解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第10章 §5.10.4 ★★★ 4点の頂点は λ0−2λ2[B(s)+B(t)+B(u)]。発散は lnΛ だけで、測る λ で書くと Λ が消える。残る ln が結合の運動量依存
4点の頂点
有効ポテンシャルの ϕˉ4 の係数は、外線の運動量がすべて 0 の4点の頂点に等しい。外線の運動量を一般にするには、Trln を ϕˉ(x) の2次まで展開した−41Tr(G2λϕˉ2G2λϕˉ2)(G=(−∂2+m2)−1)を運動量で書けばよい。4本の外線を2本ずつの対に分ける仕方が3通りあり、Euclid の運動量で s=(k1+k2)2, t=(k1+k3)2, u=(k1+k4)2(運動量はすべて流れ込む向き)とおくと
Γ(4)(ki)=λ0−2λ2[B(s)+B(t)+B(u)]+O(λ3)(5.10.18)
になる(1ループでは Z=1 なので δλ=λ0−λ)。ki=0 なら −23λ2B(0) で、有効ポテンシャルの係数 −16λ2⋅4!=−23λ2 と一致する。
B(0) は第5部第8章の泡の積分 B と同じ積分で、切断した値は第8章の式 (5.8.17) で求めた。
B(0)=16π21[ln(1+m2Λ2)−Λ2+m2Λ2](5.10.19)
で、lnΛ で発散する。外線2本の D=2 に対し、外線4本の D=4−4=0 が対数の発散にあたる。p=0 では Feynman のパラメータ x で分母をまとめ、k をずらしてから積分すると
B(0)−B(p2)=16π21b(p2),b(s):=∫01ln(1+x(1−x)m2s)dx(5.10.20)
を得る(Λ→∞ の極限。対数発散の積分では積分変数をずらしても Λ→∞ で差が消える)。b は第9章の F(式 (5.9.14))で b(s)=F(s/m2) である。差は有限で、発散は p によらない B(0) にだけある。閉じた形は βs=1+4m2/s として b(s)=−2+βslnβs−1βs+1、大きな s では b(s)≈lnm2s−2 である(図 5.10.2)。
測る λ で書き直す
条件 (5.10.12) の第2式は λ=λ0−23λ2B(0)、つまり δλ=23λ2B(0) を要求する。これを式 (5.10.18) に入れると
Γ(4)(ki)=λ+32π2λ2[b(s)+b(t)+b(u)]+O(λ3)(5.10.21)
になる。Λ は消えた。測る結合定数 λ と測る質量 m を与えれば、どの運動量の配置の4点の頂点も有限の数として予言される。これが、くりこみによって理論が予言を持つ、ということの中身である。
式 (5.10.21) は外線の運動量が大きいほど大きくなる。s=t=u=μ2≫m2 の点で頂点を測って λμ と呼ぶと
λμ=λ+32π23λ2b(μ2)≈λ+32π23λ2(lnm2μ2−2)(5.10.22)
で、短い距離(大きな運動量)で見るほど結合は強く見える。μ による変化率は μdμdλμ≈16π23λ2 で、これが第5部第11章で扱う ϕ4 の β 関数の1ループの係数になる。

図 5.10.2 4点の頂点の運動量依存を決める関数 b(s)。s≪m2 では b≈s/(6m2) で 0 に近づき、s≫m2 では lns に比例して増える。くりこんだ頂点 (5.10.21) は、3つの b の和に λ2/(32π2) を掛けた分だけ λ より大きい
予言は足場によらない
次元正則化で同じ計算をすると B(p2)=16π21[ϵ2−γE+ln4π−∫01lnμ2m2+x(1−x)p2dx] となり、B(0) の値は切断のときと違うが、差 B(0)−B(p2) はやはり b(p2)/(16π2) である。したがって式 (5.10.21) はそのまま成り立つ。くりこみの条件を別の点で課しても(たとえば λμ を測る量に選んでも)、式 (5.10.21) は
Γ(4)(ki)=λμ+32π2λμ2[b(s)+b(t)+b(u)−3b(μ2)]+O(λμ3)
と書き換わるだけで、2つの頂点の値の関係は変わらない。足場の選び方とくりこみの点の選び方は、測る量どうしのこの関係に入らない。
くりこみ可能性
