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状態:正値で規格化された線形汎関数

2026年10月17日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第8部 第1章 観測量の代数から始める:C*代数と状態
目次
  1. 基本の不等式
  2. 行列代数の上の状態は密度行列
  3. 純粋状態と混合状態
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第8部 第1章 §8.1.4 ★★★ 要請 (A2) の対象の性質。行列代数の上の状態は密度行列と1対1で、純粋状態は凸集合の端点になる

基本の不等式

状態 ω\omega の定義は正値性と規格化の2つだけだが、そこから次の性質が出る。

命題 8.1.6(状態の基本の性質 ★★★)

状態 ω\omega と A,B∈AA,B\in\mathfrak A について次が成り立つ。

  1. (1) ω(B∗A)=ω(A∗B)‾\omega(B^*A)=\overline{\omega(A^*B)}。とくに ω(A∗)=ω(A)‾\omega(A^*)=\overline{\omega(A)} で、自己共役な AA の期待値は実数である。
  2. (2) Cauchy–Schwarz の不等式 ∣ω(B∗A)∣2≤ω(A∗A) ω(B∗B)\lvert \omega(B^*A)\rvert ^2\le\omega(A^*A)\,\omega(B^*B)。
  3. (3) ∣ω(A)∣≤∥A∥\lvert \omega(A)\rvert \le\lVert A\rVert。したがって ω\omega は連続で、∥ω∥=ω(1)=1\lVert \omega\rVert =\omega(1)=1。
証明

(1)(2) 任意の λ∈C\lambda\in\mathbb{C} について正値性から 0≤ω((A+λB)∗(A+λB))=ω(A∗A)+λ ω(A∗B)+λ‾ ω(B∗A)+∣λ∣2ω(B∗B)0\le\omega\bigl((A+\lambda B)^*(A+\lambda B)\bigr) =\omega(A^*A)+\lambda\,\omega(A^*B)+\overline\lambda\,\omega(B^*A)+\lvert \lambda\rvert ^2\omega(B^*B)。右辺が λ=1\lambda=1 と λ=i\lambda=\mathrm{i} で実数であることから、ω(A∗B)+ω(B∗A)\omega(A^*B)+\omega(B^*A) と i ω(A∗B)−i ω(B∗A)\mathrm{i}\,\omega(A^*B)-\mathrm{i}\,\omega(B^*A) がともに実数になり、(1) が出る。B=1B=1 とおけば ω(A∗)=ω(A)‾\omega(A^*)=\overline{\omega(A)}。次に ω(B∗B)>0\omega(B^*B)>0 のときλ=−ω(B∗A)/ω(B∗B)\lambda=-\omega(B^*A)/\omega(B^*B) を代入すると、(1) を使って 0≤ω(A∗A)−∣ω(B∗A)∣2/ω(B∗B)0\le\omega(A^*A)-\lvert \omega(B^*A)\rvert ^2/\omega(B^*B) となり (2) を得る(ω(B∗B)=0\omega(B^*B)=0 のときは λ\lambda を実数倍して大きくとれば ω(B∗A)=0\omega(B^*A)=0 が出る)。

(3) まず自己共役な CC について ω(C)≤∥C∥\omega(C)\le\lVert C\rVert を示す。∥C∥1−C\lVert C\rVert 1-C は自己共役で、スペクトルは∥C∥−σ(C)⊂[0,2∥C∥]\lVert C\rVert -\sigma(C)\subset[0,2\lVert C\rVert ] なので正の元であり、ω(∥C∥1−C)≥0\omega(\lVert C\rVert 1-C)\ge0 から ω(C)≤∥C∥\omega(C)\le\lVert C\rVert。これを C=A∗AC=A^*A に使い、(2) で B=1B=1 とおくと ∣ω(A)∣2≤ω(1) ω(A∗A)≤∥A∗A∥=∥A∥2\lvert \omega(A)\rvert ^2\le\omega(1)\,\omega(A^*A)\le\lVert A^*A\rVert =\lVert A\rVert ^2。最後の等号は C*条件 (8.1.3) である。

