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交換関係だけでは表現は決まらない:Weyl の形

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第6章 基準との同値:描像の変換と Stone–von Neumann の定理
目次
  1. 交換関係の表現の問い
  2. 区間の運動量:交換関係は満たすが同値でない
  3. Weyl の形
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第2部 第6章 §2.6.3 ★★★ 交換関係 [x^,p^]=iℏ[\hat x,\hat p]=\mathrm{i}\hbar を稠密な部分空間で満たす組には、Schrödinger の組と同値でないものがある。交換関係をユニタリ演算子の関係(Weyl の形)に直すと、問いが正しく立つ

交換関係の表現の問い

交換関係 [x^, p^]=iℏ\left[\hat x,\,\hat p\right]=\mathrm{i}\hbar を満たす自己共役な演算子の組 (x^,p^)(\hat x,\hat p) をヒルベルト空間 H\mathcal{H} の上に与えることを、交換関係の表現と呼ぶ。2つの表現 (x^,p^)(\hat x,\hat p) on H\mathcal{H}、(x^′,p^′)(\hat x',\hat p') on H′\mathcal{H}' がユニタリ同値であるとは、ユニタリ写像 V:H→H′\mathcal V:\mathcal{H}\to\mathcal{H}' があってx^′=Vx^V−1\hat x'=\mathcal V\hat x\mathcal V^{-1}、p^′=Vp^V−1\hat p'=\mathcal V\hat p\mathcal V^{-1} となることをいう。同値な表現はすべての期待値と確率を同じに与えるので、物理として区別がつかない。基準の公理 Q1〜Q6 と行列力学が同じ理論であることは、「どの表現を選んでも Schrödinger の表現と同値」と言えれば保証される。ただし、表現を直和でいくつも重ねる自由(たとえば内部の自由度をもつ粒子 L2(R)⊗C2L^2(\mathbb{R})\otimes\mathbb{C}^2)は残るので、主張は「既約な表現は1つ」の形になる。

有限次元にはそもそも表現が無い(トレースをとると左辺が 00、右辺が iℏdim⁡H\mathrm{i}\hbar\dim\mathcal{H})。無限次元では、交換関係をどの定義域で要求するかで答えが変わる。

区間の運動量:交換関係は満たすが同値でない

例題 2.6.2 の (3) の族を使う。H=L2(0,L)\mathcal{H}=L^2(0,L) の上で、x^\hat x を xx を掛ける演算子、p^θ\hat p_\theta を境界条件 ψ(L)=eiθψ(0)\psi(L)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta}\psi(0) をもつ −iℏ d/dx-\mathrm{i}\hbar\,\mathrm{d}/\mathrm{d} x とする。p^θ\hat p_\theta は自己共役で、固有関数は eikx\mathrm{e}^{\mathrm{i} k x}(eikL=eiθ\mathrm{e}^{\mathrm{i} kL}=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta})、固有値は

pn(θ)=(2πn+θ)ℏL,n∈Z(2.6.8)p_n(\theta)=\frac{(2\pi n+\theta)\hbar}{L},\qquad n\in\mathbb{Z}\tag{2.6.8}

である。H\mathcal{H} の中の、(0,L)(0,L) の内側で台をもつ滑らかな関数の空間 D0\mathcal D_0 は稠密で、x^\hat x と p^θ\hat p_\theta の両方で自分自身に写り、そこでは[x^, p^θ]ψ=iℏψ\left[\hat x,\,\hat p_\theta\right]\psi=\mathrm{i}\hbar\psi がどの θ\theta でも成り立つ(台が内側にあるので境界の値は計算に入らず、θ\theta は現れない)。

