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この章で選ぶもの:運動方程式だけが与えられた系

2026年10月16日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第15章 運動方程式から L と H を組む
目次
  1. 出発点と手順の全体
  2. 最初の例
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第15章 §1.15.1 ★★★ 運動方程式から量子化の入口までの手順を1枚の流れ図にし、各段で何が満たされていれば先へ進めるかを書く

第1部のここまでの章は、どれも「LL が与えられたら何が出るか」という向きで書いてきた。LL を停留させれば Euler–Lagrange 方程式が出て(第1部第4章)、速度について Legendre 変換すれば HH と相空間が出て(第1部第7章・第1部第8章)、対称性から保存量が出て(第1部第10章)、Poisson 括弧から量子力学の交換関係へ進める(第1部第11章・第4部第1章)。ところが実際に新しい系に出会うときは、多くの場合 LL は与えられていない。手元にあるのは、回路なら Kirchhoff の法則、流体なら渦の誘導速度、生態系なら個体数の増減の式、つまり運動方程式だけである。

この章では向きを逆にして、運動方程式だけが与えられた系を解析力学の言葉に直す。最初の問いは、その運動方程式を Euler–Lagrange 方程式として出す LL が在るかどうかで、これは変分の逆問題と呼ばれる。答えは Helmholtz の条件という式の対称性で判定でき、1自由度なら式に適当な関数を掛ければいつでも LL が作れる。LL が見つかれば、正準運動量・HH・Poisson 括弧・保存量・小振動・正準量子化までは第1部の手順をそのまま進めればよい。例として LC 回路(電荷と磁束が互いに共役になる)・Josephson 接合・磁場の中の荷電粒子・点渦・捕食者と被食者の個体数を扱い、最後に、減衰振動子やリミットサイクルのように相空間の体積が縮む流れは、どの座標をとっても時刻を含まない Hamilton 系に直せないことを示す。

出発点と手順の全体

一般化座標 q=(q1,…,qf)q=(q_1,\dots,q_f) の運動方程式が

Gi(t,q,q˙,q¨)=0(i=1,…,f)(1.15.1)G_i\bigl(t,q,\dot q,\ddot q\bigr)=0\qquad(i=1,\dots,f)\tag{1.15.1}

の形で与えられているとする。GiG_i は加速度までを含む関数で、たいていは q¨\ddot q について1次である。この章では LL も HH も選ばず、この式の組から出発する。問いは「式 (1.15.1) が、ある L(q,q˙,t)L(q,\dot q,t) の Euler–Lagrange の式

Ei[L]≔ddt∂L∂q˙i−∂L∂qi(1.15.2)E_i[L]\coloneqq\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}\frac{\partial L}{\partial \dot q_i}-\frac{\partial L}{\partial q_i}\tag{1.15.2}

と一致するか、あるいは一致するように書き直せるか」である(Ei[L]=0E_i[L]=0 が Euler–Lagrange 方程式。符号は 第1部第4章の δS/δq\delta S/\delta q の −1-1 倍に取った)。

図 1.15.1 が手順の全体である。左の列が段、右の列がその段から次の段へ進むために満たされていなければならない構造である。

図

図 1.15.1 運動方程式から量子化の入口までの手順。左の各段から次の段へ進むには、右に書いた構造が要る

各段で使う道具はすべて第1部にある。1段目から2段目へ進む判定が変分の逆問題で、これだけが新しく、1.15.2節で作る。2段目から3段目は正準運動量を作る操作で、速度の Hesse 行列 Wij=∂2L/∂q˙i∂q˙jW_{ij}=\partial^2L/\partial\dot q_i\partial\dot q_j が正則なら速度と運動量が1対1に対応する(第1部第7章)。WW が退化しているときは、pip_i の間に速度を含まない関係(拘束)が残り、第1部第6章の乗数や第2部第8章の拘束の扱いが要る。3段目で HH と Poisson 括弧が手に入ると、時間発展は A˙={A,H}+∂A/∂t\dot A=\{A,H\}+\partial A/\partial t で書け(第1部第11章)、HH が時刻によらなければ流れは相空間の体積を保つ(第1部第12章)。4段目は Noether の定理と小振動の展開(第2部第1章)、5段目は Poisson 括弧を交換子に置き換える規則である。