(3) の証明では C条件をそのまま使った。期待値が観測量の大きさを超えないという当然の性質が、C条件から出てくる。

(A3) の「値の分布」が確率分布であることも、ここで確かめられる。自己共役な AA に対し、ω\omega を C∗(A)≅C(σ(A))C^*(A)\cong C(\sigma(A)) に制限すると、C(σ(A))C(\sigma(A)) の上の正値で規格化された線形汎関数になる。Riesz–Markov の表現定理により、そのような汎関数はσ(A)\sigma(A) の上の確率測度 μA\mu_A による積分 ω(f(A))=∫σ(A)f(λ) dμA(λ)\omega(f(A))=\int_{\sigma(A)}f(\lambda)\,\mathrm{d}\mu_A(\lambda) に限られる。μA\mu_A が「AA を測ったときの値の分布」であり、有限次元なら μA({a})=ω(Pa)\mu_A(\{a\})=\omega(P_a) である。

行列代数の上の状態は密度行列

定理 8.1.7(Mn(C)M_n(\mathbb{C}) の状態 ★★★)

Mn(C)M_n(\mathbb{C}) の上の状態 ω\omega に対し、ρ^≥0\hat\rho\ge0、Tr⁡ρ^=1\operatorname{Tr}\hat\rho=1 を満たす行列 ρ^\hat\rho がただ1つあって

ω(A)=Tr⁡(ρ^A)(A∈Mn(C))(8.1.6)\omega(A)=\operatorname{Tr}(\hat\rho A)\qquad(A\in M_n(\mathbb{C}))\tag{8.1.6}

と書ける。逆に、そのような ρ^\hat\rho から (8.1.6) で定めた ω\omega は状態である。

証明

行列単位 Eij≔∣i⟩⟨j∣E_{ij}\coloneqq| i \rangle \langle j | を使い、ρ^\hat\rho の成分を ρij≔ω(Eji)\rho_{ij}\coloneqq\omega(E_{ji}) で定める。A=∑ijAijEijA=\sum_{ij}A_{ij}E_{ij} と展開すると ω(A)=∑ijAijρji=Tr⁡(ρ^A)\omega(A)=\sum_{ij}A_{ij}\rho_{ji}=\operatorname{Tr}(\hat\rho A) となる。エルミート性:Eji∗=EijE_{ji}^*=E_{ij} と命題 8.1.6(1) から ρji=ω(Eij)=ω(Eji)‾=ρij‾\rho_{ji}=\omega(E_{ij})=\overline{\omega(E_{ji})}=\overline{\rho_{ij}}。正値性:任意のベクトル vv と単位ベクトル ee について B=∣e⟩⟨v∣B=| e \rangle \langle v | とおくと B∗B=∣v⟩⟨v∣B^*B=| v \rangle \langle v | なので、⟨v∣ρ^∣v⟩=Tr⁡(ρ^∣v⟩⟨v∣)=ω(B∗B)≥0\langle v | \hat\rho | v \rangle =\operatorname{Tr}(\hat\rho| v \rangle \langle v |)=\omega(B^*B)\ge0。規格化:Tr⁡ρ^=ω(1)=1\operatorname{Tr}\hat\rho=\omega(1)=1。一意性:Tr⁡(ρ^A)=Tr⁡(ρ^′A)\operatorname{Tr}(\hat\rho A)=\operatorname{Tr}(\hat\rho'A) がすべての A=EjiA=E_{ji} で成り立てば成分がすべて一致する。逆向きは、Tr⁡(ρ^B∗B)=∑kpk∥B∣k⟩∥2≥0\operatorname{Tr}(\hat\rho B^*B)=\sum_kp_k\lVert B| k \rangle \rVert ^2\ge0(ρ^=∑kpk∣k⟩⟨k∣\hat\rho=\sum_kp_k| k \rangle \langle k | と固有値分解した)と Tr⁡ρ^=1\operatorname{Tr}\hat\rho=1 から出る。

この定理により、有限次元では「状態=期待値の汎関数」と「状態=密度行列」は同じものになる。第4部で導入した密度行列(第4部第1章)は、代数的な構成では定理として出てくる。無限次元の B(H)B(\mathcal{H}) では、Tr⁡(ρ^A)\operatorname{Tr}(\hat\rho A) の形に書ける状態(正規状態)のほかに、その形に書けない状態もある。無限系では後者が重要になることを第8部第3章・第4章で見る。

純粋状態と混合状態

状態の全体は凸集合である。ω1,ω2\omega_1,\omega_2 が状態で 0≤λ≤10\le\lambda\le1 なら、λω1+(1−λ)ω2\lambda\omega_1+(1-\lambda)\omega_2 も正値性と規格化を満たす。2つの異なる状態の真の凸結合(0<λ<10<\lambda<1)に書けない状態を純粋状態、書ける状態を混合状態と呼ぶ。純粋状態は凸集合の端点である。

