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出てくるもの1:Hund 則

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第5部 第2章 磁性 I:Hund 則と交換相互作用
目次
  1. 交換積分は正である
  2. Hund の3つの規則
  3. 有効磁子数と Curie 則
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部 第2章 §5.2.3 ★★★ 交換積分 KK は必ず正なので、直交する軌道の2電子は3重項のほうが 2K2K だけ低い。これが Hund の第1の規則の中身で、残りの2つの規則と合わせてイオンの基底状態の S,L,JS,L,J が決まり、Curie 則の有効磁子数になる

交換積分は正である

同じ原子の直交する2つの軌道 ϕa\phi_a、ϕb\phi_b に電子が1個ずつ入っているとする。1電子の部分は1重項でも3重項でも εa+εb\varepsilon _a+\varepsilon _b で同じなので、Coulomb の部分だけを比べればよい。例題 5.2.1 の空間の波動関数 12[ϕaϕb′±ϕbϕa′]\frac{1}{\sqrt2}[\phi_a\phi_b'\pm\phi_b\phi_a'](++ が1重項、−- が3重項)で Coulomb 斥力の期待値をとると、

ES=εa+εb+Vab+Kab,ET=εa+εb+Vab−Kab(5.2.9)E_S=\varepsilon _a+\varepsilon _b+V_{ab}+K_{ab},\qquad E_T=\varepsilon _a+\varepsilon _b+V_{ab}-K_{ab}\tag{5.2.9}

を得る(交換積分 KabK_{ab} は交差項から出る)。命題 5.2.1 の言葉では J=ET−ES=−2KabJ=E_T-E_S=-2K_{ab} で、Kab>0K_{ab}>0 なら3重項が低い。

命題 5.2.2(交換積分の正値性 ★★★)

式 (5.2.3) の交換積分は、どの2つの軌道についても Kab≥0K_{ab}\ge0 である。等号は ρab=ϕa∗ϕb\rho_{ab}=\phi_a^*\phi_b が恒等的に 0 のときに限る。

証明

ρab\rho_{ab} の Fourier 変換を ρ~(q)=∫ρab(r)e−iq⋅rd3r\tilde\rho(\bm{q})=\int\rho_{ab}(\bm{r})\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{r}}\mathrm{d}^3r とし、Coulomb ポテンシャルの Fourier 表示 14π∣r∣=∫d3q(2π)3eiq⋅rq2\frac{1}{4\pi\lvert \bm{r}\rvert }=\int\frac{\mathrm{d}^3q}{(2\pi)^3}\frac{\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{r}}}{q^2} を式 (5.2.3) に入れると、

Kab=e2ε0∫d3q(2π)3 ∣ρ~(q)∣2q2K_{ab}=\frac{e^2}{\varepsilon_0}\int\frac{\mathrm{d}^3q}{(2\pi)^3}\,\frac{\lvert \tilde\rho(\bm{q})\rvert ^2}{q^2}

となる。被積分関数は負にならないので Kab≥0K_{ab}\ge0 で、0 になるのは ρ~\tilde\rho が恒等的に 0、すなわち ρab\rho_{ab} が 0 のときに限る。

Coulomb 斥力の核 1/∣r−r′∣1/\lvert \bm{r}-\bm{r}'\rvert が、Fourier 空間で正の 1/q21/q^2 になる(正定値の核である)ことが証明の中身である。直交する軌道でも ρab\rho_{ab} 自体は 0 でない(積分すると 0 になるだけ)ので、KabK_{ab} は真に正である。物理の言葉では、3重項の空間の波動関数 ϕaϕb′−ϕbϕa′\phi_a\phi_b'-\phi_b\phi_a' は r=r′\bm{r}=\bm{r}' で 0 になり、平行なスピンの2電子は互いに近づきにくい。このため斥力の期待値が下がる。

Hund の3つの規則

同じ殻(ll の決まった 2l+12l+1 個の軌道)に nn 個の電子が入るとき、1電子のエネルギーはどの組み方でも同じで、準位を分けるのは Coulomb の部分と、そのあとのスピン軌道相互作用である。Coulomb の部分は全軌道角運動量 LL と全スピン SS ごとに決まる項(2S+1L^{2S+1}L と書く)に分かれ、その間隔は Slater 積分 FkF^k(動径の積分)で書ける。たとえば p2p^2 では

E(3P)=F0−5F2,E(1D)=F0+F2,E(1S)=F0+10F2(F0=F0, F2=125F2)(5.2.10)E(^3P)=F_0-5F_2,\qquad E(^1D)=F_0+F_2,\qquad E(^1S)=F_0+10F_2\qquad\Bigl(F_0=F^0,\ F_2=\tfrac{1}{25}F^2\Bigr)\tag{5.2.10}