それでも、この組は Schrödinger の組と同値でない。理由は2つある。第一に、区間の x^\hat x は有界(∥x^∥≤L\lVert \hat x\rVert \le L)で、Schrödinger の x^\hat x は有界でない。第二に、θ\theta の違う組どうしも同値でない。図 2.6.2 のように、p^θ\hat p_\theta のスペクトル (2.6.8) は θ\theta ごとに違う離散集合で、ユニタリ写像はスペクトルを変えないからである(θ\theta と θ+2π\theta+2\pi は同じ)。交換関係を稠密な部分空間で満たすという条件だけでは、表現は1つに決まらない。

図

図 2.6.2 区間 (0,L)(0,L) の運動量 p^θ\hat p_\theta のスペクトル (2.6.8)。縦に切った1本の線の上の点が1つの θ\theta の固有値で、θ\theta が違えば点の集合が違う。どの θ\theta でも稠密な部分空間で [x^,p^θ]=iℏ[\hat x,\hat p_\theta]=\mathrm{i}\hbar が成り立つが、組どうしはユニタリ同値でない。

Weyl の形

H. Weyl は 1927 年に、交換関係を有界なユニタリ演算子の関係として書く形を出した1H. Weyl (1927), Zeitschrift für Physik 46, 1–46。経緯は第1部第4章。下の脚注へ。運動量の並進 U(a)≔eiap^/ℏU(a)\coloneqq\mathrm{e}^{\mathrm{i} a\hat p/\hbar} と位置の位相 V(b)≔eibx^/ℏV(b)\coloneqq\mathrm{e}^{\mathrm{i} b\hat x/\hbar} をまとめて

W(a,b)≔ei(ap^+bx^)/ℏ,s(z1,z2)≔a1b2−b1a2(z=(a,b)∈R2)(2.6.9)W(a,b)\coloneqq\mathrm{e}^{\mathrm{i}(a\hat p+b\hat x)/\hbar},\qquad \mathsf s(z_1,z_2)\coloneqq a_1b_2-b_1a_2\quad(z=(a,b)\in\mathbb{R}^2)\tag{2.6.9}

とおく(記号は第8部第3章と同じにした)。eXeY=eX+Ye[X, Y]/2\mathrm{e}^X\mathrm{e}^Y=\mathrm{e}^{X+Y}\mathrm{e}^{\left[X,\,Y\right]/2}([X, Y]\left[X,\,Y\right] が数のとき)に交換関係を入れると

W(z1)W(z2)=eis(z1,z2)/(2ℏ) W(z1+z2),U(a)V(b)=eiab/ℏV(b)U(a)(2.6.10)W(z_1)W(z_2)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\mathsf s(z_1,z_2)/(2\hbar)}\,W(z_1+z_2),\qquad U(a)V(b)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} ab/\hbar}V(b)U(a)\tag{2.6.10}

を得る。Schrödinger 表現では (U(a)ψ)(x)=ψ(x+a)(U(a)\psi)(x)=\psi(x+a)、(V(b)ψ)(x)=eibx/ℏψ(x)(V(b)\psi)(x)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} bx/\hbar}\psi(x) で、(2.6.10) は直接確かめられる。

定義 2.6.4(Weyl の形の表現 ★★★)

ヒルベルト空間 H\mathcal{H} の上のユニタリ演算子の族 W(z)W(z)(z∈R2z\in\mathbb{R}^2)が (2.6.10) を満たし、すべてのベクトル u,vu,v について z↦⟨u, W(z)v⟩z\mapsto\langle u,\,W(z)v\rangle が連続であるとき、これを交換関係の正則な Weyl 表現と呼ぶ。W(z)W(z) を全部の zz について同時に不変にする閉部分空間が {0}\{0\} と H\mathcal{H} だけのとき、既約と呼ぶ。

正則なら、Stone の定理(定理 2.6.3)で U(a)U(a) と V(b)V(b) の自己共役な生成子 p^\hat p と x^\hat x が取り出せる。Weyl の形は交換関係より強い条件で、区間の組 (x^,p^θ)(\hat x,\hat p_\theta) はこれを満たさない。次の例題でそれを確かめる。

