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回路を力学系として書く

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第5章 回路の量子化:LC 回路と Josephson 接合
目次
  1. 節点の磁束
  2. LC 回路の Lagrangian と Hamiltonian
  3. 電荷を座標に選ぶ流儀
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第2部 第5章 §2.5.1 ★★ 節点の磁束を座標に選ぶと、コンデンサのエネルギーが運動エネルギー、インダクタのエネルギーがポテンシャルになり、共役な運動量は電荷になる

行列力学の部の型(出発点の要請 → 基本の対象 → 基準との同値 → 共通例題 → 得意な問題 → 限界)の中で、この章は「得意な問題」を受け持つ。第2部第2章で、正準量子化を次の処方として定めた。古典の Hamilton 系を入力にとり、正準変数の Poisson 括弧 {q,p}=1\{q,p\}=1 を交換関係 [q^, p^]=iℏ\left[\hat q,\,\hat p\right]=\mathrm{i}\hbar に置き換え、Hamiltonian の変数に帽子を付けて演算子にし、ヒルベルト空間はその交換関係の表現として後から得る。この処方は「何が粒子か」「波動関数は何の関数か」を問わない。Hamilton 形式で書ける系なら、何にでも当てることができる。

この章では、その処方を電気回路に当てる。回路の変数は電荷と電圧と電流で、粒子の位置はどこにも出てこない。それでも、コンデンサとインダクタだけの回路は Lagrangian を持ち、節点の磁束(電圧の時間積分)を座標に選ぶと、正準共役な運動量はコンデンサの電荷になる。処方を当てれば [Φ^, Q^]=iℏ\left[\hat\Phi,\,\hat Q\right]=\mathrm{i}\hbar が出て、LC 回路は共通例題①の調和振動子そのものになる。回路にはもう1つ、超伝導の Josephson 接合という非線形な素子があり、そのエネルギーは磁束の周期関数 −EJcos⁡(2πΦ/Φ0)-E_{\mathrm J}\cos(2\pi\Phi/\Phi_0) である。これを足すと、等間隔でない準位を持つ「人工の原子」ができ、その最低の2準位を切り出すと共通例題②の2準位系になる。

回路が正準量子化の得意な問題である理由は2つある。1つ目は、回路の Hamiltonian が「電荷だけの関数」と「磁束だけの関数」の和になり、第2部第2章で見た演算子の順序の曖昧さが起きないこと。2つ目は、回路の設計者が静電容量とインダクタンスを選べるので、量子化した結果(振動数・非調和性・結合の強さ)を設計の式として使えることである。回路の古典の Lagrangian の組み方は解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第15章にあり、この章はそこで得た古典の系を量子化する側を受け持つ。

節点の磁束

回路の大きさが扱う電磁波の波長より十分小さいとき、回路は「集中定数」の素子(コンデンサ・インダクタ・接合)を導線でつないだものとして書くことができる。例えば振動数 5 GHz5\,\mathrm{GHz} の真空中の波長は 6 cm6\,\mathrm{cm} で、チップ上の 100 μm100\,\mu\mathrm m 程度の素子はこの条件を満たす。

基準の節点(接地)を1つ決め、ほかの節点の電位 V(t)V(t) を時間で積分した量

Φ(t)=∫−∞tV(t′) dt′,Φ˙=V(2.5.1)\Phi(t)=\int_{-\infty}^{t}V(t')\,\mathrm{d} t',\qquad \dot\Phi=V\tag{2.5.1}

を節点の磁束と呼ぶ。単位は V s=Wb\mathrm{V\,s}=\mathrm{Wb} で、インダクタの両端にこの節点があれば、Faraday の法則 V=d(鎖交磁束)/dtV=\mathrm{d}(\text{鎖交磁束})/\mathrm{d} t によりインダクタを貫く磁束に一致する。この Φ\Phi を回路の座標に選ぶ。

