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凝縮体の巨視的波動関数と Gross–Pitaevskii 方程式

2026年10月17日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第3章 量子流体:渦の量子化と Gross–Pitaevskii 方程式の流体形
目次
  1. 積の波動関数と接触相互作用
  2. 変分で GP 方程式を導く
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第7部 第3章 §7.3.1 ★★ 多数のボース粒子が同じ状態に入った凝縮体を、粒子数密度に規格化した1つの複素関数で書き、その方程式を変分で導く

第7部第1章(第7部第1章)では、1粒子の波動関数を極形式 ψ=ρ eiS/ℏ\psi=\sqrt\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} に書き、Schrödinger 方程式を確率密度 ρ\rho と速度場 v=∇S/m\bm{v}=\nabla S/m の流体の方程式に書き直した。そこでの流体は「1個の粒子を何度も測ったときの統計」の流れで、その流れそのものを1回の実験で目にすることはできない。また第7部第1章の終わりで見たように、多粒子の波動関数を同じ形に書くと、流体は 3 次元の空間でなく 3N3N 次元の配位空間に住むことになる(この限界は第7部第6章(第7部第6章)で扱う)。

この2つの事情が両方とも変わる場面がある。多数のボース粒子がほぼ全部同じ1粒子状態 ϕ(r)\phi(\bm{r}) に入っているBose–Einstein 凝縮体では、ψ(r,t)=N ϕ(r,t)\psi(\bm{r},t)=\sqrt N\,\phi(\bm{r},t) と置くと ∣ψ∣2\lvert \psi\rvert ^2 は本物の粒子数密度 n(r,t)n(\bm{r},t) になり、1回の実験で写真に撮れる量になる。しかも ψ\psi は 3 次元の空間の関数のままである。ψ\psi の従う方程式が Gross–Pitaevskii(GP)方程式で、それを極形式に書けば、第7部第1章の Madelung 方程式に粒子間の相互作用による圧力が1項加わった、本物の流体の方程式になる。第7部第1章の同値性の定理で要請として置いた循環の量子化条件は、ここで初めて実験で直接確かめられる主張になる。超流動ヘリウムと原子気体の凝縮体の中の量子渦は、循環が h/mh/m の整数倍しかとれないことの目に見える証拠である。

この章は、部の型(出発点の要請 → 基本の対象 → 基準との同値 → 共通例題 → 得意な問題 → 限界)のうち「この構成が得意な問題」を受け持つ。第1節で GP 方程式を平均場の変分として導き、第2節でそれを流体の形に直して、圧力・癒し長・Thomas–Fermi 近似を出す。第3節は流体を線形化して音波と Bogoliubov の分散を導き、Landau の臨界速度へ進む。第4節で循環の量子化から量子渦の構造とエネルギーを求め、第5節で回る容器の中の渦の数(Feynman の規則)と、荷電した凝縮体である超伝導体の磁束の量子化を扱う。第6節の橋では、GP 方程式が第二量子化の場の演算子の Heisenberg 方程式からどう出るかを示し、第8部・第10部へのつながりを並べる。共通例題①は、相互作用を 00 にした極限で第2節に現れる。

積の波動関数と接触相互作用

質量 mm のボース粒子 NN 個が外のポテンシャル V(r)V(\bm{r}) の中にいて、2体の相互作用 U(ri−rj)U(\bm{r}_i-\bm{r}_j) を及ぼし合うとする。ハミルトニアンは

H^N=∑i=1N(−ℏ22m∇i2+V(ri))+∑i<jU(ri−rj)(7.3.1)\hat H_N=\sum_{i=1}^N\Bigl(-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla_i^2+V(\bm{r}_i)\Bigr)+\sum_{i<j}U(\bm{r}_i-\bm{r}_j)\tag{7.3.1}

である。極低温の希薄な原子気体では、粒子どうしの距離が相互作用の到達距離よりずっと長く、2つの粒子の衝突は低エネルギーの s 波の散乱だけで決まる。そのため、相互作用の細かい形は散乱長 asa_{\mathrm s} という1つの長さにまとめられ、同じ散乱長を与える接触相互作用

U(r)=g δ(3)(r),g=4πℏ2asm(7.3.2)U(\bm{r})=g\,\delta^{(3)}(\bm{r}),\qquad g=\frac{4\pi\hbar^2a_{\mathrm s}}{m}\tag{7.3.2}

に置き換えてよい。as>0a_{\mathrm s}>0 が斥力で、この章では斥力の場合だけを扱う(引力の凝縮体は粒子数が多いと潰れる)。gg の式は、接触相互作用 g δ(3)(r)g\,\delta^{(3)}(\bm{r}) の散乱を Born 近似で計算したとき散乱長が asa_{\mathrm s} になるように選んだ強さで、asa_{\mathrm s} と gg を結ぶ換算と読めばよい。

凝縮体を最も簡単に書く試行関数は、NN 個の粒子がすべて同じ規格化された1粒子状態 ϕ\phi に入った積

Ψ(r1,…,rN)=∏i=1Nϕ(ri),∫∣ϕ∣2d3r=1(7.3.3)\Psi(\bm{r}_1,\dots,\bm{r}_N)=\prod_{i=1}^N\phi(\bm{r}_i),\qquad\int\lvert \phi\rvert ^2\mathrm{d}^3r=1\tag{7.3.3}