例題 2.6.3 区間では Weyl の関係が破れる ★★

オリジナルH=L2(0,L)\mathcal{H}=L^2(0,L)、p^θ\hat p_\theta を上の自己共役な運動量とする。U(a)=eiap^θ/ℏU(a)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} a\hat p_\theta/\hbar} は境界条件どおりに巻き付ける並進(U(a)ψ)(x)=ψ(x+a)(U(a)\psi)(x)=\psi(x+a)(x+a<Lx+a<L)、eiθψ(x+a−L)\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta}\psi(x+a-L)(x+a≥Lx+a\ge L)で、V(b)V(b) は eibx/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} bx/\hbar} を掛ける演算子である(0<a<L0<a<L)。

  1. (1) U(a)V(b)U(a)V(b) と eiab/ℏV(b)U(a)\mathrm{e}^{\mathrm{i} ab/\hbar}V(b)U(a) を x+a<Lx+a<L と x+a≥Lx+a\ge L の2つの領域で比べよ。
  2. (2) Weyl の関係 (2.6.10) が成り立つ bb を求めよ。
  3. (3) (2) の結果と、Schrödinger 表現の V(b)V(b) が全部の実数 bb で定義されていることを比べて、2つの組が同値でない理由を Weyl の形の言葉で述べよ。
解答

(1) x+a<Lx+a<L では (U(a)V(b)ψ)(x)=eib(x+a)/ℏψ(x+a)(U(a)V(b)\psi)(x)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} b(x+a)/\hbar}\psi(x+a)、(V(b)U(a)ψ)(x)=eibx/ℏψ(x+a)(V(b)U(a)\psi)(x)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} bx/\hbar}\psi(x+a) で、比は eiab/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} ab/\hbar} である。x+a≥Lx+a\ge L では (U(a)V(b)ψ)(x)=eiθeib(x+a−L)/ℏψ(x+a−L)(U(a)V(b)\psi)(x)=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta}\mathrm{e}^{\mathrm{i} b(x+a-L)/\hbar}\psi(x+a-L)、(V(b)U(a)ψ)(x)=eibx/ℏeiθψ(x+a−L)(V(b)U(a)\psi)(x)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} bx/\hbar}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta}\psi(x+a-L) で、比は eiab/ℏe−ibL/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} ab/\hbar}\mathrm{e}^{-\mathrm{i} bL/\hbar} である。

(2) 両方の領域で比が eiab/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} ab/\hbar} になるのは e−ibL/ℏ=1\mathrm{e}^{-\mathrm{i} bL/\hbar}=1、すなわち b∈(2πℏ/L)Zb\in(2\pi\hbar/L)\mathbb{Z} のときだけである。それ以外の bb では巻き付いた部分に余分な位相 e−ibL/ℏ\mathrm{e}^{-\mathrm{i} bL/\hbar} がつき、関係が破れる(検算スクリプトで θ=0.7\theta=0.7 の数値の関数に当てて確かめた)。

(3) V(b)V(b) が p^θ\hat p_\theta の定義域(境界条件)を保つのも同じ b∈(2πℏ/L)Zb\in(2\pi\hbar/L)\mathbb{Z} のときに限る。区間の組で Weyl の関係を満たすのは離散的な bb の格子だけで、連続な bb の全体では満たさない。定義 2.6.4 の表現になっていないので、次の節の定理の前提から外れ、Schrödinger の組と同値になる必要がない。

区間(あるいは円)の上で交換関係が離散的な格子の上でしか Weyl の形にならないことは、第2部第5章の Josephson 接合の位相 φ\varphi と電荷 nn にも当てはまる。eiφ\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi} は1つずらすだけの演算子で、nn を連続にずらす演算子は無い。そのため ngn_{\mathrm g} で番号づけた同値でない表現が並び、スペクトルが ngn_{\mathrm g} に依った。

1 H. Weyl (1927), Zeitschrift für Physik 46, 1–46。経緯は第1部第4章。

木下の勉強ステータス

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