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共通例題①:調和ポテンシャルの中の NN 粒子の熱平衡

2026年10月17日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第2章 基準との同値:N 粒子の対称化と Fock 空間
目次
  1. 基準の言葉:置換の和
  2. Fock 空間の言葉:占有数の和
  3. ボースとフェルミの差がちょうど であること
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第6部 第2章 §6.2.5 ★★★ 分配関数を基準では Tr⁡(S^±e−βH^)\operatorname{Tr}(\hat S_\pm\mathrm{e}^{-\beta\hat H}) として置換の和で、Fock 空間では占有数の和で計算し、同じ答えを出す

基準の言葉:置換の和

共通例題①の1粒子の分配関数は Z1(β)=1/(2sinh⁡(βℏω/2))Z_1(\beta)=1/(2\sinh(\beta\hbar\omega/2)) である(第4部第4章。第1章でも場のモード1つとして使った)。相互作用しない同種粒子 NN 個の分配関数を、基準の言葉で計算する。NN 粒子の状態空間は HN±=S^±H⊗N\mathcal{H}_N^\pm=\hat S_\pm\mathcal{H}^{\otimes N} なので、トレースは射影 S^±\hat S_\pm を挟んで

ZN±(β)=Tr⁡H⊗N(S^± e−βH^)=1N!∑σ(±1)σ Tr⁡(P^σ e−βh⊗⋯⊗e−βh)(6.2.25)Z_N^\pm(\beta)=\operatorname{Tr}_{\mathcal{H}^{\otimes N}}\bigl(\hat S_\pm\,\mathrm{e}^{-\beta\hat H}\bigr)=\frac1{N!}\sum_\sigma(\pm1)^\sigma\,\operatorname{Tr}\bigl(\hat P_\sigma\,\mathrm{e}^{-\beta h}\otimes\cdots\otimes\mathrm{e}^{-\beta h}\bigr)\tag{6.2.25}

と書ける。H^=∑kh(k)\hat H=\sum_kh^{(k)} なので e−βH^\mathrm{e}^{-\beta\hat H} は e−βh\mathrm{e}^{-\beta h} の NN 個のテンソル積で、置換と交換する。

補題 6.2.5(巡回のトレース)

ℓ\ell 文字の巡回置換 γ\gamma(1→2→⋯→ℓ→11\to2\to\cdots\to\ell\to1)について、Tr⁡(P^γ A⊗⋯⊗A)=Tr⁡(Aℓ)\operatorname{Tr}\bigl(\hat P_\gamma\,A\otimes\cdots\otimes A\bigr)=\operatorname{Tr}(A^\ell) である(AA は ℓ\ell 個)。

証明

基底で書くと Tr⁡(P^γA⊗ℓ)=∑i1,…,iℓAi2i1Ai3i2⋯Ai1iℓ\operatorname{Tr}(\hat P_\gamma A^{\otimes\ell})=\sum_{i_1,\dots,i_\ell}A_{i_2i_1}A_{i_3i_2}\cdots A_{i_1i_\ell} で、添字が輪になってつながっているので Tr⁡(Aℓ)\operatorname{Tr}(A^\ell) である。

置換は互いに交わらない巡回の積に一意に分かれ、トレースは巡回ごとの積になる。N=2N=2 では恒等置換(長さ1の巡回が2つ)と互換(長さ2の巡回が1つ)なので、Tr⁡e−2βh=Z1(2β)\operatorname{Tr}\mathrm{e}^{-2\beta h}=Z_1(2\beta) を使って

Z2±(β)=12[Z1(β)2±Z1(2β)](6.2.26)Z_2^\pm(\beta)=\frac12\Bigl[Z_1(\beta)^2\pm Z_1(2\beta)\Bigr]\tag{6.2.26}

を得る。第1項は区別できる粒子の分配関数を 2!2! で割ったもの(古典統計で Gibbs が入れた 1/N!1/N! と同じ因子)で、第2項が交換の効果である。互換の項は「2つの粒子が同じ状態を同時にたどる」寄与を数え、Z1(2β)Z_1(2\beta) は温度が半分の1粒子の分配関数になる。

Fock 空間の言葉:占有数の和

Fock 空間では、状態は占有数の組 {nk}\{n_k\} で指定され((6.2.11))、H^=∑kεka^k†a^k\hat H=\sum_k\varepsilon _k\hat a_k^\dagger\hat a_k(εk=ℏω(k+12)\varepsilon _k=\hbar\omega(k+\frac12))はこの基底で対角なので、トレースは ∑knk=N\sum_kn_k=N を満たす組の和である。2粒子では、ボース粒子は準位 k1≤k2k_1\leq k_2 の組、フェルミ粒子は k1<k2k_1<k_2 の組を数える。q=e−βℏωq=\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega} とおくと e−βεk=qk+1/2\mathrm{e}^{-\beta\varepsilon _k}=q^{k+1/2} なので

