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1926 年 3 月:Schrödinger の同値の証明と、示されなかった向き

2026年10月17日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第4章 歴史:行列力学と波動力学が別々に生まれ、同値が示されるまで
目次
  1. 波動関数から行列を作る
  2. 行列から関数への向き
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第1部 第4章 §1.4.4 ★★★ 波動関数の完全系があれば行列力学の行列が作れる。逆向きは 1926 年には示されていなかった

波動関数から行列を作る

Schrödinger の論文「Heisenberg・Born・Jordan の量子力学と私の量子力学の関係について」は 1926 年 3 月 18 日に受け付けられた1E. Schrödinger (1926), Annalen der Physik 79, 734–756(1926 年 3 月 18 日受付)。下の脚注へ。その要点は次の構成である。区間(または全空間)上の関数の正規直交な完全系 {uk(x)}\{u_k(x)\} を1つ取る。正規直交と完全は

∫uk∗(x)ul(x) dx=δkl,∑kuk(x)uk∗(x′)=δ(x−x′)(1.4.9)\int u_k^*(x)u_l(x)\,\mathrm{d} x=\delta_{kl},\qquad \sum_k u_k(x)u_k^*(x')=\delta(x-x')\tag{1.4.9}

である。古典の物理量 F(x,p)F(x,p) に対して、pp を微分 −iℏ d/dx-\mathrm{i}\hbar\,\mathrm{d}/\mathrm{d} x に置き換えた微分演算子を F(x,−iℏ d/dx)F(x,-\mathrm{i}\hbar\,\mathrm{d}/\mathrm{d} x) と書き、行列

Fkl≔∫uk∗(x) F ⁣(x,−iℏddx)ul(x) dx(1.4.10)F_{kl}\coloneqq\int u_k^*(x)\,F\!\left(x,-\mathrm{i}\hbar\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} x}\right)u_l(x)\,\mathrm{d} x\tag{1.4.10}

を作る。すると次の3つが成り立つ。

第一に、積の規則が行列の積になる。演算子 F^G^\hat F\hat G の行列要素は、間に (1.4.9) の完全性を挟むと

(FG)kl=∫uk∗ F^G^ ul dx=∑m∫uk∗F^um dx∫um∗G^ul dx=∑mFkmGml(FG)_{kl}=\int u_k^*\,\hat F\hat G\,u_l\,\mathrm{d} x=\sum_m\int u_k^*\hat Fu_m\,\mathrm{d} x\int u_m^*\hat Gu_l\,\mathrm{d} x=\sum_mF_{km}G_{ml}

である。第二に、関数に作用する演算子として x(−iℏψ′)−(−iℏ)(xψ)′=iℏψx(-\mathrm{i}\hbar\psi')-(-\mathrm{i}\hbar)(x\psi)'=\mathrm{i}\hbar\psi が恒等的に成り立つので、(xp−px)kl=iℏδkl(xp-px)_{kl}=\mathrm{i}\hbar\delta_{kl}、つまり (1.4.4) が出る。第三に、uku_k を (1.4.7) の固有関数(エネルギー EkE_k)に取るとHkl=EkδklH_{kl}=E_k\delta_{kl} は対角になり、行列に時間の因子を付けた xkl(t)=xkleiωkltx_{kl}(t)=x_{kl}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega_{kl}t} は Heisenberg の運動方程式を満たす。こうして、波動力学の解から行列力学の解が組み立てられる。Schrödinger は、完全系の取り方は任意であり、エネルギーの固有関数を選んだときにHeisenberg の行列そのものになることも注意している。この構成は、今の言葉では「エネルギー表示で行列要素を取る」ことである(第1部第3章)。

同じ年の 4 月 12 日に Pauli は Jordan への手紙で同じ対応を独立に示したが、公表しなかった。C. Eckart は演算子の計算規則として同じ内容をPhysical Review に出した2C. Eckart (1926), Physical Review 28, 711–726(1926 年 10 月 1 日刊)。下の脚注へ。

行列から関数への向き

(1.4.10) は、波動関数の側から行列の側への写像である。逆向き、つまり行列力学の側に与えられた無限の行列 XX, PP から出発して、それを xx と −iℏ d/dx-\mathrm{i}\hbar\,\mathrm{d}/\mathrm{d} x に戻す関数の系を作れるか、という問いには、1926 年の論文は答えていない。F. A. Muller はこの点を詳しく論じ、Schrödinger と Eckart の証明は写像が全単射であることを示しておらず、当時の2つの理論は数学的にも経験的にも同値でなかったと結論している3F. A. Muller (1997), Studies in History and Philosophy of Modern Physics 28, 35–61(第1部)・219–247(第2部)。下の脚注へ。理由は少なくとも3つある。1つ目に、行列力学には状態の空間がなく、波動力学には関数の空間があった。行列が作用する数列の空間と関数の空間が同じ構造を持つことは、まだ誰も示していなかった。2つ目に、どんな数列が許されるか(行列の列として和が収束する範囲)が決まっていなかった。3つ目に、3 月の時点で波動力学には時間を含む方程式 (1.4.8) が無く、Schrödinger は ∣ψ∣2\lvert \psi\rvert ^2 を電荷の密度と読んでいたので、2つの理論は観測の予言の読み方も違っていた。Muller によれば、2つの理論が同じものの2つの書き方になったのは、どちらも作り直されてvon Neumann のヒルベルト空間の上に置かれた後である。

