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当てる道具:変数を選んで取り替える多変数の Legendre 変換

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第4章 熱力学ポテンシャルは Legendre 変換
目次
  1. 第1部第7章の道具
  2. 取り替える変数の組で決まるポテンシャル
  3. 取り替えた変数と残した変数の偏微分
  4. 全部取り替えると が残る
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第4章 §3.4.2 ★★★ 取り替える変数の組を1つ選ぶごとにポテンシャルが1つ決まる。示量変数を全部取り替えると 00 しか残らない

第1部第7章の道具

第1部第7章で作った道具を3つ思い出しておく。1つ目は定義で、下に凸な f(x)f(x) の Legendre 変換は f∗(p)=sup⁡x[px−f(x)]f^*(p)=\sup_x[px-f(x)]、傾き pp の接線の切片は −f∗(p)-f^*(p) である。2つ目は導関数の入れ替えで、(f∗)′(p)=x(f^*)'(p)=x、(f∗)′′=1/f′′(f^*)''=1/f'' が成り立つ。3つ目は取り替えない変数の規則で、ff が別の変数 yy にも依存するとき、yy を止めたまま xx だけを取り替えると、yy についての偏微分は符号を変えて引き継がれる(∂f∗/∂y=−∂f/∂y\partial f^*/\partial y=-\partial f/\partial y)。熱力学では切片に負号を付けずにそのまま使う習慣があり、F(T,V)=inf⁡S[U−TS]=−U∗F(T,V)=\inf_S[U-TS]=-U^* と書いた。

取り替える変数の組で決まるポテンシャル

U(S,V,N)U(S,V,N) の3つの示量変数のうち、取り替えるものの集合を1つ選ぶ。選んだ変数 xax_a をそれぞれの傾き ya=∂U/∂xay_a=\partial U/\partial x_a に取り替えた関数を

Φ(取り替えた傾き, 残した示量変数)≔inf⁡選んだ xa[U−∑ayaxa](3.4.5)\Phi(\text{取り替えた傾き},\ \text{残した示量変数})\coloneqq\inf_{\text{選んだ }x_a}\Bigl[U-\sum_a y_a x_a\Bigr]\tag{3.4.5}

で定める。傾きは (yS,yV,yN)=(T,−P,μ)(y_S,y_V,y_N)=(T,-P,\mu) なので、VV を取り替えると −yVV=+PV-y_VV=+PV の項が付く。選び方は 23=82^3=8 通りあり、名前の付いたものは次の5つである。

F(T,V,N)=inf⁡S[U−TS],He(S,P,N)=inf⁡V[U+PV],G(T,P,N)=inf⁡S,V[U−TS+PV],Ω(T,V,μ)=inf⁡S,N[U−TS−μN],(3.4.6)\begin{aligned} F(T,V,N)&=\inf_S[U-TS], & H_{\mathrm e}(S,P,N)&=\inf_V[U+PV],\\ G(T,P,N)&=\inf_{S,V}[U-TS+PV], & \Omega(T,V,\mu)&=\inf_{S,N}[U-TS-\mu N], \end{aligned}\tag{3.4.6}

と、何も取り替えない UU 自身である。inf⁡\inf を2つの変数について取るとき、1つずつ順に取っても同時に取っても値は同じなので、GG は FF の VV を取り替えても、HeH_{\mathrm e} の SS を取り替えても得られる。この「順序によらない」ことが、ポテンシャルを図 3.4.1 の格子に並べられる理由である。

図

図 3.4.1 U(S,V,N)U(S,V,N) の示量変数を傾きに取り替える組み合わせ。矢印1本が1変数の Legendre 変換(切片に負号を付けない熱力学の約束)で、どの道筋を通っても行き先は同じ。(S,V,N)(S,V,N) を全部取り替えた右下は、Gibbs–Duhem の関係を満たす (T,P,μ)(T,P,\mu) で 00、満たさなければ −∞-\infty になる

取り替えた変数と残した変数の偏微分

式 (3.4.5) の inf⁡\inf を与える点では ∂U/∂xa=ya\partial U/\partial x_a=y_a が成り立つ。Φ\Phi を yay_a で微分すると、inf⁡\inf の点の動きからの寄与はこの条件で消え、−xa-x_a だけが残る。残した示量変数 xbx_b で微分すると、取り替えない変数の規則により ∂U/∂xb\partial U/\partial x_b がそのまま引き継がれる(F=−U∗F=-U^* と負号ごと約束したので符号は変わらない)。

∂Φ∂ya=−xa,∂Φ∂xb=∂U∂xb=yb.(3.4.7)\frac{\partial \Phi}{\partial y_a}=-x_a,\qquad \frac{\partial \Phi}{\partial x_b}=\frac{\partial U}{\partial x_b}=y_b .\tag{3.4.7}

たとえば FF では ∂F/∂T=−S\partial F/\partial T=-S、∂F/∂V=−P\partial F/\partial V=-P、∂F/∂N=μ\partial F/\partial N=\mu になる。

凸性も引き継がれる。U−∑ayaxaU-\sum_ay_ax_a は yay_a の1次式なので、その inf⁡\inf は yay_a について上に凸である(1次式の下限は上に凸)。また、残した変数 xbx_b については、(xa,xb)(x_a,x_b) について同時に下に凸な関数を xax_a について最小にしたものなので、xbx_b について下に凸のままである。したがって F(T,V,N)F(T,V,N) は TT について上に凸、VV と NN について下に凸で、G(T,P,N)G(T,P,N) は TT と PP の両方について上に凸になる。この符号が3.4.5節で安定性の条件として現れる。

