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出てくるもの (3):QED の電荷のくりこみ

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第10章 くりこみ
目次
  1. 3つの と Ward の恒等式
  2. 真空偏極
  3. 小さい :Uehling のポテンシャル
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第10章 §5.10.5 ★★★ ゲージ対称性から Z1=Z2Z_1=Z_2。電荷のくりこみは光子の場の規格化 Z3Z_3 だけで決まり、電子にも陽子にも同じ割合でかかる。真空偏極で近づくほど電荷が大きく見える

この節では実時間に戻り、計量 ημν=diag(+1,−1,−1,−1)\eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1) を使う。電荷は Heaviside–Lorentz の単位で e2=4παe^2=4\pi\alpha とし、電子の電荷を −e-e(e>0e>0)とする。

3つの ZZ と Ward の恒等式

第5部第5章の QED を裸の量で書くと

L=−14F0μνF0μν+ψˉ0(iγμ∂μ−m0)ψ0+e0ψˉ0γμψ0A0μ(5.10.23)\mathcal L=-\frac14F_{0\mu\nu}F_0^{\mu\nu}+\bar\psi_0\bigl(\mathrm{i}\gamma^\mu\partial_\mu-m_0\bigr)\psi_0+e_0\bar\psi_0\gamma^\mu\psi_0A_{0\mu}\tag{5.10.23}

である(Dμ=∂μ−ie0A0μD_\mu=\partial_\mu-\mathrm{i} e_0A_{0\mu} を ψˉ0iγμDμψ0\bar\psi_0\mathrm{i}\gamma^\mu D_\mu\psi_0 に入れた形)。電子と光子の場をそれぞれ ψ0=Z21/2ψ\psi_0=Z_2^{1/2}\psi、A0=Z31/2AA_0=Z_3^{1/2}A と規格化し直し、相互作用の項の係数を e0Z2Z31/2≕Z1ee_0Z_2Z_3^{1/2}\eqqcolon Z_1e と書いて、測る電荷 ee と係数 Z1Z_1 を定義する。ϕ4\phi^4 と同じく、Z2Z_2 は電子の伝播関数の極の留数、Z3Z_3 は光子の伝播関数の極の留数、Z1Z_1 は低エネルギーの電子と光子の頂点の値から決まる。

ゲージ対称性があると、Z1Z_1 と Z2Z_2 の間に関係が成り立つ。ゲージ変換 ψ→eieΛgψ\psi\to\mathrm{e}^{\mathrm{i} e\Lambda_{\mathrm g}}\psi のもとで L\mathcal L が不変であるには、微分と相互作用が ∂μ−ieAμ\partial_\mu-\mathrm{i} eA_\mu の組の形で入っていなければならない(Λg\Lambda_{\mathrm g} はゲージ関数)。くりこんだ後もこの組がそろっているなら、ψˉiγμ∂μψ\bar\psi\mathrm{i}\gamma^\mu\partial_\mu\psi の係数 Z2Z_2 と eψˉγμψAμe\bar\psi\gamma^\mu\psi A_\mu の係数 Z1Z_1 は等しい。これは Ward の恒等式(Ward 1950、Phys. Rev. 78、182)から従う関係で、ゲージ対称性を壊さない足場(次元正則化など)を使えば各次数で成り立つ。Z1=Z2Z_1=Z_2 を定義の式に入れると

e=Z31/2e0(5.10.24)e=Z_3^{1/2}e_0\tag{5.10.24}

が残る。電荷のくりこみは光子の場の規格化だけで決まり、電子の側の事情(自己エネルギー)は入らない。

この事実には観測できる帰結がある。陽子は強い相互作用のため電子とまったく違う自己エネルギーと頂点の補正を受けるが、Z1=Z2Z_1=Z_2 は陽子についても成り立つので、陽子の測る電荷も Z31/2Z_3^{1/2} 倍の同じ割合で決まる。裸の電荷が等しければ、測る電荷も等しい。電荷が粒子によらずにくりこまれることは、ゲージ対称性の帰結として読むことができる。

真空偏極

光子の伝播関数への1ループの補正は、電子と陽電子の対の輪(真空偏極)である。ゲージ対称性から、この補正はΠμν(q)=(q2ημν−qμqν)Π(q2)\Pi^{\mu\nu}(q)=(q^2\eta^{\mu\nu}-q^\mu q^\nu)\Pi(q^2) の形をとる。qμΠμν=0q^\mu\Pi_{\mu\nu}=0 なので、光子の伝播関数の極は q2=0q^2=0 から動かず、光子は質量を持たない。スカラー場の質量が Λ2\Lambda^2 でずれたのと対照的で、光子が質量を持たないことはゲージ対称性の帰結である(切断をそのまま入れるとこの形が壊れ、Λ2\Lambda^2 の光子の質量が現れる。それは足場がゲージ対称性を壊した結果で、物理ではない)。

