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1926 年の前半:波動力学

2026年10月17日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第4章 歴史:行列力学と波動力学が別々に生まれ、同値が示されるまで
目次
  1. de Broglie の物質波
  2. Schrödinger の4部作(1926 年 1〜6 月)
  3. は何か:Schrödinger の解釈と Born の確率
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第1部 第4章 §1.4.3 ★★ 物質波から固有値問題へ。基本の対象は配位空間の関数で、行列力学とは数学の道具も物理の描き方も違った

de Broglie の物質波

L. de Broglie は 1924 年の学位論文で、光が粒子の性質を持つなら電子のような粒子も波の性質を持つとし、運動量 pp の粒子に波長

λ=hp(1.4.6)\lambda=\frac{h}{p}\tag{1.4.6}

の波を対応させた1L. de Broglie (1925), Annales de Physique (10e série) 3, 22–128(1924 年の学位論文)。下の脚注へ。Bohr の軌道の条件 mevr=nℏm_evr=n\hbar は、軌道の1周 2πr2\pi r に波長がちょうど nn 個乗るという定在波の条件 2πr=nλ2\pi r=n\lambda と同じ式になる(例題 1.4.4)。量子条件の整数が、波の節の数として読める。電子の波の性質は 1927 年に C. Davisson と L. H. Germer がニッケルの単結晶での電子の回折として観測した2C. Davisson and L. H. Germer (1927), Physical Review 30, 705–740。下の脚注へ。

Schrödinger の4部作(1926 年 1〜6 月)

E. Schrödinger は de Broglie の波を、境界条件つきの微分方程式の固有値問題として書いた。表題はどれも「固有値問題としての量子化」で、Annalen der Physik に4部に分けて出た3E. Schrödinger (1926), Annalen der Physik 79, 361–376(第1部・1月 27 日受付);79, 489–527(第2部・2月 23 日受付);80, 437–490(第3部・5月 10 日受付);81, 109–139(第4部・6月 21 日受付)。下の脚注へ。

第1部は水素原子を扱い、時間によらない方程式

−ℏ22m∇2ψ+Vψ=Eψ(1.4.7)-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\psi+V\psi=E\psi\tag{1.4.7}

を変分原理から導いて、ψ\psi が無限遠で有限に留まるという条件から Bohr の準位を固有値として得た。量子数は、もはや後から課す整数条件でなく、方程式の解が境界条件を満たすための条件として出てくる。第2部は、光学と力学の類似(幾何光学と Hamilton の原理の対応)から波動方程式を動機づけ直し、調和振動子・剛体回転子・2原子分子を解いた。調和振動子の固有値は En=ℏω(n+12)E_n=\hbar\omega(n+\tfrac12) で、Heisenberg が行列で出したものと一致した。第3部は摂動論と Stark 効果、第4部で初めて、時間を含む方程式

iℏ∂ψ∂t=−ℏ22m∇2ψ+Vψ(1.4.8)\mathrm{i}\hbar\frac{\partial \psi}{\partial t}=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\psi+V\psi\tag{1.4.8}

が複素数の ψ\psi に対して立てられた。第2部と第3部の間、1926 年 3 月 18 日に受け付けられたのが、次の節で扱う同値の論文である。したがって同値の論文の時点で、波動力学はまだ時間を含む方程式を持っていなかった。

ψ\psi は何か:Schrödinger の解釈と Born の確率

Schrödinger は ψ\psi を実在の波と考え、e∣ψ∣2e\lvert \psi\rvert ^2 を電荷の密度とみなした。1926 年 7 月の短い論文では、調和振動子の固有関数を重ね合わせた波束が広がらずに古典の軌道と同じ振動をすることを示し、粒子は波束として理解できると論じた4E. Schrödinger (1926), Die Naturwissenschaften 14, 664–666。下の脚注へ(この波束は今のコヒーレント状態で、例題 1.4.6 で扱う)。しかし自由粒子の波束は広がる(第1部第1章の共通例題③)ので、一般の粒子を波束とみなすことはできない。

M. Born は 1926 年 6 月 25 日受付の短い論文で衝突の問題を波動力学で解き、散乱波の振幅が、その方向へ粒子が飛ぶ確率を決めると解釈した5M. Born (1926), Zeitschrift für Physik 37, 863–867(1926 年 6 月 25 日受付)。下の脚注へ。本文では確率を振幅そのもので述べ、校正の段階で加えた注で、確率は振幅の2乗に比例すると改めている。これが基準の公理 Q3(Born の規則)の始まりである。

例題 1.4.4 Bohr の軌道の定在波と、Davisson と Germer の電子の波長 ★

オリジナル

  1. (1) 円軌道の1周に de Broglie 波長がちょうど nn 個乗る条件 2πr=nλ2\pi r=n\lambda が、角運動量の条件 mevr=nℏm_evr=n\hbar と同じであることを示せ。
  2. (2) 水素の n=1n=1 の軌道で、電子の速さと de Broglie 波長を求めよ。
  3. (3) Davisson と Germer の実験で回折の山がはっきり出た 54 eV54\,\mathrm{eV} の電子の波長を求め、相対論の補正が要らないことを確かめよ。
解答

(1) (1.4.6) から λ=h/(mev)\lambda=h/(m_ev) なので 2πr=nh/(mev)2\pi r=nh/(m_ev)、両辺に mev/(2π)m_ev/(2\pi) を掛けると mevr=nℏm_evr=n\hbar。

(2) 例題 1.4.1 の (1) から v1=e2/(4πε0ℏ)=2.188×106 m/sv_1=e^2/(4\pi\varepsilon_0\hbar)=2.188\times10^{6}\,\mathrm{m/s}(光速の微細構造定数倍 αc\alpha c)。波長は λ1=h/(mev1)=2πa0=0.3325 nm\lambda_1=h/(m_ev_1)=2\pi a_0=0.3325\,\mathrm{nm} で、軌道の周の長さそのものである。

(3) 運動エネルギー K=54 eVK=54\,\mathrm{eV} から p=2meKp=\sqrt{2m_eK}、λ=h/2meK=0.1669 nm\lambda=h/\sqrt{2m_eK}=0.1669\,\mathrm{nm}。KK は静止エネルギー 511 keV511\,\mathrm{keV} の 10−410^{-4} 倍なので、相対論の運動量 p=K2+2Kmec2/cp=\sqrt{K^2+2Km_ec^2}/c に替えても波長は相対的に 3×10−53\times10^{-5} しか変わらない。結晶の原子の間隔(0.10.1〜0.3 nm0.3\,\mathrm{nm} の桁)と同じ桁の波長なので、結晶が電子に対して回折格子として働く。

1 L. de Broglie (1925), Annales de Physique (10e série) 3, 22–128(1924 年の学位論文)。

2 C. Davisson and L. H. Germer (1927), Physical Review 30, 705–740。

3 E. Schrödinger (1926), Annalen der Physik 79, 361–376(第1部・1月 27 日受付);79, 489–527(第2部・2月 23 日受付);80, 437–490(第3部・5月 10 日受付);81, 109–139(第4部・6月 21 日受付)。

4 E. Schrödinger (1926), Die Naturwissenschaften 14, 664–666。

5 M. Born (1926), Zeitschrift für Physik 37, 863–867(1926 年 6 月 25 日受付)。

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