で、縮退度は 9+5+1=15=(62)9+5+1=15=\binom62 である(15個の Slater 行列式で Coulomb の行列を作って対角化した。検算 scripts/verify_ch5-02.py)。F2>0F^2>0 なので、3重項の 3P^3P が最も低い。d2d^2 では3重項が2つあり、E(3F)=F0−8F2−9F4E(^3F)=F_0-8F_2-9F_4、E(3P)=F0+7F2−84F4E(^3P)=F_0+7F_2-84F_4(F2=F2/49F_2=F^2/49、F4=F4/441F_4=F^4/441)で、F2>5F4F_2>5F_4 なら LL の大きい 3F^3F が低い。

これらの計算を一般の殻へ広げた経験則が Hund 則である。

  1. (1) 全スピン SS が最大の項が最も低い。
  2. (2) その中で、全軌道角運動量 LL が最大の項が最も低い。
  3. (3) スピン軌道相互作用で項が J=∣L−S∣,…,L+SJ=\lvert L-S\rvert ,\dots,L+S の準位に分かれる。殻が半分より少なく詰まっていれば J=∣L−S∣J=\lvert L-S\rvert、半分より多ければ J=L+SJ=L+S が最も低い。

第1の規則の中身は命題 5.2.2 で、スピンがそろうと空間の波動関数が反対称になり、電子どうしが近づきにくくなる。第2の規則は、LL が大きいほど電子が同じ向きに原子核の周りを回り、互いに避け合える、という Coulomb 積分の性質である(d2d^2 の F2>5F4F_2>5F_4 は水素型の動径関数で満たされる)。第3の規則は、1つの項の中でスピン軌道相互作用が λL^⋅S^\lambda\hat{\bm{L}}\cdot\hat{\bm{S}} に置き換わり(Wigner–Eckart の定理)、

E(J)=λ2[J(J+1)−L(L+1)−S(S+1)],λ={+ζ/(2S)(半分より少ない)−ζ/(2S)(半分より多い)(5.2.11)E(J)=\frac\lambda2\bigl[J(J+1)-L(L+1)-S(S+1)\bigr],\qquad \lambda=\begin{cases}+\zeta/(2S)&(\text{半分より少ない})\\-\zeta/(2S)&(\text{半分より多い})\end{cases}\tag{5.2.11}

となることから従う(ζ>0\zeta>0 は動径の平均)。隣り合う準位の間隔は E(J)−E(J−1)=λJE(J)-E(J-1)=\lambda J で、これを Landé の間隔則と呼ぶ。半分より多く詰まった殻は、空いた席(正孔)を電荷 +e+e の粒子とみなすと ζ\zeta の符号が逆になる。

図

図 5.2.1 p2p^2 の配置(炭素の 2p22p^2 など)の準位の分かれ方。縦軸は Coulomb の部分を式 (5.2.10) の比で描き、スピン軌道相互作用による 3P^3P の分かれ方 E(J)=λ2[J(J+1)−4]E(J)=\frac\lambda2[J(J+1)-4] は見やすいように拡大した。半分(3個)より少ない詰まり方なので λ>0\lambda>0 で、J=0J=0 が最低になる(Hund の第3の規則)。

有効磁子数と Curie 則

基底の準位 JJ に閉じ込められたイオンは、大きさ JJ の角運動量として磁場に応答する。磁気モーメントは μ^=−μB(L^+2S^)\hat{\bm{\mu}}=-\mu_{\mathrm B}(\hat{\bm{L}}+2\hat{\bm{S}}) で、準位 JJ の中では J^\hat{\bm{J}} に比例する部分だけが残り、μ^=−gJμBJ^\hat{\bm{\mu}}=-g_J\mu_{\mathrm B}\hat{\bm{J}} と書ける。比例係数は Landé の gg 因子

gJ=32+S(S+1)−L(L+1)2J(J+1)(5.2.12)g_J=\frac32+\frac{S(S+1)-L(L+1)}{2J(J+1)}\tag{5.2.12}

である(電子のスピンの gg を 2 とした)。温度 TT が準位 JJ の中の Zeeman 分裂より十分高く、ほかの JJ の準位より十分低いとき、数密度 nn のイオンの磁化率は

χm=μ0n peff2μB23kBT,peff=gJJ(J+1)(5.2.13)\chi_{\mathrm m}=\frac{\mu_0n\,p_{\mathrm{eff}}^2\mu_{\mathrm B}^2}{3 k_{\mathrm B} T},\qquad p_{\mathrm{eff}}=g_J\sqrt{J(J+1)}\tag{5.2.13}

