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出てくるもの1:4つのポテンシャルと Maxwell 関係式

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第4章 熱力学ポテンシャルは Legendre 変換
目次
  1. 全微分と最小原理
  2. Maxwell 関係式
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第4章 §3.4.3 ★★★ どの変数を外から決めるかでどのポテンシャルが最小になるかが決まり、2階偏微分の対称性から Maxwell 関係式が出る

全微分と最小原理

式 (3.4.7) を4つのポテンシャルに当てると、全微分は次の形になる。

dF=−S dT−P dV+μ dN,dHe=T dS+V dP+μ dN,dG=−S dT+V dP+μ dN,dΩ=−S dT−P dV−N dμ.(3.4.8)\begin{aligned} \mathrm{d} F&=-S\,\mathrm{d} T-P\,\mathrm{d} V+\mu\,\mathrm{d} N, & \mathrm{d} H_{\mathrm e}&=T\,\mathrm{d} S+V\,\mathrm{d} P+\mu\,\mathrm{d} N,\\ \mathrm{d} G&=-S\,\mathrm{d} T+V\,\mathrm{d} P+\mu\,\mathrm{d} N, & \mathrm{d}\Omega&=-S\,\mathrm{d} T-P\,\mathrm{d} V-N\,\mathrm{d}\mu . \end{aligned}\tag{3.4.8}

各ポテンシャルの自然な変数とは、式 (3.4.5) で取り替えた傾きと残した示量変数のことで、全微分に d\mathrm{d} が付いて現れる変数である。

なぜ inf⁡\inf が付くのか、物理の言葉で説明する。温度 TT の大きな熱浴に接し、体積と粒子数が一定の系を考える。系の中の拘束(仕切りの位置や反応の進み具合など)を変えて、系のエネルギーが ΔU\Delta U、エントロピーが ΔS\Delta S だけ変わったとする。系が熱浴から受け取った熱は ΔU\Delta U に等しく、熱浴のエントロピーは −ΔU/T-\Delta U/T だけ変わる。系と熱浴を合わせた孤立系のエントロピーは減らないので

ΔS−ΔUT=−Δ(U−TS)T≥0\Delta S-\frac{\Delta U}{T}=-\frac{\Delta(U-TS)}{T}\ge0

となる。つまり、熱浴の温度 TT を止めて内部の拘束を動かすと、U−TSU-TS は減る向きにしか動かず、平衡では最小になる。この最小値が F(T,V,N)F(T,V,N) で、式 (3.4.6) の inf⁡S\inf_S はこの最小化そのものである。圧力 PP の環境に接して体積も動ける系では、環境にした仕事 PΔVP\Delta V も勘定に入って Δ(U−TS+PV)≤0\Delta(U-TS+PV)\le0 となり、GG が最小になる。粒子もやりとりする系では Ω\Omega が最小になる。第1部第7章で見た Young の不等式 U(S,V)−TS≥F(T,V)U(S,V)-TS\ge F(T,V) は、この最小原理を不等式の形で書いたものである。

Maxwell 関係式

F(T,V)F(T,V)(NN は止める)が2回連続微分可能なら、2階偏微分は微分の順序によらない。∂F/∂T=−S\partial F/\partial T=-S、∂F/∂V=−P\partial F/\partial V=-P なので

∂2F∂V ∂T=−∂S∂V∣T,∂2F∂T ∂V=−∂P∂T∣V\frac{\partial^2F}{\partial V\,\partial T}=-\frac{\partial S}{\partial V}\Big|_T,\qquad \frac{\partial^2F}{\partial T\,\partial V}=-\frac{\partial P}{\partial T}\Big|_V

が等しい。4つのポテンシャルで同じことをすると、次の4本が出る。

∂T∂V∣S=−∂P∂S∣V,∂S∂V∣T=∂P∂T∣V,∂T∂P∣S=∂V∂S∣P,∂S∂P∣T=−∂V∂T∣P.(3.4.9)\frac{\partial T}{\partial V}\Big|_S=-\frac{\partial P}{\partial S}\Big|_V,\qquad \frac{\partial S}{\partial V}\Big|_T=\frac{\partial P}{\partial T}\Big|_V,\qquad \frac{\partial T}{\partial P}\Big|_S=\frac{\partial V}{\partial S}\Big|_P,\qquad \frac{\partial S}{\partial P}\Big|_T=-\frac{\partial V}{\partial T}\Big|_P .\tag{3.4.9}

