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この章で選ぶ L\mathcal L:裸の係数と測る係数

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第10章 くりこみ
目次
  1. 古典の例:流体の中の球
  2. 理論の裸の Lagrangian 密度
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第10章 §5.10.1 ★★★ 同じ L\mathcal L を「裸の係数」と「測る係数+カウンター項」の2通りに書く。見えない自由度を消すと係数が変わることは、流体の中の球ですでに起きている

第5部第8章では、Feynman 則で組んだループの積分が大きな運動量で発散することを見て、どの図がどれだけ発散するかを表面的発散次数で数えた。第5部第9章では、その発散に切断 Λ\Lambda や次元正則化という足場を組み、積分をいったん有限の数にした。しかし足場の値(Λ\Lambda や次元 dd)は物理の量ではないので、それが答えに残るうちは理論は何も予言していない。この章は、足場を外しても答えが残る仕組みを作る。

選ぶものは、Lagrangian 密度そのものではなく、その係数の読み方である。ϕ4\phi^4 理論の L\mathcal L に書いた質量 m0m_0 と結合定数 λ0\lambda_0 は、粒子を1個だけ取り出して測った質量や、散乱から決めた結合の強さとは一致しない。粒子は自分のまわりの場の揺らぎを常にまとっていて、測定はまとったものごと見るからである。この事情は量子論に限らない。理想流体の中で動く球の慣性は球の質量より大きく、古典の電子の慣性には自分の電場のエネルギーが加わる。どちらも、見えない自由度を消去すると Lagrangian の係数が変わる、という解析力学の事実である。

出てくるものは3つある。1つ目は質量のくりこみで、1ループの補正は切断の2乗 Λ2\Lambda^2 に比例して発散し、裸の質量 m0m_0 はそれを打ち消すように選ばれる。2つ目は結合定数のくりこみで、4点の頂点の発散は ln⁡Λ\ln\Lambda だけで、測った結合 λ\lambda で書き直すと、どの運動量での散乱も有限になる。そのとき、異なる運動量で測った結合どうしの関係に ln⁡\ln が残り、これが次の章のくりこみ群の入口になる。3つ目は量子電気力学(QED)の電荷のくりこみで、ゲージ対称性のため電荷のくりこみは光子の場の規格化だけで決まり、電子にも陽子にも同じ割合でかかる。そのとき真空は誘電体のように振る舞い、近づくほど電荷が大きく見える。

道具は、第1部第7章の Legendre 変換である。生成汎関数 W[J]W[J] を源 JJ から場の平均 ϕˉ\bar\phi へ Legendre 変換した有効作用 Γ[ϕˉ]\Gamma[\bar\phi] は、古典の作用 SS に量子補正を足したものになり、くりこみの条件はすべて Γ\Gamma の微分の値として書くことができる。5.10.6節では、誘電体の中の Coulomb の法則と古典の電子の電磁質量という、授業で習う2つの形とこの章の式を並べる。

この章では ℏ=c=1\hbar=c=1 とし、演算子の帽子を省く。ϕ4\phi^4 理論の計算は虚時間(Euclid)で行い、QED の節だけ実時間に戻す。ループは1ループまでで、2ループ以上は結果の意味だけを述べる。

この節では ℏ=c=1\hbar=c=1 とする(古典の例だけ SI で書く)。

古典の例:流体の中の球

半径 aa、質量 MM の球が、密度 ρf\rho_{\mathrm f} の理想流体(粘性も渦も無い非圧縮の流体)の中を速度 U\bm{U} で動くとする。流体は球に押しのけられて動くので、系の運動エネルギーには流体の分が加わる。球から見て遠くで静止した流体の速度ポテンシャルはφf=−a32r2Ucos⁡θ\varphi_{\mathrm f}=-\frac{a^3}{2r^2}U\cos\theta(θ\theta は U\bm{U} から測った角)で、流体の運動エネルギーを積分すると

Tf=ρf2∫r>a∣∇φf∣2 d3r=12(12ρfVs)U2,Vs=4πa33(5.10.1)T_{\mathrm f}=\frac{\rho_{\mathrm f}}{2}\int_{r>a}\lvert \nabla\varphi_{\mathrm f}\rvert ^2\,\mathrm{d}^3r=\frac12\Bigl(\frac12\rho_{\mathrm f}V_{\mathrm s}\Bigr)U^2, \qquad V_{\mathrm s}=\frac{4\pi a^3}{3}\tag{5.10.1}

になる(例題 5.10.1)。流体の速度場は球の速度 U\bm{U} で完全に決まるので、流体の自由度を消去した後の球の Lagrangian は

L=12(M+12ρfVs)R˙2−Vext(R)(5.10.2)L=\frac12\Bigl(M+\frac12\rho_{\mathrm f}V_{\mathrm s}\Bigr)\dot{\bm{R}}^2-V_{\mathrm{ext}}(\bm{R})\tag{5.10.2}