全部取り替えると 00 が残る

図 3.4.1 の右下、3つを全部取り替えた関数は

inf⁡S,V,N[U(S,V,N)−TS+PV−μN]\inf_{S,V,N}\bigl[U(S,V,N)-TS+PV-\mu N\bigr]

である。角括弧の中は1次同次性 (3.4.2) により (S,V,N)(S,V,N) について1次同次なので、どこか1点で負の値を取れば、その点を λ\lambda 倍して λ→∞\lambda\to\infty とすると −∞-\infty に下がる。負の値をどこでも取らなければ、λ→0\lambda\to0 で 00 に近づくので下限は 00 である。値が 00 になる (T,P,μ)(T,P,\mu) の組は、ある (S,V,N)(S,V,N) で Euler の関係 (3.4.3) が成り立つ組、すなわち Gibbs–Duhem の関係で結ばれた組に限られる。示量変数を全部取り替えると、関数としての情報は残らず、「どの (T,P,μ)(T,P,\mu) の組が許されるか」という拘束だけが残る。

同じ理由で、示量変数を1つだけ残したポテンシャルは、その変数の1次式になる。G(T,P,N)G(T,P,N) は NN だけが示量変数なので G=N g(T,P)G=N\,g(T,P) と書くことができ、式 (3.4.7) の ∂G/∂N=μ\partial G/\partial N=\mu から g=μg=\mu、すなわち G=μNG=\mu N である。Ω(T,V,μ)\Omega(T,V,\mu) は VV だけが示量変数なので、∂Ω/∂V=−P\partial\Omega/\partial V=-P から Ω=−PV\Omega=-PV である。どちらも Euler の関係 (3.4.3) を書き直したものになっている。

例題 3.4.2 光子気体では G=0G=0 ★★★

オリジナル空洞の中の光子気体は、粒子数が保存しないので NN を変数に持たず、基本関係式は定数 K>0K>0 を使って U(S,V)=KS4/3V−1/3U(S,V)=KS^{4/3}V^{-1/3} と書くことができる(この形の由来は黒体放射を扱う第5部第3章で導く)。

  1. (1) TT を求め、U=arVT4U=a_{\mathrm r}VT^4(ar=81/(256K3)a_{\mathrm r}=81/(256K^3))を示せ。
  2. (2) F(T,V)F(T,V) と PP を求め、G=F+PV=0G=F+PV=0 を示せ。
  3. (3) He(S,P)=inf⁡V[U+PV]H_{\mathrm e}(S,P)=\inf_V[U+PV] を求め、SS の1次式 T(P) ST(P)\,S になることを確かめよ。
解答

(1) T=∂U/∂S=43KS1/3V−1/3T=\partial U/\partial S=\frac43KS^{1/3}V^{-1/3} より S=(3T4K)3VS=\bigl(\frac{3T}{4K}\bigr)^3V。これを UU に入れるとU=K(3T4K)4V=81256K3VT4U=K\bigl(\frac{3T}{4K}\bigr)^4V=\frac{81}{256K^3}VT^4。

(2) F=U−TS=KS4/3V−1/3−43KS4/3V−1/3=−13U=−13arVT4F=U-TS=KS^{4/3}V^{-1/3}-\frac43KS^{4/3}V^{-1/3}=-\frac13U=-\frac13a_{\mathrm r}VT^4。P=−∂F/∂V∣T=13arT4=U/(3V)P=-\partial F/\partial V|_T=\frac13a_{\mathrm r}T^4=U/(3V) で、圧力は温度だけで決まる。G=F+PV=−13arVT4+13arVT4=0G=F+PV=-\frac13a_{\mathrm r}VT^4+\frac13a_{\mathrm r}VT^4=0。

(3) U+PVU+PV を VV で微分して 00 と置くと −13KS4/3V−4/3+P=0-\frac13KS^{4/3}V^{-4/3}+P=0、すなわち最小点で PV=U/3PV=U/3。よって He=U+PV=43UH_{\mathrm e}=U+PV=\frac43U で、最小点の V=(K/(3P))3/4SV=\bigl(K/(3P)\bigr)^{3/4}S を入れて

He(S,P)=43(3P)1/4K3/4 S.H_{\mathrm e}(S,P)=\frac43(3P)^{1/4}K^{3/4}\,S .

(2) の P=13arT4P=\frac13a_{\mathrm r}T^4 を TT について解くと T=(3P/ar)1/4=43(3P)1/4K3/4T=(3P/a_{\mathrm r})^{1/4}=\frac43(3P)^{1/4}K^{3/4} で、He=T(P) SH_{\mathrm e}=T(P)\,S になっている。

この基本関係式の示量変数は (S,V)(S,V) の2つだけなので、2つとも取り替えた GG は、本文の議論どおり 00 になる。光子気体の化学ポテンシャルが 00 であること(G=μNG=\mu N で NN が変数にないこと)と、圧力が温度だけで決まること(Gibbs–Duhem の関係が S dT=V dPS\,\mathrm{d} T=V\,\mathrm{d} P だけになること)は、同じ事実の言い換えである。HeH_{\mathrm e} が SS の1次式になったのも、示量変数が1つだけ残ったためである。

木下の勉強ステータス

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