解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第10章 §5.10.3 ★★★ 1ループの質量の補正は 2λ∫(2π)4d4kk2+m21∝Λ2。裸の質量はこれを打ち消すように選ばれ、測る質量 m で書けば有限
有効ポテンシャルを ϕˉ で展開する
V(ϕ)=21m2ϕ2+4!λϕ4 なら V′′(ϕˉ)=m2+2λϕˉ2 である。式 (5.10.11) の対数を ϕˉ2 で展開すると
21∫(2π)4d4kln(k2+m2+2λϕˉ2)=定数+4λϕˉ2∫(2π)4d4kk2+m21−16λ2ϕˉ4∫(2π)4d4k(k2+m2)21+⋯
になる。現れた2つの積分に名前を付ける。
I1:=∫(2π)4d4kk2+m21,B(p2):=∫(2π)4d4k(k2+m2)((k+p)2+m2)1.(5.10.13)
ϕˉ4 の係数に現れたのは B(0) である。I1 は図 5.10.1(a) の1ループの図、B は (b) の図の積分にあたる。ϕˉ2 の係数を 21ϕˉ2 の係数として読むと、1ループで質量の2乗が
Γ(2)(k2)=k2+m02+2λI1+O(λ2)(5.10.14)
になる(定数の ϕˉ だけでは k2 の係数は分からないが、1ループの図 (a) は外線の運動量によらないので、k2 の係数は 1 のままである)。I1 に入る質量や結合が裸か測る量かの違いは O(λ2) なので、1ループでは区別しない。
I1 の意味は第5部第2章の言葉で読むことができる。k4 の積分を先に実行すると ∫2πdk4k42+ωk21=2ωk1 なので
I1=∫(2π)3d3k2ωk1=⟨ϕ(x)2⟩自由場の真空
で、真空の零点の揺らぎの2乗平均そのものである。4!λϕ4 の中の ϕ2 を2つ選んでこの揺らぎに置き換える仕方が (24)=6 通りあるので、4!λ⋅6⟨ϕ2⟩ϕ2=21(2λ⟨ϕ2⟩)ϕ2 となり、式 (5.10.14) の係数 2λ が出る。粒子は真空の揺らぎの中を進むので、そのぶん復元力が強くなる。
切断で評価する
I1 は第5部第8章のタッドポールの積分 A と同じ積分で、運動量の切断 ∣k∣<Λ をかけた値は第8章の式 (5.8.16) で求めた。
I1=16π21[Λ2−m2ln(1+m2Λ2)].(5.10.15)
条件 (5.10.12) の第1式から m2=m02+2λI1、つまり
m02=m2−32π2λ[Λ2−m2ln(1+m2Λ2)]+O(λ2),δm=−2λI1(5.10.16)
である(1ループでは δZ=0 なので δm=m02−m2)。測る質量 m を固定して Λ→∞ とすると、裸の質量の2乗 m02 は −∞ へ向かう。m0 は測らない量なので、これは矛盾ではない。測る量で書いた伝播関数 1/(k2+m2) には Λ が残らない。
発散が Λ2 であることは、第5部第8章の表面的発散次数で外線2本の図が D=4−2=2 を持つことと一致する。同じ D から、lnΛ に比例して k2 の係数を変える項(δZ)もありうるが、ϕ4 理論では1ループの図 (a) が外線の運動量によらないので、δZ は2ループ(外線の間を3本の内線でつなぐ図)から初めて現れる。
次元正則化では Λ2 が見えない
第5部第9章と同じく次元を d=4−ϵ と書く。次元正則化した I1 は第9章の式 (5.9.20) の μϵAd で、
I1=−16π2m2[ϵ2−γE+ln4π+1−lnμ2m2]+O(ϵ)(5.10.17)
である(γE=0.5772… は Euler の定数、μ は次元を合わせるために入れた質量)。切断の式 (5.10.15) の m2lnΛ2 の項はm2⋅ϵ2 の極に対応するが、Λ2 の項にあたるものは無い。次元正則化は Λ2 のようなべきの発散を 0 とみなす足場である。どちらの足場でも、m2 を測る量で書けば Γ(2)=k2+m2 になり、予言は同じである。足場によって変わるのは、測らない m0 の値だけである。
例題 5.10.3 裸の質量はどれだけ打ち消し合うか ★★
オリジナルλ=0.1、切断 Λ=103m とする。
- (1) 式 (5.10.16) から m02/m2 を求めよ。
- (2) Λ を 10 倍にすると m02/m2 はおよそ何倍になるか。測る質量 m を保つには、裸の質量の2乗を何桁まで合わせる必要があるか。
- (3) 同じ計算を次元正則化の式 (5.10.17) で行うと、m02 と m2 の差は m2 に比例することを示せ。
解答
(1) 32π2λ=3.17×10−4、Λ2/m2−ln(1+Λ2/m2)=106−13.8 なのでm2m02=1−3.17×10−4×(106−13.8)=1−316.6=−315.6。
(2) Λ2 の項が支配的なので、約 100 倍(−3.17×104)になる。m02=−3.17×104m2 と 2λI1=3.17×104m2 の和が m2 になるので、両者を相対精度 1/(3.17×104)≈3×10−5、すなわち4〜5桁まで合わせる必要がある。Λ/m を 10n にすると必要な桁数は約 2n−3 桁に増える。理論の中では m0 は測らない量なので、この打ち消し合いはくりこみの手続きの一部で、予言を損なわない。ただし Λ を「理論が新しい物理に置き換わる尺度」と読むと、スカラー粒子の質量が Λ よりずっと小さいことには説明が要る(スカラーの質量の階層性の問題)。
(3) δm=−2λI1=32π2λm2[ϵ2−γE+ln4π+1−lnμ2m2] で、全体に m2 が掛かる。次元正則化では m=0 なら補正も 0 で、べきの発散が現れない。
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