になる。球の運動を見て決まる慣性は Meff=M+12ρfVsM_{\mathrm{eff}}=M+\frac12\rho_{\mathrm f}V_{\mathrm s} で、MM ではない。付加質量 12ρfVs\frac12\rho_{\mathrm f}V_{\mathrm s} と呼ばれるこの項は、球と流体の相互作用が Lagrangian の係数を書き換えた結果である。

この例で大事なのは、流体の中で球の運動だけを観測している人には MM と 12ρfVs\frac12\rho_{\mathrm f}V_{\mathrm s} を分けて測る手段が無いことである。運動方程式に入るのは和の MeffM_{\mathrm{eff}} だけで、どの実験の予言も MeffM_{\mathrm{eff}} で書くことができる。流体を取り除いて MM を測ることは古典ではできるが、場の量子論で粒子がまとう場の揺らぎは取り除くことができない。そこで、理論の係数を初めから MeffM_{\mathrm{eff}} にあたる「測る量」で書く。これがくりこみの考え方である。

ϕ4\phi^4 理論の裸の Lagrangian 密度

第5部第7章と同じく、実スカラー場の ϕ4\phi^4 理論を選ぶ。虚時間の作用(Euclid 作用)で書くと

SE[ϕ0]=∫d4x [12(∂ϕ0)2+12m02ϕ02+λ04!ϕ04](5.10.3)S_{\mathrm E}[\phi_0]=\int\mathrm{d}^4x\,\Bigl[\frac12(\partial\phi_0)^2+\frac12m_0^2\phi_0^2+\frac{\lambda_0}{4!}\phi_0^4\Bigr]\tag{5.10.3}

である。(∂ϕ)2=∑μ=14(∂μϕ)2(\partial\phi)^2=\sum_{\mu=1}^{4}(\partial_\mu\phi)^2 は Euclid の内積で、運動量も k2=k42+k2≥0k^2=k_4^2+\bm{k}^2\ge0 と書く。実時間の p2=E2−p2p^2=E^2-\bm{p}^2 とは p実時間2=−k2p^2_{\text{実時間}}=-k^2 で対応する。添字 00 を付けた ϕ0\phi_0, m0m_0, λ0\lambda_0 を裸の場・質量・結合定数と呼ぶ。

m0m_0 と λ0\lambda_0 は L\mathcal L の係数であって、測る量ではない。測る量として次の3つを選ぶ。粒子の伝播関数の極の位置から決める質量 mm、その極の留数を 11 にするように規格化した場 ϕ\phi、決めた運動量の配置での4点の頂点の値から決める結合定数 λ\lambda である(正確な定め方は5.10.2節の式 (5.10.12))。場の規格化を変えるために ϕ0=Z1/2ϕ\phi_0=Z^{1/2}\phi とおくと、式 (5.10.3) の被積分関数は

12Z(∂ϕ)2+12Zm02ϕ2+Z2λ04!ϕ4\frac12Z(\partial\phi)^2+\frac12Zm_0^2\phi^2+\frac{Z^2\lambda_0}{4!}\phi^4

になる。ここで

δZ≔Z−1,δm≔Zm02−m2,δλ≔Z2λ0−λ(5.10.4)\delta_Z\coloneqq Z-1,\qquad \delta_m\coloneqq Zm_0^2-m^2,\qquad \delta_\lambda\coloneqq Z^2\lambda_0-\lambda\tag{5.10.4}

と定義すると、同じ作用が

SE=∫d4x [12(∂ϕ)2+12m2ϕ2+λ4!ϕ4]+∫d4x [12δZ(∂ϕ)2+12δmϕ2+δλ4!ϕ4](5.10.5)S_{\mathrm E}=\int\mathrm{d}^4x\,\Bigl[\frac12(\partial\phi)^2+\frac12m^2\phi^2+\frac{\lambda}{4!}\phi^4\Bigr] +\int\mathrm{d}^4x\,\Bigl[\frac12\delta_Z(\partial\phi)^2+\frac12\delta_m\phi^2+\frac{\delta_\lambda}{4!}\phi^4\Bigr]\tag{5.10.5}

と書ける。第1項は測る量で書いた ϕ4\phi^4 理論で、第2項をカウンター項と呼ぶ。式 (5.10.5) は式 (5.10.3) の書き直しにすぎず、新しい相互作用を足したわけではない。

この章で選ぶ L\mathcal L は式 (5.10.5) である。カウンター項の係数 δZ,δm,δλ\delta_Z,\delta_m,\delta_\lambda は、「m,ϕ,λm,\phi,\lambda が本当に測る量になる」という条件から摂動の各次数で決める。その条件を書くための道具が次の節の有効作用である。流体の中の球にあてはめると、MeffM_{\mathrm{eff}} が mm に、M=Meff−12ρfVsM=M_{\mathrm{eff}}-\frac12\rho_{\mathrm f}V_{\mathrm s} が m0m_0 に、付加質量が −δm-\delta_m にあたる。違いは、場の量子論では付加質量にあたる量が切断 Λ\Lambda とともに発散することだけである。

