解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部 第10章 §5.10.2 ★★★ W[J]=lnZ[J] を ϕˉ=δW/δJ へ Legendre 変換した Γ[ϕˉ] が「量子補正込みの作用」。1ループでは Γ=S+21TrlnS′′。くりこみの条件は Γ の微分の値で書く
生成汎関数とその Legendre 変換
第5部第7章では、源 J(x) を入れた経路積分
Z[J]=∫Dϕe−SE[ϕ]+∫d4xJϕ(5.10.6)
を J で微分して相関関数を作った。W[J]:=lnZ[J] を微分すると連結な相関関数だけが残り、1階微分は場の平均
ϕˉ(x)=δJ(x)δW=⟨ϕ(x)⟩J(5.10.7)
になる。W は J について凸である(2階微分は揺らぎ ⟨ϕϕ⟩J−⟨ϕ⟩J⟨ϕ⟩J で、正定値)。したがって J と ϕˉ は1対1に対応し、第1部第7章の Legendre 変換を行うことができる。
定義 5.10.1(有効作用)
J を ϕˉ の関数とみなして
Γ[ϕˉ]:=∫d4xJ(x)ϕˉ(x)−W[J](5.10.8)
を有効作用と呼ぶ。Legendre 変換の性質から δϕˉ(x)δΓ=J(x) である。
力学の Legendre 変換 H(p)=pq˙−L(q˙) と同じく、変換した量の1階微分はもとの変数を返す。源が無いとき(J=0)、場の平均 ϕˉ は δΓ/δϕˉ=0 で決まる。古典の場が δS=0 で決まったのと同じ形で、Γ は「量子の揺らぎを積分し終えた後の作用」として読むことができる。
Legendre 変換のもう1つの性質は、2階微分が互いに逆になることである。力学では ∂2H/∂p2=(∂2L/∂q˙2)−1 だった。ここでは
∫d4yδϕˉ(x)δϕˉ(y)δ2ΓδJ(y)δJ(z)δ2W=δ(4)(x−z)(5.10.9)
で、δ2W/δJδJ は連結な2点関数(伝播関数)なので、Γ の2階微分は伝播関数の逆になる。運動量で書いた Γ(2)(k2) は、自由場では k2+m2 で、相互作用があると補正を受ける。Γ の3階以上の微分 Γ(n) は、1本の内線を切っても2つに分かれない図(1粒子既約、1PI)の和になる。外線の伝播関数を外した「頂点そのもの」である。
1ループの有効作用
ℏ を戻して e−SE/ℏ と書くと、ℏ→0 で経路積分 (5.10.6) は SE−∫Jϕ の停留点 ϕc のまわりで評価することができる。第4部第8章で経路積分から古典の経路を取り出したのと同じ停留位相(虚時間では鞍点)の評価である。停留点のまわりの2次までの展開で Gauss 積分をすると
W[J]=ℏ1(−SE[ϕc]+∫Jϕc)−21TrlnSE′′[ϕc]+O(ℏ)
となる。SE′′[ϕ]=−∂2+V′′(ϕ) は2階の汎関数微分で、Trln は Gauss 積分の行列式 detS′′ の対数である。これを Legendre 変換すると、ϕˉ と ϕc の差は O(ℏ) で、その差は SE−∫Jϕ の停留性のため1次では寄与しないので
Γ[ϕˉ]=SE[ϕˉ]+2ℏTrlnSE′′[ϕˉ]+O(ℏ2)(5.10.10)
を得る。ℏ の次数がループの数を数えている。以下は再び ℏ=1 とする。
ϕˉ が定数なら Γ=∫d4xVeff(ϕˉ) と書け、S′′ は運動量の表示で対角なので
Veff(ϕˉ)=V(ϕˉ)+21∫(2π)4d4kln(k2+V′′(ϕˉ))+(ϕˉ によらない定数)(5.10.11)
