解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第8章 §4.8.6 ★★ 授業の量子力学は Schrödinger 方程式を解いて固有関数で展開する。経路積分の短い時間の核から Schrödinger 方程式が出て、核の固有関数展開から準位が読める
授業での形
解析力学を経ずに習う量子力学では、出発点は Schrödinger 方程式
iℏ∂t∂ψ=−2mℏ2∂q2∂2ψ+V(q)ψ
で、定常状態 H^ψn=Enψn を求めて ψ(q,t)=∑ncnψn(q)e−iEnt/ℏ と展開する。この展開の係数 cn=∫ψn∗(qi)ψ(qi,0)dqi を入れて式 (4.8.3) と比べると、
K(qf,qi;T)=n∑ψn(qf)ψn∗(qi)e−iEnT/ℏ(4.8.32)
を得る。授業では核をこの形で(Green 関数として)習うことが多い。経路積分は同じ K を固有関数を使わずに作用だけで書いたもので、2つの書き方は同じ量の別の表示である。
短い時間の核から Schrödinger 方程式が出る
経路積分から Schrödinger 方程式へ戻る。式 (4.8.16) の1つの刻みは
ψ(q,t+ϵ)=∫dq′2πiℏϵmexp[2ℏϵim(q−q′)2−ℏiϵV(q′)]ψ(q′,t)
である。q′=q+η と置く。η の重み eimη2/(2ℏϵ) は ∣η∣≫ℏϵ/m で速く振動するので、寄与するのは η が ℏϵ/m 程度の所だけである。そこで ψ(q+η)=ψ+ηψ′+21η2ψ′′+⋯、V(q+η)≈V(q) と展開し、η の重みのモーメント
⟨1⟩=1,⟨η⟩=0,⟨η2⟩=miℏϵ(4.8.33)
(⟨f⟩:=∫dηm/(2πiℏϵ)eimη2/(2ℏϵ)f(η))を使うと、
ψ(q,t+ϵ)=(1−ℏiϵV(q))(ψ+2miℏϵψ′′)+O(ϵ2)
となる。ϵ の1次を比べて iℏ を掛けると Schrödinger 方程式が出る。⟨η2⟩ が ϵ2 でなく ϵ に比例することから、典型的な経路は1区間で ϵ 程度動き、Δq/ϵ∼ϵ−1/2 は ϵ→0 で発散する。経路積分に寄与する経路は、至る所で微分できない折れ線である。式 (4.8.16) の q˙k は差分で、q˙ が存在するわけではない。
固有関数展開と跡から準位を読む
調和振動子で、式 (4.8.32) を虚数の時間で書くと、Mehler の核 (4.8.30) が ∑nψn(qf)ψn(qi)e−(n+1/2)ωτ に等しいことになる。これは m=ω=ℏ=1 の Hermite 関数で数値的に確かめられる(verify_ch4-08.py で 80 項の和が 10−12 で一致)。実時間の跡 ∫dqK(q,q;T) を式 (4.8.23) の Gauss 積分で求めると 1/[2isin(ωT/2)] で、∑ne−iω(n+1/2)T(T に小さな負の虚部を付けて収束させる)と一致する。跡を T について Fourier 変換すると、極の位置が準位 En に等しい。授業で「Schrödinger 方程式を解いて準位を求める」ことは、経路積分では「閉じた経路の和の周波数を読む」ことに対応する。
| 授業の形(Schrödinger 方程式) | 経路積分の形 |
| iℏ∂tψ=H^ψ | 短い時間の核 m/2πiℏϵeiϵL/ℏ を繰り返す |
| H^ が主役、L は量子化の前に使うだけ | L と作用 S[q] が主役、H^ は現れない |
| K=∑nψnψn∗e−iEnT/ℏ | K=∫DqeiS[q]/ℏ |
| 古典極限は Ehrenfest の定理か WKB | 古典極限は作用の停留(停留位相) |
| Z=∑ne−βEn | Z=∮Dqe−SE/ℏ(周期 βℏ) |
| AB 効果は p→p−qA のゲージ変換 | AB 効果は2本の経路の作用の差 qΦB |
例題 4.8.6 短い時間の核の前因子と Schrödinger 方程式 ★★
オリジナル1つの刻みの核を、前因子を未知の定数 Aϵ として Aϵexp[imη2/(2ℏϵ)−iϵV/ℏ] と書く。
- (1) ϵ→0 で ψ(q,t+ϵ)→ψ(q,t) となるために Aϵ が満たすべき条件を求めよ。
- (2) 式 (4.8.33) の ⟨η2⟩=iℏϵ/m を、Gauss 積分の公式を A で微分して導け。
- (3) ϵ の1次の項を比べ、Schrödinger 方程式の運動エネルギーの係数 −ℏ2/(2m) が出ることを確かめよ。
解答
(1) ϵ の0次では ψ(q,t+ϵ)=Aϵ∫dηeimη2/(2ℏϵ)ψ(q,t)=Aϵ2πiℏϵ/mψ(q,t) である(Fresnel 積分)。これが ψ(q,t) に等しいためには Aϵ=m/(2πiℏϵ) でなければならない。式 (4.8.16) の前因子は、この条件で一意に決まる。別の定数を選ぶと、1刻みごとに一定の倍率が掛かり、N→∞ で 0 か無限大になってしまう。
(2) 式 (4.8.6) で B=0 とした ∫e−Aη2dη=πA−1/2 を A で微分すると ∫η2e−Aη2dη=2πA−3/2 である。したがって ⟨η2⟩=πA−1/2πA−3/2/2=2A1 で、A=−im/(2ℏϵ) を入れると ⟨η2⟩=−ℏϵ/(im)=iℏϵ/m を得る。⟨η⟩=0 は被積分関数が奇関数であることから従う。
(3) 本文の展開から ψ(q,t+ϵ)−ψ(q,t)=ϵ[2miℏψ′′−ℏiVψ]+O(ϵ2)。ϵ で割り ϵ→0 として iℏ を掛けると
iℏ∂t∂ψ=iℏ⋅2miℏψ′′+iℏ⋅(−ℏi)Vψ=−2mℏ2ψ′′+Vψ
となる。運動エネルギーの係数 −ℏ2/(2m) は、重みの幅 ⟨η2⟩=iℏϵ/m の 21 倍に iℏ を掛けたものとして出る。L の運動エネルギーの項の係数 m/2 が重みの幅を決め、それが Hamiltonian の運動エネルギーの係数 1/(2m) に変わる。ここでも Legendre 変換が、Gauss 積分の形で行われている。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com