図

図 1.4.1 1926 年の同値の証明と、その後の統合。Schrödinger の構成 (1.4.10) は波動力学から行列力学への向き(赤の実線)だけを与えた。逆向き(破線)は、両者を抽象的なヒルベルト空間の2つの表示として並べ、ℓ2\ell^2 と L2L^2 が同じ構造を持つこと(Riesz–Fischer の定理)を使って初めて閉じる(1.4.5 節・1.4.6 節)。

例題 1.4.5 Schrödinger の構成で調和振動子の行列を作る ★★★

オリジナル調和振動子の固有関数を φn(x)=(2nn!π x0)−1/2Hn(x/x0)e−x2/(2x02)\varphi_n(x)=(2^nn!\sqrt\pi\,x_0)^{-1/2}H_n(x/x_0)\mathrm{e}^{-x^2/(2x_0^2)}(HnH_n は Hermite 多項式、x0=ℏ/(mω)x_0=\sqrt{\hbar/(m\omega)})とする。Hermite 多項式の漸化式 ξHn(ξ)=12Hn+1(ξ)+nHn−1(ξ)\xi H_n(\xi)=\tfrac12H_{n+1}(\xi)+nH_{n-1}(\xi) と Hn′(ξ)=2nHn−1(ξ)H_n'(\xi)=2nH_{n-1}(\xi) を使ってよい。

  1. (1) xφnx\varphi_n を φn±1\varphi_{n\pm1} で書き、行列要素 xmn=∫φmxφn dxx_{mn}=\int\varphi_m x\varphi_n\,\mathrm{d} x を求めよ。
  2. (2) −iℏφn′-\mathrm{i}\hbar\varphi_n' を φn±1\varphi_{n\pm1} で書き、pmnp_{mn} を求めよ。
  3. (3) (1)(2) の行列で (xp−px)00(xp-px)_{00} を、完全系の和として計算せよ。
解答

(1) ξ=x/x0\xi=x/x_0 とおき、規格化の定数を Nn=(2nn!π x0)−1/2N_n=(2^nn!\sqrt\pi\,x_0)^{-1/2} と書く。漸化式からxφn=x0Nn[12Hn+1+nHn−1]e−ξ2/2x\varphi_n=x_0N_n\bigl[\tfrac12H_{n+1}+nH_{n-1}\bigr]\mathrm{e}^{-\xi^2/2} で、Nn/Nn+1=2(n+1)N_n/N_{n+1}=\sqrt{2(n+1)}、Nn/Nn−1=1/2nN_n/N_{n-1}=1/\sqrt{2n} を使うと

xφn=x0(n+12 φn+1+n2 φn−1).x\varphi_n=x_0\left(\sqrt{\tfrac{n+1}{2}}\,\varphi_{n+1}+\sqrt{\tfrac n2}\,\varphi_{n-1}\right).

正規直交性から xn+1,n=xn,n+1=x0(n+1)/2=(n+1)ℏ/(2mω)x_{n+1,n}=x_{n,n+1}=x_0\sqrt{(n+1)/2}=\sqrt{(n+1)\hbar/(2m\omega)}、それ以外の xmnx_{mn} は 00(選択則 ∣m−n∣=1\lvert m-n\rvert =1)。これは例題 1.4.3 の Born–Jordan の行列 XX と同じである。

(2) φn′=Nn[Hn′/x0−(x/x02)Hn]e−ξ2/2\varphi_n'=N_n\bigl[H_n'/x_0-(x/x_0^2)H_n\bigr]\mathrm{e}^{-\xi^2/2} に Hn′=2nHn−1H_n'=2nH_{n-1} と (1) の漸化式を入れるとφn′=1x0(n/2 φn−1−(n+1)/2 φn+1)\varphi_n'=\frac{1}{x_0}\bigl(\sqrt{n/2}\,\varphi_{n-1}-\sqrt{(n+1)/2}\,\varphi_{n+1}\bigr)。よって

−iℏφn′=iℏx0(n+12 φn+1−n2 φn−1),-\mathrm{i}\hbar\varphi_n'=\frac{\mathrm{i}\hbar}{x_0}\left(\sqrt{\tfrac{n+1}{2}}\,\varphi_{n+1}-\sqrt{\tfrac n2}\,\varphi_{n-1}\right),

pn+1,n=iℏx0n+12=i(n+1)mωℏ2,pn,n+1=pn+1,n∗.p_{n+1,n}=\mathrm{i}\frac{\hbar}{x_0}\sqrt{\tfrac{n+1}{2}}=\mathrm{i}\sqrt{\tfrac{(n+1)m\omega\hbar}{2}},\qquad p_{n,n+1}=p_{n+1,n}^*.

(3) 和に残るのは m=1m=1 だけで、(xp−px)00=x01p10−p01x10=x02⋅iℏ2 x0−(−iℏ2 x0)x02=iℏ(xp-px)_{00}=x_{01}p_{10}-p_{01}x_{10}=\frac{x_0}{\sqrt2}\cdot\frac{\mathrm{i}\hbar}{\sqrt2\,x_0}-\left(-\frac{\mathrm{i}\hbar}{\sqrt2\,x_0}\right)\frac{x_0}{\sqrt2}=\mathrm{i}\hbar。Heisenberg の量子条件の対角成分が、波動関数の積分から出てきた。検算では n=0,…,4n=0,\dots,4 の対角成分を数値の積分で確かめた。

1 E. Schrödinger (1926), Annalen der Physik 79, 734–756(1926 年 3 月 18 日受付)。

2 C. Eckart (1926), Physical Review 28, 711–726(1926 年 10 月 1 日刊)。

3 F. A. Muller (1997), Studies in History and Philosophy of Modern Physics 28, 35–61(第1部)・219–247(第2部)。

木下の勉強ステータス

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