静電容量 CC のコンデンサのエネルギーは CV2/2=CΦ˙2/2CV^2/2=C\dot\Phi^2/2 で、速度 Φ˙\dot\Phi の2次式だから運動エネルギーの役をする。インダクタンス LindL_{\mathrm{ind}} のインダクタのエネルギーは LindI2/2=Φ2/(2Lind)L_{\mathrm{ind}}I^2/2=\Phi^2/(2L_{\mathrm{ind}})(Φ=LindI\Phi=L_{\mathrm{ind}}I)で、座標だけの関数だからポテンシャルの役をする。インダクタンスに添字 ind を付けるのは Lagrangian LL と区別するためである(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第15章と同じ流儀)。

LC 回路の Lagrangian と Hamiltonian

コンデンサとインダクタを並列につないだ LC 回路(図 2.5.1 の左)の節点は1つで、Lagrangian は

L(Φ,Φ˙)=C2Φ˙2−Φ22Lind(2.5.2)L(\Phi,\dot\Phi)=\frac{C}{2}\dot\Phi^2-\frac{\Phi^2}{2L_{\mathrm{ind}}}\tag{2.5.2}

である。Euler–Lagrange 方程式は CΦ¨+Φ/Lind=0C\ddot\Phi+\Phi/L_{\mathrm{ind}}=0 で、これはコンデンサに流れ込む電流 CV˙C\dot V とインダクタに流れ込む電流 Φ/Lind\Phi/L_{\mathrm{ind}} の和が0という Kirchhoff の電流則そのものである。正準共役な運動量は

Q=∂L∂Φ˙=CΦ˙=CV(2.5.3)Q=\frac{\partial L}{\partial \dot\Phi}=C\dot\Phi=CV\tag{2.5.3}

で、コンデンサの節点側の板にたまった電荷である。Legendre 変換で Hamiltonian

H(Φ,Q)=QΦ˙−L=Q22C+Φ22Lind,{Φ,Q}=1(2.5.4)H(\Phi,Q)=Q\dot\Phi-L=\frac{Q^2}{2C}+\frac{\Phi^2}{2L_{\mathrm{ind}}},\qquad \{\Phi,Q\}=1\tag{2.5.4}

を得る。Hamilton 方程式 Φ˙=∂H/∂Q=Q/C\dot\Phi=\partial H/\partial Q=Q/C は電圧の定義、Q˙=−∂H/∂Φ=−Φ/Lind\dot Q=-\partial H/\partial\Phi=-\Phi/L_{\mathrm{ind}} はインダクタへ流れ出る電流の分だけ電荷が減ることを言う。角振動数は ω=1/LindC\omega=1/\sqrt{L_{\mathrm{ind}}C} である。

力学の振動子 H=p2/(2m)+mω2x2/2H=p^2/(2m)+m\omega^2x^2/2 と並べると、対応は表 2.5.1 のとおりである。質量の役を静電容量が、ばね定数の役を 1/Lind1/L_{\mathrm{ind}} が受け持つ。振動子の mωm\omega に当たる量は Cω=1/ZC\omega=1/Z で、

Z=LindC(2.5.5)Z=\sqrt{\frac{L_{\mathrm{ind}}}{C}}\tag{2.5.5}

は回路の特性インピーダンスである。古典の回路では ZZ は共振器の「鋭さ」に関わる量にすぎないが、量子化すると零点のゆらぎの大きさを決める(2.5.2 節)。

表 2.5.1 力学の振動子と LC 回路の対応(節点の磁束を座標に選んだとき)
力学の振動子LC 回路
座標位置 xx節点の磁束 Φ\Phi
運動量p=mx˙p=m\dot x電荷 Q=CΦ˙Q=C\dot\Phi
慣性質量 mm静電容量 CC
復元力の係数ばね定数 mω2m\omega^21/Lind1/L_{\mathrm{ind}}
mωm\omega に当たる量mωm\omegaCω=1/ZC\omega=1/Z
Poisson 括弧{x,p}=1\{x,p\}=1{Φ,Q}=1\{\Phi,Q\}=1

