統計学の復習 第2章 §2.6 ★★★ 分散の平方根でデータと単位をそろえる。標準化と Chebyshev の不等式
分散はデータの2乗の単位を持つ(cm のデータなら cm2)。平方根をとって単位をデータとそろえたものが標準偏差で、n で割る σ^=σ^2 と、n−1 で割る s=s2 の2つがある。
s と s2 を取り違えない
問題文が「不偏標準偏差が 5」と書いていれば s=5 で、区間推定や検定の式に入れる不偏分散は s2=25 である。「不偏分散が 5」なら s=5 である。式に代入する前に、与えられた数が2乗の単位を持つか(分散)、データと同じ単位を持つか(標準偏差)を確かめる。もう1つ、s は s2 の平方根なので、S2 が σ2 の不偏推定量でも、S は σ の不偏推定量にならない(平方根が上に凸であることによる。第9章)。
標準化
命題 2.13(標準化した値の平均と分散)
σ^>0 のとき zi=(xi−xˉ)/σ^ とおくと、zi の平均は0、分散(n で割る)は1である。
証明
zi=axi+b(a=1/σ^、b=−xˉ/σ^)なので、(2.1) から zˉ=(xˉ−xˉ)/σ^=0、命題 2.11 から σ^z2=σ^2/σ^2=1。
zi は「平均から標準偏差何個ぶん離れているか」を表す単位のない数で、違う単位や違う散らばりのデータどうしの位置を比べるのに使う。偏差値は 50+10zi で、平均50・標準偏差10になるように1次変換したものである。確率変数の標準化 Z=(X−μ)/σ(第6章)は、同じ操作を母集団の μ,σ で行ったものである。
Chebyshev の不等式(データ版)
標準偏差は、データの大部分が平均のまわりのどの範囲に入るかを、分布の形によらずに保証する。
定理 2.14(Chebyshev の不等式(データ版) ★★★)
k>0 について、∣xi−xˉ∣≥kσ^ を満たすデータの割合は 1/k2 以下である。
証明
∣xi−xˉ∣≥kσ^ を満たす i の集合を J、その個数を m とする。J に入らない i の項を捨てると和は小さくなるので
nσ^2=i=1∑n(xi−xˉ)2≥i∈J∑(xi−xˉ)2≥i∈J∑k2σ^2=mk2σ^2.
両辺を nk2σ^2 で割ると m/n≤1/k2 を得る。
k=2 なら、平均から標準偏差2個ぶん以上離れたデータは全体の 1/4 以下、k=3 なら 1/9 以下である。この保証は分布の形について何も仮定しないので、正規分布に近いデータで実際に外へ出る割合(k=2 で約 4.6%)よりずっと粗い。確率変数についての Chebyshev の不等式(第4章)は、この割合を確率に置き換えたもので、証明も同じく「条件を満たさない項を捨てる」1行である。
例題 2.8 標準化と Chebyshev の不等式 ★★★
オリジナル
- (1) 数学の試験は平均62点・標準偏差12点、英語の試験は平均55点・標準偏差6点だった(どちらも人数で割った値)。数学80点と英語65点では、どちらが集団の中で相対的に上位か。それぞれの偏差値を求めて答えよ。
- (2) データ 2,3,3,4,5,7,11(例題 2.2)について、∣xi−xˉ∣≥2σ^ を満たすデータの割合を求め、定理 2.14 の上限と比べよ。
解答
(1) 数学は z=(80−62)/12=1.5 で偏差値 50+15=65。英語は z=(65−55)/6≈1.667 で偏差値 ≈66.7。点数は数学のほうが高いが、相対的な位置は英語の 65 点のほうが上である。
(2) xˉ=5、σ^=58/7≈2.878 なので、2σ^≈5.757。∣xi−5∣≥5.757 を満たすのは x=11(偏差6)の1個だけで、割合は 1/7≈0.143 である。上限 1/22=0.25 以下になっている。
平均絶対偏差
散らばりを n1∑i∣xi−xˉ∣(平均絶対偏差)で測る方法もある。定理 2.4 の最後の不等式から、平均絶対偏差は σ^ 以下である。2乗を使う σ^ では平行移動の公式や群内・群間の分解のような代数的な等式が成り立ち、正規分布の母数とも直接つながるので、散らばりの指標としては σ^ を標準として用いる。
確認テスト
オリジナル
- 2.6-1 大きさ n=10 のデータの不偏標準偏差が s=5 である。不偏分散 s2、偏差平方和 Sxx、n で割る分散 σ^2 と σ^ を求めよ。
- 2.6-2 標準化した値 zi について ∑izi2=n となることを、命題 2.13 を使わずに定義から直接示せ。
- 2.6-3 n=8 個のデータで、∣xi−xˉ∣≥2σ^ を満たす割合がちょうど 1/4(Chebyshev の上限と等しい)になる例を1つ作り、そうなることを確かめよ。
- 2.6-4 データ 1,2,6,7 の平均絶対偏差と σ^ を求め、平均絶対偏差 ≤σ^ を確かめよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com