ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部 第1章 §5.1.4 ★★★ 速く変わる場には電子が追いつけず、遮蔽が起きなくなる。誘電関数の零点は電子気体全体の縦の振動(プラズモン)で、Coulomb 相互作用の長距離に及ぶ部分はこの高いエネルギーの集団運動に取り込まれる
高い振動数の極限
振動数が ω≫qvF のとき、式 (5.1.5) を ℏω で展開する。第2項を k→k−q と付け替えるとχ0=V1∑kσfk[ℏω−a1−ℏω−b1]、a=εk+q−εk、b=εk−εk−q と書ける。ℏω−a1=ℏω1+(ℏω)2a+(ℏω)3a2+(ℏω)4a3+⋯ を使うと、角かっこの中は(ℏω)2a−b+(ℏω)3a2−b2+(ℏω)4a3−b3+⋯ になる。a−b=ℏ2q2/m は k によらず、a2−b2 は Fermi 球について平均すると 0(k⋅q の奇関数)、a3−b3 の平均は mℏ2q2⋅53ℏ2q2vF2(q6 の項を除く)である。したがって
χ0(q,ω)≈mω2nq2[1+53ω2q2vF2+⋯],εr(q,ω)≈1−ω2ωp2[1+53ω2q2vF2],ωp2=ε0mne2(5.1.14)
を得る。q→0 の εr=1−ωp2/ω2 は、第4部第2章で Drude 模型から出した誘電関数で緩和時間を無限大にしたものと同じである。静的な極限では χ0<0 で遮蔽が起きたのに、高い振動数では χ0>0 になり、εr<1 と符号が逆になる。電子は質量を持つので、速く変わる力には慣性のために遅れて応え、集まるべき所から逆に離れる位相で動く。
プラズモン
外の電荷が無くても ϕ が 0 でない解がありうるのは、式 (5.1.8) で εr(q,ω)=0 のときである。これは電子気体が外から押されなくても自分で続ける振動、つまり電子の密度の縦波である。式 (5.1.14) を 0 とおいて ω2 について解き、q2 の1次まで残すと
ω(q)2≈ωp2+53vF2q2(5.1.15)
になる。q→0 の振動数は ωp で有限に残り、音波のように 0 へ行かない。電子全体が正の背景に対してずれると、ずれに比例する電場が全体に一様にかかり、ばねの定数が ne2/ε0 の振動子になるからである。この集団運動を量子化したものをプラズモンと呼ぶ。
Coulomb 相互作用の長距離に及ぶ部分(小さい q)の効果は、プラズモンの形で現れる。小さい q の電荷の揺らぎは、エネルギー ℏωp の集団運動としてしか存在できず、金属では ℏωp が εF と同じかそれ以上の大きさなので、低温・低エネルギーの性質には現れない。Fermi 面の近くの電子に残るのは、遮蔽された短距離の相互作用だけである。この役割分担が、次の節で電子を準粒子として扱える理由の1つになる。
粒子–正孔の連続帯と Landau 減衰
χ0 の虚部は、分母の ℏω+εk−εk+q が 0 になる所から出る。これは、エネルギー ℏω と運動量 ℏq を受け取って、Fermi 球の中の電子 k を外の k+q へ移す(粒子と正孔の対を1つ作る)過程である。εk+q−εk=mℏ2(k⋅q)+2mℏ2q2 で ∣k∣<kF だから、絶対零度でこの対が作れるのは
max(0, 2mℏ2q2−ℏvFq)≤ℏω≤ℏvFq+2mℏ2q2(5.1.16)
の範囲である(下限の 0 は、q<2kF なら Fermi 面の近くで小さなエネルギーの対が作れることによる)。この範囲を粒子–正孔の連続帯と呼ぶ。連続帯の外では χ0 は実数で、プラズモンは減衰しない。q を大きくするとプラズモンの分散 (5.1.15) は連続帯の上の縁 ℏvFq+ℏ2q2/(2m) に追いつき、その先ではプラズモンが1つの粒子–正孔対に崩れることができて、急に減衰する。これを Landau 減衰と呼ぶ。

図 5.1.3 アルミニウムの密度(rs/a0=2.07、ℏωp/εF=1.354)の電子気体の励起。灰色が粒子–正孔の連続帯 (5.1.16)、実線が小さい q の近似 (5.1.15)、点線が Lindhard 関数で εr=0 を数値で解いた RPA のプラズモン。近似は q=0.635kF、RPA の値は q=0.739kF で連続帯に入り、その先は Landau 減衰で鋭い励起でなくなる。
例題 5.1.4 アルミニウムのプラズモン ★★
オリジナルアルミニウムは fcc(格子定数 0.405nm、与えられた値)で、1原子あたり3個の伝導電子を持つ。
- (1) n, kF, εF, rs/a0 を求めよ。
- (2) ℏωp を求めよ。電子線のエネルギー損失の測定では、アルミニウムの体積のプラズモンは 15.3eV に見える(C. J. Powell and J. B. Swan (1959), Phys. Rev. 115, 869)。比を求めよ。
- (3) 近似 (5.1.15) を ℏω=ℏωp+Aq2 と書いたときの A を eVA˚2 で求めよ。
- (4) 近似 (5.1.15) が連続帯の上の縁に達する qc を kF 単位で求め、そのときの ℏω を eV で答えよ。
解答
(1) fcc の単位胞には4原子あるので n=4×3/(0.405×10−9)3=1.81×1029m−3。kF=(3π2n)1/3=1.75×1010m−1、εF=ℏ2kF2/(2m)=11.65eV、rs=(3/(4πn))1/3=2.07a0。
(2) ωp=ne2/(ε0m) から ℏωp=15.8eV。実測との比は 15.3/15.8=0.97 である。周期ポテンシャルも内殻の電子も無視した模型で、集団運動のエネルギーが 3% の範囲で合う。ℏωp/εF=1.354 で、プラズモンは、Fermi 面の近くの熱的な励起(kBT≈0.026eV)よりはるかに高い所にある。
(3) ω≈ωp+10ωp3vF2q2 から A=10ωp3ℏvF2。vF=ℏkF/m=2.02×106m/s を入れるとA=3.38eVA˚2。q=0.1A˚−1 で 0.034eV 上がる程度の、ゆるい分散である。
(4) x=q/kF、W=ℏω/εF とすると、ℏvFq=2xεF、ℏ2q2/(2m)=x2εF で、近似は W2=1.3542+512x2、上の縁は W=2x+x2。等しいとおいて数値で解くと x=0.635、W=1.674、ℏω=19.5eV である。Lindhard 関数で εr=0 を解いた RPA の値は x=0.739 で少し先になる(図 5.1.3)。波長にして 2π/qc≈0.6nm より短い電荷の揺らぎは、もはや集団運動として振る舞わない。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com