になる。これを有効ポテンシャルと呼ぶ。式 (5.10.11) の積分は、質量 V′′(ϕˉ) の振動子の零点エネルギーの和を虚時間で書いたもので、第5部第2章の零点エネルギーが ϕˉ に依存する形で現れている。
くりこみの条件
測る量 m,ϕ,λ を Γ で定義する。Euclid の運動量で
Γ(2)(k2)=k2+m2+O((k2+m2)2),Γ(4)(ki=0)=λ(5.10.12)
とする。第1式は、伝播関数 1/Γ(2) の極が k2=−m2(実時間で p2=m2)にあって留数が 1 であることを言っている。これが「粒子の質量を m と測り、場をその粒子1個を作る規格で数える」ことの式である。第2式は、4本の外線の運動量がすべて 0 の点で4点の頂点を測り、その値を λ と呼ぶ、という約束である。λ の定め方には他の選び方(外線の運動量を μ の程度にそろえた点など)もあり、どれを選んでも予言は変わらない(5.10.4節)。
条件 (5.10.12) は、カウンター項の係数 δZ,δm,δλ を摂動の各次数で決める3つの方程式である。カウンター項は ϕ について式 (5.10.5) の形しかないので、くりこみの条件も3つで足りる。この「足りる」ことが成り立つ理論をくりこみ可能と呼ぶ(5.10.4節)。
例題 5.10.2 0次元の ϕ4:有効作用を2通りに計算する ★★★
オリジナル時空の次元を 0 にした「経路積分」Z(J)=2π1∫−∞∞dϕe−S(ϕ)+Jϕ、S(ϕ)=21ϕ2+4!gϕ4(g>0)を考える。W(J)=lnZ(J)、Γ(ϕˉ)=Jϕˉ−W(J) とする。
- (1) ⟨ϕ2⟩=1−2g+O(g2) を示し、Legendre 変換の性質から Γ′′(0)=1+2g+O(g2) を導け。
- (2) 1ループの式 Γ(ϕˉ)=S(ϕˉ)+21lnS′′(ϕˉ) から Γ′′(0) と Γ′′′′(0) を g2 まで求め、(1) と比べよ。
- (3) Γ′′(0) を「測る質量の2乗」m2 と読む。g の1次で m2 は 1 より大きいか小さいか。
解答
(1) e−gϕ4/24≈1−24gϕ4 と Gauss の積分 ⟨ϕ2n⟩0=(2n−1)!! から
⟨ϕ2⟩=1−24g⟨ϕ4⟩0⟨ϕ2⟩0−24g⟨ϕ6⟩0=1−243g1−2415g=1−2412g+O(g2)=1−2g+O(g2).
ϕ→−ϕ の対称性で J=0 では ϕˉ=0、W′′(0)=⟨ϕ2⟩。式 (5.10.9) の0次元版は Γ′′(0)W′′(0)=1 なのでΓ′′(0)=1/⟨ϕ2⟩=1+2g+O(g2)。
(2) S′′(ϕˉ)=1+2gϕˉ2 で、21ln(1+2gϕˉ2)=4gϕˉ2−16g2ϕˉ4+⋯。S の分と足すと Γ(ϕˉ)=21(1+2g)ϕˉ2+4!1(g−23g2)ϕˉ4+⋯ で、Γ′′(0)=1+2g、Γ′′′′(0)=g−23g2。(1) と一致する。Γ′′′′(0) を厳密な W の微分から作った −W′′′′(0)/W′′(0)4 も g−23g2+O(g3) になり(検算 verify_ch5-10.py)、1ループの式は g2 の項まで正しい(2ループの4点の図は g3 から始まる)。
(3) m2=1+2g>1。斥力の ϕ4 は揺らぎ ⟨ϕ2⟩ を小さくし、その逆数の「質量」を大きくする。この符号は、4次元の場で質量の補正 δm2 が正になること(5.10.3節)と同じである。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com