実験計画法 第8章 §8.4 ★★★ 分散分析表の作成からプーリング、交互作用を含む最適条件の推定と区間推定までを1つの数値例で通す
ある樹脂部品の引張強度(大きいほど良い)を高めるため、次の2水準の因子を取り上げた。
- A:成形温度、B:保圧。
- C:冷却時間、D:添加剤の種類。
技術的な見込みから、交互作用 A×B, A×C は存在しうるが、ほかの2因子交互作用は無視できると考えた。
主効果4つと交互作用2つで自由度は6なので、L8 を使う。図 8.1 の三角形型の線点図に A=[1], B=[2], C=[4] を置く。すると A×B=[3], A×C=[5] となる。
4つ目の因子は、残った列[6]・[7]のどちらかに置く。列[6]には無視した B×C が入る。
ここでは D=[6] とし、誤差を列[7]とした。4つ目の因子と B×C は交絡するが、この交互作用は無いと仮定している。実験の順序は無作為化して、表 8.2 のデータを得た(単位は MPa の自作の数値)。
表 8.2 割り付けとデータ | A | B | A×B | C | A×C | D | e | |
| 実験 No. | [1] | [2] | [3] | [4] | [5] | [6] | [7] | x |
| 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 34 |
| 2 | 1 | 1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 38 |
| 3 | 1 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 | 31 |
| 4 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 | 1 | 38 |
| 5 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 | 1 | 2 | 39 |
| 6 | 2 | 1 | 2 | 2 | 1 | 2 | 1 | 44 |
| 7 | 2 | 2 | 1 | 1 | 2 | 2 | 1 | 47 |
| 8 | 2 | 2 | 1 | 2 | 1 | 1 | 2 | 49 |
例題 8.4 分散分析表の作成とプーリング ★★★
オリジナル表 8.2 のデータについて、
- CT、ST と7本の列平方和を求めよ。
- 誤差を列[7]だけとした分散分析表を作れ(F1,1(0.05)=161.4)。
- F0<2 の要因をプーリングして分散分析表を作り直し、有意水準5%と1%で判定せよ(F1,3(0.05)=10.13, F1,3(0.01)=34.12)。
解答
(1) T=320、CT=3202/8=12800。∑xr2=1156+1444+961+1444+1521+1936+2209+2401=13072 なので ST=13072−12800=272。列ごとの和と列平方和は次のとおりである。
| 列 | [1] | [2] | [3] | [4] | [5] | [6] | [7] |
| Tk1 | 141 | 155 | 168 | 151 | 158 | 160 | 163 |
| Tk2 | 179 | 165 | 152 | 169 | 162 | 160 | 157 |
| S[k] | 180.5 | 12.5 | 32.0 | 40.5 | 2.0 | 0 | 4.5 |
たとえば列[1]は T11=34+38+31+38=141、S[1]=(141−179)2/8=1444/8=180.5。列[5]は、表 8.1 の水準1が No. 1,3,6,8 なので
T51=34+31+44+49=158,T52=38+38+39+47=162,S[5]=8(158−162)2=2.0
である。合計は 180.5+12.5+32.0+40.5+2.0+0+4.5=272=ST で一致する。
(2) 誤差は列[7]で、Se=4.5, ϕe=1, Ve=4.5 である。
| 要因 | S | ϕ | V | F0 |
| A | 180.5 | 1 | 180.5 | 40.11 |
| B | 12.5 | 1 | 12.5 | 2.78 |
| A×B | 32.0 | 1 | 32.0 | 7.11 |
| C | 40.5 | 1 | 40.5 | 9.00 |
| A×C | 2.0 | 1 | 2.0 | 0.44 |
| D | 0 | 1 | 0 | 0.00 |
| e | 4.5 | 1 | 4.5 | |
