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この章で選ぶもの:平衡の HH に −F(t)A-F(t)A を足す

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第9章 揺らぎと線形応答
目次
  1. 外力は Hamiltonian の1項
  2. 静的な感受率は揺らぎに等しい
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第9章 §3.9.1 ★★★ 外力は Hamiltonian の項 −FA-FA として入る。静かに一定の力をかけたときの応答(静的な感受率)は、力がないときの揺らぎ β Var(A)\beta\,\mathrm{Var}(A) に等しい

第3部のここまでの章は、平衡状態そのものを扱ってきた。カノニカル分布 ρeq∝e−βH\rho_{\mathrm{eq}}\propto\mathrm{e}^{-\beta H} は Liouville 方程式の定常解の1つで(第3部第1章・第3部第3章)、平衡の物理量はこの分布での平均として求まった。この章では、平衡にある系を外から弱く押したときに系がどう応えるかを問う。電場をかけたときの電流、力を加えたときの変位、磁場をかけたときの磁化が例である。

この章で選ぶのは、平衡の Hamiltonian HH に外力の項を1つ足した

HF(q,p,t)=H(q,p)−F(t) A(q,p)H_F(q,p,t)=H(q,p)-F(t)\,A(q,p)

である。F(t)F(t) は外から決めて与える時刻の関数(一般化された力)、AA はその力が直接つかむ物理量(一般化された座標)である。当てる道具は第3部第1章の Liouville 方程式と、第1部第11章の Poisson 括弧である(3.9.2節)。Liouville 方程式を FF の1次まで解くと、物理量 BB の応答が平衡の時間相関 ⟨A(0)B(t)⟩\langle A(0)B(t) \rangle の時間微分で書けることが分かる(久保の公式)。出てくるものは3つある。第一は、揺らぎのスペクトルとエネルギー吸収が同じ関数で決まるという揺動散逸定理である(3.9.3節)。第二は、時間反転について対称な Hamiltonian から摩擦がどうして現れるかの答えで、注目する座標に無数の振動子をつないで消去すると、摩擦と雑音が対になって出てくる(3.9.4節)。第三は、時間反転の対称性から輸送係数の行列が対称になるという Onsager の相反定理である(3.9.5節)。最後に、Einstein の関係・Johnson–Nyquist の雑音・量子力学の久保公式として授業で習った形と並べ(3.9.6節)、まとめと総合問題で終える。

記号の約束を先に書く。この章では外力に FF を使うので、Helmholtz の自由エネルギーは記号で書かず −kBTln⁡Z- k_{\mathrm B} T\ln Z と書く。相空間の点を Γ=(q,p)\Gamma=(q,p) とまとめ、Γ\Gamma から出発して時間 tt だけ HH(外力なし)で動かした点を φt(Γ)\varphi_t(\Gamma) と書く(第1部第12章)。物理量 AA の時刻 tt の値を A(t)≔A(φt(Γ))A(t)\coloneqq A(\varphi_t(\Gamma)) と書き、⟨⋯ ⟩\langle \cdots \rangle は初期点 Γ\Gamma をカノニカル分布 ρeq(Γ)=e−βH(Γ)/Z\rho_{\mathrm{eq}}(\Gamma)=\mathrm{e}^{-\beta H(\Gamma)}/Z で平均したものを表す。時間の Fourier 変換は記法の正本の流儀 f~(ω)=∫dt f(t) e+iωt\tilde f(\omega)=\int\mathrm{d} t\,f(t)\,\mathrm{e}^{+\mathrm{i}\omega t} に従う。この章には温度があるので、時間の長さに TT を使わない。

外力は Hamiltonian の1項

質量 mm の粒子に一様な力 FF をかけると、ポテンシャルに −Fq-Fq が足される。電荷 ee の粒子に一様な電場 EE をかけると −eEx-eEx が足され、双極子 d\bm{d} を持つ分子に電場 E\bm{E} をかけると −d⋅E-\bm{d}\cdot\bm{E} が足される。どの場合も、外から決めた数(力・電場)と系の物理量(位置・双極子)の積に負号をつけた項になっている。これを一般化して、外から加える量を F(t)F(t)、それがつかむ系の物理量を A(Γ)A(\Gamma) とし、