カウンター項が式 (5.10.5) の3つで足りたのは、4次元の ϕ4 理論の図の表面的発散次数が外線の本数 E だけで D=4−E と決まり(第5部第8章の式 (5.8.24)。結合定数が無次元 [λ]=0 であること〔式 (5.8.25)〕による。超くりこみ可能・可能・不可能の分類も第8章で行った)、頂点の数によらないからである。D≥0 になるのは E=2(D=2)と E=4(D=0)だけで、E が奇数の頂点は ϕ→−ϕ の対称性で 0 になる。E=2 の発散は Λ2 と k2lnΛ の形しかとれず、δm と δZ で吸収することができる。E=4 の発散は運動量によらない定数で、δλ で吸収することができる。部分の図の中に発散がある多ループの図も、部分ごとにカウンター項を入れれば有限になり、これが摂動のすべての次数で成り立つことは Bogoliubov・Parasiuk・Hepp・Zimmermann によって示された(BPHZ の定理)1N. N. Bogoliubov and O. S. Parasiuk (1957), Acta Math. 97, 227;K. Hepp (1966), Commun. Math. Phys. 2, 301;W. Zimmermann (1969), Commun. Math. Phys. 15, 208。。
これに対し、6!g6ϕ6 の項を足すと、ϕ6 の頂点を V6 個含む図は D=4−E+2V6 を持ち、頂点を増やすほど発散が強くなる。外線の本数がいくつでも発散する図があるので、無限個のカウンター項(無限個の測る量)が要る。この種の理論をくりこみ不可能と呼ぶ。くりこみ不可能な項の係数は質量の負のべきの次元を持ち(g6 は質量−2)、エネルギー E での寄与は (E/Λ)2 のように抑えられる。くりこみ可能な理論とは、切断よりずっと低いエネルギーで見たときに残る項だけを持つ理論、と読むこともでき、この見方は次の章のくりこみ群で式になる。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの λ/(16π2)→0(くりこんだ結合の摂動展開。大きな運動量では 32π23λln(s/m2) も小さいことが要る) | 証明 未解決(4次元の ϕ4 では級数の収束も、切断を外した理論の存在も示されていない。Aizenman と Duminil-Copin(2021、Ann. Math. 194、163)は格子の ϕ44 の連続極限が自由場になることを示した) | 行き先 近似の数理 第7章
例題 5.10.4 くりこんだ4点の頂点を数で出す ★★
オリジナルλ=0.5 とし、条件 (5.10.12) で λ を定める。
- (1) b(s) の閉じた形を使って b(100m2) を求めよ。
- (2) 外線の運動量の配置が s=t=u=100m2 のときの Γ(4) を1ループで求め、λ からのずれの割合を答えよ。
- (3) b(s) の小さい s での振る舞い b(s)≈6m2s を示し、運動量が小さい散乱ではくりこみの点の選び方の違いが s/m2 の程度に抑えられることを述べよ。
解答
(1) βs=1+4/100=1.0198、lnβs−1βs+1=ln0.01982.0198=4.6249 で、b=−2+1.0198×4.6249=2.716。近似式 ln100−2=2.605 より 4% 大きい。
(2) Γ(4)=0.5+32π20.25×3×2.716=0.5+0.00645=0.5065。ずれの割合は 1.29% である。32π23λ=4.75×10−3 と ln の積が小さいので、1ループで十分である。
(3) ln(1+y)≈y で b(s)≈m2s∫01x(1−x)dx=6m2s。運動量が m より小さい散乱では b が s/m2 の程度で、条件を ki=0 で課すか s∼m2 の点で課すかの違いは、λ の値の 32π2λ⋅m2s の程度の違いにしかならない。
1 N. N. Bogoliubov and O. S. Parasiuk (1957), Acta Math. 97, 227;K. Hepp (1966), Commun. Math. Phys. 2, 301;W. Zimmermann (1969), Commun. Math. Phys. 15, 208。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com