Z2+=∑0≤k1≤k2qk1+k2+1=q(1−q)2(1+q),Z2−=∑0≤k1<k2qk1+k2+1=q2(1−q)2(1+q)\begin{aligned}Z_2^+&=\sum_{0\leq k_1\leq k_2}q^{k_1+k_2+1}=\frac{q}{(1-q)^2(1+q)},\\ Z_2^-&=\sum_{0\leq k_1<k_2}q^{k_1+k_2+1}=\frac{q^2}{(1-q)^2(1+q)}\end{aligned}

である(k2=k1+jk_2=k_1+j とおいて jj と k1k_1 について等比級数を足す)。一方 (6.2.26) に Z1(β)=q1/2/(1−q)Z_1(\beta)=q^{1/2}/(1-q)、Z1(2β)=q/(1−q2)Z_1(2\beta)=q/(1-q^2) を入れると

12[q(1−q)2±q(1−q)(1+q)]=q2⋅(1+q)±(1−q)(1−q)2(1+q)\frac12\Bigl[\frac{q}{(1-q)^2}\pm\frac{q}{(1-q)(1+q)}\Bigr]=\frac{q}{2}\cdot\frac{(1+q)\pm(1-q)}{(1-q)^2(1+q)}

で、上の2つの式と一致する。基準では「置換の和」、Fock 空間では「占有数の組の和」と、数え方はまったく違うが、同じ数になった。これは定理 6.2.3 のユニタリ UU のもとで H^\hat H が移り合うこと(定理 6.2.4)の、トレースという1つの数での現れである。

ボースとフェルミの差がちょうど ℏω\hbar\omega であること

閉じた形を並べると Z2−=q Z2+Z_2^-=q\,Z_2^+ である。対数をとって β\beta で微分すると、平均エネルギー ⟨E⟩=−∂βln⁡Z\langle E \rangle =-\partial_\beta\ln Z について

⟨E⟩−=⟨E⟩++ℏω(6.2.27)\langle E \rangle _-=\langle E \rangle _++\hbar\omega\tag{6.2.27}

がどの温度でも成り立つ。理由は占有数の側から見るとわかる。ボース粒子の組 (k1,k2)(k_1,k_2)(k1≤k2k_1\leq k_2)を (k1,k2+1)(k_1,k_2+1) に移すと、フェルミ粒子の組(k1<k2+1k_1<k_2+1)とちょうど1対1に対応し、エネルギーは ℏω\hbar\omega だけ上がる。等間隔の準位を持つ1次元の調和振動子だけで成り立つ特別な関係で、2個のフェルミ粒子は「片方を1段上に持ち上げた2個のボース粒子」と同じスペクトルを持つ。

高温 kBT≫ℏωk_{\mathrm B} T\gg\hbar\omega では、x=βℏωx=\beta\hbar\omega として ⟨E⟩+/ℏω=1+2q/(1−q)−q/(1+q)=2/x−12+5x12+⋯\langle E \rangle _+/\hbar\omega=1+2q/(1-q)-q/(1+q)=2/x-\frac12+\frac{5x}{12}+\cdots なので、

⟨E⟩±≈2kBT∓ℏω2,⟨E⟩Boltzmann≈2kBT\langle E \rangle _\pm\approx2 k_{\mathrm B} T\mp\frac{\hbar\omega}2,\qquad \langle E \rangle _{\text{Boltzmann}}\approx2 k_{\mathrm B} T

である(Boltzmann は Z12/2Z_1^2/2、つまり交換の項を落としたもの)。2つの自由度がそれぞれ等分配の kBTk_{\mathrm B} T を持つ古典の値に、交換の効果が温度によらない大きさ ∓ℏω/2\mp\hbar\omega/2 で残る。kBTk_{\mathrm B} T に比べた相対的な大きさは ℏω/kBT\hbar\omega/ k_{\mathrm B} T の程度で0に近づく。

図

図 6.2.2 調和ポテンシャルの中の同種粒子2個の平均エネルギー。青がボース粒子、赤がフェルミ粒子、点線が交換の項を落とした Boltzmann の計算 Z12/2Z_1^2/2、灰色の破線が古典の 2kBT2 k_{\mathrm B} T。赤と青の差はどの温度でもちょうど ℏω\hbar\omega で、低温では基底状態の ℏω\hbar\omega(ボース)と 2ℏω2\hbar\omega(フェルミ)に近づく。座標は verify_ch6-02.py で計算した。

