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出てくるもの1:輸送係数の行列

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第3章 熱電効果と Wiedemann–Franz
目次
  1. 3つの積分
  2. 4つの係数
  3. Onsager の相反定理
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部 第3章 §4.3.2 ★★★ 電流と熱流は電場と温度勾配の両方に比例し、係数は3つの積分 K0,K1,K2\mathcal K_0,\mathcal K_1,\mathcal K_2 で書ける。非対角の2つは同じ積分で、これが Onsager の相反定理である

3つの積分

例題 4.3.1 の計算を電場も含めて一般にやる。立方対称の結晶で、

Kn≔∫−∞∞(−∂f0∂ε)(ε−μ)n σ(ε) dε(n=0,1,2)(4.3.8)\mathcal K_n\coloneqq\int_{-\infty}^{\infty}\left(-\frac{\partial f_0}{\partial \varepsilon }\right)(\varepsilon -\mu)^n\,\sigma(\varepsilon )\,\mathrm{d}\varepsilon \qquad(n=0,1,2)\tag{4.3.8}

と置く。(4.3.5) を (4.3.6) へ入れて整理すると

J=K0 E′+K1eT∇T,JQ=−K1eE′−K2e2T∇T(4.3.9)\bm{J}=\mathcal K_0\,\bm{E}'+\frac{\mathcal K_1}{eT}\nabla T,\qquad \bm{J}_Q=-\frac{\mathcal K_1}{e}\bm{E}'-\frac{\mathcal K_2}{e^2T}\nabla T\tag{4.3.9}

になる。電流の式の第1項は電場で押された電子、第2項は例題 4.3.1 で見た上下の電子の流れの差である。熱流の式の第1項は電場で動いた電子が運ぶ熱、第2項は温度勾配による熱の流れである。K0\mathcal K_0 はほぼ σ(μ)\sigma(\mu)、K2\mathcal K_2 は σ(ε)\sigma(\varepsilon ) を Fermi 準位のまわり kBTk_{\mathrm B} T の幅で (ε−μ)2(\varepsilon -\mu)^2 の重みをつけて平均したもの、K1\mathcal K_1 は σ(ε)\sigma(\varepsilon ) の上下の非対称さを測る量である。

4つの係数

実験で測る係数は、(4.3.9) の電場と温度勾配のどちらか一方を止めて測る。

電気伝導度は温度勾配のないときの J=σE′\bm{J}=\sigma\bm{E}' の係数で、σ=K0\sigma=\mathcal K_0 である。

Seebeck 係数(熱電能)SS は、電流を流さない(開回路の)試料に温度差をつけたときに現れる電場の比である。(4.3.9) で J=0\bm{J}=\bm{0} と置くと

E′=S ∇T,S=−1eTK1K0(4.3.10)\bm{E}'=S\,\nabla T,\qquad S=-\frac{1}{eT}\frac{\mathcal K_1}{\mathcal K_0}\tag{4.3.10}

を得る。電流の式は J=σ(E′−S∇T)\bm{J}=\sigma(\bm{E}'-S\nabla T) と書き直せる。SS の符号はこの本の流儀で、電子が運ぶ(K1>0\mathcal K_1>0、Fermi 準位より上の電子の方が多く電気を運ぶ)とき負になる。温度差 ΔT\Delta T のある試料の両端に現れる電位差は SΔTS\Delta T の大きさである。

熱伝導率 κ\kappa は、電流を流さないときの JQ=−κ∇T\bm{J}_Q=-\kappa\nabla T の係数である。電流が 00 でも電場 E′=S∇T\bm{E}'=S\nabla T が残っているので、それを熱流の式に入れて

κ=1e2T(K2−K12K0)(4.3.11)\kappa=\frac{1}{e^2T}\left(\mathcal K_2-\frac{\mathcal K_1^2}{\mathcal K_0}\right)\tag{4.3.11}

となる。

Peltier 係数 Π\Pi は、温度を一様に保って電流を流したときに電流とともに運ばれる熱の比 JQ=ΠJ\bm{J}_Q=\Pi\bm{J} である。∇T=0\nabla T=\bm{0} で (4.3.9) の2式の比をとると

Π=−1eK1K0=TS(4.3.12)\Pi=-\frac{1}{e}\frac{\mathcal K_1}{\mathcal K_0}=TS\tag{4.3.12}

になる。異なる2つの金属の接合に電流 II を流すと、両側で Π\Pi が違うので接合に熱の流れの過不足 (ΠA−ΠB)I(\Pi_A-\Pi_B)I が生じ、接合が温まるか冷える。これが Peltier 効果である。