| 計 | 272.0 | 7 | | |
F1,1(0.05)=161.4 なので、この段階ではどの要因も有意にならない。誤差の自由度が1しかないためである。
(3) F0<2 の2要因(A×C と4つ目の因子)を誤差にプールすると
Se′=4.5+2.0+0=6.5,ϕe′=3,Ve′=6.5/3=2.167
となる。
| 要因 | S | ϕ | V | F0 | 判定 |
| A | 180.5 | 1 | 180.5 | 83.31 | 1%で有意 |
| B | 12.5 | 1 | 12.5 | 5.77 | 有意でない |
| A×B | 32.0 | 1 | 32.0 | 14.77 | 5%で有意 |
| C | 40.5 | 1 | 40.5 | 18.69 | 5%で有意 |
| e′ | 6.5 | 3 | 2.167 | | |
| 計 | 272.0 | 7 | | | |
保圧の主効果は有意でないが、交互作用 A×B が有意なので残す(プーリングしない)。
交互作用 A×B が有意なので、この2因子の最適水準は2元表の平均で決める。各組合せは2回ずつ実験されていて、平均は次のとおりである。
xˉA1B1xˉA2B1=(34+38)/2=36.0,=(39+44)/2=41.5,xˉA1B2xˉA2B2=(31+38)/2=34.5,=(47+49)/2=48.0
図 8.2 のように、A1 では保圧の水準による差が小さい。一方 A2 では B2 のほうがはっきり大きい。2本の線が平行でないことが交互作用である。

図 8.2 適用例の A×B の2元表の平均。実線=B1、破線=B2
冷却時間は、平均が
xˉC1=(34+31+39+47)/4=37.75,xˉC2=(38+38+44+49)/4=42.25
なので C2 がよい。D はプーリングしたので、技術的な都合(費用など)で決めてよい。
例題 8.5 最適条件での母平均の推定 ★★★
オリジナル例題 8.4 の結果を使う(要因 A,B,A×B,C が残り、誤差は Ve=6.5/3, ϕe=3)。
- 最適条件を求め、その母平均の点推定値を求めよ。
- 有効反復数を伊奈の式と田口の式で求めよ。
- 母平均の95%信頼区間と、最適条件で新たに1回実験したときの値の95%予測区間を求めよ(t3(0.025)=3.182)。
解答
(1) 2元表の平均が最大の A2B2 に、冷却時間の良い水準を組み合わせた A2B2C2 が最適条件である。
μ^(A2B2C2)=xˉA2B2+xˉC2−xˉ=48.0+42.25−40.0=50.25.
(2) 伊奈の式:ne1=21+41−81=85、ne=1.6。田口の式:推定に用いた要因 A,B,A×B,C の自由度の和は4なので ne=8/(1+4)=1.6。
(3) 信頼区間と予測区間の半幅を順に計算する。
信頼区間:予測区間: Ve/ne=2.1667/1.6=1.1637, Ve(1+1/ne)=2.1667×1.625=1.8764,半幅半幅=3.182×1.1637=3.703,=3.182×1.8764=5.971
信頼区間は 50.25±3.70、すなわち [46.55, 53.95] である。予測区間は 50.25±5.97、すなわち [44.28, 56.22] である。
点推定値が観測値の最大を超えること
最適条件 A2B2C2 は実験 No. 8 で実際に試していて、観測値は49である。点推定値50.25はこれより大きい。推定値は No. 8 の1個のデータでなく、A2B2 の2個と C2 の4個の情報を構造式に沿って合わせたものなので、観測値と一致しなくてよい。
確認テスト
オリジナル
- 8.4-1 適用例で、最適条件 A2B2C2 と現行条件 A1B1C1 の母平均の差の点推定値を求めよ。その推定量の分散が 23σ2 であることを示し、95%信頼区間を求めよ。
- 8.4-2 適用例で交互作用を無視し、主効果 A,B,C だけで最適条件の母平均を推定したとする。点推定値と ne はいくつになるか。例題 8.5 と比べて何が違うかを述べよ。
- 8.4-3 適用例の割り付けで、D=[6] と同じ列に入る2因子交互作用を挙げよ。また、B×C も存在しうると考え直したとする。L8 のまま、4因子と次の交互作用を割り付けると何が起こるかを述べよ。
A×B,A×C,B×C
4. 8.4-4 適用例のデータについて、2元表から求めた平方和
SAB=i,j∑2TAiBj2−CT
を計算し、SAB=SA+SB+SA×B を確かめよ。
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