左から U(S,V)U(S,V)・F(T,V)F(T,V)・He(S,P)H_{\mathrm e}(S,P)・G(T,P)G(T,P) の混合偏微分である。これを Maxwell 関係式と呼ぶ。

Maxwell 関係式の使い道は、測りにくい量を測りやすい量に書き換えることにある。エントロピーは直接測ることができないが、圧力・体積・温度は測ることができる。たとえば FF の関係式から、等温で体積を変えたときのエントロピーの変化は、体積を止めて温度を変えたときの圧力の変化に等しい。これを使うと、内部エネルギーの体積依存が状態方程式だけで決まる。dU=T dS−P dV\mathrm{d} U=T\,\mathrm{d} S-P\,\mathrm{d} V を等温で VV について割って Maxwell 関係式を使うと

∂U∂V∣T=T∂S∂V∣T−P=T∂P∂T∣V−P.(3.4.10)\frac{\partial U}{\partial V}\Big|_T=T\frac{\partial S}{\partial V}\Big|_T-P=T\frac{\partial P}{\partial T}\Big|_V-P .\tag{3.4.10}

理想気体 P=NkBT/VP=N k_{\mathrm B} T/V では右辺が 00 で、内部エネルギーは体積によらない。

解析力学の側から見ると、Maxwell 関係式は第1部第7章の Legendre 変換の性質「導関数は逆関数どうし」を多変数で書いたものの一部である。U(S,V)U(S,V) の Hesse 行列が正定値なら、(S,V)↦(T,−P)(S,V)\mapsto(T,-P) の写像は逆写像を持ち、その Jacobi 行列は対称である。対称であることが Maxwell 関係式で、逆写像の Jacobi 行列が元の逆行列になることが、CVC_V や圧縮率を結ぶ関係(3.4.6節の例題)になる。

例題 3.4.3 van der Waals 気体の内部エネルギー ★★

オリジナルvan der Waals 気体の状態方程式 P=NkBTV−Nb−aN2V2P=\dfrac{N k_{\mathrm B} T}{V-Nb}-\dfrac{aN^2}{V^2}(a,b>0a,b>0 は物質ごとの定数)を考える。

  1. (1) 式 (3.4.10) から (∂U/∂V)T(\partial U/\partial V)_T を求めよ。
  2. (2) 定積熱容量 CV=(∂U/∂T)VC_V=(\partial U/\partial T)_V が VV によらないことを示し、CVC_V を定数として U(T,V)U(T,V) を求めよ。
  3. (3) 断熱された容器の中で、気体を体積 V1V_1 から V2>V1V_2>V_1 の真空へ広げる(自由膨張。UU は変わらない)。温度の変化を求めよ。
解答

(1) (∂P/∂T)V=NkB/(V−Nb)(\partial P/\partial T)_V=N k_{\mathrm B}/(V-Nb) なので T(∂P/∂T)V−P=aN2/V2T(\partial P/\partial T)_V-P=aN^2/V^2。よって (∂U/∂V)T=aN2/V2(\partial U/\partial V)_T=aN^2/V^2。分子間の引力(aa の項)があると、体積を広げて分子の間隔を開けるのにエネルギーが要る。

(2) (∂CV∂V)T=∂2U∂T ∂V=∂∂T[T∂P∂T∣V−P]V=T∂2P∂T2∣V\left(\frac{\partial C_V}{\partial V}\right)_T=\frac{\partial^2U}{\partial T\,\partial V}=\frac{\partial }{\partial T}\Bigl[T\frac{\partial P}{\partial T}\Big|_V-P\Bigr]_V=T\frac{\partial^2P}{\partial T^2}\Big|_V で、van der Waals の PP は TT の1次式なので 00。よって CVC_V は VV によらない。(1) と合わせて U=CVT−aN2/V+定数U=C_VT-aN^2/V+\text{定数}。

(3) UU が等しいので CVT2−aN2/V2=CVT1−aN2/V1C_VT_2-aN^2/V_2=C_VT_1-aN^2/V_1、すなわち

T2−T1=−aN2CV(1V1−1V2)<0.T_2-T_1=-\frac{aN^2}{C_V}\Bigl(\frac1{V_1}-\frac1{V_2}\Bigr)<0 .

引力のある気体は自由膨張で冷える。理想気体(a=0a=0)では温度は変わらない。この結果は状態方程式と CVC_V だけから出ていて、エントロピーを一度も測っていない。Maxwell 関係式で (∂S/∂V)T(\partial S/\partial V)_T を (∂P/∂T)V(\partial P/\partial T)_V に置き換えたためである。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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