この手順で得られるものは、運動方程式を眺めているだけでは見えにくい。保存量は対称性から系統的に出て、平衡点のまわりの振動数は2次の展開の固有値として出て、周期運動なら作用変数 JJ と振動数の振幅依存性 ω(J)=dH/dJ\omega(J)=\mathrm{d} H/\mathrm{d} J が出る(第1部第14章)。相空間の体積が保たれることは統計力学の出発点で(第3部第1章)、どの変数の組が互いに共役かは量子化したときにどの量が同時に確定しないかを決める。

最初の例

例題 1.15.1 質量が位置によって変わる振動子 ★★★

オリジナル1自由度の運動方程式

G=(1+q2) q¨+q q˙2+q=0G=(1+q^2)\,\ddot q+q\,\dot q^2+q=0

が与えられている。

  1. (1) L=12a(q)q˙2−V(q)L=\frac12a(q)\dot q^2-V(q) の Euler–Lagrange の式 E[L]E[L] を書き、GG と比べて a(q)a(q) と V(q)V(q) を決めよ。
  2. (2) 正準運動量 pp と HH を求め、HH が保存することから振幅 AA(q˙=0\dot q=0 になる qq)の運動の周期を積分で表せ。
  3. (3) 小振動の角振動数と、A=1A=1 の周期を求めよ。
解答

(1) E[L]=ddt(aq˙)−12a′q˙2+V′=aq¨+12a′q˙2+V′E[L]=\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} t}(a\dot q)-\frac12a'\dot q^2+V'=a\ddot q+\frac12a'\dot q^2+V'。GG と比べると a=1+q2a=1+q^2(このとき 12a′=q\frac12a'=q で q˙2\dot q^2 の係数も一致する)、V′=qV'=q から V=12q2V=\frac12q^2。よって L=12(1+q2)q˙2−12q2L=\frac12(1+q^2)\dot q^2-\frac12q^2。q˙2\dot q^2 の係数が a′/2a'/2 と決まっているところが、GG が Euler–Lagrange の式であるための条件で、1.15.2節の Helmholtz の条件の1自由度の形にあたる。

(2) p=∂L/∂q˙=(1+q2)q˙p=\partial L/\partial\dot q=(1+q^2)\dot q、H=pq˙−L=p22(1+q2)+q22H=p\dot q-L=\dfrac{p^2}{2(1+q^2)}+\dfrac{q^2}{2}。HH は時刻を含まないので保存し、q˙=0\dot q=0 の点で H=A2/2H=A^2/2 だから(1+q2)q˙2=A2−q2(1+q^2)\dot q^2=A^2-q^2。4分の1周期を足し合わせて

T(A)=4∫0A1+q2A2−q2 dq=4∫0π/21+A2sin⁡2s ds(q=Asin⁡s).T(A)=4\int_0^A\sqrt{\frac{1+q^2}{A^2-q^2}}\,\mathrm{d} q=4\int_0^{\pi/2}\sqrt{1+A^2\sin^2s}\,\mathrm{d} s\qquad(q=A\sin s).

(3) 平衡点 q=0q=0 で質量は a(0)=1a(0)=1、ばね定数は V′′(0)=1V''(0)=1 なので小振動の角振動数は 11、周期は 2π=6.2832\pi=6.283。A=1A=1 では数値積分で T=7.640T=7.640 となり、運動方程式を直接数値積分した周期と一致する。振幅が大きいと qq の大きい所で質量 1+q21+q^2 が重くなるので、周期は小振動より長い。

この例では LL の形を推測して当てはめたが、GG に q˙2\dot q^2 の項の係数が少しでも違うと、この形の LL では合わせられない。そのときにも LL が在るのか、在るならどう探すのかを次の節で扱う。

木下の勉強ステータス

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