図

図 5.10.1 ϕ4\phi^4 理論の1ループの図とカウンター項。(a) は2点の頂点への1ループの補正(5.10.3節)、(b) は4点の頂点への補正で、外線の対の組み方が s,t,us,t,u の3通りある(5.10.4節)。(c) のバツ印はカウンター項の頂点で、(a) と (b) の発散をそれぞれ打ち消す

例題 5.10.1 流体の中の球の付加質量 ★★

オリジナル半径 aa の球が理想流体(密度 ρf\rho_{\mathrm f})の中を一定の速度 UU で zz 方向に動いている。球とともに動く原点から見て、流体の速度ポテンシャルを φf=−a3U2r2cos⁡θ\varphi_{\mathrm f}=-\frac{a^3U}{2r^2}\cos\theta とする(流体の速度は ∇φf\nabla\varphi_{\mathrm f})。

  1. (1) r=ar=a で流体の速度の動径成分が球の表面の速度の動径成分 Ucos⁡θU\cos\theta に等しく、∇2φf=0\nabla^2\varphi_{\mathrm f}=0 を満たすことを確かめよ。
  2. (2) 流体の運動エネルギー TfT_{\mathrm f} を求め、式 (5.10.1) を示せ。
  3. (3) 密度 2500 kg m−32500\,\mathrm{kg\,m^{-3}} のガラス球を水(1000 kg m−31000\,\mathrm{kg\,m^{-3}})の中で静かに放した瞬間の加速度を、付加質量を入れた場合と入れない場合で求めよ。g=9.81 m s−2g=9.81\,\mathrm{m\,s^{-2}} とし、粘性は無視する。
解答

(1) ∂rφf=a3Ur3cos⁡θ\partial_r\varphi_{\mathrm f}=\frac{a^3U}{r^3}\cos\theta で、r=ar=a では Ucos⁡θU\cos\theta になる。φf∝r−2cos⁡θ\varphi_{\mathrm f}\propto r^{-2}\cos\theta は双極子の形で、∇2(r−2cos⁡θ)=1r2∂r(r2∂rr−2)cos⁡θ+1r2sin⁡θ∂θ(sin⁡θ ∂θcos⁡θ) r−2=2r4cos⁡θ−2r4cos⁡θ=0\nabla^2(r^{-2}\cos\theta)=\frac{1}{r^2}\partial_r(r^2\partial_r r^{-2})\cos\theta+\frac{1}{r^2\sin\theta}\partial_\theta(\sin\theta\,\partial_\theta\cos\theta)\,r^{-2} =\frac{2}{r^4}\cos\theta-\frac{2}{r^4}\cos\theta=0。

(2) ∣∇φf∣2=(∂rφf)2+(r−1∂θφf)2=a6U2r6(cos⁡2θ+14sin⁡2θ)\lvert \nabla\varphi_{\mathrm f}\rvert ^2=(\partial_r\varphi_{\mathrm f})^2+(r^{-1}\partial_\theta\varphi_{\mathrm f})^2=\frac{a^6U^2}{r^6}\bigl(\cos^2\theta+\frac14\sin^2\theta\bigr)。角度の積分は ∫(cos⁡2θ+14sin⁡2θ) dΩ=2π(23+14⋅43)=2π\int(\cos^2\theta+\frac14\sin^2\theta)\,\mathrm{d}\Omega=2\pi\bigl(\frac23+\frac14\cdot\frac43\bigr)=2\pi、動径の積分は ∫a∞r−6r2 dr=13a3\int_a^\infty r^{-6}r^2\,\mathrm{d} r=\frac{1}{3a^3} なので

Tf=ρf2a6U2⋅2π⋅13a3=π3ρfa3U2=12(12ρf⋅4πa33)U2.T_{\mathrm f}=\frac{\rho_{\mathrm f}}{2}a^6U^2\cdot2\pi\cdot\frac{1}{3a^3}=\frac{\pi}{3}\rho_{\mathrm f}a^3U^2=\frac12\Bigl(\frac12\rho_{\mathrm f}\cdot\frac{4\pi a^3}{3}\Bigr)U^2 .

(3) 球にかかる力は重力と浮力の差 (ρs−ρf)Vsg(\rho_{\mathrm s}-\rho_{\mathrm f})V_{\mathrm s}g で、静止から動き出す瞬間は抵抗が無い。付加質量を入れると

U˙=(ρs−ρf)gρs+12ρf=1500×9.813000=4.91 m s−2,\dot U=\frac{(\rho_{\mathrm s}-\rho_{\mathrm f})g}{\rho_{\mathrm s}+\frac12\rho_{\mathrm f}}=\frac{1500\times9.81}{3000}=4.91\,\mathrm{m\,s^{-2}},

入れないと 1500×9.81/2500=5.89 m s−21500\times9.81/2500=5.89\,\mathrm{m\,s^{-2}} になる。測った加速度から質量を逆算すると、球の質量の 1.21.2 倍が得られる。運動だけを見る人にとっての球の「質量」は MeffM_{\mathrm{eff}} である。

木下の勉強ステータス

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