電荷を座標に選ぶ流儀

同じ回路を、コンデンサの電荷 qq を座標にして書くこともできる。そのときは電流 q˙\dot q が速度になり、インダクタのエネルギー Lindq˙2/2L_{\mathrm{ind}}\dot q^2/2 が運動エネルギー、コンデンサのエネルギー q2/(2C)q^2/(2C) がポテンシャルで、運動量は Φk=Lindq˙\Phi_{\mathrm k}=L_{\mathrm{ind}}\dot q(インダクタの鎖交磁束)になる。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部第15章はこちらの流儀で {q,Φk}=1\{q,\Phi_{\mathrm k}\}=1 と書いた。2つの流儀の関係は 2.5.6 節で調べ、Φk=−Φ\Phi_{\mathrm k}=-\Phi であることを示す。この章が節点の磁束を座標に選ぶ理由は、Josephson 接合のエネルギーが磁束の関数だからである(2.5.4 節)。磁束を座標にすると、どの回路でも Hamiltonian が「運動エネルギー(電荷の2次式)+ポテンシャル(磁束の関数)」の形にそろう。

図

図 2.5.1 (a) LC 回路。接地以外の節点は1つで、その磁束 Φ\Phi が座標、コンデンサの電荷 QQ が運動量である。(b) Josephson 接合(四角の中の×)と並列の静電容量 CC、ゲート容量 CgC_{\mathrm g} と電圧源 VgV_{\mathrm g}。上の導体(島)は接合と容量だけで外とつながり、出入りする電荷は Cooper 対の単位 2e2e になる(2.5.4 節)。

例題 2.5.1 5 GHz の LC 回路を力学系として読む ★★

オリジナルLind=1 nHL_{\mathrm{ind}}=1\,\mathrm{nH}、C=1 pFC=1\,\mathrm{pF} の LC 回路を考える。

  1. (1) Lagrangian (2.5.2) から Hamilton 方程式を出し、Φ(t)=Φacos⁡ωt\Phi(t)=\Phi_{\mathrm a}\cos\omega t のときの Q(t)Q(t) と、インダクタを流れる電流 I(t)I(t) を書け。
  2. (2) 振動数 f=ω/2πf=\omega/2\pi と特性インピーダンス ZZ を数で求めよ。
  3. (3) 電圧の振幅が 1 μV1\,\mu\mathrm V のとき、磁束の振幅 Φa\Phi_{\mathrm a} と電荷の振幅を求め、電荷の振幅を電気素量 ee の何倍かで答えよ。
解答

(1) Hamilton 方程式は Φ˙=Q/C\dot\Phi=Q/C、Q˙=−Φ/Lind\dot Q=-\Phi/L_{\mathrm{ind}}。Φ=Φacos⁡ωt\Phi=\Phi_{\mathrm a}\cos\omega t なら Q=CΦ˙=−CωΦasin⁡ωtQ=C\dot\Phi=-C\omega\Phi_{\mathrm a}\sin\omega t。インダクタを接地へ流れる電流は I=Φ/Lind=(Φa/Lind)cos⁡ωtI=\Phi/L_{\mathrm{ind}}=(\Phi_{\mathrm a}/L_{\mathrm{ind}})\cos\omega t で、Q˙=−I\dot Q=-I を満たす。ω2=1/(LindC)\omega^2=1/(L_{\mathrm{ind}}C) を使えば第2式の両辺が一致する。

(2) ω=1/10−9⋅10−12=3.162×1010 s−1\omega=1/\sqrt{10^{-9}\cdot10^{-12}}=3.162\times10^{10}\,\mathrm{s^{-1}} で f=5.03 GHzf=5.03\,\mathrm{GHz}。Z=10−9/10−12=31.6 ΩZ=\sqrt{10^{-9}/10^{-12}}=31.6\,\Omega。

(3) 電圧は V=Φ˙V=\dot\Phi なので振幅は ωΦa\omega\Phi_{\mathrm a}。Φa=10−6/(3.162×1010)=3.16×10−17 Wb\Phi_{\mathrm a}=10^{-6}/(3.162\times10^{10})=3.16\times10^{-17}\,\mathrm{Wb}。電荷の振幅は CVCV の振幅 10−12×10−6=10−18 C10^{-12}\times10^{-6}=10^{-18}\,\mathrm C で、e=1.602×10−19 Ce=1.602\times10^{-19}\,\mathrm C の約 6.26.2 倍である。古典の回路の言葉では小さな信号だが、この大きさは次節で求める零点のゆらぎ(電荷で約 8e8e)と同じ桁にある。

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