量子ビットでは、状態は ρ^=12(1+r⋅σ)\hat\rho=\tfrac12(1+\bm{r}\cdot\bm{\sigma}) と書け、Tr⁡ρ^=1\operatorname{Tr}\hat\rho=1、det⁡ρ^=14(1−∣r∣2)\det\hat\rho=\tfrac14(1-\lvert \bm{r}\rvert ^2) なので固有値は 12(1±∣r∣)\tfrac12(1\pm\lvert \bm{r}\rvert ) である。正値性 ρ^≥0\hat\rho\ge0 は ∣r∣≤1\lvert \bm{r}\rvert \le1 と同値で、状態の全体は単位球(Bloch 球)になる。端点は球面 ∣r∣=1\lvert \bm{r}\rvert =1 の点で、これがランク1の射影 ∣ψ⟩⟨ψ∣| \psi \rangle \langle \psi |、つまり状態ベクトルにあたる。球の内部の点は無数の仕方で端点の凸結合に書ける。たとえば中心 r=0\bm{r}=0 は σx\sigma_x の固有状態2つの等重率の混合とも、σz\sigma_z の固有状態2つの等重率の混合とも書ける。

古典と比べると違いがはっきりする。可換な代数 Cn\mathbb{C}^n(nn 点の上の関数)では、eke_k を kk 番目の点だけで 11 になる関数とすると、状態は確率ベクトル pk=ω(ek)p_k=\omega(e_k) と1対1で、状態の全体は n−1n-1 次元の単体である。端点は1点に集中した測度 δk\delta_k で、内部の点を端点の凸結合に書く仕方はただ1通りである。さらに古典の純粋状態 δk\delta_k では、すべての観測量 ff についてδk(f2)=f(k)2=δk(f)2\delta_k(f^2)=f(k)^2=\delta_k(f)^2 となり、分散が 00 になる。量子ビットではそうならない。

図

図 8.1.1 状態の全体が作る凸集合。(a)(b) 可換な代数では単体になり、端点(黒丸)は有限個で、内部の点(重心など)を端点の凸結合に書く仕方は1通り。(c) 量子ビットの代数では球になり、球面のすべての点が端点(純粋状態)である。中心の点は点線で示したどの直径の両端の等重率の混合としても書ける。

例題 8.1.4 純粋状態でも分散は消えない ★★★

オリジナル量子ビットの状態 ω\omega で、r=(ω(σx),ω(σy),ω(σz))\bm{r}=(\omega(\sigma_x),\omega(\sigma_y),\omega(\sigma_z)) とする。

  1. (1) Var σi≔ω(σi2)−ω(σi)2\mathrm{Var}\,\sigma_i\coloneqq\omega(\sigma_i^2)-\omega(\sigma_i)^2 について ∑iVar σi=3−∣r∣2\sum_{i}\mathrm{Var}\,\sigma_i=3-\lvert \bm{r}\rvert ^2 を示せ。
  2. (2) 例題 8.1.1 の状態 r=(0.6,0,0.8)\bm{r}=(0.6,0,0.8) が純粋状態であることを確かめ、3つの分散を求めよ。
  3. (3) 量子ビットのどの状態も、すべての観測量について分散 00 にはならないことを示せ。
解答

(1) σi2=1\sigma_i^2=1 なので ω(σi2)=1\omega(\sigma_i^2)=1。したがって Var σi=1−ri2\mathrm{Var}\,\sigma_i=1-r_i^2 で、和は 3−∣r∣23-\lvert \bm{r}\rvert ^2。

(2) ∣r∣2=0.36+0+0.64=1\lvert \bm{r}\rvert ^2=0.36+0+0.64=1 なので球面上の点、つまり純粋状態である。分散はVar σx=1−0.36=0.64\mathrm{Var}\,\sigma_x=1-0.36=0.64、Var σy=1\mathrm{Var}\,\sigma_y=1、Var σz=1−0.64=0.36\mathrm{Var}\,\sigma_z=1-0.64=0.36 で、和は 22。

(3) ∣r∣≤1\lvert \bm{r}\rvert \le1 なので (1) の和は 22 以上であり、3つの分散のどれかは正である。古典の純粋状態 δk\delta_k ではすべての分散が 00 だったので、ここが可換な代数と非可換な代数の分かれ目になる。非可換性だけから「純粋状態でも値が確定しない観測量がある」ことが出た。

木下の勉強ステータス

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