である。ボース粒子なので積はそのまま対称で、対称化の手間は要らない。この Ψ\Psi で (7.3.1) の期待値をとると、1体の項は粒子ごとに同じ値を NN 回、2体の項は N(N−1)/2N(N-1)/2 個の対が同じ値を与え、

⟨Ψ∣H^N∣Ψ⟩=N∫(ℏ22m∣∇ϕ∣2+V∣ϕ∣2)d3r+N(N−1)2 g∫∣ϕ∣4d3r\langle \Psi | \hat H_N | \Psi \rangle =N\int\Bigl(\frac{\hbar^2}{2m}\lvert \nabla\phi\rvert ^2+V\lvert \phi\rvert ^2\Bigr)\mathrm{d}^3r+\frac{N(N-1)}{2}\,g\int\lvert \phi\rvert ^4\mathrm{d}^3r

となる。N≫1N\gg1 で N−1N-1 を NN に置き換え、巨視的波動関数 ψ=N ϕ\psi=\sqrt N\,\phi(∫∣ψ∣2d3r=N\int\lvert \psi\rvert ^2\mathrm{d}^3r=N)で書き直すと、

E[ψ]=∫(ℏ22m∣∇ψ∣2+V∣ψ∣2+g2∣ψ∣4)d3r(7.3.4)E[\psi]=\int\Bigl(\frac{\hbar^2}{2m}\lvert \nabla\psi\rvert ^2+V\lvert \psi\rvert ^2+\frac g2\lvert \psi\rvert ^4\Bigr)\mathrm{d}^3r\tag{7.3.4}

を得る。これを GP のエネルギー汎関数と呼ぶ。n(r)=∣ψ(r)∣2n(\bm{r})=\lvert \psi(\bm{r})\rvert ^2 は、凝縮体の粒子数密度そのものである。

変分で GP 方程式を導く

粒子数 ∫∣ψ∣2=N\int\lvert \psi\rvert ^2=N を保ったまま E[ψ]E[\psi] を最小にする。Lagrange の未定乗数を μ\mu として E[ψ]−μ∫∣ψ∣2E[\psi]-\mu\int\lvert \psi\rvert ^2 の変分をとる。ψ\psi と ψ∗\psi^* を独立に動かしてよい(実部と虚部を独立に動かすのと同じ)ので、ψ∗\psi^* についての汎関数微分を 00 と置き、∫∣∇ψ∣2\int\lvert \nabla\psi\rvert ^2 の項は部分積分して

−ℏ22m∇2ψ+Vψ+g∣ψ∣2ψ=μψ(7.3.5)-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\psi+V\psi+g\lvert \psi\rvert ^2\psi=\mu\psi\tag{7.3.5}

を得る。これが時間によらない GP 方程式である。1粒子の Schrödinger 方程式に、ほかの N−1N-1 個の粒子が平均としてつくるポテンシャル gn(r)g n(\bm{r}) が加わった形をしている。未定乗数 μ\mu は、(7.3.5) に ψ∗\psi^* を掛けて積分すると μN=E+g2∫∣ψ∣4\mu N=E+\frac g2\int\lvert \psi\rvert ^4 となり、1粒子あたりのエネルギー E/NE/N とは相互作用の分だけ違う。変分の解で NN を変えると dE/dN=μ\mathrm{d} E/\mathrm{d} N=\mu が成り立つ(Lagrange の未定乗数は束縛条件の値に対する最小値の変化率である)ので、μ\mu は化学ポテンシャルである。

時間変化は、作用 ∫dt[∫iℏ ψ∗∂tψ d3r−E[ψ]]\int\mathrm{d} t\bigl[\int\mathrm{i}\hbar\,\psi^*\partial_t\psi\,\mathrm{d}^3r-E[\psi]\bigr] を ψ∗\psi^* で変分して

iℏ ∂tψ=−ℏ22m∇2ψ+Vψ+g∣ψ∣2ψ(7.3.6)\mathrm{i}\hbar\,\partial_t\psi=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\psi+V\psi+g\lvert \psi\rvert ^2\psi\tag{7.3.6}

と書く。定常解は ψ(r,t)=ψ(r)e−iμt/ℏ\psi(\bm{r},t)=\psi(\bm{r})\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\mu t/\hbar} で、位相は時間とともに μ/ℏ\mu/\hbar の速さで回る(エネルギー E/NE/N でなく μ\mu で回ることに注意する)。(7.3.6) は ∫∣ψ∣2\int\lvert \psi\rvert ^2 と E[ψ]E[\psi] を保存する。g=0g=0 と置き、ψ\psi を N\sqrt N で割れば、1粒子の Schrödinger 方程式そのものに戻る。

