行き着く先と出どころ、i0i^0 が空間的な無限遠、i±i^\pm が時間的な無限遠。灰色の領域 II に入った世界線(青)は、どの向きに進んでも上の特異点に着く

Penrose 図で事象の地平面の定義がはっきりする。領域 I の点から未来へ向かう 45∘45^\circ 以内の世界線のうち I+\mathcal I^+ に届くものがある点の集まりの境界が、破線 (U~=0)(\tilde U=0) である。破線より上の点からは、I+\mathcal I^+ へ届く世界線が1本も無い。上の特異点は水平な線で、領域 II の中の観測者にとって、空間の1点でなく「未来の時刻」である(2.17.3節の「内側で rr は時間」)。

ほかの巻では

1 M. D. Kruskal, Phys. Rev. 119, 1743 (1960); G. Szekeres, Publ. Math. Debrecen 7, 285 (1960).

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