Onsager の相反定理

(4.3.12) の Π=TS\Pi=TS は偶然でない。(4.3.9) で、電流の式の温度勾配の係数と、熱流の式の電場の係数が、どちらも同じ積分 K1\mathcal K_1 で書けていることによる。

この対応を一般の形で述べるのが Onsager の相反定理(L. Onsager (1931), Phys. Rev. 37, 405)である。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部第9章で、平衡のまわりの揺らぎと時間反転の対称性から、流れ JaJ_a と熱力学的な力 XbX_b の線形の関係 Ja=∑bLabXbJ_a=\sum_bL_{ab}X_b の係数が Lab=LbaL_{ab}=L_{ba}(磁場 B\bm{B} があれば Lab(B)=Lba(−B)L_{ab}(\bm{B})=L_{ba}(-\bm{B}))を満たすことを示した。このとき力は、エントロピーの生成率が ∑aJaXa\sum_aJ_aX_a の形になるように選ぶ必要がある。電流と熱流の組では、電流に共役な力は E′/T\bm{E}'/T、熱流に共役な力は ∇(1/T)=−∇T/T2\nabla(1/T)=-\nabla T/T^2 である。(4.3.9) をこの力で書き直すと

(JJQ)=(TK0−TK1/e−TK1/eTK2/e2)(E′/T∇(1/T))(4.3.13)\begin{pmatrix}\bm{J}\\ \bm{J}_Q\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}T\mathcal K_0 & -T\mathcal K_1/e\\ -T\mathcal K_1/e & T\mathcal K_2/e^2\end{pmatrix} \begin{pmatrix}\bm{E}'/T\\ \nabla(1/T)\end{pmatrix}\tag{4.3.13}

となり、行列はたしかに対称である。Boltzmann 方程式の計算はこの対称性を自動的に満たしていたことになる。逆に言うと、Π=TS\Pi=TS は緩和時間近似にも Boltzmann 方程式にもよらず、時間反転の対称性だけから出る関係である(Kelvin の第2関係と呼ぶ)。

例題 4.3.2 電場を止めて測る熱伝導率と、電流を止めて測る熱伝導率 ★★

オリジナル熱伝導率の測り方には2通りが考えられる。電流が流れないようにして測る κ\kappa((4.3.11))と、試料の両端を短絡して E′=0\bm{E}'=\bm{0} に保って測る κE′=0\kappa_{E'=0} である。

  1. (1) κE′=0\kappa_{E'=0} を Kn\mathcal K_n で書け。
  2. (2) 無次元の量 ZT≔S2σT/κZT\coloneqq S^2\sigma T/\kappa を使って κE′=0=κ(1+ZT)\kappa_{E'=0}=\kappa(1+ZT) を示せ。
  3. (3) 2つの熱伝導率の違いが生じる理由を、電流の有無で述べよ。
解答

(1) (4.3.9) で E′=0\bm{E}'=\bm{0} と置くと JQ=−K2e2T∇T\bm{J}_Q=-\frac{\mathcal K_2}{e^2T}\nabla T なので、κE′=0=K2/(e2T)\kappa_{E'=0}=\mathcal K_2/(e^2T) である。

(2) (4.3.10) から S2σT=K12e2T2K02K0T=K12e2TK0S^2\sigma T=\frac{\mathcal K_1^2}{e^2T^2\mathcal K_0^2}\mathcal K_0T=\frac{\mathcal K_1^2}{e^2T\mathcal K_0}。これと (4.3.11) を足すとκ+S2σT=K2e2T=κE′=0\kappa+S^2\sigma T=\frac{\mathcal K_2}{e^2T}=\kappa_{E'=0}。両辺を κ\kappa で割れば κE′=0/κ=1+S2σT/κ=1+ZT\kappa_{E'=0}/\kappa=1+S^2\sigma T/\kappa=1+ZT である。

(3) 短絡した試料では、温度勾配が J=−σS∇T\bm{J}=-\sigma S\nabla T の電流を流し、その電流が Peltier 係数の分の熱 ΠJ\Pi\bm{J} を余分に運ぶ。開回路では電流が流れないのでこの分が無い。差 S2σTS^2\sigma T は電子の流れが熱を運ぶ2つめの経路の大きさで、ZTZT はその経路が普通の熱伝導に比べてどれだけ大きいかを測る。4.3.4節で、熱電変換の効率も ZTZT で決まることを示す。金属では ZT∼10−4ZT\sim10^{-4}(例題 4.3.3)なので、2つの熱伝導率はほとんど区別できない。

ほかの巻では

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