一様な凝縮体

V=0V=0 の体積 V\mathcal V の箱に密度 nn で一様に広がった凝縮体では、ψ=n e−iμt/ℏ\psi=\sqrt n\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\mu t/\hbar} が (7.3.6) を満たし、μ=gn\mu=gn である。エネルギーは E=gN2/(2V)E=gN^2/(2\mathcal V) なので、μ=∂E/∂N=gn\mu=\partial E/\partial N=gn、圧力は Pint=−∂E/∂V=gn2/2P_{\mathrm{int}}=-\partial E/\partial\mathcal V=gn^2/2 となる。この圧力は粒子の運動からでなく相互作用から生じるもので、絶対零度でも残る。体積を V\mathcal V と書いたのは、ポテンシャル VV と区別するためである。

GP 方程式は、積の試行関数 (7.3.3) という平均場の近似で得た。この近似がどの極限で正しいかは数学で答えが出ている。E. H. Lieb、R. Seiringer、J. Yngvason は、斥力の希薄な気体で N→∞N\to\infty、NasNa_{\mathrm s} を一定(罠の大きさを単位にとる)に保つ極限で、H^N\hat H_N の基底エネルギーを NN で割ったものと粒子数密度が GP 汎関数の最小値と最小解に収束することを証明した(E. H. Lieb, R. Seiringer, J. Yngvason, Phys. Rev. A 61, 043602 (2000))。時間発展については、L. Erdős、B. Schlein、H.-T. Yau が、凝縮した初期状態から出発すると多体の1体密度行列が (7.3.6) の解に収束し続けることを示した(L. Erdős, B. Schlein, H.-T. Yau, Ann. of Math. 172, 291 (2010))。どちらでも、gg は相互作用 UU の Born 近似の積分でなく真の散乱長で決まることが要点で、(7.3.2) の置き換えは極限の中で正当化される。GP 方程式の名前は、渦の構造を調べるために同じ方程式を独立に書いたE. P. Gross(Nuovo Cimento 20, 454 (1961))と L. P. Pitaevskii(Sov. Phys. JETP 13, 451 (1961))による。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの N→∞N\to\infty、NasNa_{\mathrm s} 一定(希薄極限。凝縮から外れる粒子の割合が 00 へ) | 証明 条件付き(斥力で短距離の相互作用。基底状態は Lieb–Seiringer–Yngvason 2000、時間発展は凝縮した初期状態から Erdős–Schlein–Yau 2010) | 行き先 近似の数理 第6章

例題 7.3.1 原子気体の凝縮体の相互作用の大きさ ★★

オリジナル質量 m=86.909 um=86.909\,\mathrm{u}(87{}^{87}Rb の原子の質量)の原子が、散乱長 as=5.0 nma_{\mathrm s}=5.0\,\mathrm{nm}、密度 n=1.0×1020 m−3n=1.0\times10^{20}\,\mathrm{m^{-3}} で一様に凝縮しているとする(散乱長と密度は、アルカリ原子の凝縮体の典型的な桁に合わせて置いた値である)。

  1. 結合定数 gg と化学ポテンシャル μ=gn\mu=gn を求め、μ/kB\mu/ k_{\mathrm B} を温度の単位で表せ。
  2. 粒子どうしの平均の間隔 n−1/3n^{-1/3} と asa_{\mathrm s} を比べ、気体が希薄(nas3≪1na_{\mathrm s}^3\ll1)であることを確かめよ。
解答

(1) g=4πℏ2as/mg=4\pi\hbar^2a_{\mathrm s}/m に ℏ=1.0546×10−34 J s\hbar=1.0546\times10^{-34}\,\mathrm{J\,s}、m=1.4432×10−25 kgm=1.4432\times10^{-25}\,\mathrm{kg} を入れるとg=4π×(1.1121×10−68)×(5.0×10−9)/(1.4432×10−25)=4.84×10−51 J m3g=4\pi\times(1.1121\times10^{-68})\times(5.0\times10^{-9})/(1.4432\times10^{-25})=4.84\times10^{-51}\,\mathrm{J\,m^3}。μ=gn=4.84×10−31 J\mu=gn=4.84\times10^{-31}\,\mathrm J で、kB=1.3806×10−23 J/Kk_{\mathrm B}=1.3806\times10^{-23}\,\mathrm{J/K} で割ると μ/kB=3.5×10−8 K=35 nK\mu/ k_{\mathrm B}=3.5\times10^{-8}\,\mathrm K=35\,\mathrm{nK} となる。1粒子あたりの相互作用のエネルギーは数十 nK の桁で、凝縮体を作る温度(数百 nK 以下)と同じ桁である。

(2) n−1/3=(1020)−1/3 m=2.2×10−7 m=0.22 μmn^{-1/3}=(10^{20})^{-1/3}\,\mathrm m=2.2\times10^{-7}\,\mathrm m=0.22\,\mu\mathrm m で、as=5 nma_{\mathrm s}=5\,\mathrm{nm} の約 40 倍である。nas3=1020×1.25×10−25=1.25×10−5≪1na_{\mathrm s}^3=10^{20}\times1.25\times10^{-25}=1.25\times10^{-5}\ll1 なので、気体は希薄で、平均場の近似の条件を満たす。相互作用のエネルギーが温度と同じ桁なのに気体が希薄であるのは、極低温で粒子の運動エネルギーが極めて小さいためである。

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