解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第7章 §3.7.6 ★★ 教科書の「分子場 λM を仮定する」「圧力と体積を補正する」が、自由エネルギーの最小化からどの係数で出るか
Weiss の分子場と Curie–Weiss の法則
固体物理や統計力学の授業では、強磁性を次のように導入することが多い。磁化 M を持つ物質の中の磁気モーメントは、外部の磁場 B に加えて磁化に比例する「分子場」λM も加わると仮定し、常磁性の式の B を B+λM に置き換える。スピン 21 の N 個の原子なら
M=NμBtanhkBTμB(B+λM).(3.7.25)
M が小さいとき1次まで展開して M=kBTNμB2(B+λM) を M について解くと
BM=T−θC,C=kBNμB2,θ=λC(3.7.26)
で、これが授業で習う Curie–Weiss の法則である。
この章の式と並べる。M=NμBm、b=μBB とおけば、式 (3.7.25) は式 (3.7.11) と同じ形で、分子場の項の対応は
μBλM=zJm⟺λ=NμB2zJ.
授業の形では λ は実験から決める定数として外から入るが、この章では λ が交換の強さ J と配位数 z から決まり、その由来は「隣のスピンを平均で置き換えた1体の有効 Hamiltonian」 (3.7.12) である。磁化率の対応は M/B=NμB2χ で、式 (3.7.16) の χ=1/(kB(T−Tc)) から θ=Tc=zJ/kB となる。平均場の近似の中では、高温側の磁化率から読む温度 θ と、自発磁化が現れる温度 Tc が一致する。
授業の形で見えにくいことが2つある。1つ目は、分子場の仮定が「どういう分布を選んだことにあたるか」で、この章の答えは「格子点ごとの積の分布の中で自由エネルギーを最小にした」である。これにより、自由エネルギー (3.7.10) が上界であること、解が複数あるときは FMF の小さいほうを選ぶこと、比熱の跳びが23NkB になることが、仮定を追加せずに出る。2つ目は、捨てたものが隣どうしの相関であることで、そこから1・2次元で近似が崩れる理由を読み取ることができる。
van der Waals の式
授業では van der Waals の式を
(P+V2aN2)(V−Nb)=NkBT
と書き、「分子の大きさの分だけ体積を減らし、分子間の引力の分だけ圧力を補正する」と説明することが多い。この章の式 (3.7.23) はこれと同じ式で、2つの補正がそれぞれ別の近似から出ることが分かる。aN2/V2 は引力の尾の平均場、すなわち QN の中の exp(βaN2/V) で、a は式 (3.7.22) の積分で u(r) から決まる。V−Nb は剛体の芯の排除体積で、平均場とは別の、密度の低い所での近似である。
例題 3.7.6 分子場の大きさ ★★
オリジナル平均場の近似の Ising 模型で、Curie 温度が Tc=600K の架空の強磁性体を考える。磁気モーメントの大きさは μB=9.274×10−24JT−1、kB=1.381×10−23JK−1 とする。
- T=0 で全部のスピンがそろったとき(m=1)、分子場 zJm を磁場に換算した値 Bm=zJ/μB を求めよ。
- 隣の原子までの距離を 0.25nm として、隣の原子の磁気モーメント μB が作る双極子の磁場の大きさを 4πμ0r3μB で見積もり、(1) と比べよ。
解答
(1) zJ=kBTc なので Bm=kBTc/μB=1.381×10−23×600/9.274×10−24=893T。
(2) 4πμ0=10−7TmA−1 なので 10−7×9.274×10−24/(0.25×10−9)3=0.059T。(1) の分子場はこれの約 1.5×104 倍である。数百度の Curie 温度を説明する結合は、磁気双極子の間の磁気的な力では4桁足りない。J の起源は電子の波動関数の重なりと Pauli の原理による交換相互作用で、これは磁気的な力でなく Coulomb の力の量子力学的な効果である(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部第2章)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com