HF(Γ,t)=H(Γ)−F(t) A(Γ)(3.9.1)H_F(\Gamma,t)=H(\Gamma)-F(t)\,A(\Gamma)\tag{3.9.1}

を選ぶ。FF と AA の積がエネルギーの次元を持つように FF の単位を決める。AA が位置なら FF は力、AA が双極子なら FF は電場である。FF を一般化された力、AA をそれに共役な座標と呼ぶ。負号をつける理由は、F>0F>0 のとき AA を大きくした方がエネルギーが下がり、AA が FF の向きへ引かれるようにするためである。

この形の外力は Hamilton 方程式の中で力として働く。A=qA=q なら p˙=−∂HF/∂q=−∂H/∂q+F(t)\dot p=-\partial H_F/\partial q=-\partial H/\partial q+F(t) で、Newton の運動方程式に力 F(t)F(t) を足したものになる。外力を Hamiltonian の項として入れたので、外力があっても運動は Hamilton 方程式に従い、相空間の流れは体積を保つ(第3部第1章 の Liouville の定理は時刻を含む HH でも成り立つ)。この性質が 3.9.2節で Liouville 方程式をそのまま使える根拠になる。

静的な感受率は揺らぎに等しい

まず FF が時刻によらない一定値のときを考える。十分長く待てば、系は HFH_F のカノニカル分布 e−β(H−FA)/ZF\mathrm{e}^{-\beta(H-FA)}/Z_F に落ち着くと仮定する(どの分布に落ち着くかは Liouville 方程式だけでは決まらない。この仮定の位置づけは 第3部第3章 を参照)。このとき物理量 BB の平均は

⟨B⟩F=1ZF∫B e−β(H−FA) dΓ,ZF=∫e−β(H−FA) dΓ(3.9.2)\langle B \rangle _F=\frac{1}{Z_F}\int B\,\mathrm{e}^{-\beta(H-FA)}\,\mathrm{d}\Gamma,\qquad Z_F=\int\mathrm{e}^{-\beta(H-FA)}\,\mathrm{d}\Gamma\tag{3.9.2}

である。FF で微分して F=0F=0 とおくと、分子の微分から β⟨AB⟩\beta\langle AB \rangle、分母 ZFZ_F の微分から −β⟨A⟩⟨B⟩-\beta\langle A \rangle \langle B \rangle が出るので

χBAT≔∂⟨B⟩F∂F∣F=0=β(⟨AB⟩−⟨A⟩⟨B⟩)(3.9.3)\chi_{BA}^{\mathrm{T}}\coloneqq\frac{\partial \langle B \rangle _F}{\partial F}\Big|_{F=0}=\beta\bigl(\langle AB \rangle -\langle A \rangle \langle B \rangle \bigr)\tag{3.9.3}

を得る。添字の T は等温(isothermal)の頭文字で、温度を一定に保ったまま力をかけたときの感受率という意味である。B=AB=A とおけば χAAT=β Var(A)\chi_{AA}^{\mathrm T}=\beta\,\mathrm{Var}(A) で、力をかけたときに AA がどれだけ動くか(応答)は、力をかけないときに AA が自然にどれだけ揺らいでいるか(揺らぎ)に β\beta を掛けたものになる。分散は負にならないので、χAAT≥0\chi_{AA}^{\mathrm T}\ge0、つまり力の向きに AA が動くことも同時に分かる。

式 (3.9.3) の意味を物理の言葉で言い直しておく。揺らぎが大きい量とは、AA を少し変えてもエネルギーがあまり変わらない量である。そういう量は外から押したときにもよく動く。調和振動子 H=p2/(2m)+mω02q2/2H=p^2/(2m)+m\omega_0^2q^2/2 で A=B=qA=B=q とすると、等分配則 12mω02⟨q2⟩=12kBT\frac12m\omega_0^2\langle q^2 \rangle =\frac12 k_{\mathrm B} T(第3部第6章)から β⟨q2⟩=1/(mω02)\beta\langle q^2 \rangle =1/(m\omega_0^2) で、これはばねに一定の力 FF をかけたときの変位 F/(mω02)F/(m\omega_0^2) の係数そのものである。柔らかいばね(ω0\omega_0 が小さい)ほど熱揺らぎが大きく、同じ力でよく伸びる。

この章の残りでは、FF が時間とともに変わる場合に式 (3.9.3) を拡張する。時間に依存する応答では、揺らぎの大きさだけでなく、揺らぎが時間とともにどう消えていくか(時間相関)が応答を決めることになる。