例題 6.2.5 2粒子の熱平衡を数で比べる ★★

オリジナル調和ポテンシャルの中の同種粒子2個(相互作用なし)について次に答えよ。

  1. (1) 基底状態のエネルギーを、ボース粒子とフェルミ粒子(スピンを考えない)について求めよ。NN 個ではどうなるか。
  2. (2) kBT=ℏωk_{\mathrm B} T=\hbar\omega での平均エネルギーを、ボース粒子・フェルミ粒子・Boltzmann の計算で求めよ。
  3. (3) (2) の Boltzmann の値が、ボースとフェルミの値の平均にならない理由を述べよ。
解答

(1) ボース粒子は2個とも最低の準位に入れるので 2⋅12ℏω=ℏω2\cdot\frac12\hbar\omega=\hbar\omega、フェルミ粒子は k=0,1k=0,1 に1個ずつで 12ℏω+32ℏω=2ℏω\frac12\hbar\omega+\frac32\hbar\omega=2\hbar\omega である。Z2±Z_2^\pm の展開の最低次の項 qq と q2q^2 がこれに当たる。NN 個ではボース粒子 Nℏω/2N\hbar\omega/2、フェルミ粒子は下から NN 個の準位を埋めて∑k=0N−1ℏω(k+12)=N2ℏω/2\sum_{k=0}^{N-1}\hbar\omega(k+\frac12)=N^2\hbar\omega/2 になる。

(2) q=e−1q=\mathrm{e}^{-1} で、ボース粒子は ⟨E⟩+/ℏω=1+2q/(1−q)−q/(1+q)\langle E \rangle _+/\hbar\omega=1+2q/(1-q)-q/(1+q) に値を入れて

⟨E⟩+=1.895 ℏω,⟨E⟩−=⟨E⟩++ℏω=2.895 ℏω\langle E \rangle _+=1.895\,\hbar\omega,\qquad \langle E \rangle _-=\langle E \rangle _++\hbar\omega=2.895\,\hbar\omega

である。Boltzmann の計算では ln⁡(Z12/2)\ln(Z_1^2/2) を微分して ⟨E⟩=2⋅ℏω2coth⁡βℏω2=ℏωcoth⁡12=2.164 ℏω\langle E \rangle =2\cdot\frac{\hbar\omega}{2}\coth\frac{\beta\hbar\omega}2=\hbar\omega\coth\frac12=2.164\,\hbar\omega になる。

(3) Z2±=ZB(1±r)Z_2^\pm=Z_{\mathrm B}(1\pm r)(ZB=Z12/2Z_{\mathrm B}=Z_1^2/2、r=Z1(2β)/Z1(β)2r=Z_1(2\beta)/Z_1(\beta)^2)と書くと、ln⁡Z2±=ln⁡ZB+ln⁡(1±r)\ln Z_2^\pm=\ln Z_{\mathrm B}+\ln(1\pm r) で、ボースとフェルミの平均エネルギーの平均は ⟨E⟩B−12∂βln⁡(1−r2)\langle E \rangle _{\mathrm B}-\frac12\partial_\beta\ln(1-r^2) で、ln⁡(1+r)+ln⁡(1−r)=ln⁡(1−r2)\ln(1+r)+\ln(1-r)=\ln(1-r^2) が0でない分だけ Boltzmann の値からずれる。Z1(2β)=q/(1−q2)Z_1(2\beta)=q/(1-q^2)、Z1(β)2=q/(1−q)2Z_1(\beta)^2=q/(1-q)^2 から r=(1−q)/(1+q)=tanh⁡(βℏω/2)r=(1-q)/(1+q)=\tanh(\beta\hbar\omega/2) で、kBT=ℏωk_{\mathrm B} T=\hbar\omega では r=0.462r=0.462 と大きく、r2r^2 の項が無視できない。実際、2つの値の平均は 2.395 ℏω2.395\,\hbar\omega で、Boltzmann の 2.164 ℏω2.164\,\hbar\omega と違う。交換の補正は rr が小さい高温でだけ ±\pm について対称になり、そのとき平均が Boltzmann の値に近づく。

この節の Fock 空間の側の計算は、粒子数を決めた(カノニカルな)和である。粒子数を固定しない和にすると占有数がモードごとに独立になり、Bose 分布と Fermi 分布が出る。それは 第6部第5章で扱う。

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