Π\Pi を足し上げた光子の伝播関数は −iημνq2(1−Π(q2))\frac{-\mathrm{i}\eta_{\mu\nu}}{q^2(1-\Pi(q^2))}(qμqνq^\mu q^\nu の項を除く)で、2つの電子の間の散乱は e02e_0^2 と組でe021−Π(q2)\frac{e_0^2}{1-\Pi(q^2)} の形で入る。q2→0q^2\to0 で測る電荷を e2=e021−Π(0)e^2=\frac{e_0^2}{1-\Pi(0)} と定義する(Z3=11−Π(0)Z_3=\frac{1}{1-\Pi(0)})と、

e021−Π(q2)=e21−Π^(q2),Π^(q2)≔Π(q2)−Π(0)(5.10.25)\frac{e_0^2}{1-\Pi(q^2)}=\frac{e^2}{1-\hat\Pi(q^2)},\qquad \hat\Pi(q^2)\coloneqq\Pi(q^2)-\Pi(0)\tag{5.10.25}

になる(α\alpha の1次まで)。1ループの計算(第5部第9章の次元正則化の手順で行える。結果だけを書く)は、空間的な運動量 q2=−Q2<0q^2=-Q^2<0 で

Π^(−Q2)=2απ∫01x(1−x)ln⁡(1+x(1−x)Q2m2)dx(5.10.26)\hat\Pi(-Q^2)=\frac{2\alpha}{\pi}\int_0^1x(1-x)\ln\Bigl(1+x(1-x)\frac{Q^2}{m^2}\Bigr)\mathrm{d} x\tag{5.10.26}

となり、発散は Π(0)\Pi(0) に入る。Pauli–Villars の切断では Π(0)=−α3πln⁡Λ2m2\Pi(0)=-\frac{\alpha}{3\pi}\ln\frac{\Lambda^2}{m^2} で、Z3=1−α3πln⁡Λ2m2<1Z_3=1-\frac{\alpha}{3\pi}\ln\frac{\Lambda^2}{m^2}<1、つまり裸の電荷 e0e_0 は測る電荷 ee より大きい。

運動量 QQ で見た電荷を αeff(Q)≔α/(1−Π^(−Q2))\alpha_{\mathrm{eff}}(Q)\coloneqq\alpha/(1-\hat\Pi(-Q^2)) と書く。Q≫mQ\gg m では ∫01x(1−x)ln⁡[x(1−x)]dx=−518\int_0^1x(1-x)\ln[x(1-x)]\mathrm{d} x=-\frac{5}{18} から

1αeff(Q)≈1α−13π(ln⁡Q2m2−53)(5.10.27)\frac{1}{\alpha_{\mathrm{eff}}(Q)}\approx\frac{1}{\alpha}-\frac{1}{3\pi}\Bigl(\ln\frac{Q^2}{m^2}-\frac53\Bigr)\tag{5.10.27}

で、αeff\alpha_{\mathrm{eff}} は QQ とともに増える(図 5.10.3)。電子の対の輪だけを入れると、Q=100 GeVQ=100\,\mathrm{GeV} で 1/αeff=134.61/\alpha_{\mathrm{eff}}=134.6 になる。実際には μ\mu 粒子・τ\tau 粒子・クォークの対の輪も加わるので、1/αeff1/\alpha_{\mathrm{eff}} はさらに小さくなる。ϕ4\phi^4 の結合 (5.10.22) と同じく、QED の結合も短い距離で強く見える。

図

図 5.10.3 電子の対の輪だけを入れた QED の有効結合の逆数。Q≪mQ\ll m では 1/α=137.0361/\alpha=137.036 にとどまり、Q≫mQ\gg m では ln⁡Q\ln Q に比例して減る。QQ の目盛りの 55 は Q=105m=51 GeVQ=10^5m=51\,\mathrm{GeV} にあたる

小さい QQ:Uehling のポテンシャル

逆に Q≪mQ\ll m では ln⁡(1+y)≈y\ln(1+y)\approx y と ∫01x2(1−x)2dx=130\int_0^1x^2(1-x)^2\mathrm{d} x=\frac{1}{30} から Π^(−Q2)≈α15πQ2m2\hat\Pi(-Q^2)\approx\frac{\alpha}{15\pi}\frac{Q^2}{m^2} である。静的な電荷 ZeZe のまわりで、電子が感じるポテンシャルの Fourier 成分は −Ze2Q2(1+Π^(−Q2))-\frac{Ze^2}{\bm{Q}^2}\bigl(1+\hat\Pi(-\bm{Q}^2)\bigr) になり、補正の項は Q\bm{Q} によらない定数−Ze2α15πm2-\frac{Ze^2\alpha}{15\pi m^2} である。定数の Fourier 逆変換はデルタ関数なので