例題 3.9.1 極性分子の気体の分極率 ★★

オリジナル双極子モーメントの大きさ d0d_0 を持つ剛体の分子が、温度 TT で自由に回転している。電場 E=E ez\bm{E}=E\,\bm{e}_z をかけると、Hamiltonian に −d⋅E=−d0Ecos⁡θ-\bm{d}\cdot\bm{E}=-d_0E\cos\theta が足される(θ\theta は双極子と zz 軸のなす角)。

  1. (1) 電場がないときの ⟨dz2⟩\langle d_z^2 \rangle を求め、式 (3.9.3) から分子1個の分極率 α=∂⟨dz⟩/∂E∣E=0\alpha=\partial\langle d_z \rangle /\partial E|_{E=0} を求めよ。
  2. (2) 電場がある場合の ⟨dz⟩\langle d_z \rangle を厳密に計算し、x=βd0Ex=\beta d_0E が小さいとき (1) に一致することを確かめよ。
  3. (3) d0=6.0×10−30 C md_0=6.0\times10^{-30}\,\mathrm{C\,m}、T=300 KT=300\,\mathrm K のとき α\alpha を求めよ。E=1.0×107 V m−1E=1.0\times10^{7}\,\mathrm{V\,m^{-1}} という強い電場でも、線形の近似の相対誤差がどの程度かを見積もれ。
解答

(1) 電場がないとき、双極子の向きは球面上に一様に分布する(回転の運動エネルギーは角度によらないので、角度の分布は球面の面積要素 sin⁡θ dθ dφ\sin\theta\,\mathrm{d}\theta\,\mathrm{d}\varphi に比例する)。したがって

⟨cos⁡2θ⟩=∫0πcos⁡2θsin⁡θ dθ∫0πsin⁡θ dθ=2/32=13,⟨dz2⟩=d023\langle \cos^2\theta \rangle =\frac{\int_0^\pi\cos^2\theta\sin\theta\,\mathrm{d}\theta}{\int_0^\pi\sin\theta\,\mathrm{d}\theta}=\frac{2/3}{2}=\frac13,\qquad \langle d_z^2 \rangle =\frac{d_0^2}{3}

で、⟨dz⟩=0\langle d_z \rangle =0 である。式 (3.9.3) で A=B=dzA=B=d_z、F=EF=E とおけば α=βd02/3\alpha=\beta d_0^2/3。

(2) 電場があるときの角度の分布は eβd0Ecos⁡θsin⁡θ\mathrm{e}^{\beta d_0E\cos\theta}\sin\theta に比例する。u=cos⁡θu=\cos\theta とおくと

⟨dz⟩=d0 ∫−11u exu du∫−11exu du=d0(coth⁡x−1x)≕d0 L(x),x=βd0E\langle d_z \rangle =d_0\,\frac{\int_{-1}^1u\,\mathrm{e}^{xu}\,\mathrm{d} u}{\int_{-1}^1\mathrm{e}^{xu}\,\mathrm{d} u}=d_0\Bigl(\coth x-\frac1x\Bigr)\eqqcolon d_0\,\mathcal L(x),\qquad x=\beta d_0E

で、L(x)\mathcal L(x) を Langevin 関数と呼ぶ。x→0x\to0 で展開すると L(x)=x/3−x3/45+O(x5)\mathcal L(x)=x/3-x^3/45+\mathcal{O}(x^5) なので、⟨dz⟩≈d0x/3=(βd02/3)E\langle d_z \rangle \approx d_0x/3=(\beta d_0^2/3)E となり (1) に一致する。

(3) α=d02/(3kBT)=(6.0×10−30)2/(3×1.381×10−23×300)=2.90×10−39 C m2 V−1\alpha=d_0^2/(3 k_{\mathrm B} T)=(6.0\times10^{-30})^2/(3\times1.381\times10^{-23}\times300)=2.90\times10^{-39}\,\mathrm{C\,m^2\,V^{-1}}。E=1.0×107 V m−1E=1.0\times10^7\,\mathrm{V\,m^{-1}} でも x=d0E/(kBT)=1.45×10−2x=d_0E/( k_{\mathrm B} T)=1.45\times10^{-2} で、展開の次の項と最初の項の比は (x3/45)/(x/3)=x2/15=1.4×10−5(x^3/45)/(x/3)=x^2/15=1.4\times10^{-5} である。分子1個の双極子のエネルギー d0Ed_0E が熱のエネルギー kBTk_{\mathrm B} T に比べて小さい限り、応答は外力の1次でよく近似することができる。線形応答の「外力が弱い」とは、この比 xx が小さいという意味である。

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