になる(Curie 則。導出は解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部第4章の常磁性体と同じで、S=12S=\frac12 を一般の JJ に広げたもの)。peffp_{\mathrm{eff}} を有効磁子数と呼び、Curie 則の傾きから測る。

表 5.2.1 Hund 則で決めた基底の準位と、Curie 則の有効磁子数の計算値。右端は軌道角運動量を 0 とした「スピンだけ」の値。3d のイオンでは実測がほぼ右端の列に近く、4f のイオンでは gJJ(J+1)g_J\sqrt{J(J+1)} に近いことが知られている。その理由は5.2.5節で扱う。
イオン(殻)SSLLJJgJg_Jpeff=gJJ(J+1)p_{\mathrm{eff}}=g_J\sqrt{J(J+1)}2S(S+1)2\sqrt{S(S+1)}
Cr3+^{3+}(3d33d^3)3/23/233/23/22/52/50.7753.87
Mn2+^{2+}(3d53d^5)5/25/205/25/225.925.92
Fe2+^{2+}(3d63d^6)2243/23/26.714.90
Co2+^{2+}(3d73d^7)3/23/239/29/24/34/36.633.87
Cu2+^{2+}(3d93d^9)1/21/225/25/26/56/53.551.73
Nd3+^{3+}(4f34f^3)3/23/269/29/28/118/113.62—
Gd3+^{3+}(4f74f^7)7/27/207/27/227.94—
Dy3+^{3+}(4f94f^9)5/25/2515/215/24/34/310.65—

例題 5.2.3 Hund 則で基底の準位を決め、有効磁子数を出す ★★★

オリジナル次のイオンについて、Hund 則で基底の準位の SS、LL、JJ を決め、gJg_J と peffp_{\mathrm{eff}} を求めよ。

  1. (1) Cr3+^{3+}(3d33d^3)
  2. (2) Cu2+^{2+}(3d93d^9)
  3. (3) Dy3+^{3+}(4f94f^9)
解答

手順はどれも同じで、ml=l,l−1,…,−lm_l=l,l-1,\dots,-l の席に、まず上向きのスピンで mlm_l の大きい順に詰め、余れば下向きで同じ順に詰める。SS は上向きと下向きの数の差の半分、LL は詰めた mlm_l の和の絶対値である。

(1) d3d^3:上向き3個が ml=2,1,0m_l=2,1,0 に入り、S=32S=\frac32、L=3L=3。半分(5個)より少ないので J=∣L−S∣=32J=\lvert L-S\rvert =\frac32。項の記号は 4F3/2^4F_{3/2}。gJ=32+154−122⋅154=32−1110=25g_J=\frac32+\frac{\frac{15}{4}-12}{2\cdot\frac{15}{4}}=\frac32-\frac{11}{10}=\frac25、peff=25154=0.775p_{\mathrm{eff}}=\frac25\sqrt{\frac{15}{4}}=0.775。

(2) d9d^9:上向き5個で mlm_l の和は 0、下向き4個が ml=2,1,0,−1m_l=2,1,0,-1 に入り和は 2。S=12S=\frac12、L=2L=2。半分より多いので J=L+S=52J=L+S=\frac52(2D5/2^2D_{5/2})。gJ=32+34−62⋅354=32−310=65g_J=\frac32+\frac{\frac34-6}{2\cdot\frac{35}{4}}=\frac32-\frac{3}{10}=\frac65、peff=65354=3.55p_{\mathrm{eff}}=\frac65\sqrt{\frac{35}{4}}=3.55。d9d^9 は「満ちた殻から電子を1個抜いたもの」で、正孔1個の l=2l=2、s=12s=\frac12 と同じ SS、LL を持つ。JJ が L+SL+S になるのは、正孔ではスピン軌道相互作用の符号が逆になることの表れである。

(3) f9f^9:上向き7個で和 0、下向き2個が ml=3,2m_l=3,2 に入り和 5。S=52S=\frac52、L=5L=5、半分(7個)より多いので J=L+S=152J=L+S=\frac{15}{2}(6H15/2^6H_{15/2})。gJ=32+354−302⋅2554=32−16=43g_J=\frac32+\frac{\frac{35}{4}-30}{2\cdot\frac{255}{4}}=\frac32-\frac{1}{6}=\frac43、peff=432554=10.65p_{\mathrm{eff}}=\frac43\sqrt{\frac{255}{4}}=10.65。(検算 scripts/verify_ch5-02.py)

ほかの巻では

  • 近似の数理 第10章:多電子原子の構成原理と Hund の規則を、Hartree–Fock の交換積分から読む所が読める

木下の勉強ステータス

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