V(r)=−Zαr−4Zα215m2 δ(3)(r)(5.10.28)V(\bm{r})=-\frac{Z\alpha}{r}-\frac{4Z\alpha^2}{15m^2}\,\delta^{(3)}(\bm{r})\tag{5.10.28}

を得る(e2=4παe^2=4\pi\alpha)。原点の近くでは、真空の分極に遮られる前の大きな電荷が見えるので、引力が強まる。この補正は Uehling(1935、Phys. Rev. 48、55)が計算した。式 (5.10.28) の第2項は Compton 波長 1/m1/m の程度の範囲に効果が集中した形を、原子の大きさ 1/(Zαm)1/(Z\alpha m) から見て点とみなしたものである。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの α/π→0\alpha/\pi\to0(QED の摂動展開) | 証明 未解決(Dyson(1952、Phys. Rev. 85、631)は、α<0\alpha<0 で真空が不安定になることから級数の収束半径が 00 であると論じた。漸近級数としての扱いの正当化は確かめていない) | 行き先 近似の数理 第7章

例題 5.10.5 水素の 2S2S 準位の真空偏極による移動 ★★★

オリジナル式 (5.10.28) の第2項を1次の摂動として扱う。

  1. (1) 水素型の波動関数の原点の値 ∣ψnℓ(0)∣2=(Zαm)3πn3δℓ0\lvert \psi_{n\ell}(0)\rvert ^2=\frac{(Z\alpha m)^3}{\pi n^3}\delta_{\ell0} を使って、準位の移動 ΔEnℓ\Delta E_{n\ell} を求めよ。
  2. (2) 水素(Z=1Z=1)の 2S1/22S_{1/2} の移動を周波数(MHz)で求めよ。mc2=0.51099895 MeVmc^2=0.51099895\,\mathrm{MeV}、α=1/137.035999084\alpha=1/137.035999084、h=4.135667696×10−15 eV sh=4.135667696\times10^{-15}\,\mathrm{eV\,s}(CODATA 2018)とし、換算質量の補正は無視する。
  3. (3) 2P1/22P_{1/2} は移動しない理由を述べよ。Lamb と Retherford(1947、Phys. Rev. 72、241)が測った 2S1/22S_{1/2} と 2P1/22P_{1/2} の分裂(約 1 GHz1\,\mathrm{GHz}、2S1/22S_{1/2} が上)と比べて、真空偏極の寄与の向きと大きさを述べよ。
解答

(1) ΔEnℓ=−4Zα215m2∣ψnℓ(0)∣2=−4Z4α5m15πn3δℓ0\Delta E_{n\ell}=-\frac{4Z\alpha^2}{15m^2}\lvert \psi_{n\ell}(0)\rvert ^2=-\frac{4Z^4\alpha^5m}{15\pi n^3}\delta_{\ell0}。

(2) n=2n=2, Z=1Z=1 で ΔE=−4α5mc215π⋅8\Delta E=-\frac{4\alpha^5mc^2}{15\pi\cdot8}。α5=2.069×10−11\alpha^5=2.069\times10^{-11} で α5mc2=1.0574×10−5 eV\alpha^5mc^2=1.0574\times10^{-5}\,\mathrm{eV}、4120π=1.0610×10−2\frac{4}{120\pi}=1.0610\times10^{-2} なので ΔE=−1.122×10−7 eV\Delta E=-1.122\times10^{-7}\,\mathrm{eV}。hh で割ると −27.1 MHz-27.1\,\mathrm{MHz}。

(3) ℓ≥1\ell\ge1 の波動関数は原点で 00 になるので、デルタ関数の補正を受けない。真空偏極は 2S1/22S_{1/2} を 27 MHz27\,\mathrm{MHz} 下げる向きに寄与し、測られた分裂(2S1/22S_{1/2} が約 1 GHz1\,\mathrm{GHz} 上)とは逆向きで、大きさは数%である。分裂の主な部分は電子の自己エネルギー(電子が自分の放つ光子をまとうこと)の補正による。どちらの補正も、mm と ee を測る量にくりこんだ後に残る有限の部分で、くりこみを経て初めて計算できる予言である。

木下の勉強ステータス

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